
運転資金とは、事業を営むなかで発生する費用をまかなうための資金を指します。仕入費用やオフィスの賃料など、使途はさまざまです。
本記事では、運転資金の概要や必要な額の計算方法を説明したうえで、不足しないようにするための対策についても解説します。
この記事でわかること
- 事業を営むうえで発生する費用をまかなうための資金を『運転資金』もしくは『所要運転資金』と呼ぶ
- 運転資金には、経常運転資金・増加運転資金・減少運転資金・季節性運転資金がある
- 運転資金が不足することを回避するには、資金調達や支払期日の交渉などの方法がある
- 運転資金を調達する具体的な手段は、金融機関からの借入やファクタリングなど
運転資金とは
運転資金とは、事業を営むにあたって発生する費用をまかなうための資金のことです。とくに、ビジネスに欠かせない資金であることに着目して、『所要運転資金』と呼ばれることもあります。
健全な経営基盤を確立するためには、運転資金について理解を深めることが大切です。ここからは、事業を営むうえで運転資金が必要な理由や運転資金の目安、運転資金と設備資金の違いについて解説します。

運転資金が必要な理由
商取引の多くで掛け取引(かけとりひき)が採用されていることが、運転資金を必要とするおもな理由です。
掛け取引とは、売り手が商品やサービスを先に提供し、後日代金を回収する取引方法を指します。掛け取引で売買する場合、売り手はどれだけ商品・サービスを販売できたとしても、代金を回収するまでは現金を得られません。
たとえば、9月1日に20万円の商品を販売し、代金を回収するのが10月20日の場合は、9月30日に支払う仕入費用15万円分を用意できずに支払遅延が発生する可能性があります。最悪の場合、業績が好調であるにもかかわらず、資金不足を理由に倒産(黒字倒産)に至るケースもあるでしょう。
このように、商売のサイクル上生じる入金・出金のタイミングのズレから資金不足に陥らないようにするため、ある程度運転資金を確保しておくことが大切です。
運転資金の目安
必要な運転資金の額は、事業形態や業種などによって異なります。とくに、売掛金の回収までに時間がかかる会社ほど、多くの運転資金を確保しておかなければなりません。
一般的には、『月商の3ヶ月分』もしくは『毎月かかる経費の3ヶ月分』が運転資金の目安とされています。たとえば、毎月120万円の売上がある場合は、最低でも360万円分運転資金の確保が必要です。
運転資金と設備資金との違い
『何に使うためのお金か』が、運転資金と設備資金の違いです。運転資金は基本的に諸経費に使用することに対し、設備資金は不動産・工場機械・車両の購入などに使います。
また、一般的に設備資金のほうが多額を必要とする点や、回収するまでに時間がかかる点も運転資金との違いです。そのため、銀行に融資を申し込む際は、運転資金か設備資金かによって必要書類・審査基準・返済期間などが異なります。たとえば、設備資金の借入を金融機関に申し込む際は、原則として見積書を提出しなければなりません。
運転資金の種類
運転資金のおもな種類は、下記のとおりです。
- 経常運転資金
- 増加運転資金
- 減少運転資金
- 季節性運転資金
それぞれどのような場面に必要になるのか、解説します。

経常運転資金
経常運転資金とは、通常事業を営むにあたって必要になる運転資金のことです。『正味営業運転資金』と呼ばれることもあります。
売上代金を回収するタイミングと仕入費用や必要経費などを支払うタイミングがズレるときは、経常運転資金が必要になることが一般的です。たとえば、手元に300万円の現預金があるケースで、仕入先に支払う400万円の期日が迫っている場合は、経常運転資金が必要です。
増加運転資金
増加運転資金とは、会社や事業が成長して売上の増加を期待できる場面において発生する運転資金のことです。
一般的に、売上を伸ばすためには原材料や商品の仕入を増やしたり、生産に携わる従業員を増やしたりします。そのため、自社の商品やサービスに対する需要が高まっているときには、支出も増加するでしょう。
また、売上の増加を見込んで支出を増やしたとしても、実際に現金を回収できるのは商品・サービスを提供してから一定期間を経過してからです。従来よりも増加した支出に対応するためには、増加運転資金を調達しなければなりません。
例年8,000万円の支出と1億円の売上がある事業で、今期は例年の1.5倍の売上を期待できるケースを考えてみましょう。一般的に、売上代金1億5,000万円を回収できるのは、仕入費用や人件費など1億2,000万円の支払いを終えた後です。そこで、例年よりも4,000万円多い支出に対応するために、増加運転資金を検討しなければなりません。
減少運転資金
減少運転資金とは、売上が減少している場面において発生する運転資金のことです。
売上が減少すると回収できる現金が減る一方で、オフィスの賃料や人件費などは大きく変動しないため、資金不足につながることがあります。また、売上減少に対応するために店舗の閉鎖の手続きを進める際にも、別途コストが発生して資金繰りを圧迫するでしょう。
このような資金不足に対応するために、減少運転資金が必要です。たとえば、景気の低迷や競合企業の台頭などの事情で売上が例年の2分の1程度まで落ちてしまった場合に、急な売上減少に対応できず減少運転資金が必要とされることがあります。
赤字補填資金も、減少運転資金と関連して業績が低迷している際に必要となる資金です。利益が赤字で資金繰りが圧迫されている場合に、改善を目指して赤字補填資金を調達することがあります。
なお、減少運転資金や赤字補填資金に対して融資を申し込む場合は、より厳しく審査されるため注意が必要です。
季節性運転資金
季節性運転資金とは、売上が集中する時期に必要とされる運転資金のことです。『アイスクリーム』『夏服・冬服』『冷暖房器具』などのような、特定の季節が近づいたときに需要が高まる商品を仕入れる際、季節性運転資金が必要になることがあります。
賞与資金も、季節性運転資金の一種です。6〜7月や12月のように、従業員にボーナスを支払う時期が近づいた際には、多額の資金を要します。
そのほか、決算期に役員賞与や税金を支払うために必要な決算資金も、季節性運転資金といえるでしょう。
運転資金の内訳
運転資金の内訳には、変動費と固定費があります。ここで、それぞれの意味や具体例を押さえておきましょう。

