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【専門家が解説!】個人事業主が納める税金の種類と納税時期

個人事業主の主な税金まとめ 所得税・住民税・個人事業税・消費税・償却資産税

「個人事業主として活動を始めたけど、何の税金をいつ納めないといけないのか、しっかり把握できていなくて不安…」といった悩みを持たれている方も多いのではないでしょうか?
個人事業主として事業を始めると、さまざまな税金の納税義務が生じます。今回は、個人事業主が納めるべき税金の種類や納税時期を確認していきましょう。

この記事の目次

個人事業主が納める税金の種類とは?

個人事業を始めると、会社員の時には発生しなかった税金が発生したり、給与から自動的に天引きされていた税金を自分で算出して納税したりする必要が出てきます。税金の種類と納税時期を理解しておかないと、延滞税がかかることもあります。個人事業を始める方は必ず事前に確認をしておきましょう。

【ひとめでわかる】種類と納税時期

個人事業主に関係のある主要な税金を一覧にしました。

税金の種類 納税先 納税時期 備考

所得税

税務署

翌年3月15日

確定申告による納税

消費税等

税務署

翌年3月31日

確定申告による納税

住民税

市役所・区役所

年4回に分けて納付

確定申告の結果により役所が算出

個人事業税

県・都税事務所

年2回に分けて納付

確定申告の結果により役所が算出

源泉所得税

税務署

毎月10日又は年2回

給与等から天引き

償却資産税

市役所・区役所

年4回に分けて納付

毎年1月31日に前年分を申告

印紙税

税務署

随時

領収書等を発行するたび発生

上記の表で示した税金のうち所得税~個人事業税について、それぞれ詳細をご説明します。

所得税

所得税とは、日本国内において所得を得た個人に対して課税される税金のことです。

その年の1月1日~12月31日に生じた所得税を、翌年2月16日〜3月15日の期間中に納付する必要があります。

2023年現在、所得に応じて5~45%の7段階で徐々に税率が上がっていく「超過累進税率」が採用されており、所得が高い人ほど税負担が重くなる仕組みになっています。

所得税の算出方法は、まず収入金額から必要経費を差し引いて所得を出します。そこから所得控除を差し引いて課税所得を出します。そして、課税所得に所得税率をかけて算出します。

所得控除とは、確定申告をする方の個人的事情(扶養状況や障がいの有無、社会保険の納付状況など)に配慮し、一定の要件を満たす支出が行われている場合、規定の金額を所得から差し引く制度です。社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、扶養控除、障がい者控除など全部で15種類あります。基礎控除として48万円の控除が設定されており、これは白色申告や青色申告に関係なく、誰でも一律に受けることができます。

<所得控除の種類>
雑損控除 医療費控除 社会保険料控除 小規模企業共済等掛金控除 生命保険料控除
地震保険料控除 寄附金控除 障害者控除 寡婦控除 ひとり親控除
勤労学生控除 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除 基礎控除

所得税額は、課税所得金額に応じて、所得税の速算表に照らし合わせ、所得税額を算出し、そこから税額控除を差し引いて出します。税額控除とは、社会情勢や政府の意向を反映させた控除措置で、住宅取得等特別控除や配当控除、外国税額控除などがあります。

<所得税の速算表>
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

消費税等

商品やサービスの消費に対して課される税金です。商品やサービスを購入した際、本体価格の10%(一部の商品、サービス等については軽減税率により8%)を消費者(購入者)が負担します。消費者が直接国に支払うのではなく、商品やサービスを提供する事業者が預かり、確定申告によって算出して税務署に納める仕組みになっています。
その年の1月1日~12月31日に生じた消費税を、翌年3月31日までに納付する必要があります。

消費税等は、国税である「消費税(6.4%)」と地方税である「地方消費税(3.6%)」があわさって「消費税等(10%%)」となっており、両方合算して国に納付することになっています。

個人事業主の場合、消費税等を支払う立場であると同時に、消費税等を預かる立場でもあります。日々の取引でどれだけの消費税等を預かったかを、しっかり把握しておく必要があります。

消費税額は、「売上時に預かった消費税額」から「支払時に払った消費税額」を差し引いて計算します。年間の売上金額が2,750万円(内消費税250万円)、仕入れ代金や光熱費などの支払いが1,650万円(内消費税150万円)だとした場合、納める消費税額は250万円-150万円=100万円となります。

消費税等は、原則として日本国内で反復、継続して事業を行うすべての事業者に納税義務が発生します。小規模な事業者の事務負担や税務執行コストを考慮して、基準期間の課税売上高(個人事業主の場合、前々年の課税売上高)が1,000万円以下の場合は、消費税の納税義務を免除する「免税事業者」という制度があります。ただし2023年10月1日から開始したインボイス制度によって「適格請求書発行事業者番号(インボイス番号)」を取得した事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の納税義務が発生します。

