ディスプレイ広告とは?掲載箇所やメリットデメリットを初心者でも分かりやすいように解説
ディスプレイ広告は、リスティング広告と並んで、Web上での広告活動において欠かすことができないものです。本記事では、そもそもディスプレイ広告とは何なのか、Googleディスプレイネットワーク(以下、GDN)とYahoo! 広告 ディスプレイ広告(以下、YDA)の2大アドネットワークの違い、運用担当者が押さえておきたいポイントなどを解説していきます。
ディスプレイ広告とは
ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリの広告枠に画像や動画で表示される広告のことです。キャッチコピーと画像を使ったバナーや、CMのような短尺動画で商材をアピールします。特徴は次のとおりです。
運用型広告なので表示場所や期間が流動的
ディスプレイ広告のポイントは、「運用型広告である」という点です。純広告は広告掲載をするサイトとサイト内の場所、契約期間などをあらかじめ定めて契約します。広告を掲載するサイトそれぞれと契約をする必要があり、その期間や価格について、流動性は少ないです。
しかし、運用型広告では、掲載するサイト、枠、掲載期間、掲出する時間帯やエリア、デバイス(パソコンやスマートフォンなど)、掲載料金まで、その都度調整して運用いくことができます。そのため、狙ったターゲットにリーチしやすい、予算調整がしやすく費用対効果を高めやすいといった特徴があります。
ターゲット層をキーワード設定で絞れる
ディスプレイ広告は、特定のキーワードを設定して、そのキーワードに関連性が高いサイト、あるいはそのキーワードでの検索履歴があるユーザーに対して、広告を掲出できます。また、そのキーワードは出稿側が設定できるため、自社商品や自社サービスに近しいキーワードで広告配信が可能になり、親和性の高いユーザーにリーチしやすくなります。
クリック課金制で予算上限も設定できる
ディスプレイ広告の料金は、広告が表示されただけでは料金は発生せず、ユーザーが広告をクリックしてはじめて料金が発生します。
このクリック単価はオークション制で決まります。ほかの広告主と同じキーワードで出稿した場合、設定した入札単価が高いほうが優先的に広告掲出されます。つまり、競合が多い商品やサービスではクリック単価が高騰し、広告費用が高くなってしまうことになります。
ただし、1日あたり、あるいは1ヶ月間という期間を定めて、期間内の広告予算の上限を設定できます。もしクリック数が増えたとき、あるいはクリック単価が上がりすぎたときでも、その予算の上限になれば広告の配信を停止することができます。予算のコントロールがしやすいといえるでしょう。
ディスプレイ広告とリスティング広告の違い
ディスプレイ広告と並ぶWeb広告のもう一つの柱がリスティング広告です。その違いを簡単な一覧表にまとめました。
ディスプレイ広告 | リスティング広告 | |
---|---|---|
表示場所 | Webサイト、アプリの広告枠 | 検索結果画面 |
ターゲット層 | 潜在層が増える傾向 | 顕在層がほとんど |
ターゲット数 | 多い | 絞られている |
表示形式 | テキスト+画像/動画 | 主にテキスト |
クリック単価 | 総合的に見て安価 | ディスプレイ広告よりも高価 |
クリック率 | 低め | 高め |
2つの広告の最大の違いは広告が表示される場所が異なることです。
検索結果画面に表示されるリスティング広告は、それだけ「関連キーワードで検索している=課題が顕在化しており、購買に近い行動を取っている」、いわゆるホットなユーザーです。それゆえにユーザー数は絞られますが、逆にクリック率は高めになります。そのため、クリック単価も高く設定されがちです。
一方、ディスプレイ広告では、広告を掲出する条件としてサイトやユーザーの行動履歴(直近の検索履歴など)を設定できますが、検索というアクションを起こしているユーザーにリーチするリスティング広告と異なり、課題がまだ潜在的な段階にとどまっていると想定されます。それだけリーチできるユーザー数は多いのですが、反面、クリック率は下がり、クリック単価も低くなる傾向にあります。
ポイントは、それぞれ特徴が異なるだけで優劣ではないことです。それを見極めて、自社のマーケティング戦略に応じて、どちらの広告がよいのか、どう使い分けていくのかを考える必要があります。
ディスプレイ広告のメリット
ディスプレイ広告にはいくつものメリットがあります。動画や画像を使用できること、潜在顧客へのアピールができることなど、その代表的なものを解説していきます。
テキストだけではなく、動画・画像で訴求できる
ディスプレイ広告は画像や動画、テキスト形式で表示されます。画像や動画を使用することで、テキストだけでは伝えられない情報を瞬時に伝えることができます。また、キャッチーな画像の使用で潜在層へアプローチできる可能性もあります。