変動費
変動費とは、売上の増減に伴い変動する費用のことです。売上の増加に伴い費用も増え、売上が減少すると費用も減る点が、変動費の特徴として挙げられます。
具体例は、下記のとおりです。
- 材料費
- 仕入費用
- 賃金(時給制や歩合制のケース)
- 商品を運搬する際の運賃
たとえば、需要に応えるために生産を増やそうとすると、材料費もかさみます。それに対し、需要が低迷して生産を減らさざるを得ない状況に追い込まれると、材料費は減少するでしょう。
固定費
固定費とは、基本的に売上の増減に左右されない費用のことです。多少の変動はありますが、基本的に毎月一定の額が発生します。
具体例は、下記のとおりです。
- 事務所や店舗の賃料
- 広告宣伝費
- 管理費
- 保険料
- 減価償却費
- リース料
たとえば、事務所の賃料はあらかじめ契約で決められた額を毎月払います。そのため、仮に賃料が15万円であれば、翌月の売上が10%増加しようと減少しようと15万円から変動しません。
なお、人材派遣業の人件費や出来高払いの賃金は変動費に該当することに対し、正社員の基本給などは固定費に分類されます。
必要な運転資金を計算する方法
在高方式と回転期間方式で、必要な運転資金を計算する方法が異なります。ここで、それぞれの計算式や計算例を押さえておきましょう。

在高方式の計算式
在高(ありだか)方式とは、貸借対照表などに記載されている資産や負債の額を使って、必要な運転資金を計算する方法です。下記の式を使って計算します。
| 運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務 |
売上債権は売掛金と受取手形(電子記録債権)を合計した額、仕入債務は買掛金と支払手形(電子記録債務)を合計した額です。
たとえば、売上債権550万円・棚卸資産450万円・仕入債務500万円の場合、必要な運転資金は500万円と計算できます(550万円 + 450万円 − 500万円)。在高方式は、入金までに時間がかかることで発生する運転資金を手軽に計算できる点がメリットです。
回転期間方式の計算
回転期間方式とは、資金が滞留する期間を考慮して運転資金を求める方法のことです。『日』単位で計算する場合は、下記の式を用います。
| 運転資金 = 1日あたり平均売上 ×(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-買入債務回転期間) |
売上債権回転期間は代金を回収するまでの期間、棚卸資産回転期間は原材料や材料がなくなるまでの期間、買入債務回転期間は商品を仕入れてから代金を支払うまでの期間のことです。それぞれ、下記の式で計算します。
| 売上債権回転期間(日)= 売上債権 ÷ (年間売上高/365日)棚卸資産回転期間(日)= 棚卸資産 ÷ (年間売上原価/365日)買入債務回転期間(日)= 買入債務 ÷ (年間売上原価/365日) |
売上債権2,550万円・棚卸資産3,450万円・買入債務(仕入債務)2,400万円で、年間売上高3億6,500万円・年間売上原価2億1,900万円のケースを使って、必要な運転資金を計算してみましょう。
まず、1日あたり平均売上は100万円で、売上債権回転期間は25.5日、棚卸資産回転期間は57.5日、買入債務回転期間は40日です。そのため、運転資金は4,300万円と計算できます(100万円×(25.5日 + 57.5日 − 40日))。
回転期間方式は手間がかかる分、回転期間を考慮して必要な運転資金を求められる点がメリットです。
運転資金の調達方法
必要な運転資金が不足する際は、資金調達を検討しなければなりません。運転資金を調達するためのおもな方法は、下記のとおりです。
- 金融機関からの借入
- 補助金・助成金の利用
- ファクタリングの利用
- 将来債権ファクタリングの利用
ここから、各方法について解説します。

