
日本政策金融公庫とは、一般の金融機関が行う金融を補完し、国民生活の向上を目的とする政策金融機関です。中小企業や小規模事業者などへの融資を行っており、民間の銀行よりも金利が低めで、無担保・無保証人で融資を受けられる場合もあります。
この記事では、日本政策金融公庫の特徴や主な融資制度、融資を受けるためのポイントなどを解説します。
この記事でわかること
- 日本政策金融公庫は国民生活の向上を目的とした、国が全額出資する政策金融機関
- 日本政策金融公庫の主な融資制度は、国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業
- 日本政策金融公庫を利用するメリットは創業初期でも融資の審査が通りやすい創業初期でも融資を受けやすいこと
- 融資を成功させるポイントは、具体的な事業計画書の作成や自己資金の準備など
目次
日本政策金融公庫とは?
会社経営では、日々の資金繰りや新規事業への投資、設備の導入などで資金調達が必要になる場面は少なくありません。その際、重要な役割を担うのが日本政策金融公庫です。
公的機関として中小企業や小規模事業者、創業期にある会社を支援し、民間金融機関では融資を受けにくいケースでも資金面から事業を後押ししています。
ここでは、日本政策金融公庫の概要や銀行との違いについて解説します。

国が100%出資する政策金融機関
日本政策金融公庫とは、政府が100%出資する政府系金融機関です。主に、中小企業や小規模事業者などを支援する目的で設立されました。国の中小企業・小規模事業者政策や農林漁業政策等に基づき、法律や予算で決められた範囲で、経済の安定と発展を支えています。
一般の金融機関では対応が難しいような創業まもない事業者や、担保・保証人が用意できない人にも融資を行い、民間金融機関を補完する役割を果たしています。
景気変動や災害時の支援など、民間金融機関だけでは対応しきれない分野にも融資を行うことで、社会全体の持続的な成長を支える重要な役割を担っている機関です。
日本政策金融公庫と銀行の違い
日本政策金融公庫と民間の銀行は、事業者に資金を融資するという点で似ています。しかし、事業目的・金利・返済期間・審査通過率など多くの点で異なります。
| 日本政策金融公庫 | 民間銀行 | |
|---|---|---|
| 事業目的 | 国民生活の向上 | 経済社会の円滑な運営に貢献 |
| 融資目的 | 国の政策目標の実現 | 利息収入による利益追求 |
| 金利 | 政策目的のため一般的に低金利 | 市場金利に基づきやや高めの水準 |
| 返済期間 | 長期 | 短中期 |
| 審査通過率 | 高水準 | 低水準 |
| 担保・保証人 | 無担保・無保証人の制度あり | 原則として担保・保証人が必要 |
日本政策金融公庫は国が全額出資している公的な機関であり、自社の利益の追求を目的にしていない点が民間銀行との大きな違いです。そのため、自然災害や景気が悪くなったなどの理由でも融資を行います。将来的な日本経済の発展を考え、創業者や小規模事業者にも積極的に融資を行うことが特徴です。
また、日本政策金融公庫の審査は将来性や事業計画を重視し、担保・保証がなくても融資可能な場合があり、審査通過率も民間銀行に比べると高めです。
一方、民間銀行は返済能力・信用情報を重視した審査を行うため、創業時や小規模事業者の場合は融資が難しい場合も少なくありません。
日本政策金融公庫の役割
日本政策金融公庫は国民生活の向上を目的に、災害・経営環境の変化における支援や創業・新規事業支援など、多くの取り組みを行っています。
ここでは、日本政策金融公庫の主な役割を解説します。