潜在顧客へリーチができる
ディスプレイ広告は、「その商品やサービスに関心があると推察されるユーザー」に対して広告が配信されます。類似したキーワードで検索している、関連したWebページを閲覧しているといったユーザーに絞った掲出が可能です。また、想定ターゲット層が多く閲覧していると考えられるサイトに広告を掲載することも可能です。
前述したとおり、ニーズが顕在化しているユーザーだけではなく、潜在顧客までリーチすることが可能です。単純に広告がターゲットとする顧客の母数が増加するだけにとどまらず、認知度を向上させることによる長期的な効果も期待できます。新規の製品やサービスなど、まだ世の中に知られていないものについては、潜在層へのアピールが欠かせないため、ディスプレイ広告は効果的だといえるでしょう。
リターゲティングが可能
ユーザーが広告をクリックしたあと、そのままコンバージョン(購入や資料請求、会員登録など、遷移先サイトでの具体的な行動)をせず、サイトから離脱してしまうことは珍しくありません。リターゲティングでは、「一度特定のサイトを訪問した履歴があるユーザー」に対して、広告を掲出することができます。
ユーザーがコンバージョンしなかった理由は、さまざまです。たまたま時間がなかった、誰かに話しかけられた、ほんの少し気がのらなかったなど、Webサイトや商品、サービスに関係がない理由での離脱も少なくありません。そういったユーザーに対して、改めてアプローチできることは大きなメリットです。
ディスプレイ広告のデメリット
ディスプレイ広告にもデメリットはあります。大きなポイントとしては、コンバージョン率に関するものが挙げられるでしょう。
クリック率は低いため、コンバージョンにつなげる工夫が必要
ディスプレイ広告は、リスティング広告と比較して、顕在顧客だけではなくその商品やサービスの潜在顧客に対して配信されることになります。そのためクリック率が低くなる傾向があります。
リスティング広告に比べてディスプレイ広告のほうが表示回数(インプレッション)は増えます。それに対してクリック率は、母数が大きいため、低めに出ることも多いのです。
そこで表示するメッセージ、画像について、ABテストの実施などを通じて、より効果的なものに改善を続けていく必要があります。そうすることで、クリック率は低くても、クリックしたユーザーの購買率は高いといった状況への改善も望めます。
「ディスプレイ広告のクリック率が悪い」ことをデメリットとして挙げることは簡単ですが、それにとどまらず、「どうすれば改善できるか」を考えていくことのほうが重要です。
ディスプレイ広告におけるGDNとYDAとの違い
ディスプレイ広告は大きくわけて、Googleの「GDN」とYahoo!の「YDA」という2大アドネットワークを通じて広告を出すことになります。それぞれで掲載条件や内容が異なります。
GDNによるGoogleのディスプレイ広告
GDNとは、Googleディスプレイネットワークの略です。Googleが管理しているサイトの数は200万以上にのぼり、インターネットユーザーの90%近くにリーチすることが可能だといわれています。Googleの関連サービス「YouTube」や「Gmail」「価格.com」などのほか、アメーバブログなどの個人ブログにも広告を配信できます。
YDAによるYahoo!のディスプレイ広告
YDA(旧YDN)とは、Yahoo!ディスプレイ広告の略です。以前は「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク」(YDN)という名前で提供されていたYahoo!のディスプレイ広告ですが、2020年からYDA(Yahoo!ディスプレイ広告)に変更されています。
このYDAはYahoo!が運営しているWebサイトやアプリに広告を配信することができます。月間の総PV(ページビュー)は約830億、アクティブユーザー数は約8,500万人となっており、Yahoo!知恵袋やクックパッド、NAVERなど、Yahoo!の提携サイトにも広告が配信されます。
ディスプレイ広告の費用
ディスプレイ広告に出稿する場合、YDAでもGDNでも初期費用はかかりません。広告の運用費については、一般的に月額で10~50万円程度というケースが多いようです。もちろん、もっとかけることも少額に抑えることも可能です。特徴的なポイントとしては、月額の予算をあらかじめ決定しておくことで、大幅な予算オーバーを避けることができるという「運用の利便性の高さ」が挙げられます。
一方、クリックあたりの単価は大きく変動します。GDNにしてもYDAにしても、最低出稿金額は設定されていません。1クリック10円というケースもあれば、500円、あるいはそれ以上ということもあり得るのです。
