ディスプレイ広告の効果を改善する7つの方法と確認すべき指標
Webサイトやアプリ上に表示されるディスプレイ広告。インターネット広告では欠かせないものであり、多くの企業が活用しています。しかし、ディスプレイ広告を出しているけれど自社サイトになかなか誘導できない、売上に繋がらないという話はよく耳にします。
ディスプレイ広告で成果を出すには、課題を抽出して施策を打つ継続的な運用改善が重要です。そこで今回は、ディスプレイ広告の効果改善にあたって確認すべき指標および方法などを解説します。
ディスプレイ広告とは
ディスプレイ広告とは、Webサイトおよびアプリの広告枠に表示される広告のことです。
具体的には上記赤枠部分などに掲載される広告を指し、キャッチコピーと画像を使ったバナーや、CMのような短尺動画の形式で広告表示させることが可能です。また、ディスプレイ広告は広告を表示させるターゲット層を絞ることで、より大きな広告効果を狙うことも可能です。
同じWeb上の広告手法に「リスティング広告」がありますが、リスティング広告とは検索エンジンの検索結果画面(キーワード検索をしたときに表示される結果画面)にテキストを表示させる広告のことです。ディスプレイ広告とは表示される場所が異なるほか、訴求できるターゲット層、表示形式などが異なります。
リスティング広告 | ディスプレイ広告 | |
---|---|---|
表示場所 | 検索結果画面 | Webサイトやアプリの広告枠 |
訴求できる 主なターゲット層 |
明確なニーズを持つユーザー | 潜在的なニーズを持つユーザー |
表示形式 | テキストのみ | テキストに加え、画像・動画も 組み合わせられる |
ディスプレイ広告の種類
ディスプレイ広告は、「YDA(Yahoo Display Ads)」「GDN(Google Display Adnetwork)」の2つに大別されています。ここではこの2つについて解説します。
YDA(旧YDN)
YDAとは「Yahoo!ディスプレイ広告」のことで、Yahoo! JAPANの各サービスサイト(Yahoo! JAPANやYahoo!知恵袋、Yahoo!オークションなど)やYahoo!提携サイトに掲載できる広告を指します。
※YDAは、以前、YDN(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)と呼称されていましたが、2020年度から名称変更されています。
GDN
GDNとは「Googleディスプレイ広告」のことで、Google広告から出稿できるディスプレイ広告を指します。
GDNでは、「Gmail」「YouTube」といったGoogleのサービスサイトのほか、「価格.com」「ライブドアニュース」などのGoogleのパートナーサイトへ広告を表示させることができます。
とくに、利用者数が日本国内だけで7,000万人といわれている「YouTube」に出稿できることは、GDNの大きな特長だといえるでしょう。
YouTube広告は、YouTubeの検索結果ページや動画視聴前・視聴中に動画広告を表示させることができ、「インストリーム広告」や「バンパー広告」など全6種類のフォーマットがあります。インストリーム広告は、動画再生中に差し込まれる広告動画で、15秒や30秒の時間経過でスキップできます。一般的に1分以上の長めの広告動画が多いようです。バンパー広告は、インストリーム広告と同様に動画中に差し込まれますが、これはスキップができません。そのかわり数十秒程度の短めの広告動画であることが多くなっています。
ディスプレイ広告を改善する3つのステップ
実際にディスプレイ広告を運用していくと、想定のクリック数に届かない、クリック数は期待通りだがその後のコンバージョン率が悪い、売上に繋がらない、コストがかかりすぎるといった課題に直面することがあるでしょう。その際には、広告運用の改善が必要です。
ステップ①:数値を確認し、問題箇所を明確化
まず、取り組むべきことは問題の特定です。そこで、ディスプレイ広告のコンバージョン率やクリック率などの各種指標を管理画面上で確認し、成果が出ていない箇所を明確にしましょう。
指標を参考にすることで「そもそもインプレッション(表示回数)が少ない」「クリックされた割合が少ない」「費用対効果が低い」など、さまざまな問題が浮かび上がってきます。