事業者へのセーフティネット機能の提供
日本政策金融公庫は、政策金融機関としての役割を意識し、地震や台風などの自然災害や経済情勢等による経営環境の変化など、あらゆる危機に対処できる態勢を整備して『セーフティネット機能』を発揮しています。セーフティネット機能とは、人々が生活上で直面する可能性のあるさまざまなリスクや最悪の事態に備え、安全・安心を提供するための仕組みです。
災害や経営環境の変化に直面する事業者には、各地域の民間金融機関や商工会議所、商工会などと連携を図り、資金繰り支援や財務基盤の強化、事業の再構築などを支援しています。
創業・新規事業支援
日本政策金融公庫は、創業・スタートアップ・新事業への支援に積極的に取り組んでいます。
創業支援では全国152支店に『創業サポートデスク』を設置しており、専任の担当者が創業計画書の立て方や融資申込の流れ、融資制度等についてサポートしています。
スタートアップ支援では、『スタートアップ支援ポータルサイト』の立ち上げも取り組みの1つです。スタートアップ経営者やこれから革新的な事業を始める方のために、情報を発信しています。
サイトでは、スタートアップ経営者の活躍を取材したインタビュー記事や、創業期のベンチャー企業などを掲載した『スタートアップ・カンパニー・ブック』を掲載しています。
参考:日本公庫スタートアップ支援ポータル Startup Pop|日本政策金融公庫
海外展開支援
はじめて海外展開をする事業者やさらなる事業拡大に取り組む中小企業・小規模事業者などに対しては、海外展開支援機関と連携しながら、資金と情報の両面から支援しています。
『海外展開ゼロイチ+』というサイトを設け、実際に海外展開した企業の事例や海外展開ガイドなど、さまざまな情報を発信していることが特徴です。
また、全国の支店で相談を受け付けるなど、地域に根ざした支援を行っています。さらに、会場やオンラインによるビジネス商談会のイベントを開催するなど、積極的な取り組みを進めています。
事業承継支援
近年、後継者不足などにより、事業承継支援の重要性が一層高まっています。日本政策金融公庫では、地域に根ざした事業が途絶えることなく次世代へ引き継がれるよう、事業承継を積極的に支援しています。
地域の事業者や関係機関との情報交換を通じてニーズを把握し、商工会議所や商工会などと連携しながら、後継者を探す事業者と事業を引き継ぎたい人をつなぐマッチングなどの取り組みを進めています。
マッチング支援とは、後継者不在などの理由で事業の譲渡を希望する方と、創業や新分野への進出を目的に事業の承継を希望する方をつなぐ、無料で利用できるマッチングサービスです。
また、事業承継に取り組む事業者が利用できる融資制度もいくつか用意しています。
日本政策金融公庫の主な融資制度
日本政策金融公庫が行う主な事業は3つあり、それぞれの事業において融資が行われています。
融資制度の内容について、くわしくみていきましょう。

国民生活事業
国民生活事業は、地域に根ざした身近な金融機関として、小規模事業者や創業まもない企業などに対して事業資金の融資を行っています。
融資先の約9割は従業員9人以下の小規模事業者であり、平均融資額は約900万円と、比較的少額の資金ニーズに対応している点が特徴です。また、無担保での融資が全体の9割以上を占め、資金調達のハードルが低くなっています。
さらに、地域の金融機関や商工会議所・商工会、生活衛生同業組合などと連携し、事業者が気軽に相談できる支援体制が整えられています。
中小企業事業
中小企業事業は、地域経済を支える中小企業・小規模事業者の成長・発展を金融面から支援しています。事業の振興に必要な長期固定金利の事業資金を安定的に供給することにより、民間金融機関による資金供給を補完する事業です。
融資先の約8割が従業員20人以上の中小企業で、約9割が資本金1,000万円以上です。融資残高の平均は9,000万円以上で、融資の過半数が5年以上の長期融資となっています。また、金利は返済計画の立てやすい固定金利とされています。
農林水産事業
農林水産事業では、農業・林業・漁業や食品関連産業を営む事業者に対して融資や各種支援を行い、国内の農林水産業の基盤強化と、安心・安全で質の高い食料の安定供給に貢献しています。
農林漁業は、天候や自然環境の影響を受けやすく、収益が不安定になりやすいという特性があります。また、設備投資などの回収に長い期間を要する点も課題です。
こうした事情を踏まえ、日本政策金融公庫では、長期的な視点で資金を提供し、食料の安定確保や農林水産業の長期的な発展を支援しています。
日本政策金融公庫を利用するメリット
事業者は日本政策金融公庫の融資を利用することで、民間銀行では難しい創業期でも融資を受けやすくなります。さらに、無担保・無保証人による融資も受けられるなどのメリットがあります。
メリットについて、さらにくわしくみていきましょう。

