効率的なシフト表の作成・管理方法は?テンプレート種類別の特徴&シフト表の作り方


シフト作成・管理業務は、働くスタッフの人数が増えるほど難易度が上がっていきます。「これまでは手書きで管理してきたけれど、いよいよ本格的なシフト表を作らねば……」「はじめて自分でシフト表を作成するけれど、どのような表にすれば良いのか」と考えている店長さんやオーナーさんもいるのではないでしょうか。そこで本記事では、表計算ソフトなどで運用されているシフト表の代表的な形式をご紹介。シフト管理システム(アプリ)とあわせて、効率的にシフトを作成し管理するためのポイントをお伝えします。
シフト表を作成・管理する方法
時間別の人員配置が管理しやすい、タイムシフト表

特徴
スタッフ一人一人の勤務時間および勤務時間帯を図に表す形式になっているタイムシフト表では、時間別の人員配置が適切かをチェックできます。
例えば、その日に必要なスタッフ数を十分に確保できていたとしても、交代で休憩を取るタイミングや早番・遅番の入れ替わりタイミングを間違えると手薄な時間帯が発生し、サービス品質の低下や、売上機会の損失につながります。タイムシフト表は、そうしたリスクを押さえるために効果的です。
メリット
タイムシフト表は、一目でその日の店舗の動きを把握することに向いています。また、単純に時間帯別の人員数を確認できるだけでなく、役割ごとに色分けをすればスタッフの業務分担の抜け漏れを確認するのにも役立ちます。「テラス席にスタッフを配置できているか」「○○ができるスタッフが最低1人は全時間帯にいるか」といった運営上重要な観点を視覚的に確認できます。
デメリット
基本的に1日1ページのため、営業日数分の作成が必要です。また、タイムシフト表は1日の店舗全体の動きを把握することには向いていますが、スタッフごとの勤務状況を把握するには他のページと切り替えながら確認する必要があります。
向いている店舗
・同時間帯にある程度のスタッフ数が必要で、役割が複数に分かれている店舗
・1日を通して営業しており、スタッフの出勤・休憩・退勤時間がバラバラな店舗
・スタッフの希望にあわせて勤務時間や時間帯を柔軟に対応したい店舗
労働時間や休日の管理に向いている、週間シフト表

特徴
タイムシフト表を簡略化して、1週間または2週間単位で一覧化したものが週間シフト表です。特徴は曜日別の比較がしやすいこと。例えば、平日と土日祝日で集客数が大きく変動する店舗では、日によって必要な人員数も大きく変わります。そうした変化も加味しながらシフトを作成・管理しやすい形式になっています。
メリット
前後の日程の勤怠状況が見えるため、「連勤させすぎていないか」「適切なインターバルが取れているか(遅番の翌日に早番といった組み合わせが多すぎないか)」などの、労務管理観点をチェックすることに向いています。スタッフに負担をかけすぎることがないように、労働基準法で定められている範囲内で適切に休日を取ってもらうためにも、1週間単位でシフトを俯瞰してみることが重要です。また、週の労働時間が計算しやすいため、パート・アルバイトスタッフの「週何時間働きたいか」といった希望にも応えやすくなります。
デメリット
1週間を一覧化している表のため、細かいことは記載しづらい仕様です。1日の詳細なシフトの流れを把握したい場合は、タイムシフト表を別途作成した方が良いでしょう。
向いている店舗
・働いているスタッフが比較的少数の店舗
・フルタイムで働く人が中心で、働き方のバリエーションが少ない店舗
・ランチタイムの後に一斉に休憩を取る飲食店など、人の入れ替わりが複雑でない店舗
希望の収集や全体共有に効果的な、月間シフト表

