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コーヒースタンドは地域のコミュニティスペース。 「好き」で人がつながり美容師としての世界も広がる。silo coffee stand ヤベケンタ

JR中野駅徒歩5分。2020年2月にオープンしたsilo coffee standには、早朝から次々とお客様が立ち寄り、コーヒーができあがるのを待つ間、バリスタとひとときの会話を楽しんでいる。店主のヤベケンタさんは15年以上の経験がある美容師だ。「美容師は大好きな職業。一生続けていきたいと思っています」。でも、長く続けるうちに限界を感じることが出てきたそう。「美容師の世界って案外狭いんです。お客様と会うのも定期的で間隔が空いてしまう。もっと世界を広げることができて、人と日常的なあいさつが交わせる場が欲しかった」。それがコーヒースタンドを開業した理由。大切にしたことは3つある。地域にフィットすること。好きなコーヒーを楽しめること。人と人が会話をする場所であること。いまヤベさんは、午前中はバリスタ、午後からは美容師と二足のわらじを履いている。やっていることのすべては「美容師として生きていくこと」につながっている。そんなヤベさんが考えるお店づくりについて。

団地のようなコミュニティへの憧れ

silo coffee standをはじめるとき意識したのは、地域のコミュニティスペースのような場にしたいということ。だからカフェではなくコーヒースタンドという形態にこだわりました。店は狭くてもいい。うちの店ではバリスタとお客様、お客様とお客様の間で自然と会話がはじまります。話題は天気の話だったり、連れてきた犬がきっかけだったり、最近気になっていることだったり。こうした何気ない日常の会話ができる場所は、これからの時代に特に必要とされていくように思います。コーヒーを注文して待っている3分間だけでもいいんです。人と人が生で触れ合えることがコミュニティの価値だと思うので、そんな場をつくり、自分自身もそこに参加したいと思いました。
子どもの頃を振り返ると、団地に憧れていたことを思い出します。僕自身は戸建てに住んでいたのですが、みんながワイワイやっている団地のコミュニティに憧れがあって、社会人になってからも古くからある都営住宅に何度も応募したりしていました。

本当になりたいのは美容師だった

美容師という職業を選んだのは、就活で内定をいただいた企業の方の問いかけがきっかけです。大学では社会学部でメディアの研究をしていて、広告をつくる仕事に就きたいと思っていました。一方で、高校生の頃から美容師という職業への憧れもあった。面接官ともそんな話をしていて「本当にやりたいことは何なの? 美容師にならなくていいの?」と問われたとき、自分が本当になりたいのはやっぱり美容師だと気づかされました。好きなことをして生きていきたい気持ちが強かったし、ヘアスタイルで魅力を引き出す美容師という職業は、その人の広告をつくるようなものだなと。商品は違うけれど、やることは一緒だと思ったんです。それに美容室は自分でスタイルを決める要素が多い業種です。自分のお店をつくり、自分で広告をして、その結果が直接返ってくるのだから、本気にならざるを得ないし、なんといっても楽しいですよね。

僕じゃなくていい。みんなを主役に

美容室を立ち上げるとき店名をsiloにしました。“白”というコンセプトは、スタイリングしたヘアスタイルを、白背景に白いTシャツで撮るという、僕個人がやっていたプロジェクトに由来します。素材そのもので勝負するということ。白いキャンパスに色を足して、その人らしい色を引き立たせいという思いが込められています。コーヒースタンドにも同じ名前をつけました。僕は自分が主役になりたいというよりも、みんなを主役にしたい気持ちが強い。いま4店舗(ヘア、ネイル、アイラッシュ、コーヒースタンド)を経営していますが、ヘアサロン以外はそれぞれの店舗の責任者に、お店の主役となってもらい運営を任せています。上に立つのではなく対等なパートナーとして支えていくポジションがいい。僕がやりたいことを、一緒に楽しんでやってくれるスタッフがいる、そして応援してくれるお客様がいるからお店が成立していると思っています。僕1人じゃ何もできません。まわりにいるみんなが主役なんです。

