お店のWeb広告の指標となるKPIとは?代表例や決め方の手順・ポイントを解説
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、広告の成果を測るための指標で、効果的に広告を運用する上で重要なものです。この記事では、初めてWeb広告を運用することを検討している店舗経営者に向けて、KPIの概要から主な種類や決め方のポイントまで、例を交えて詳しく解説します。
Web広告運用におけるKPIとは
KPIとは、売上など最終成果までの途中プロセスの達成度を示す、数字で表される指標(定量的な指標)のことです。例えばWeb広告の運用では、広告の表示回数、クリック数、広告表示回数に対するクリックされた割合を示すクリック率などが挙げられます。
Web広告運用でKPIが大切な理由と得られるメリット
KPIを設定し定期的に確認することで、Web広告の成果を客観的に把握できるようになります。Web広告運用においてKPIが大切な理由と得られるメリットは、主に下記の3点です。
施策を具体的に考えることができる
KPIを設定すると、最終成果に至るプロセスが可視化され、実行する施策の整理がしやすくなります。
KPIを設定しないと、「集客を増やそう」「Webサイトを訪問する人を増やそう」と漠然とした目標になりがちです。具体的な目標数値を置くことで、「集客を増やすには、クリック率を高めて多くの人にお店のWebサイトまで来てもらう必要がある。そのためには、お店の魅力が伝わるように広告表現の工夫が必要」というように、具体的に何をすれば良いかの道筋が見えやすくなるでしょう。
施策を客観的に評価できる
KPIは定量的な指標のため、広告の評価を数値で客観的に見ることができます。
数値目標がないと、「先月より良くなった」といった感覚的な評価になりがちです。KPIを設定すると、「最近2カ月のクリック率は、0.5%ずつ良くなっている」と、成果をより正確に把握できるようになります。
改善サイクルをまわし無駄な広告費を削減できる
KPIの定期的な確認は、現状の広告成果に合わせた改善施策を行うのに役立ちます。
例えば、KPIとして設定したクリック率がふるわなければ、広告を見て欲しいターゲットを見直す、広告内容を変える、などクリック率を上げるための打ち手を実行していきます。改善サイクルをまわし、対応を素早く行うことで、無駄な広告費の削減にもつながります。
KPI設計に必要な基本の考え方
ここでは、KPIを設計するために必要となる、基本的な考え方について解説します。
KPIはKGIから考える
中間目標となるKPIは、最終目標となるKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)から考えます。KGIは事業やキャンペーンの最終目標、例えば「Web広告経由の売上●●円」などがこれにあたります。
KGIを設定したら、その目標を達成するためにKPIを何にするかを考えます。KPIはKGIの中間目標となる指標で、例えば「Web広告経由の顧客数(予約数)●●人」や、「顧客単価●●円」などが該当します。
KPI設計に便利なKPIツリー
KPI設計には、KPIツリーを用いると整理がしやすいでしょう。KPIツリーは、最終目標の達成に必要な要素を図式化し、KGIからKPIまでを下記の図のようにツリー状に示したものです。
KPIは上位の成果を下位の成果で支える形式が一般的で、KPIツリーを用いて整理することで、目標達成のための全体像が明確になり、KGIとKPIの関係性を正確に把握できます。また、KGIを効果的に達成するためのKPIも特定しやすく、要素の優先順位づけにも役立ちます。
Web広告で用いられる主なKPI
Web広告で用いられる主なKPIとはどのようなものでしょうか。ここでは、「認知度を上げる」、「Webサイトに誘導する」、「コンバージョンを増やす」の3つの目的に分けて説明します。
認知度を上げる
「知っている人を増やしたい」という、認知度を上げる目的の広告KPIを表にまとめました。
指標名 | 説明 |
---|---|
インプレッション数(Imp:Impression) | 広告が表示された回数 |
インプレッション単価(CPM:Cost Per Mille) | 広告表示1,000回あたりの広告費用 |
リーチ(Reach) | 広告が表示されたインターネットユーザーの数 |
フリークエンシー(FQ:Frequency) | 1ユーザーあたりの広告表示回数 |
どれだけたくさん表示されたか(インプレッション数)、何人に表示されたか(リーチ)、ひとりに何回表示されたか(フリークエンシー)を示す指標が主なものになります。
認知度を上げる目的では特に、広告を見た人の数である「リーチ」は重要な指標です。この数値が大きいほど、多くの人の目に広告が触れたことになるためです。
ただ、広告が表示されただけでは、人が本当にそれを見たか、覚えているかはわかりません。そのため、クリック率も合わせて確認し、広告がどれだけ効果的に機能しているかを総合的に評価することが大切です。
Webサイトに誘導する
お店のWebサイトへ誘導する目的の広告KPIを表にまとめました。
指標名 | 説明 |
---|---|
クリック数(Click) | Web広告がクリックされた数 |
クリック率(CTR:Click Through Rate) | 表示された広告がクリックされた率 |
クリック単価(CPC:Cost Per Click) | 広告へのクリック1回あたりの広告費用 |
広告のクリック数やクリック率など、広告を見た人の行動が成果指標になります。特にクリック率は重要で、「興味を持ちそうな人=ターゲットに広告が表示されているか?」「広告で商品・サービスの魅力を表現できているか?」を評価する指標になります。
クリック率が低い場合は、「広告内容を変えれば、クリック数とWebサイトへの訪問者数が増えるのではないか?」などの仮説を立てて改善施策を実行していきます。
クリック単価は主に、GoogleやYahoo!といった検索エンジンの検索結果画面に表示されるリスティング広告(検索連動型広告、検索キーワード広告)の評価に用いられる指標です。これが低いほど、効率よく広告運用ができていることになります。