特徴
週間シフト表を更に簡略化し、1カ月のシフト状況を一枚で表したものが月間シフト表です。タイムシフト表や週間シフト表のようにビジュアルでシフトを表現することが難しいため、記号などを活用して運用されることが多いです。
メリット
月間の総労働時間、休日日数が集計しやすく、労務管理観点をチェックするのに向いています。また、パート・アルバイトスタッフから希望シフトを収集するのにも適しており、このフォーマットに則ってそれぞれの希望を申請してもらうと全員の希望が一目でわかるため、その後のシフト作成もしやすくなります。完成したシフトの共有連絡も、月間シフト表であれば一枚で済みます。
デメリット
個別のシフトを確認することは月間シフト表で十分可能ですが、スタッフ同士の重なりや抜け漏れの確認はしづらい仕様です。また、勤務時間を記号などで表現するため、その記号の意味を理解していないと内容を把握するために少し時間が取られます。
向いている店舗
・10人~20人を超えるスタッフが働いている大規模店舗
・シフトのパターンが数パターンしかない店舗(早番・遅番のみ、など)
実際には複数の表を組み合わせて使っているケースがほとんど
シフト表は、上記の代表的な3つを中心に複数のバリエーションが存在します。それぞれにメリット・デメリットがあるため、実際の店舗運営においては複数のシフト表を併用していることが多いです。
例えば、希望シフトの収集や決定したシフトを連絡する段階では月間シフト表を使い、毎日の動き方を確認するときにはタイムシフト表を用いるなど、それぞれの店舗の特徴にあわせて、使いやすいものを選びましょう。
シフト表を作成・管理する方法

シフト表を作成・管理する方法は主に2つあります。
表計算ソフトを用いる方法
表計算ソフトを用いてシフト表を作成できます。テンプレートを無料配布しているWebサイトもありますので、「できるだけ費用をかけずにシフト作成にチャレンジしたい」という場合は、表計算ソフトを活用するのも一案です。
注意点は、比較的手間がかかること。スタッフの希望シフトを表に転記したり、複数のシフト表を作成するために情報を移し替えたりと、時間のかかる作業もあります。関数やマクロを組めば効率化できますが、それなりの知識が必要です。
シフト管理システムを用いる方法
パソコンを使って本格的なシフト表の作成や管理をしようと検討しているのであれば、シフト管理システムを導入するのもおすすめです。
シフト管理システムとは、シフトにまつわるさまざまな業務を支援してくれるツールのことで、パソコンはもちろん、タブレットやスマートフォンでも操作が可能なシステムも多数あります。
1スタッフあたり月数百円程度のランニングコストで利用できるため、シフト業務が効率化されることを踏まえれば、店舗の規模に関わらず導入の意義はあるでしょう。
「シフト管理」の記事へシフト表の作成・管理をシステム化することで得られるメリット
シフト希望のヒアリングがスムーズ

シフト管理システムは、スタッフが直接システムに希望を入力できるものが多いです。
そのため、1人ずつ送られてくるチャットアプリやメールの内容を読み取ってシフト表に転記していくような作業が必要ありません。手間がなくなるのはもちろん、伝え間違いや書き間違いが起こりにくいです。
外国人スタッフに手順を教えやすい
近年、飲食業やサービス・接客業は多くの外国人スタッフによっても支えられています。重要な戦力ではあるものの、日本語レベルは人によってさまざまで、業務の手順を教えるのに苦労することもあります。シフトの希望をチャットアプリやメールなどでやり取りするときに、ミスコミュニケーションが発生するリスクもあるでしょう。
シフト管理システムでは、システム上の入力フォーマットに則って「○×」をつけたり希望時間を選択したりする仕組みが多く、言葉の壁があっても利用しやすいのが利点です。
最適なシフト案を自動作成。難しい操作が必要ない

自力でゼロからシフトを組もうとすると、「店舗運営に必要な人数が配置されているか」「スタッフへ適切に休憩や休日を与えられているか」「スタッフの希望をできるだけ叶えられているか」など、いくつもの条件を照らし合わせながらパズルのように組み合わせていく必要があります。
その点シフト管理システムでは、スタッフの希望や指定した条件にあわせて、ある程度最適な組み合わせを提案してくれる機能を搭載しているものもあり、完成までの時間を大幅に短縮できます。
その他、ガイドに従って情報を入力していくだけで、労働時間や休日日数を自動計算してくれるなど、表計算ソフトでは手計算や関数を使うような集計作業を自動化することができます。
シフト表の切り替えがしやすい
シフト管理システムは、簡単なボタン操作で日次、週次、個人別……といったさまざまな切り口でシフトを確認できる機能を搭載しているものがあります。そのため、複数のシフト表を併用する際も、都度新しく表を作り直す必要はありません。
シフト表の共有・更新の手間が少ない
表計算ソフトや紙のシフト表であれば、PDFや画像データにして全員に送付する作業や、バックオフィスに掲示するといった作業が必要です。また、変更が発生した場合は、都度訂正版に差し替える必要があります。
シフト管理システムの場合、スタッフはシステム上で最新のシフトを閲覧することが可能です。システム管理者は変更連絡を行うだけでよく、都度データを取り出して配付する手間はかかりません。
ミスが起こりにくい
シフトの連絡、作成、共有、変更、管理といったあらゆる業務を一貫してシステム上で行うため、データの取り違えや転記ミスの抑制に効果的です。
また、常に最新の情報を全員が見られるため、変更に気づかず出勤日や時間を間違えるといったすれ違いも防げます。
複数店舗のシフト管理がしやすい

