レスポンシブ検索広告とは?運用方法とメリットデメリット
インターネット広告を運用する際によく耳にする言葉として「レスポンシブ」という言葉があります。Webサイトにおける「レスポンシブ対応」とは、パソコンでの閲覧、スマートフォンでの閲覧の両方に、自動的に最適化対応することを指します。広告における「レスポンシブ」も基本的な考え方は同じです。
しかし、そのなかで少し意味合いが異なるレスポンシブ広告があります。それが「レスポンシブ検索広告」です。
本記事では、レスポンシブ広告とレスポンシブ検索広告の違いや、レスポンシブ検索広告のメリットデメリット、運用の注意ポイントなどについて詳しく解説していきます。
レスポンシブ広告とは
レスポンシブ広告とは、パソコンやスマートフォンなど、さまざまなデバイスに自動対応するインターネット広告形態の一つです。
現在、多くのWebサイトは、様々なデバイスでの閲覧に最適化されています。そこで掲載される広告も同様に最適化される必要があり、それを実現しているのがレスポンシブ広告です。レスポンシブ広告でないと、あるWebサイトに広告を掲載する場合、パソコンでの閲覧時に対応したフォーマット、スマートフォンでの閲覧に適したフォーマットなど、複数のフォーマットの広告を用意する必要があります。そればかりではありません。パソコンの場合はディスプレイのサイズ、ブラウザのウインドウサイズに応じて、最適化される広告フォーマットは変わります。
しかし、レスポンシブ広告ではあらかじめ、「見出し」「画像」「説明文」といった広告の要素を作成し入稿しておくと、表示されるたびに、そのデバイスやディスプレイサイズに応じて最適化された形で自動的に広告が生成され、表示されることになります。
レスポンシブ広告とレスポンシブ検索広告の違い
ここまで解説してきたレスポンシブ広告は、実は「レスポンシブディスプレイ広告」と呼ばれるものです。いわゆる「ディスプレイ広告」のレスポンシブ版といえます。
実はレスポンシブ広告はもう一種類存在します。それが「レスポンシブ検索広告」です。こちらは通常のリスティング広告のレスポンシブ版です。リスティング広告はテキストだけで構成されるため、デバイスなどの違いで表示される内容に変化が生じることはありません。では、何が「レスポンシブ」なのでしょうか。
それは「見出し」と「説明文」の組み合わせです。「レスポンシブ検索広告」では、最大15種類の見出し、4種類の説明文を登録しておくと、 Yahoo! ディスプレイ広告 (以下、YDA)、 Googleディスプレイネットワーク (以下、GDN)、ともにそのなかから3つの見出し、2つの説明文を選択して、自動的に組み合わせて配信していきます。そして、その成果(クリック率)を機械学習し、「最適と思われる見出しと説明文の組み合わせ」を配信していくようになるのです。
レスポンシブディスプレイ広告は、表示するデバイスやブラウザに対して最適化するのに対して、レスポンシブ検索広告は表示内容を最適化していくと考えていいでしょう。
レスポンシブ検索広告と拡張テキスト広告の違い
従来のリスティング広告では、表示される見出しと説明文をあらかじめ複数用意して、どれを表示させるか、手動で設定していました。いわゆる「拡張テキスト広告(YDAでは、拡大テキスト広告と呼ばれていました)※」です。
なぜ、複数の見出しと説明文を入稿していくかというと、表示されるサイトの特性、時間帯やエリア、ユーザーセグメントに応じて、それに合った見出しとテキストを表示させるためです。
ここで問題が生じます。「そのサイトに」「その時間帯やエリアに」「ユーザーセグメントに」、どの見出しと説明文の組み合わせがあっているかどうかはわからないということです。そこで、A/Bテストなどを繰り返して、最適解を求め続けるのですが、これがなかなか手間がかかる工程です。それを自動化しているのがレスポンシブ検索広告なのです。
※2020年6月以降、GDNでは拡張テキスト広告の新規作成、編集はできなくなっています。YDAでも2022年9月28日以降、拡大テキスト広告の入稿は停止されています。
レスポンシブ検索広告と動的検索広告(DSA)の違い
レスポンシブ検索広告と似たものに「動的検索広告(DSA)」があります。DSAはGDNで使用できる広告サービスです。自動的に見出しと説明文を生成して、リスティング広告を出稿できるものです。
レスポンシブ検索広告 | 動的検索広告(DSA) | |
---|---|---|
見出しと説明文 | あらかじめ広告主が登録する | 登録は不要。登録したページを参照して、自動的に見出しと説明文が生成される |
