
売上債権を計上する際は、売掛金や電子記録債権などの勘定科目を計上します。売上債権が増加すると、資金繰りが悪化する可能性があるため注意が必要です。
この記事では、売上債権とは何か説明したうえで、関連する指標や資金繰りの悪化を防ぐ手段なども解説します。
この記事でわかること
- 売上債権とは、商品やサービスを提供した相手から代金を後から回収する権利を指す
- 売上債権を計上する際は、勘定科目として売掛金・受取手形・電子記録債権などを使う
- 売上債権を管理する際は、売上債権回転率や売上債権回転期間を計算して資金繰りの状況を把握する
- 売上債権が増加すると、資金繰りが悪化する可能性がある
目次
売上債権とは
売上債権とは、商品やサービスを提供した相手から売上代金を後日回収する権利のことです。債権とは、特定の人や会社などに対して給付や履行を請求できる権利を指します。
一般的に、売上債権は掛取引に伴い発生する点が特徴です。現金取引の代わりに掛取引をするメリットとして、買い手がその場で現金を持っていなくても取引をできる点や、決済の回数を減らせる点などが挙げられます。
売上債権に関する勘定科目の種類
売上債権を計上するにあたって、使われる勘定科目はおもに下記のとおりです。
- 売掛金
- 受取手形
- 電子記録債権
それぞれ解説します。
売掛金
売掛金とは、商品やサービスを提供したにもかかわらず代金を回収していない場合に、未回収分を計上するための勘定科目です。一般的には、商品・サービス提供後に請求書や納品書などを発行し、取引先からの入金を待つ間に『売掛金』として管理します。
たとえば、8月10日に取引先に商品を100万円分販売して9月30日に回収予定の場合に、8月10日から回収日(9月30日)まで計上する際に用いるのが売掛金です。
受取手形
受取手形とは、商品やサービスの対価を約束手形などで受け取った場合に計上する勘定科目です。
手形に記載されている支払期日に、額面を受け取れます。期日前でも、銀行や手形割引業者に売却して手数料を引いた分を受け取れる点が、手形の特徴です。
紙の手形は電子化が進んでいるため、今後『受取手形』を計上する機会は少なくなるでしょう。なお、2027年3月末までに紙の手形・小切手の交換を廃止することが、政府方針で発表されています。
参考:一般社団法人 全国銀行協会『紙の手形・小切手利用廃止へ』
電子記録債権
電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿に発生・譲渡を記録する債権や、計上する際に使う勘定科目のことです。紙の発行や授受などを伴わない点が、受取手形と異なります。
電子債権記録の具体例は、でんさいネットが取り扱う『でんさい』です。商品やサービスを提供し、取引先から『でんさい』の譲渡を受けた場合は、支払いが完了するまで『電子記録債権』の勘定科目を計上します。
電子記録債権は、作成・保管コストや紛失・盗難リスクなど、手形が抱える課題を克服した債権です。政府方針では、手形の交換廃止に向けて、手形取引を電子記録債権やインターネットバンキングの振込を用いた取引に切り替えることを促しています。
売上債権の管理方法
ここからは、売掛金・受取手形・電子記録債権の管理方法や管理時の注意点について解説します。
売掛金の管理方法
売掛金を管理する際は、期日までに指定口座に入金されているか確認が必要です。売掛金が発生した時点で売上台帳や売掛帳に記入し、随時チェックします。
ただし、取引先が多い場合や売掛による取引件数が多い場合は、手書きでの管理に限界がある点に注意が必要です。会計ソフトを利用すれば取引ごとに売掛金を自動集計できるため、経理担当者の負担軽減につながります。
受取手形の管理方法
受取手形の額面を受け取る際は、金融機関で取立を依頼することが一般的です。支払呈示期間(支払期日から2営業日以内)を過ぎると権利行使が制限されるため、期日までに依頼することを忘れないようにしましょう。
なお、手形を期日前に依頼して銀行に手形を預けることはできます。ただし、2027年4月以降を支払期日とする手形の場合は、前営業日・支払期日・翌営業日での持ち込みにしか対応できない可能性があるため注意が必要です。