店舗を問わず同じシステム上でシフトのデータを管理するため、情報共有がスムーズに行えます。他店舗からスタッフのヘルプをお願いしたい場合のやり取りや、応援スタッフの労務管理にも役立ちます。
他の業務との連携が取りやすい
シフト管理システムでは、データをクラウド上に保存する仕組みが多いため、権限を持っている人であればどこからでもアクセスできます。「本社スタッフに都度シフト表を出力して提出する」といった作業が必要なく、業務報告の負荷をひとつ軽減できます。
正確な記録を残しておける
シフト管理システムは、正確かつ透明性の高いやり取りができるため、スタッフの勤務実態を証明するデータとしても優れています。
労働時間を正しく管理することは、店舗の規模や業態に関わらず、すべての組織において法的に求められています。特に時給で働くスタッフは、自分の労働時間が正しく給与に反映されているかを気にします。全員が気持ちよく働ける環境を整えることにも、シフト管理システムが役に立つでしょう。
また、コロナ禍に政府や自治体から休業手当を受け取るためにはシフトが減ったことを証明する書類が必要でした。こうした万が一の事態に備えておくという観点でも、正しくデータを残せる仕組みを導入しておくことは大切です。
監修者ひとことコメント
シフト表は、店舗に人員を効果的に配置するために必要なのはもちろん、労働時間や休日取得が適切にできているかといった法令順守の観点でも疎かにできないものです。見やすい、使いやすいシフト表は店舗の特徴によって異なりますので、スタッフ数やシフトの形態など自店舗の特徴を踏まえてどのようなシフト表を作成するかを決めましょう。
シフト表は、表計算ソフトなどを活用して自力で作成することも可能ですが、作成や運用の手間を考慮すると、シフト管理システムを導入する方がコストとメリットのバランスは良いと言えます。正確性やデータの取り扱いのしやすさといった観点を、シフト表の作成方法の選定基準に加味すると良いでしょう。
監修者プロフィール
坂井 優介(さかい ゆうすけ)
起業コンサルタント(R)/補助金コンサルタント(R)/経済産業省後援起業家支援Webサイト「ドリームゲート」アドバイザー
経済産業省系補助金支援、厚生労働省系助成金支援、マーケティング業務、税務会計人事労務、中小企業のIT化、生産性向上支援の他、補助金や助成金などの資金調達を支援。2022年度の獲得補助金は2億円を超える。
2022年1月~5月には事前確認予約のWebサイトを構築し、トラブルなしで全国屈指の事前確認件数を達成した。
DX化を進める国の補助金「IT導入補助金」の支援機関としての登録、支援事業を担当しており、IT導入補助金の相談件数は年間40件ほど。多くの店舗や中小企業のDX化をサポートしている。渡邉 隼(わたなべ じゅん)
起業コンサルタント(R)/補助金コンサルタント(R)
イタリアン及びフレンチのレストラン業態、居酒屋、ファミリーレストランと多岐にわたる業態を店長として研鑽を積む。現場の切り盛りやDX化、本部とのやりとり、店舗運営全般を経験する。
https://v-spirits.com/
経営サイドを学ぶためにV-Spiritsに合流。会計業務を担当しつつ、飲食業専門の起業コンサルタントとして活躍中。
本ページに記載されている情報は2023年10月時点のものです。