遷移先 | 広告主が設定する | 登録したサイト内のページを自動的に設定する |
広告表示対象 | 広告主が設定した検索キーワード | 登録サイトの内容に応じて、自動的に選定 |
大きな違いは上記のとおりです。DSAでは、「顧客を誘引したいサイト」を登録するだけで、自動的に「どの検索キーワード」に対して、「どのような見出し+説明文」で広告を出すかを選定していきます。広告主がすることは、「このサイトに誘引したい」と登録するだけです。
レスポンシブ検索広告では、広告主が見出しと説明文を用意し、検索キーワードの設定も行います。DSAの方がより自動化されていますが、想定していない広告が掲出されるリスクもあります。
自動化を導入しつつも広告主の意図を反映させやすいのがレスポンシブ検索広告、徹底的に自動化して広告主の手間を省くのがDSAと考えることができます。
レスポンシブ検索広告のメリット
レスポンシブ検索広告には、数多くのメリットがあります。その特徴である、「見出しと説明文を自動的に組み合わせる」「視認性が高いように最適化される」に加えて、その効果といえる「オークションでの競争力が高まる」「CTR (Click Through Rate) が高まる」、この4つが代表的なメリットです。
見出しと説明文を自動的に組み合わせてくれる
検索広告(リスティング広告)は、見出しと説明文だけで構成される、シンプルな広告です。それだけに、そのテキストは効果を左右する非常に重要な要素になります。だからこそ、効果測定を行い、時にはA/Bテストなども実施して、効果の最大化を求め続けることになります。
これには相当な手間ひまがかかります。社内で運用する場合など、それだけの人的リソースが確保しきれないケースも想定されるでしょう。しかし、レスポンシブ検索広告ならば、広告が掲載されるキーワード、検索したユーザーのセグメントなどに応じて、最適とされる見出しと説明文の組み合わせを自動生成してくれます。
視認性が高いように最適化される
ユーザーがスマートフォンで検索したのか、それともPCで検索したのかによって、表示される文字数には大きく違いが出てきます。使用しているデバイスによって、見出しと説明文を調整し、限られた画面上で最も適していると思われる広告が表示されます。PC上でのブラウザの画面サイズも認識して、調整しています。
この機能により、PCでの表示は適切でも、スマートフォンでは表示が不適切で伝わらないという問題を回避できます。
オークションでの競争力が高まる
リスティング広告では、最終的に掲載されるかどうか、どの順番で掲載されるかは、「広告ランク(オークションランク)」で決定します。
広告ランクは「上限クリック単価×広告の品質+広告表示オプション+広告フォーマット」で決まります。このなかにある「広告の品質」ですが、これはどれだけ「検索キーワード」に対して適切な広告なのかで判断されます。これを「広告の関連性」と呼びます。いくら検索ボリュームが大きいからといって、製品やサービスと無関係なキーワードで出稿すると、「広告の品質」が低く評価され、広告が掲載されにくくなる可能性があります。
レスポンシブ検索広告では、広告を掲出したいキーワードに対して、関連性が高いと想定される見出し+説明文を自動的に掲出します。そのため、「広告の関連性が高まる」傾向にあるのです。結果的に広告ランクが上昇し、広告の表示回数も増えていくことになります。
CTRが高まる
これはこれまでの3つの特徴による成果ともいえるのですが、レスポンシブ検索広告はCTRが高い傾向にあります。より効果的な見出し+説明文の組み合わせが、視認性が高く効果的に表示されるため、ユーザーにとってマッチした広告が表示されていることにつながります。その結果、CTRが向上するのです。加えて、広告の表示機会も増えるので、総合的な広告効果の向上が期待できます。
レスポンシブ検索広告のデメリットと注意点
ここまで読んでいただくと、レスポンシブ検索広告に悪い点はなさそうに思えますが、そうとも言い切れません。デメリット、また注意するべき点もいくつか存在します。本項では、3つのポイントで解説していきます。
表示回数以外の情報が得られない
大きなデメリットが、「どのような見出し+説明文の組み合わせで」「どの検索キーワードに対して」表示されたのか、という情報が得られないことです。広告主が明確に得られる情報は「表示回数」だけになります。
そこからのクリック数、クリック率はもちろん把握できます。しかし、ユーザーがどの見出しに反応したのか、どの説明文がユーザーに届いているのかといった情報がほとんど得られないことになります。
