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地域の価値を高め滞在するお客様の満足度を高めたい。それが、歴史ある建物をカフェとして継承する理由。レボン快哉湯 石橋拓馬(いしばしたくま)

レボン快哉湯 石橋拓馬(いしばしたくま)

1928年に台東区下谷に建設された「快哉湯(かいさいゆ)」は、風情のある外観で、今も独特の存在感を放つ建物だ。地域住民の憩いの場として長く愛されてきた銭湯だったが、2016年、建物や設備の老朽化により、惜しまれながらその営業を終えることとなった。90年以上の歴史を重ね、地域に住む多くの人々の記憶に残るこの建物を、次代へと守り繋ごうと、「快哉湯」を保存・再生していくプロジェクトが立ち上がった。そのコンセプトに賛同し、カフェの開店を決意したのが石橋拓馬さんだ。石橋さんは、福岡と東京でホテルを運営する会社の経営者でもある。2020年8月、かつて銭湯の脱衣所だった空間を再生したカフェ「レボン快哉湯」がオープン。地域の憩いの場として、またエリアを活性化する店舗のひとつとして注目を集めている。石橋さんのこれまでの歩み、カフェを開店した理由、今後目指していることについて話を聞いた。

世界中の人が楽しむ街の拠点をつくりたい

地域を盛り上げるホテルをつくりたい。そんな思いで福岡と東京でホテルの運営をしています。

私の原点はカナダへの留学経験です。英語の勉強をしながら、お金を貯めては旅行を繰り返すなかで、ゲストハウスという宿泊施設の面白さを知ります。世界中から人が集まり、仲良くなり、その街で滞在する時間を存分に楽しんでいる。ホテルが人と地域をつなげるコミュニケーションの拠点となっていました。そんな宿泊施設を自分でもやってみたい! そう思い、大学卒業後、ホテルの運営を学び、25歳で起業しました。

私たちが、ホテル運営で特に大切にしていることが、地域との関係性づくりです。エリアにある飲食店や観光スポットを、宿泊されるお客様にご案内する。逆に、このエリアに目的を持ってお越しになった方に、宿泊先として私たちのホテルを検討していただく。そうした関係性をつくるためにも、開業前には、地域の挨拶回りを丁寧にしています。その中で、出会ったのが「快哉湯」のプロジェクトです。

昔からあるよいものを残す考え方に共感

カフェ「レボン快哉湯」の内観

2019年冬、「快哉湯」は銭湯としての役割は終えていましたが、この歴史ある建物を保存・再生しようというプロジェクトが動いていました。プロジェクトをリードする建築会社、株式会社ヤマムラの代表である中村さんと話をしました。スクラップ&ビルドではなく、昔からある良いものをうまく活かしながら、今の時代に合ったものに変容させていく。街の魅力を未来へと繋げていくという、中村さんの考え方にとても共感しました。株式会社ヤマムラさんは建築や設計といったハードの面は得意としていますが、人を集めるといったソフトの面については悩まれていたので、私たちが協力したいと手を挙げました。当時、「快哉湯」はすでにリノベーションされていて、もともと湯船のあったスペースは株式会社ヤマムラのサテライトオフィスとして利用されていました。残りの半分、脱衣室の空間をどのように活用するか。もともと地域に開かれたスペースにしたいという中村さんの思いがあったので、銭湯の風情を極力残しながら、カフェとして再生することが決まりました。地域の方々には「快哉湯」の記憶を懐かしみ、くつろげる憩いの空間を提供し、同時に、遠くから新しいお客様を呼び込むことで、より多くの人に「快哉湯」の存在を知ってもらおうと考えました。

自分たちが知らなかった昔の記憶もつなぐ

カフェ「レボン快哉湯」の昔のままの内装

2020年7月、カフェ「レボン快哉湯」はオープンしました。新型コロナウイルスの影響を受けながらの難しい営業開始です。地域の年輩の方々に向けては、ポスティングやビラ配りで地道な広報をしました。10代や20代の若者にはSNSでの発信に力を入れました。オープン後の反響で嬉しかったことは「内装が昔のままで懐かしい」という言葉や、「ここに座りたかったのよ」と番台に座っていかれるお客様がいたこと。銭湯だった頃を思い出して、「お湯がすごく熱くてね」と、当時の話をしていただくこともよくありました。「記憶を継承していくこと」がお店のコンセプトなので、自分たちが知らない「快哉湯」の歴史を聞いて「昔はこうだったみたいですよ」と、新しいお客様に伝えていくことも大きな意味がある。このカフェの特別な存在価値になると思っています。