主な指標は以下のようになります。各指標の詳細は後ほど解説します。
ステップ②:問題を分析し、原因を仮説立てる
問題箇所を明らかにしたあとは、何をどう変えれば改善されるかを考える必要があります。たとえば、インプレッションが少ない場合には、そもそも表示対象としているキーワードの検索回数やサイトのページビュー数が十分なのか、表示条件としているユーザーの条件が適切なのかを再確認します。「クリックされた数が少ない」という問題が発生している場合は、なぜ広告がクリックされないのかを分析します。もしかしたら、前述のインプレッション数が少ないことが原因である可能性もあります。そうでない場合は、広告のビジュアル、メッセージが適切ではない可能性もあります。クリックはしてくれているが、コンバージョン率(以下、CVR)に繋がらない場合は、ランディングページ(以下、LP)の見直しが必要かもしれません。ただし、原因は一つとは限りません。さまざまな可能性を考慮し、原因の仮説に基づいて改善策を挙げていきます。
ステップ③:解決策を立案し、実施する
解決策を複数挙げて対策優先度を決めたら、あとは実行です。たとえば、原因が「広告表示させるターゲット層が間違っている」ことだと分析した場合、解決策としては「ターゲット層の変更」を立案します。そのため、表示サイトのユーザープロフィールの再確認、ターゲットに合った表示対象サイトの選定などが必要になります。クリック数が少ない場合、とくにインプレッション数は十分なのにクリック数が少ない=クリック率が低いケースでは、表示しているメッセージや画像が適切かを検証する必要があります。その場合はABテストなどを用いてメッセージや画像などを検証していきます。
なお、仮説検証により、その問題を特定し解決できたとしても、また別の問題が発生する可能性もあります。その場合は再度「問題箇所の明確化→問題の分析・原因の仮説立て→解決策の実行」というステップを踏み、徐々に広告効果を高めていきましょう。
ディスプレイ広告の確認すべき指標
ディスプレイ広告による成果を改善するためには問題箇所を把握しなければなりません。問題箇所の把握には、以下4つの指標が役に立ちます。
指標 | 意味 |
---|---|
コンバージョン率(CVR) | Webサイト訪問者のうち、購入や問い合わせなどそのWebサイトの最終成果に至った件数の割合 |
コンバージョン単価(CPA) | コンバージョン1件あたりに要した費用 |
クリック率(CTR) | (ディスプレイ)表示回数に対して広告がクリックされた割合 |
インプレッション単価(CPM) | 広告が1,000回表示されるごとに発生する費用 |
ここではディスプレイ広告の改善のために、覚えておくべき上記4つの指標について詳しく解説します。
コンバージョン率(CVR)
ディスプレイ広告におけるCVRとは、広告経由のページ訪問者のうち、どの程度がコンバージョンに至ったかを示す割合のことです。CVRは「コンバージョン数÷アクセス数×100」で求めます。CVRは高ければ高いほど、より効率的に成果(コンバージョン)を上げていることを意味します。CVRを計測することで、ディスプレイ広告のパフォーマンスを可視化することができるのです。
コンバージョン単価(CPA)
ディスプレイ広告におけるコンバージョン単価(以下、CPA)とは、コンバージョン1件を獲得するにあたって要した広告費のことです。CPAは「広告費÷コンバージョン数」で算出でき、費用対効果を把握することができます。
たとえば、決済サービス(1万円)の購入をコンバージョンに据えた、以下のケースを見てみましょう。
- 広告費:100万円
- コンバージョン数:200件
※コンバージョン=ユーザーが決済サービスを購入する
このとき、CPAは5000円(広告費用:100万円÷コンバージョン数:200件)となり、1万円の売上を挙げるために5000円の広告費がかかったことを意味しています。このようにCPAを把握することで、ディスプレイ広告の費用対効果を可視化することができるのです。
クリック率(CTR)
ディスプレイ広告におけるクリック率(以下、CTR)とは、広告の表示回数に対してどの程度広告がクリックされたかの割合です。CTRは「クリック数÷表示回数」で求めます。
