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そのときやれることを追求していかなきゃつまらない。 自分らしさを表現することにこだわっていきたい。BEAVER BREAD 割田健一(わりたけんいち)

BEAVER BREADと割田さん

2017年11月21日。普段人通りが少ない問屋街、東日本橋の一角に、あたりではめずらしい行列ができていた。その日は、ビゴの店、ブーランジェリーレカンのシェフとして、パン業界で名を馳せてきた割田健一さんが手がけるBEAVER BREADの開店初日。
「準備が慌ただしく、マスコミにも、パン好きの人たちにも、何も伝えないままオープン日を迎えました。広報していないにも関わらずお越しくださったのは、ほとんど近所に住む人たちです」。
たくさんのお客様が初日から来店。その日から2年以上が経過する2020年2月の今も、変わることなくBEAVER BREADは行列の途絶えないパン屋さんとして、繁盛を続けている。なぜBEAVER BREADのパンは人気を集めるのか。割田さんにこれまでの経験や、お店づくりの考え方について話を聞いた。

ジャン=ミッシェル・バスキアに憧れて

学生時代、勉強は好きじゃなかったですね。バイトしたり友達と遊んだり、本当に自由に生きていました。進路のことも真剣に考えてなかった。

でもあるとき、ジャン=ミッシェル・バスキアの圧倒的にオリジナリティのある絵と生き方を知り、雷に打たれたような衝撃を受けたんです。美術はずっと好きだったし、僕も美大受験でも目指そうかなと。でも目的がちょっと曖昧だし、そんなに簡単な話じゃないですよね。先生にも「ちゃんと考えているのか!」と怒られるし、母親からは「一浪して大学に行けば」と言われてしまい「さてどうしよう?」と考え込んでしまった。

想像したんです。壁に目標を貼って、頭にはちまき巻いて、必死に勉強している自分の姿を。「あ、これは違うな」と直感的に思いました。

割田健一さん

自分で考えて、自分から行動を起こす

僕が高校に入学した1993年は、ちょうどJリーグ開幕の初年度にあたるのですが、ブラジルから三浦知良選手が帰国して大活躍していました。海外で一旗揚げて、認められて日本に帰ってくる。「こういう生き方もあるんだ」ということが、なんとなく頭の片隅にありました。僕にもまず海外で働いてみるという選択肢があるんじゃないか。そう思い、前に近所に住んでいて、スイスで外交官をしている方に、働く場所を紹介してもらおうと、手紙を書くことにしました。

さて、どうやってお願いをしようか、と内容を考えていたとき、なぜかパンが頭に閃いたんです。パン職人をやる。いいかもしれない。手紙を出してしばらくすると返事がきました。書かれていたことは、「労働ビザを取るのは難しい。まずは東京で働いてみたら」と。まあ、そうですよね。すぐにうまくいくわけない。

それで、働く場所を考えはじめました。この頃からずっと、自分のスタイルは変わらないですね。自分で考えて、まず行動する。うまくいかなければすぐ次を考える。そうやって道を切り拓いてきました。

割田健一さん(寄り)

まずは真っ当な社会人になることから

人づてに相談して働く場所を決めました。プランタン銀座のビゴの店。自分でお店に電話をかけて面接をしてもらい、働かせてもらうことになりました。

最初はどんなパン職人になりたいとか、そんなことは考えていなかったですね。とにかく真っ当な社会人として、まずはお店で役に立つ人間にならないといけないと思っていた。未経験なのは自分だけ。まわりにいるのは専門学校の卒業生や、パン屋の経験者ばかりです。返事をするときははっきりハイ! と言おう。呼ばれたらすぐに駆けつけよう。掃除は誰よりキレイにやろう。困っている人がいたら助けよう。そんなことを意識しながら、とにかく必死に働きました。

でも、日々の忙しさに追われ技術もあがらず、「僕は不器用だし、パン屋に向いていないんだ」。そんなことを考えてしまうようになりました。

がんばる姿はきっと誰かが見ている

でもあるとき、上司に近くの駐車場に連れて行かれて言われたんです。「お前がいつもがんばってきたことは見ている。つらい気持ちもわかるけど、まずは続けてみたらどうだ」と。ちゃんと自分を見ている人がいる。そこで仕事に対するスイッチが切り替わりました。

とにかくがむしゃらにやっていくしかないんだと。パンづくりって、急激にうまくなるものじゃないんです。日々の積み重ねで技術を磨いていくしかない。でも努力の方向を間違えなければ、着実にできるようになっていく。やがてシェフとなり、2007年にはパンの世界大会であるモンディアル・デュ・パンに日本代表として選出されるまでになりました。

どうすればもっとパンを売れるだろう

ビゴの店には14年いました。パン職人としての技術を磨きながら、同時に力を入れていたのはどうやって売上アップしていくかという販売戦略です。

日本のパン文化が成熟していくいい時代でもありました。外資のブーランジェリーが進出してくる少し手前ぐらい。美味しいパンをライフスタイルに取り入れて楽しむ人が増えていました。