地域に恩返しする場をつくる

15年以上、美容師を続けてくることができたのは、地域の人たちの支えがあってこそ。だから、コミュニティを活性化するコーヒースタンドという場をつくることで、地域に恩返しをしたい気持ちがありました。地域を大事にすることにこだわり、内装工事も地元、中野にある気鋭の工務店にお願いしました。そこは思わず行きたくなるような個性的なショップの内装を次々と手掛けています。地域に新しい価値をつくっていく仕事に共感しています。
通勤や通学途中にフラッと立ち寄れるようなコーヒー店はこの道沿いにはなかったので、当店ができたことでコーヒー好きの方に喜んでもらえていると思うし、地域のコミュニティスペースとして機能している実感があります。僕自身は、当初目論んでいたように、地域の方々と日常的なコミュニケーションが取れるようになったことが嬉しいこと。毎朝早起きをして午前中カウンターに立つようになり、規則正しい生活になりました。常連さんとあいさつを交わす日々は、見えない部分で美容師の自分にいい影響を与えていると思います。

好きなことで人がつながる楽しさ

コーヒーは僕の毎日のルーティンに欠かせないもの。昔からコーヒー屋さんに憧れがありました。自分でもやってみたいと思うようになったのは、娘を幼稚園に送り迎えするときに出会った野方のコーヒースタンドがきっかけです。そこには年齢も国籍も関係なく、幅広いお客様が入れ替わりやってきて、自然と会話をしている最高のコミュニティがありました。コーヒーをツールにして、こんな風にたくさんの人の日常に関われたら幸せだろうなと思い、準備を進めてきました。
でも自分の本職はあくまで美容師です。やりたいことをやる。言うのは簡単だけど実現するには、一緒にやっていく仲間が必要です。幸いにしてsilo coffee standは、コーヒーが「好き」でつながる仲間との出会いに最初から恵まれました。開業できたのはみんなのおかげ。人と人が「好き」でつながると、そこから新しい何かが動き始める。次は誰と何をやろうかな、考えるとワクワクしてきます。

ゆとりある時間を大切にしたい

美容室では日頃からリクルートとのお付き合いがあり、迷うことなくAirレジを導入しました。会計がスピーディにできて、売上が安心して管理できることはもちろんですが、複数の店舗を経営していて便利だと感じるのは、どこにいてもクラウドで売上状況を見ることができ、メニューなどの設定を変更したいときにすぐに対応できること。わざわざ店に行かなくてもいい。Airレジがあることで余計なことに時間を取られずに済み、丁寧な接客や技術向上などサービスの本質的なことに集中する時間を増やすことができます。
ゆとりを持つことは、大切にしていきたいことです。silo coffee standはお客様がコーヒーを買いに来たほんの数分間、何気ない会話をすることで、元気になって日常の幸せを感じられる場でありたい。そのために、自分たち自身がゆとりを持つことも大事にしていきたいですね。

やりたいことをやって、楽しんで生きる

美容師もバリスタも絶対的に必要なものは技術です。どれだけ経験を積んでも学ぶことは次々出てきます。技術を磨き続けていく気持ちが真ん中にあり、そのうえで大事にしていることがコミュニケーションです。僕は1対1で会話をするよりも、第三者が入る会話が好き。美容室でもアシスタントを会話に混ぜたり、隣にいるお客さん同士が話し始めるきっかけをつくったりしています。silo coffee standでも会話がしやすい距離感を演出したくて、カウンターのサイズや店内のレイアウトにこだわりました。お客様との会話が自然にはじまり、もし美容師だけをやっていたら出会うことがなかっただろうと思うような新しいお客様と次々知り合っています。
僕が一生続けていく職業は美容師です。これはゆるぎない。一方でやりたいことがあれば、どんどんやっていきたい。副業は大変なこともあるけれど、やることで確実に世界が広がります。毎日楽しく生きていきたい、僕にできることは何でもやって縁を繋ぎたい、それが僕のモットー。silo coffee standがあることで、確実に幸せになれています。

silo coffee stand
東京都中野区中野2-11-3 ステージファースト中野駅前ビル
03-4285-4766

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

羽生貴志(はにゅうたかし)ライター

ライター。株式会社コトノバ代表。「コトのバを言葉にする」をコンセプトに掲げ、いま現場で起きていることを、見て、感じることを大切に、インタビュー記事や理念の言語化など、言葉を紡ぐことを仕事にしています。https://www.kotonoba.co.jp

前康輔(まえ こうすけ)写真家

写真家。高校時代から写真を撮り始め、主に雑誌、広告でポートレイトや旅の撮影などを手がける。 2015 年には写真集「倶会一処」を発表。

前康輔 公式 HP http://kosukemae.net/