電子記録債権の管理方法
電子記録債権の譲渡を受けた場合、決済日が到来した時点で自動的に代金が指定口座に振り込まれます。そのため、受取手形のように取立を失念する心配はいりません。
管理を怠ると、自社の資金繰りをじゅうぶんに把握できなくなる可能性があるため、注意が必要です。そこで、管理台帳などに決済日や金額などをまとめておくとよいでしょう。電子記録債権と連動可能な会計システムを選べば、スムーズに管理できます。
売上債権の仕訳例
取引先A社に商品(7万円)を販売し、後日自社の普通預金口座に取引先A社から商品の代金振込(7万円)があったケースを使って、売上債権の仕訳例を紹介します。今回は約束手形の受取や電子記録債権の譲渡がないため、使う勘定科目は『売掛金』です。
まず、商品を販売した段階で『売掛金』を『借方』に7万円、『売上高』を『貸方』に7万円計上します。
| 借方 | 貸方 | 備考 | ||
|---|---|---|---|---|
| 売掛金 | 70,000 | 売上高 | 70,000 | A社へ販売 |
続いて、売掛金を回収した際には『貸方』に『売掛金』7万円の計上が必要です。また、普通預金が増えるため、『普通預金』を『借方』に7万円計上します。
| 借方 | 貸方 | 備考 | ||
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 70,000 | 売掛金 | 70,000 | A社から回収 |
売上債権の管理に役立つ指標
売上債権を管理するにあたって、下記の指標を使うことがあります。
- 売上債権回転率
- 売上債権回転期間
いずれも、自社の資金繰りの状況を理解するのに役立つ指標です。それぞれ解説します。
売上債権回転率
売上債権回転率とは、売上高に対して売上債権をどれくらいの速さで回収できているかを示した指標です。一般的に、数値が大きいほど効率的に回収していることを意味します。
計算式は、下記のとおりです。
| 売上債権回転率(回) = 売上高 / 売上債権(売掛金 + 受取手形 + 電子記録債権) |
たとえば、年商5億円、売掛金残高2,500万円・受取手形残高0円・電子記録債権残高1,500万円の場合、売上債権回転率は12.5回です(5億円 / 4,000万円)。
売上債権回転期間
売上債権回転期間とは、売上債権をどれくらいの期間で回収できるか示した指標です。月単位で計算する場合は、次の式を使います。
| 売上債権回転期間(月) = 売上債権(売掛金 + 受取手形 + 電子記録債権) / (売上高 ÷ 12) |
たとえば、年商6億円(月商5,000万円)、売掛金残高5,500万円・受取手形残高0円・電子記録債権残高2,500万円の場合、売上債権回転期間は1.6カ月です(7,000万円 / 5,000万円)。
財務省によると、2018年度の売上債権回転期間(全産業・全規模)は1.85カ月でした。
参考:財務省『法人企業統計調査からみる日本企業の特徴(2018年度まで)(3)企業の効率性 売上債権回転期間』
売上債権が発生・増加する要因
売上債権は、商品やサービスを提供して売掛による売上を増やすことで増加することが一般的です。また、売上高に変化がなくても、現金取引から掛取引に切り替えることにより売上債権は増加します。
債権を回収するまでの期間が長くなることも、売上債権の増加につながる要因です。前回取引時の代金を回収する前に新たに取引することで、売掛金などの残高が増えていきます。
売上債権の回収方法
売上債権の回収方法は、種類や取引先との約束などによっても異なります。
売掛金は、あらかじめ自社の銀行口座を伝えて期日までに振り込んでもらうことが一般的です。場合によっては、直接現金で回収することもあるでしょう。
受取手形の場合は、銀行で取立に出して口座に入金してもらうことが一般的です。電子記録債権は、期日に債務者の決済口座から自社の決済口座に振り込まれます。
売上債権が増加した場合のデメリット
売上債権が増加することのデメリットは、おもに下記のとおりです。
- 資金繰りが悪化する可能性がある
- 回収に手間や心理的負担がかかることがある
それぞれ解説します。
資金繰りが悪化する可能性がある