住民税

住民税とは、地方自治体の公共サービスの財源とするためにその年の1月1日時点でその市町村(都道府県)に住所のある人に対して課税する地方税のことです。

住民税は原則として、所得税の確定申告や年末調整による給与支払報告などの情報に基づき、各市町村が算出して課税します。

住民税の納付方法は「普通徴収(納付書で支払い)」と「特別徴収(給与等から天引き)」の2種類がありますが、個人事業主の場合には「普通徴収」しか選ぶことができません。

普通徴収の場合、住民税の年税額を4回に分けて分割納付することとなっており、納付時期は市区町村によって多少異なります(例えば東京都の場合、6月末、8月末、10月末、翌1月末の4回)。

住民税の金額は「均等割」と「所得割」の2つで構成されています。

均等割

均等割とは、所得に関係なく全員に平等に課税される金額のことです。市町村によって金額が異なりますが、東京23区の場合は特別区民税3,500円、都民税1,500円の合計5,000円(※)となっています。

※平成26年から令和5年まで防災対策費として1,000円が含まれていました。令和6年からは防災対策費が終了する代わりに、森林環境税として同じく1,000円が徴収されます。

所得割

所得割は、前年度の所得金額に応じて課税されるもので、確定申告や年末調整の結果がそのまま反映されます。納税額の算出は、所得控除や税額控除などの金額の違いはあるものの、所得税の場合と基本的な構造は同じです。

住民税所得割の税率は、一定率(都道府県税4%、市町村税6%)となっています。

個人事業税

個人事業税は、日本国内の事業による所得に対して課税する都道府県税です。事業税の対象となる業種は地方税法等で決められており、70種類の業種が法定業種として事業税の対象となります。一般的に行われる事業は、ほぼすべてがこの法定業種に該当します。

税率は法定業種の種類ごとに決められており、あんま、マッサージ、柔道整復師等と装蹄師業が3%、畜産、水産、薪炭製造業が4%、それ以外の業種が5%となっています。

個人事業税は「賦課課税方式」といい、自分たちで税額を算出するのではなく、確定申告などの提出された情報に基づいて都道府県が税額を算出します。事業者は、送られてきた納付書を使って納税します。

個人事業税は、青色申告特別控除前の事業所得の金額から事業主控除(290万円)を控除した金額に対して、上記の事業税率を乗じて算出します。青色申告特別控除を行う前の所得金額が290万円未満の場合、個人事業税が発生しません。

個人事業税は、前年度の所得に対して原則として翌年8月末と11月末にそれぞれ2分の1ずつ分けて納税します。

個人事業主の節税対策。経費にできるものはなに?

個人事業主が確定申告をする際に、どこまでが経費で落とせるのか判断が難しい場面もあるかもしれません。所得税法上、経費の定義は「収入金額を得るために要した支出」としか書かれていないため、経費の範囲に関しては解釈の余地が相当あります。

仕入や外注費などのように直接的に収入と対応関係のあるもの(直接経費)や、店舗の家賃や人件費のように事業年度の期間内に発生しているもの(間接経費)は、必要経費として控除が認められます。事業に関係ないとみなされた支出は「家事費」として収入金額から控除することができません。

それでは、必要経費として控除した場合納税額にどのような影響を与えるのかという点と、直接経費と間接経費に含まれるものについて具体的にみていきましょう。

「経費」と納税額の関係

所得税を算出するもととなる所得は、「収入金額-必要経費」で求められます。必要経費が多ければ、そのぶん所得は少なくなるため、連動して税金は少なくなります。

所得に連動して税額が算出されるのは所得税だけではありません。消費税、住民税、個人事業税、国民健康保険料なども、所得をもとに算出しています。所得が10万円減るだけでもトータルの納税額は3~4万円の差が出てきます。経費についてしっかりと理解して、申告することが大切といえます。

経費にできるもの・できないもの

必要経費の範囲は、「事業のために必要だった」という事業関連性を、個人事業主本人がどれだけ説明できるかによります。

実は経費の範囲については、税理士や税務職員によって解釈が異なることがあります。税理士が大丈夫と言ったからといって、必ずしも経費として認められるわけではありません。日頃から何かの支払いをする際に、自分の事業にどのように関連するのかを考えるトレーニングをしておくと、判断力が養われていきます。

とはいえ、まずどのようなものが経費になるのかの目安は必要だと思います。主だった経費についてみていきましょう。

経費にできるもの

勘定科目 含まれるもの
租税公課

個人事業税や償却資産税、消費税、印紙税、自動車税といった税金

※所得税、住民税、自宅の固定資産税等は対象外

荷造運賃 商品等を梱包、配送するためのコスト
水道光熱費

電気、ガス、水道などの料金(店舗など事業に関するもののみ)