金融機関からの借入
地方銀行や信用金庫などの民間金融機関や、日本政策金融公庫などに相談し、借入により運転資金を調達する方法があります。
経営に過度な干渉を受けずに運転資金を調達できる点が、金融機関からの借入で対応するメリットです。また、審査結果次第で多額の運転資金を調達できる場合もあります。
一方で、調達するまでに時間がかかる点がデメリットです。手続きや審査に時間をかけると、必要な支払いに間に合わない可能性があります。
補助金・助成金の利用
補助金や助成金の制度を利用して、運転資金を調達する方法もあります。補助金・助成金とは、国や地方公共団体などから支給されるお金のことです。
補助金や助成金を利用すれば、基本的に返済義務を負わずに資金を調達できます。そのため、資金繰りを圧迫しない点がメリットです。
一方で、手続きに手間がかかる点や、原則として『後払い』である点に注意しなければなりません。手元資金が不十分だと、補助金や助成金の制度を利用できても必要な支払いに対応できないでしょう。
ファクタリングの利用
ファクタリングを利用して、運転資金を調達する方法もあります。ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング事業者に売却することで資金を調達する手段のことです。
売上金を回収するまでに1ヶ月以上かかるにもかかわらず、仕入代金の支払期日が来週に迫っているケースなどで、ファクタリングを活用することで、期日前に運転資金を調達し、支払いに間に合う可能性があります。
また、負債を増やさずに運転資金を調達できることや、銀行で借入ができない場合でも調達できる可能性があることなどもメリットです。
将来債権ファクタリングの利用
将来債権ファクタリングも、運転資金の調達手段として有効です。将来債権とは、取引が継続・反復的に行われるため、将来発生することがほとんど確定している債権を指します。
ファクタリングと同様に、負債を増やさずに運転資金を調達できる点がメリットです。また、スムーズに手続き可能で、急ぎの支払いにも対応できます。
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資金調達以外で運転資金不足を回避する方法
資金調達以外にも、運転資金の不足が生じることを回避する方法はいくつかあります。おもな方法は、下記のとおりです。
- 資金繰り表を作成する
- 固定費や返済計画を見直す
- 支払期日を延ばしてもらう
ここから、各方法についてくわしく解説します。

資金繰り表を作成する
資金繰り表を作成しておくことが、運転資金不足を回避することにつながります。資金繰り表とは、一定期間における現金収入や現金支出をまとめて、現金収支の動向や過不足の状況などを確認するための書類です。
資金繰り表をこまめに作成しておけば、今後資金繰りが悪化する可能性に気づきます。将来的な資金不足の発生を認識しておくことで、余裕を持って資金調達手段を検討できるでしょう。
固定費や返済計画を見直す
固定費を見直すことも、運転資金不足を回避する方法として有効です。
固定費が大きいと、運転資金の額も増えて資金繰りを圧迫します。賃料や広告宣伝費など、見直しはできないかを考えてみましょう。
また、借入金の返済計画について考えることも大切です。毎月返済額の負担が大きいと、資金繰りが圧迫されます。返済額が大きいことが運転資金不足の要因になっているのであれば、返済期間の延長などで月々の返済額を減らせないか、取引金融機関に相談してみましょう。
支払期日を延ばしてもらう
取引先に支払期日を延ばせないか相談することも、運転資金不足を回避する方法のひとつです。
原材料や商品などを購入してから支払いまでにかかる期間(買入債務回転期間)が短いほど、必要な運転資金の額も増えます。期間を延長できれば、支払日までに余裕ができるため、資金繰りの改善につながるでしょう。
関連して、取引先に代金回収期日を早められないか相談することも、運転資金不足の回避につながります。商品やサービスを提供してから代金回収までにかかる期間(売上債権回転期間)が長ければ長いほど、必要な運転資金が増えて資金繰りを圧迫するためです。
まとめ
運転資金とは、事業を営むなかで発生する費用をまかなうための資金のことです。入金・出金のタイミングのズレから資金不足に陥らないようにするために、ある程度運転資金を確保しておくことが大切です。
運転資金を調達する手段として、金融機関からの借入やファクタリング・将来債権ファクタリングなどがあります。将来債権ファクタリングを利用すれば、負債を増やさずにスムーズに運転資金を調達し、必要な支払いに対応できる点がメリットです。
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