売上債権の増加は、資金繰りの悪化につながる可能性がある点がデメリットです。売上が増えても、売上債権である限り手元の現金は増えません。
取引先の都合で回収が遅れることで、自社が仕入代金や人件費など必要な支払いに間に合わなくなることもあるでしょう。取引先が倒産したり、債権が時効を迎えたりすることで、代金を回収できないこともあります。
売上債権が増えているときは、回収が遅れたり貸倒れが発生したりする可能性も踏まえつつ、資金繰りを考えなければなりません。
回収に手間や心理的負担がかかることがある
売上債権が増加するほど、回収に手間や心理的負担がかかる点もデメリットです。期日を迎えたにもかかわらず取引先から入金がない場合、相手に連絡して支払いが遅れている理由やいつまでに振込可能かを確認しなければなりません。
相手と連絡が取れない場合には、直接会社を訪問したり、何度も連絡を試みたりするなどの手間がかかります。また、相手の事情に配慮しつつも自社への振込を頼まなければならないため、担当者に精神的な負担がかかるでしょう。
売上債権増加に伴うデメリットを解消する手段
売上債権が増加することに伴い生じるデメリットを解消する手段は、次のとおりです。
- 債権管理・与信管理
- ファクタリング
- 将来債権ファクタリング
- 取引信用保険
各手段の特徴について解説します。
債権管理・与信管理
売上債権を取引先ごとに管理して状況をこまめに把握することで、回収不能に陥り資金繰りが悪化するリスクを軽減できます。債権管理システムを活用すれば、支払期日を過ぎた債権もスムーズに確認できるでしょう。
与信管理を徹底することも、回収不能に陥るリスクの軽減につながります。財務内容や信頼度に応じて設定した与信限度額を上回らない範囲でのみ売掛などの取引をすることで、万が一取引先が倒産した場合の損害を抑えられるためです。
ファクタリング
ファクタリングは、売掛金をファクタリング事業者に売却することで資金を調達する方法です。利用者とファクタリング事業者の間で契約する『2社間ファクタリング』と、利用者・ファクタリング事業者・売掛先で契約する『3社間ファクタリング』があります。
2社間ファクタリングを利用する際の一般的な流れは、下記のとおりです。
- 商品やサービスを提供して売掛金が発生する
- 期日前にファクタリング事業者に売掛金を譲渡し、代金から手数料を引いた額を受け取る
- 期日に売掛先から代金を回収する
- ファクタリング事業者に売掛金分を支払う
手元の資金に余裕がない場合にファクタリングを利用することで、期日前にお金を受け取れるため、資金繰りが悪化するリスクを軽減できます。また、3社間ファクタリングを用いる場合は、督促にかかる手間も軽減できることが一般的です。
将来債権ファクタリング
将来債権ファクタリングとは、継続的な取引や契約で将来も定期的に発生する見込みの債権を売却することにより、現金を調達する方法です。ファクタリングと同様に将来債権ファクタリングを活用して期日前に現金を受け取ることで、資金繰りが悪化するリスクを軽減できます。
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取引信用保険
取引信用保険とは、貸倒れが発生して売上債権を回収できず損害を被った場合に、損害額の一部について補償を受けられるサービスのことです。損害保険会社がサービスを提供しています。
取引信用保険に加入していれば、取引先に万が一のことがあっても資金繰りの悪化を防げる点がメリットです。ただし、保険料を負担しなければならない点や、損失が完全に補償されるわけではない点に注意しなければなりません。
まとめ
売上債権とは、商品やサービスを提供した相手から売上代金を後日回収する権利のことです。回収するまでは、売掛金・受取手形・電子記録債権の勘定科目を計上します。
掛取引の割合を増やしたり、回収までの期間が長くなったりして売上債権が増加すると、資金繰りが悪化することに注意が必要です。資金繰りの悪化を防ぐためには、ファクタリングや将来債権ファクタリングを利用するなどの方法があります。
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