CTRが高いということは、広告をクリックしたユーザーの割合が高く、ユーザーの興味を引きやすい効果的なディスプレイ広告を表示できているといえます。
インプレッション単価(CPM)
インプレッション単価(以下、CPM)とは、広告を1,000回表示させるたびにかかる費用のことです。CPMは「広告費÷広告の表示回数×1,000」で算出できます。
たとえば、広告費が20万円、ディスプレイ広告の表示回数が100万回の場合、CPMは200円(広告費:20万円÷広告の表示回数:100万回×1,000)になります。そのため、同じインプレッション数であっても、CPMが低い方が、広告費を抑えて広告配信をできていると判断できます。
ディスプレイ広告を改善する7つのポイント
ディスプレイ広告の効果を図る指標について解説しましたが、次に、ディスプレイ広告を改善する7つのポイントを見ていきましょう。
1. 入札単価と予算の調整
入札単価とは、広告のクリック1回に対して支払える上限額のことを指し、出稿時に設定します。たとえば、入札単価を100円に設定した場合、クリック単価は最大でも100円となり、競合が少なければそれ以下になります。
<入札単価を求める計算式>
目標コンバージョン単価(CPA)×想定コンバージョン率(CVR)
広告の掲載順位は入札単価や広告の品質を踏まえて決定されるため、基本的には入札単価は高ければ高いほど、広告が表示される可能性は高くなります。
しかし、入札単価を高く設定すると予算オーバーしてしまい、インプレッション数(表示回数)が少なくなってしまうケースがあります。そこで、相場に応じた入札単価の調整が必要となります。入札単価の相場はキーワード プランナーやYahoo!広告の広告管理ツールで確認が可能です。予算と求める効果のバランスを取り、単価を調整してみましょう。
なお、入札単価の設定が難しいという方に便利なのが、自動で入札単価を設定してくれる自動入札機能です。同機能の活用も併せて検討してみましょう。
2. ターゲティングを見直す
ディスプレイ広告の効果を向上させるためには、適切なターゲット層に広告を表示させる必要があります。ターゲティングを間違えてしまうと、いくらいい広告を掲出していても、ターゲットに届かず、十分な広告効果を上げることができないのです。なお、ターゲット層の変更はクリエイティブや予算などの変更を伴う可能性があるため、十分な分析・検討をすることが大切です。
3. 自動入札機能を導入する
自動入札機能とは広告掲載の目的などに応じて、入札単価を自動で設定してくれる機能のことを指します。同機能は成果・状況に応じて入札単価の調整を行ってくれるため、効率よく広告を表示させることができます。そのほか、同機能を使えばキーワードごとに発生する、入札単価設定作業の手間を省くことも可能です。
4. クリエイティブの改善
クリエイティブとは、広告のバナーや画像、LP、動画など広告素材のすべてを指します。どのようなメッセージを盛り込むか、どのような写真、イラストを表示するかなどで広告効果は大きく変動するため、クリエイティブの最適化を目指すことで広告効果の改善が期待できます。
一方で、クリエイティブがいきなり100点を出せることはあまりありません。そのため、複数のクリエイティブを作成して、ABテストを繰り返しながら、より成果の出るクリエイティブを採用することが大切です。
5. リターゲティングを活用する
ディスプレイ広告には「リターゲティング」という、過去自社ページに訪問したもののコンバージョンまでは至らなかったユーザーを対象に広告を配信する機能があります。
リターゲティングを活用することで、すでに自社ページに訪問したことのある、少なくとも一度は自社ページに興味を示したユーザーに広告を訴求できるため、コンバージョン率の向上を見込むことができます。
リターゲティングと併せて活用を検討したいのが「類似ユーザー」という機能です。同機能を使えば、リターゲティングリスト※をもとに、リストのユーザーと似た、自社に関心を寄せやすいユーザーへ広告を配信することができます。
※リターゲティングリスト:自社サイトに訪問したユーザーのリスト
6. ユーザーインサイトを明確化して配信を行う
ユーザーインサイトとは、ユーザー自身も気付いていない潜在意識・本音のこと。たとえば、とあるユーザーがディスプレイ広告をクリック後にLPで資料請求をした場合、「何に惹かれて広告をクリックしたのか」「何を求めて資料を請求したのか」といったなんとなくの行動に潜むユーザーの心理を探ることが大切です。