これは他の広告を作成する際の知見になり得ないということになります。社内に情報が得られず、知見がたまっていかないという点は大きなデメリットだといえます。
意図しない見出し+説明文が表示される可能性がある
レスポンシブ検索広告では、広告主が登録した見出しと説明文から自動的に、最適と考えられるものが組み合わせられて、広告として表示されます。あくまでも「最適と考えられる組み合わせ」であり、場合によっては、適切ではない、または広告主が想定しない見出しと説明文が表示されてしまう可能性は否定できません。
そのため、Googleの公式ページでは「どのような見出しと説明文の組み合わせでも、意味が通るように」「Googleの広告ポリシーに合致するように」、見出しと説明文を登録するように、注意を促しています。
広告の審査に落ちやすい
レスポンシブ検索広告では、最大で15種類の見出し、4種類の説明文を登録できます。そのすべてが広告審査の対象になるのは当然ですが、それぞれで「似通った文言」「同じキーワード」が頻出していると、広告審査に落ちやすくなります。
それであれば違う言い回し、キーワードを使えばよいのですが、ユーザーにわかりやすい、効果がありそうな言葉は限られています。この15種類の見出しと4種類の説明文を作成することは非常に困難です。
レスポンシブ検索広告の運用ポイント
レスポンシブ検索広告を運用し、成果を出していくにはいくつかの運用上のポイントがあります。従来のリスティング広告とは異なるポイントを中心にいくつか解説していきます。
多くの見出し、説明文を作成する
レスポンシブ検索広告では、すでに解説したように、最大15種類の見出し、4種類の説明文を登録することができます。登録された内容が多ければ多いほど、検索キーワードやユーザーセグメントに適した見出し+説明文の組み合わせが表示される確率が上がります。少なくとも5種類以上の効果的な見出しを用意することが推奨されています。
しかし、多くの見出し、説明文を作るのは容易ではありません。しかも、すでに述べたとおり、似たような見出し、キーワードが多いと広告審査に落ちやすくなってしまいます。そこでできるだけバリエーションを増やしていくことになるのですが、今度は「見出しと説明文の整合性が取れない」可能性が出てきます。
これはなかなか難易度が高い作業です。地道に調整を加えながら、見出しと説明文を作成し、修正していくことになります。
他の広告と併用していく
レスポンシブ検索広告は、従来のリスティング広告と比較して「手間の削減」と「効果の拡大」を狙える、魅力的な広告出稿手段です。しかし、デメリットの項で説明したとおり、効果検証や広告内容のコントロールには困難を伴います。そこで、従来型のリスティング広告と組み合わせて利用し、リスクを軽減することが重要です。
また、一つの広告グループ内で設定するレスポンシブ検索広告は一つに留めておくことが望ましいでしょう。2つ以上のレスポンシブ検索広告を同じ広告グループに設定すると効果検証や最適化に時間がかかるといったデメリットが生じます。
遷移先のサイトの内容も吟味する
これはレスポンシブ検索広告に限りませんが、遷移先のサイトのクリエイティブも吟味しなければなりません。特に、レスポンシブ検索広告の場合、どのような見出し+説明文が表示されているか、広告主からはわかりません。
そのため、「どの組み合わせの広告を見ても」違和感がないサイトでなければなりません。これは地道にA/Bテストを実施するなどをして、LPO(ランディングページ最適化)を行っていく必要があります。
学習期間を加味する
レスポンシブ検索広告では、自動的に「見出しと説明文」を検索キーワード、ユーザーセグメントなどに対して最適化していきます。それは機械学習によって行われるため、掲載開始当初は、まだ学習されていないということになります。しばらくの間、クリック率などを学習していくことで、最適な組み合わせが表示できるようになるのです。
一般的にその学習期間は一ヶ月程度とされています。言い換えれば、当初の一ヶ月は、効果があまり見込めない可能性があるということです。レスポンシブ検索広告を開始した最初の一ヶ月はあまり効果を期待せず、二ヶ月目以降の変化を注視することがポイントです。また、長い期間、運用するほど学習効果は高まるはずですが、一定期間をすぎると効果が下がり始めることもありえます。その場合は、見出しや説明文の入れ替え、遷移先サイトの見直しなどの施策を考える必要が出てくるでしょう。