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【軽減税率】価格表示は要注意! 消費増税に伴う価格転嫁対策とは?

植竹 剛(うえたけ つよし)店舗コンサルタント

【軽減税率】価格表示は要注意! 消費増税に伴う価格転嫁対策とは?

価格転嫁とは、「小売業が原材料の価格上昇を取引価格に反映させて負担させること」です。2019年10月1日から始まる消費税増税・軽減税率制度においては、増税分を消費者(お客様)に負担させるという意味になります。しかし、単に値上げをすると、お客様が離れてしまう危険性もあります。では、どのように考えるべきでしょうか。

この記事の目次

消費税増税による買い控えはお店の努力で乗り越える

消費税増税による買い控えはお店の努力で乗り越える

まずは、お店が消費税増税においてどのような影響があるのかをまとめると、下記の2点になります。

  • 軽減税率の対象にならない商品の仕入れは税率10%になり、支払い金額が増える
  • 増税後の消費税納税額が増える

しかも、お客様に増税分を負担させると、客数や売上の減少を招く可能性も出てきます。もともとお客様が支払った代金の内、消費税分はいわばお預かりしているお金です。ですが、売上金と混在してしまうこともあり、利益の額が減ってしまうと納税するのも大変になってしまいます。

そのような重要な課題を解決するために、次の内容を検討してみてください。

(1)店内の商品一つひとつに役割を付ける

飲食店でも小売店でも、商品それぞれには役割が付けられます。

例えば、めがね店で言えば、店頭の外にある「めがねクリーナー」は無料のサービスです。それから、自動ドアをくぐると比較的安価なフレームが展示され、さらに奥のショーケースでは高価なフレームとレンズの紹介というようなイメージがあるかと思います。ぞれぞれの役割を列記してみます。

  • 無料めがねクリーナー……お客様の足を店頭で止める役割
  • 安価なフレーム……………つなぎの役割(手が届く価格、他商品のラインナップなど)
  • 高価なフレーム……………利益率が高く、店舗の利益に貢献する役割

自店でも、必ず各商品の役割があるはずです。振り返って、役割を与えてみてください。

(2)役割をさらに明確にする

上記では、「無料」「安価」「高価」という区別の仕方をしましたが、役割をさらに明確にしてみましょう。

集客・来店動機につながる商品(≒ディスカウント商品)

利益率を下げても、来店客数増を見込む商品としての役割。販売促進商材としての扱いになることもあります。

販売数の多い商品(≒生活必需品)

定番商品とも言われ、全売上の中で高い比率を担う役割。お店の中で販売数の多い商品は、消費スピードが速く、購入サイクルも定期的に訪れる特徴があるはずです。メガネ店であれば、レンズクリーナーのような商品になるでしょう。

オリジナル商品(≒高付加価値商品)

看板商品としてお店の代名詞になりうる役割。改良してさらに付加価値を高めた商品は、他店の追従を許さないという特徴がありますので、しっかり利益を乗せ、品質やオリジナル感をアピールする施策を行いましょう。

このように、売価原価率や利益率を考えながら、お客様がわかりやすい各商品の役割と値付けを行う必要があります。

(3)同じ商品でも、税率が10%だったり、8%だったりする理由をお客様に理解してもらう

今度は、消費税という法律上、同じ商品であっても「店内飲食(イートイン)」か「持ち帰り(テイクアウト)」かによって売価が変わってしまうことをお客様に理解していただくための、表示方法に関してです。例えば、次のような場合です。

  • お客様が惣菜パンを店内飲食(イートイン)で購入される場合は税率は10%
  • お客様が惣菜パンを持ち帰り(テイクアウト)で購入される場合は税率は8%

この違いを明確にすることによって、価格転嫁だと誤解されないようにする工夫が必要です。現在内税方式で、総額だけを表示しているならば、現段階で外税方式に表示を変更して、10月1日に値上げされたと誤解されないような工夫をしておきます。また、「店内飲食の場合の価格」「持ち帰りの場合の価格」の2つを明記するのもよいでしょう。

複数税率後に割引する時の注意点は?

複数税率後に割引する時の注意点は?