人の思いが受け継がれたものを使う

30年もののコーヒー焙煎機

当店のメイン商品は自家焙煎コーヒーとアイスクリームのマリアージュです。ベストな組み合わせにするために、いろんな場所から生豆を仕入れて提供しています。焙煎機は古くからある喫茶店が使用していたものを中古で買い取りました。釜の中の温度を一定に保つ焙煎は、とても繊細な作業です。30年ものの焙煎機を使いこなすことにスタッフは苦労していますが、技術が磨かれるし、何より置いてあってお店の雰囲気に合っていますよね。人の思いが受け継がれたものを使いたい。それはカフェ全体に反映されている考え方です。開店当初、コーヒー業界でも有数の資格を持つバリスタがアルバイトで入ってくれました。その方が、仕入れ先の選定から、焙煎、抽出までサービスを洗練させてくれたこともカフェの大きな財産となっています。振り返ってみると、本当に人との縁に恵まれてきた人生だと思います。

コロナ禍を、経営者として成長するきっかけに

カフェ「レボン快哉湯」のAirレジとAirペイ

会計まわりではAirレジとAirペイを利用しています。レジとしてシンプルで使いやすいことはもちろん、売上の分析がカンタンにできることも素晴らしいですよね。若いお客様にとっては、特に、キャッシュレスに対応できていることは必須なので、幅広い決済に対応できるAirペイもとても役立っています。実際、キャッシュレス決済の比率はとても高いです。またAirレジを使って売上の数字を見ることで、経営の効率化も図るようにしています。

起業してから順調に経営を続けてきたのですが、やはりコロナの影響は大きく受けました。カフェの集客もそうですが、ホテルには大ダメージです。でも、このタイミングで経営者として一度立ち止まり、大事にすべきことを、真剣に考えることができたことはよかったと思っています。徹底的に無駄をなくして経営をスリムにできたこと。一緒に働く従業員と本気で向き合えたことは、今後の大きな糧になると思います。

地域のランドマークになるホテルがつくりたい

地域のランドマークになるホテルがつくりたいと語るレボン快哉湯 石橋拓馬さん

ホテルの経営会社が「レボン快哉湯」を運営する。そこには入谷という地域の好感度を高めたいという明確な理由があります。このエリアにはもともと若い人が遠方から来るようなことはほとんどありませんでした。でも2020年1月頃、私たちが運営するホテル「ランダバウト東京」の開業と時期を同じくして、近隣におしゃれなお店が増え、宿泊客や若い人がこのエリアを回遊する流れができてきました。私たちが大切にしていることは、ホテル内で過ごす時間だけでなく、このエリアに滞在している時間全体の満足度をあげていくこと。そして、人と街との関係性を深めていくこと。それが私の原点にある宿泊施設という場の在り方です。

今後、目指していることは、自社ホテルを建設し、地域全体を盛り上げるランドマーク的存在となること。そのときに、「レボン快哉湯」のような、地域の価値を高めていく共感のできるプロジェクトにご縁をいただくチャンスがあれば、また協力していきたい。いただいたご縁を大切にすること。そして、やると決めたことは前向きに全力で取り組むこと。その姿勢を忘れずに、目指す未来に向かって、着実に実行していけたらいいなと思っています。

レボン快哉湯

レボン快哉湯
東京都台東区下谷2-17-11
03-5808-9044

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

羽生貴志(はにゅうたかし)ライター

ライター。株式会社コトノバ代表。「コトのバを言葉にする」をコンセプトに掲げ、いま現場で起きていることを、見て、感じることを大切に、インタビュー記事や理念の言語化など、言葉を紡ぐことを仕事にしています。https://www.kotonoba.co.jp

この執筆者の記事一覧

前康輔(まえ こうすけ)写真家

写真家。高校時代から写真を撮り始め、主に雑誌、広告でポートレイトや旅の撮影などを手がける。 2015 年には写真集「倶会一処」を発表。

前康輔 公式 HP http://kosukemae.net/