旅費交通費

電車、バス、タクシー代、駐車場代、出張宿泊費など

通信費

スマホ利用料、インターネット回線、切手、郵便代など

広告宣伝費

ホームページ運用、パンフレット制作、求人費用など

接待交際費

取引先との飲食や接待、贈答品など

※接待交際費は特に「誰と何の目的で会ったのか、事業に必要なのか」の根拠が必要となる。領収書等に一緒に行った人の氏名、人数などを書いておくと後で有効

損害保険料

火災保険、自動車保険など

修繕費

店舗や自動車の修理など、壊れたものを原状復帰させるための費用

消耗品費

日常的に使用される物品や事務用品など、基本的に1年以内に交換するもの、金額として1つあたり10万円未満の物品購入(青色申告の場合には30万円未満)

減価償却費

1つあたり10万円を超える物品(青色申告の場合は30万円以上)の購入費用は、全額その年の経費になるのではなく、その物品の法定耐用年数(だいたい何年くらい使えそうか)に分割して経費とする。これを「減価償却」と呼ぶ

福利厚生費

社員旅行や健康診断、社員の見舞金や冠婚葬祭の支出

給料賃金

社員に支払う給料

外注工賃

外部に仕事を依頼した場合の費用

利子割引料

事業資金の借入に対する返済利息

※返済元金は、借りたものを返しているだけなので対象外

地代家賃

事務所や店舗の家賃、駐車場代など

専従者給与

青色事業専従者給与(青色申告をしている事業者が家族に給与を支払うことについて事前に税務署に給与額の届出をしているもの)

※その他の経費
車両関係費(ガソリン代、車検代など)
支払手数料(振込手数料やクレジット手数料など)
支払報酬(税理士や社労士などに依頼した報酬)
新聞図書費(新聞、雑誌、書籍代など)
雑費(上記のどれにも当てはまらない支出)

経費にできないもの

個人事業をしていてもしていなくても生じる家事費は、必要経費とすることが難しいです。例えば、日常のスーパーでの食材の費用などは、事業をしていてもいなくても食事はとるものなので家事費とみなされます。他にも家族や子どもに対する支出も事業関連性を説明することは困難です。

もし、事業に関係する部分とプライベートな部分が混じってしまう場合には、家事按分として、割合で事業分と家事分を分けることが認められています。

明らかに経費にできないものもあります。主だったものは下記のとおりです。

種類 詳細

個人に関わる税金

所得税、住民税、事業に関係ない自宅等の固定資産税など

社会保険料

国民年金や国民健康保険料は、個人に関するものなので経費にすることができない。その代わりに「社会保険料控除」として「所得控除」の方で引くことができる

生命保険料

生命保険、がん保険、障がい保険、所得補償保険などの保険料も個人に関するものなので経費にすることができない。全額ではないが、一定額が生命保険料控除として所得控除の対象となっている

同一生計に対する給与

一緒に生活している身内に給与を支払う場合には、事前に青色事業専従者給与の届けを出さないと経費として認められない

自分自身に対する生活費

個人事業主は自分に対して給与を支払うことができず、生活費として毎月定額を経費にすることもできない

反社会勢力に対する支出

どんな名目であっても、反社会勢力に対して支払うお金は経費にすることができない

借入金の返済元本

事業資金だとしても、借入返済のうち元本部分は借りたものを返しているだけなので経費ではない

これらは、どうやっても経費にすることはできないので諦めるしかありません。しかし、それ以外の支出に関しては事業関連性を示すことによって必要経費として認められる場合も多くあります。

まとめ

  • 個人事業主が支払うべき主な税金は所得税、消費税等、住民税、個人事業税、源泉所得税、償却資産税、印紙税の7種類。納税時期と納税先はそれぞれ異なるため注意が必要
  • 経費は、直接的に収入と対応関係のあるもの(直接経費)と、店舗の家賃や人件費のように事業年度の期間内に発生しているもの(間接経費)の2つに分けられる。必要経費が多ければ、そのぶん所得は少なくなるため、連動して税金は少なくなる
  • 必要経費の範囲は、「事業のために必要だった」という事業関連性を、個人事業主本人がどれだけ説明できるかによる。税理士や税務職員によって解釈が異なることがある。主だった経費については事前に確認しておくのがベター

今回は個人事業主が支払う税金や納税時期について解説してきました。これらをしっかり理解して、納税の漏れがないよう気をつけましょう。また、本記事では税金を算出する際に重要な経費についても解説しました。同じお金を使うにしても経費で落としつつ、事業成長につながるものにしっかりお金を使うことが大切です。経費について理解を深めて賢く事業を進めていきましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士

税理士法人 エンパワージャパン 代表税理士 1981年生まれ 横浜市在住

中小企業こそ日本を支える礎であるという理念から、持続可能な社会・持続可能な企業を創るための「中小企業のための財務支援プログラム」を実施することで強固な財務力を持つ優良企業に導く、中小企業の財務支援に専門特化した税理士事務所を運営するとともに、児童養護施設の児童から地域を支援する税理士へと導く「大空への翼プロジェクト」を行っている。共著「七人のサムライ」や執筆など多数。

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