価格転嫁と思われないために、値引きをすることがあると思います。その際に注意すべきことがありますので、ご紹介をしておきます。

(1)「消費税」を値引きしますと言わない

「消費税を値引きします」と思われないように注意することです。

  • 消費税はテイクアウトと同じ「8%」にします(例:飲食店)
  • 消費税は「8%」に値引きしています(例:小売店)

これは消費税をコントロールしているように捉えられてしまうのでNGです。

結果的にお客様にしてみれば値引き行為なのですが、消費税額や率を変更するかのように見える広告や告知は法律違反になりかねません。消費者に消費税の負担がないような表現や、本来は税率10%のところを8%に割り引いているなどの表現で、誤認を与えるのは禁止されています。

(2)値引き商品を設定する

値引きになるのは何の商品で、どのように割り引くのかを明確にします。

例えば、缶ビール250円、焼き鳥150円、「缶ビールと焼き鳥」のセットを400円として、具体的に見てみます。ポイントになることは下記3点です。

  • 「缶ビールは消費税10%」「焼き鳥は消費税8%」であることをまず考える
  • セット料金自体を5%割り引くと、税率の計算ができなくなるのでNG
  • 缶ビールの税抜価格から5%割り引くか、焼き鳥の税抜価格から5%割り引くかを決めておく

【例1】「缶ビールと焼き鳥」のセットを5%割り引く場合
<消費税課税前に5%の割引きを実施する>

缶ビール250円 × 0.95 = 237.5円……5%の割り引き
焼き鳥150円 × 0.95 = 142.5円……5%の割り引き
(237.5円 × 1.10) + (142.5 × 1.08) = 415.15円

【例2】「缶ビールと焼き鳥」のセットを50円割り引く場合
<缶ビールと焼き鳥それぞれの価格の比率から、それぞれの割り引き額を算出する>

缶ビール250円と焼き鳥150円のセットなので、250:150 = 5:3になる。
250円 − (50円 ÷ 8 × 5) = 218.75円
150円 − (50円 ÷ 8 × 3) = 131.25円
218.75円 + 131.25円 = 350円……50円の割り引き

合計350円として、缶ビールには10%、焼き鳥には8%の税率を掛けて販売金額とすることが必要です。

※同じような考え方で、10%消費税対象商品から50円を引き、税率を掛けるという方法もあります。決めずにいきなり割引販売を行うと、お客様が混乱してしまうので事前に決定をしておきましょう。

事例:パン屋さんの努力

事例:パン屋さんの努力

お店としての努力を具体化した事例をご紹介します。消費税増税分の仕入額増額をこのような工夫によって抑える計画を立てたパン屋さんがあります。

主力原材料である「小麦粉」は仕入価格によってお店の利益を大きく左右します。複数の小麦粉を仕入れて、ブレンドしたり、高級小麦粉をふんだんに使用した高級パンを販売したりしています。次の2種類の小麦粉を使っていました。

A小麦粉……1キロ当たりの仕入額 300円
B小麦粉……1キロ当たりの仕入額 500円

単に「全部キロ当たり100円下げてくれ」とお店が主張しても、仕入れ先はすべてイエスとは言ってくれないものの、多少の値引きは期待できます。キロ当たり数円単位で価格交渉をしてみました。

その結果、A小麦粉:B小麦粉 = 1:1で作っていた商品を、A小麦粉:B小麦粉 = 3:2に変更した場合、原価が調整できることがわかりました。

比率1:1の場合 1キロ当たりの小麦粉原価 = 150円 + 250円 = 400円
比率3:2の場合 1キロ当たりの小麦粉原価 = 180円 + 200円 = 380円

このように20円分の差額が生まれ、元々の原価400円に対して5%分の貢献をしてくれます。これだけでも消費税増税分の2%分の負担を解消してくれます。加えて、味が落ちないような工夫も必要でした。

トータルで考えると仕入額が減り、原価率が下がり、利益率が向上します。値下げを要求して仕入額を下げるのと同時に、お店側での工夫によって仕入額を下げる方法もとるべきです。

まとめ

  • 価格転嫁とは価格上昇分を相手に負担させることを指す。
  • お店の商品に明確な役割を付けて、お店全体で価格転嫁と捉えられない努力をする
  • 割引に関しては、消費税増税分を割引くはNG。割引きの方法を具体的に考えておく

仕入れ先も、お店も、お客様も、増税は皆大変なことです。その中で、工夫次第では逆にビジネスチャンスにつなげられるのは、お店だけです。お客様に分かりやすい価格の根拠を提示したり、努力の末に高付加価値商品を開発したりと、やることはたくさんあります。未来のお客様を想像しながら楽しく工夫をしてみてください。

※この記事は公開時点の情報を元に作成しています。

メールにて「軽減税率対策ツール」のダウンロードリンクをお送りします。

この記事を書いた人

植竹 剛(うえたけ つよし)氏

植竹 剛(うえたけ つよし)店舗コンサルタント

1971年、東京生まれ。株式会社チームのちから代表取締役。実家が菓子業で、4歳より接客を始める。大学卒業後、株式会社ロッテリア入社。店長を経て店舗経営コンサルティング企業へ転職。業績立て直し専門コンサルタントとして、100店舗以上を経験。人材による業績向上を提唱している。『「できる店長」と「ダメ店長」の習慣』(明日香出版社刊)、『店長養成道場』(日経BP社刊)を上梓。https://team-chikara.com/

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