ユーザーが本当に求めていることを可視化(=ユーザーインサイトの明確化)することで、ユーザーの心に訴求する広告を配信することができます。そのため、ユーザーインサイトについて、担当者はディスプレイ広告配信前によく分析しておくことが大切です。
<ユーザーインサイトを明確にする方法>
- インタビューやアンケートなどで生の声を集める
- ページ滞在時間や閲覧ページ数など各種指標を用いて解析する
- ヒートマップで分析する
7. 効果的な配信に絞る
成果の上がらない広告配信は止め(もしくは表示回数を少なくして)、効果が上がっている広告に集中して配信するのもポイントです。クリック率やコンバージョン率などを確認し、効果の高いディスプレイ広告に予算を投じた方が、費用対効果が高くなるためです。
なお、効果的な広告配信に絞る際に活用できるディスプレイ広告の機能が「プレースメントターゲティング」です。同機能を使えば、広告の配信先を広告内容と親和性の高いサイトや動画に絞ることができます。同機能も活用して、効率的に広告を配信しましょう。
クリエイティブ改善の確認ポイント
ディスプレイ広告の効果を向上させるために大切なのが「クリエイティブの改善」です。ここではクリエイティブを改善するために確認すべき2つのポイントを解説します。
ターゲットに合わせたクリエイティブを用意できているか
現在運用しているディスプレイ広告のクリエイティブはターゲットに適切なコピー・グラフィックになっているのか、よく確認しましょう。たとえば、言葉遣いやグラフィックはターゲットの嗜好に沿っているのか、コンテンツの内容はターゲットのニーズを満たしているのかなどの検討が必要です。
効果が上がるコンテンツ/クリエイティブを作るには、ターゲットへの深い洞察が欠かせません。そのためには、ターゲットペルソナの設定、購買プロセスに基づいたターゲットインサイトの考察が不可欠です。
LPが適切な設計になっているか
LPとは広告をクリックした際に、最初に表示されるページのことです。LPはホームページとは異なり1ページで完結し、資料請求や購入手続きなどをユーザーに促す構成になっています。
LPはユーザーが広告をクリックして最初に訪れるページだからこそ、ユーザーのニーズに応えていなければすぐに離脱されてしまいます。そのため、「ユーザーに伝えるべき情報の順番はこれで合っているのか」「必要以上にエントリーフォーム入力の負担をかけていないか」「広告バナーとLPの内容にズレがないか」など、LP全体の設計を見直すことが大切です。
ディスプレイ広告をもっと効果的に運用するには
最後に、ディスプレイ広告を効果的に運用するには、テクニックだけではなく、目的や目標に立ち返ることも必要です。2つのポイントに絞って解説します。
広告配信の目的を明確化
ディスプレイ広告を配信する前に、広告を配信する目的を明確にしておきましょう。これは目的によって重視すべき指標やクリエイティブなどが異なるためです。
<広告配信の目的例>
- 商品・サービスの認知拡大
- 見込み顧客(リード)の獲得
- 資料請求数の増加
目的を設定しなければ、何を基準にどのようにディスプレイ広告の効果を測定すればよいのかが分からなくなります。広告配信の目的はしっかり言語化し、チーム内で共有するようにしましょう。
目的に応じてKPIを変える
「KPI(Key Performance Indicator)」とは重要業績評価指標と訳され、最終的な目標を達成するために設定する「中間目標」を指します。
KPIには「ディスプレイ広告の確認すべき指標」で示した指標を用いることがほとんどです。ここでポイントとなるのが、どの指標をKPIとするかです。これは顧客がどの購買プロセスにいると想定するかで変わってきます。
たとえば、すでに具体的な情報収集をしており複数のサービスや商品を比較検討している段階のユーザーならば、具体的な商品購入や資料請求に至るコンバージョン率(CVR)をKPIに設定するケースが考えられます。一方、新しく発売予定で認知度がほとんどない商品を、まだゆるく情報収集しているユーザーに対してアピールするならば、インプレッション数やインプレッション単価をKPIとすることも考えられます。