せっかくいいデパートにいるのだからアイデアがあれば、やれることはたくさんあります。生ハムをその場で切ってもらってパンと一緒に販売したり、デパートの広報の方に新作を試食してもらい、マスコミで紹介してもらえるように働きかけたり。実際よく売れましたね。BEAVER BREADでの考え方も同じなのですが、お客様が求めていることを的確につかんで、まずしっかり売上をつくる、ということが大事なんです。それがあってはじめて美味しいパンづくりの追求や、新しいことへのチャレンジができると思っています。

ワンカットのバゲットで勝負することをテーマに

ビゴの店で自分にやれることはやり切った。かといって自分のパン屋をはじめるのは時期尚早だと思っていました。

その頃、銀座のフランス料理店レカンのシェフからパン部門を任せたいと声をかけられ、新しい仕事が始まりました。最初の数年はパン部門の店舗はありません。レストランでお客様に提供する一切れのバゲットを、いかに美味しくできるか。いかに買って帰りたいと言っていただけるパンをつくるか、そこが勝負になりました。

これまでとはパンに対するアプローチがまったく異なります。世界観が違うんです。素材にこだわり、美味しさを追求する。まだパン業界にはそういう発想がなかった時代です。料理人がどうやって食材を探し、どんな塩を選ぶのか、そうしたことに意識が向かうようになり、バゲットやクロワッサンを焼くことを追求していきました。フレンチのパン部門で名を上げたいという野心も持っていました。

BEAVER BREADの店内

町のパン屋をつくるというチャレンジ

知人と定期的に行っていた飲み会で、東日本橋のエリアにパン屋がまったくない、パン屋が欲しい、という話を聞きました。自分はずっと銀座のお店にいたけれど、都市部の客層ではなく、地域で生活をする人に向けた町のパン屋をやる。いいじゃないか! と思いました。ビゴの店、レカンでそれぞれ違った経験を積んできた自分が、町のパン屋というコンセプトでお店を出せば、お客様に喜んでいただけるお店ができると思ったし、誰かの真似じゃない、自分ならではのパン屋がプロデュースできると思ったんです。

開店までの準備期間は短く、内装や設備は経営パートナーと連絡をとりながら決めていきました。町のパン屋なので、大事なことはいかにお金をかけずにお店をつくるか。たくさんパンを焼けるようにどうやってスペースを確保するか。そして設備に投資しすぎないことです。

BEAVER BREADのAirレジ

レジに「Airレジ」を選んだのは、知人が利用していて使いやすそうだったこと、初期コストが安いこと、余計な作業をしなくて済むこと、リクルートのサービスなので安心できるという理由からですね。僕は外出をすることが多いので、どこにいてもクラウドで売上データが確認できることも非常に役立っています。

BEAVER BREADのパン

生き方で、自分を表現し続けなきゃつまらない

準備が慌ただしく、マスコミにもパン好きの知人にも報せないまま、開店初日を迎えました。最初からうまくいくとは思っていなかったです。でも驚いたことに行列ができていた。

お客様に言われたのは「この町にパン屋さんがなかったから、本当に待っていたのよ」という言葉です。嬉しかったし、BEAVER BREADのコンセプトはうまくいくと確信しました。町のパン屋としてこどもたちが日常食べたくなるようなあんパンやクリームパンなど基本の菓子パンをつくる。一方でプレミアム感を求めるパン好きの方への期待にも応えていく。そして何より大事なことは売上を年々アップさせていくことです。

割田健一さん(笑顔)

商売はやっぱり負けちゃだめなんです。利益をあげながらお客様が求めることをやっていく。ちゃんと稼いでいるからこそ、感性を磨くことにお金をかけられるし、お客様に驚きを与えるようなパンを提供していくことができると思っています。

パン屋さんは安定して商売を営んでいることで満足できるタイプの人も多いんです。でも自分はそれじゃつまらない。どうやって生きていくか、そのときできる最高を追求していく。それが自分を表現することなんです。ずっと笑って生きていきたい。だから、やりたいことをどんどんやっていきます。

BEAVER BREADの外観

BEAVER BREAD(ビーバーブレッド)

東京都中央区東日本橋3-4-3

03-6661-7145

※この記事は公開時点の情報を元に作成しています。

メールにて「経営お役立ち冊子」のダウンロードリンクをお送りします。

この記事を書いた人

羽生貴志(はにゅうたかし)ライター

ライター。株式会社コトノバ代表。「コトのバを言葉にする」をコンセプトに掲げ、いま現場で起きていることを、見て、感じることを大切に、インタビュー記事や理念の言語化など、言葉を紡ぐことを仕事にしています。https://www.kotonoba.co.jp

前康輔(まえ こうすけ)写真家

写真家。高校時代から写真を撮り始め、主に雑誌、広告でポートレイトや旅の撮影などを手がける。 2015 年には写真集「倶会一処」を発表。

前康輔 公式 HP

http://kosukemae.net/

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