コンバージョンを増やす
広告を見た人がWebサイトを訪問し、予約や購入などのお店側が期待した成果につながった場合、「お客様になった」という意味で「コンバージョン」と呼びます。そのコンバージョン関連の広告KPIを表にまとめました。
指標名 | 説明 |
---|---|
コンバージョン数(CV:Conversion) | 成果に至った数 |
コンバージョン率(CVR:Conversion Rate) | 広告へのクリックからコンバージョンに至った率 |
コンバージョンを増やしたい場合は、広告内容だけでなくWebサイト側での工夫も必要です。例えばお店のWebサイトを訪問した人が、迷わず予約ページにたどり着けるようわかりやすく誘導するなど、KPI数値を上げるように調整していきます。
また、Webサイトに「予約」と「お問い合わせ」がある場合、後者は「予約の手前にあるコンバージョン」として、CVではなく、MCV(マイクロコンバージョン)と呼んで区別することもあります。
Web広告のKPIを決める4STEP
ここでは、Web広告のKPIを決める大まかな流れとなる4つのSTEPについて解説します。
STEP1.最終的な目標を設定する
最初に、実現したい最終的な事業目標を設定しましょう。この目標は、具体的で測定可能な形式=数値で表せるものを選びます。
例えば、「月間売上15%増加」や、「月間予約数50件」といった目標が考えられます。最終目標を持つことで、Web広告で何を達成させるかという目的が明確になっていきます。
STEP2.Web広告の目的を明確にする
さらに、Web広告を出すことで何を実現したいのかという目的を明確化していきます。Web広告経由での売上増加なのか、認知度を上げたいのか、などです。
例えば売上増加を目指すなら、「新規顧客の増加」「リピーター顧客の増加」「予約ページの閲覧数増加」など、詳細に考えていきます。
広告の目的が明確になると、具体的な目標と広告施策を考えやすくなります。広告施策の例としては、「どのような広告手段を使うか」「どのような人に広告を見て欲しいのか」「広告を配信する時間帯をどうするか」「広告内容をどうするか」などが挙げられます。
STEP3.KPIを設定する
Web広告の目的を明確にし、どのような広告施策を打つかが見えてきたら、次にKPIを設定します。
KPIは、継続的に測定でき、かつ、成果を表す数値から選びます。Web広告の場合、「広告表示回数」「クリック数」「クリック率」などがよく選ばれます。
STEP4.KPIの目標値を設定する
最後に、各KPIに対して目標にする数値を設定します。例えば、「広告クリック率は1%を目標とする」「Webサイト訪問者数を月間で10%向上させる」など、現在の状況や過去の実績などから目標値を決めていきます。
目標値はあくまでも努力すれば届く現実的な数値を設定しましょう。初めから高すぎる目標を掲げてしまうと、「無理かもしれない」と諦めてしまったり、特定のKPIだけに力を入れてしまい他のKPIとのバランスを崩してしまったり、目標達成のための活動がうまくいかなくなることがあります。
また、日々の広告運用の中で、状況は変わっていくものです。状況の変化によってあまりにも簡単に達成できそうになったり、逆に頑張っても実現が不可能になったりした場合には、一度掲げた目標にこだわらず臨機応変に数値を見直し調整していくことが、最大限の成果につなげるポイントです。
その他、Web広告の指標の代表例
これまでに紹介してきたもの以外で、Web広告で用いられる指標として代表的なものを紹介します。
CPA(顧客獲得単価)
CPA(Cost Per Acquisition)は、顧客獲得単価とも呼ばれ、1件の成果(コンバージョン)を獲得するためにかかった広告費を示す指標です。
計算式:CPA=広告費÷コンバージョン数
例えば、10万円をかけて広告を出稿し、10人の予約を獲得した場合、CPAは10万円÷10人=1万円となります。
CPAは、お問い合わせや無料モニターのように売上が発生しないケースや、商品の料金が一律であるケースに設定しやすい指標です。CPAの値が低ければ低いほど、効率よく広告が運用できていることを示します。
ROAS(広告費用対効果)
ROAS(Return On Ad Spend)は、広告費用対効果とも呼ばれ、「広告費に対してどれだけの売上を得られたか」を示す指標です。
計算式:ROAS=(広告による売上÷広告費)×100%
例えば、10万円をかけて広告を出稿し、50万円の売上を得た場合、ROASは50万円÷10万円×100%=500%となります。
通販のようにWebサイト上で売上が発生する業態や、金額が異なる商品・サービスを扱う場合に適しています。ROASが100%を超えると、広告費に対して売上がプラスとなることを示します。
ROI(投資利益率)
ROI(Return On Investment)は、投資利益率とも呼ばれ、「広告費に対してどれだけ利益を得られたか」を示す指標です。
計算式:ROI=(広告による利益÷広告費)×100%
例えば、10万円をかけて広告を出稿し、20万円の利益を得た場合、ROIは20万円÷10万円×100%=200%となります。
ROIが100%を上回ると、広告費に対して利益がプラスになることを示し、100%未満は赤字になり広告投資に見合わないことを意味します。ROIは、広告の全体的な成果を評価する場合に適しています。
指標を決めたら振り返りと改善サイクルをまわすことが大切
Web広告のKPIを設定した後、最も重要なのは継続的な振り返りと改善サイクルをまわすことです。
定期的にKPIとした要素の現状を確認し、目標値と比較することで、どの要素がうまく機能しているのか、どの要素では改善が必要なのかが明確になります。例えば、リスティング広告でクリック率が目標値より低い場合は、商品・サービスの良さが伝わっていないことが考えられるため、広告文の見出しや説明文の見直しを行います。
このように、目標値に達していない箇所を見つけたら、素早く対応してより効果的な広告運用を目指しましょう。