これはサービスや製品の単価、市場の状況(競合の数や強さ、認知度など)、複数の要因で大きく変動します。またクリック単価が安い場合、そもそも広告掲出の機会が少なく(インプレッションが少ない)、広告効果が望めないケースもあります。誰もが見るサイト、誰もが検索しているキーワードなどでの掲出を設定していると競合も多く、結果的にクリック単価は上がっていきます。
適切なクリック単価、月間の予算は、これらさまざまな状況を精査して、探っていく必要があります。
ディスプレイ広告を出稿する場合のポイント
ディスプレイ広告に出稿する場合、ただGDNやYDAに登録してはじめればいいというものではありません。明確な目的を持つこと、ペルソナの設定、メッセージの策定など、取り組むべきポイントはいくつもあります。
広告を配信する目的を明確にする
ほかのWeb広告でも同様のことですが、まずはディスプレイ広告を配信する目的を明確にすることが重要です。ディスプレイ広告では、いわゆる四大メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)と異なり、掲載先のWebサイト、掲載するユーザーの特性(年齢、性別、地域、検索キーワードなど)で広告の掲出をコントロールできます。そのため、ブランディング、サイト誘導、訴求対象、コンバージョンなどの目的によって、ターゲットを細かくわけることで、より高い効果を望むことができるのです。
また、ディスプレイ広告をはじめたあとも、改善を繰り返していくことが必要です。思うような効果が得られない場合、ターゲットの見直し、クリエイティブの見直しといった改善施策を継続していくことになります。
ペルソナに応じた配信を行う
マーケティングにおいてはターゲットのペルソナを設定しているケースがほとんどです。広告の運用においても、ペルソナに合わせた動画や画像などのクリエイティブを制作するだけではなく、メディアの選定、ターゲットのセグメンテーションにおいて、ペルソナは活用されます。
ディスプレイ広告では、GDN、YDAのそれぞれで、ペルソナに応じてセグメントをわける詳細な広告掲出の設定が可能です。
ユーザーが行動しやすいメッセージを入れる
製品の画像やサービスの紹介テキストなどを、ただ「見てもらう」のではなく、クリックなどのユーザー行動を促すために、「CTA(=Call To Action、行動喚起)」という要素を入れましょう。たとえば「いますぐクリック」「詳しくはこちらに」「いまなら、無料で資料を提供」などと「クリックするメリット」「行動する理由」を明確に提示する必要があります。
もう一点、クリックした先のページ(ECサイト、LP、商品紹介ページなど)にも、明確なCTAを用意する必要があります。たとえば、資料請求の申込フォーム、購買画面、次に見てもらいたいコンテンツへの誘導などです。
クリエイティブの改善を検討する
掲載される広告のテキストや画像、いわゆるクリエイティブですが、手を抜いていたり、効果が出ないものを使い続けたりしていても効果は望めません。
現在では、簡易な画像作成、編集ツールが数多く存在し、手軽に広告画像を作ることができます。テレビCMや新聞、雑誌の広告のような予算をかけない場合や、プロのコピーライター、カメラマンなどに依頼しないにせよ、「成果の出るクリエイティブ」を考え抜く必要があります。
そのメッセージはついクリックしたくなるものかどうか、適切な画像を使用しているかどうかなど、ペルソナを意識して考えましょう。画像や動画とテキストの組み合わせやサイズを変えるだけでも、効果が変わる可能性があります。ABテストを繰り返して、最適解を求めることが重要です。
PDCAを回す
ディスプレイ広告の運用は、常に効果測定を行い、改善策を実行し続け、PDCAを回し続ける必要があります。
ディスプレイ広告でPDCAを回すには、まず「期待する成果」を設定します。売上額なのか、獲得顧客数なのか、それとも会員登録数なのか、それぞれのサービスや製品によってそれは異なります。次にその成果を実現するためのプランとして、「ターゲット」「表示するサイト」「インプレッション回数」「総コスト」などの数値(KPI)が、どのような数字に達していれば、期待する成果が得られるのかを試算。それを実現する広告内容、表示プランを作成し、実行します。ここまでがPlan(P=計画)とDo(D=実行)です。
広告出稿をはじめたら、次はその成果を計測するCheck(C=測定・評価)が必要です。期待する成果を得られたのか、それをKPIごとに確認していきます。期待に達していない数値があればその理由を仮説化していきます。その課題解決のための改善施策実施が、最後のAction(A=対策・改善)です。このようにして、継続的にPDCAを回して行くことが重要となります。