創業初期でも融資の審査が通りやす創業初期でも融資を受けやすい
日本政策金融公庫は中小企業や小規模事業者の資金調達を支援しており、創業初期やこれから開業を予定している方でも利用しやすい融資制度を用意しています。
民間金融機関では実績や信用不足を理由に審査に通りにくいケースでも、事業計画や将来性を重視して審査を行うため、資金調達のハードルが低いことがメリットです。
創業融資には、設備資金や運転資金などさまざまな用途に対応した制度があり、開業準備や事業の安定化を支援しています。
無担保・無保証人で融資を受けられる場合がある
日本政策金融公庫では、条件を満たす場合に無担保・無保証人で融資を受けられる制度を設けています。とくに創業期は営業実績が少なく、民間銀行では資金調達が難しいケースも少なくありません。
そのため、新たに事業を始める方や事業開始から税務申告を2期終えていない方を対象に、原則として無担保・無保証人で利用できる融資制度を用意しています。
民間の金融機関よりも金利が低い場合がある
日本政策金融公庫は営利目的ではないため、民間金融機関よりも金利が低い傾向にあることがメリットです。
中小企業や創業まもない事業者の資金調達を支援するという公的な目的があり、経営基盤がまだ安定していない企業でも、低金利で融資することで返済負担を軽減し、事業の成長に必要な資金を確保できるようにしています。
たとえば、創業融資では、原則として利率を一律0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引下げとしています。
返済期間を長く取れる場合がある
日本政策金融公庫の返済期間は、融資制度によって異なりますが、民間の金融機関と比べて長い傾向にあります。
民間の金融機関の場合、設備投資用の融資の返済期間は長くても10年程度です。一方、日本政策金融公庫では、設備資金の返済期間は20年間に設定されているものが多く、創業融資では融資の据置期間(元金返済を猶予され、利息のみを支払う期間)が5年以内に設定されています。
返済期間が長いことで、経営が安定するまで毎月の返済負担を抑えられます。
経営のアドバイスを受けられる
日本政策金融公庫では、資金の提供だけでなく、支援の一環として経営に関する相談やアドバイスを受けられることもメリットとして挙げられます。
中小企業事業では、『往診型のホームドクター』として、企業ごとに異なる課題をていねいにヒアリングし、経営改善のための情報提供や助言を継続的に行っています。
公庫は長年蓄積してきた経営ノウハウや顧客情報を独自のデータベースで一元管理し、企業の状況に合わせた最適な支援を行っているのが特徴です。
提供される情報は一律ではなく、各企業の実情に応じた『オーダーメイド』の情報であり、生きた情報の提供とアドバイスにより、事業者をバックアップしています。また、相談内容に応じて、連携する外部専門家への橋渡しも行っています。
日本政策金融公庫からの融資を成功させるポイント
日本政策金融公庫の融資は民間銀行と比較して審査に通りやすいとはいえ、当然ながら審査を通過しなければ融資を受けることはできません。
ここでは、審査に通過するためのポイントを解説します。

具体的な事業計画書を作成する
日本政策金融公庫の審査に通過するためには、具体的で説得力のある事業計画書の作成が重要です。事業計画書は事業の実現可能性を判断するための基礎資料であり、数字を使って具体的に記載しなければなりません。
事業内容やターゲット層、収支計画、資金使途などを明確に示すことで、融資担当者に事業の実現性や返済能力を理解してもらいやすくなります。
たとえば「売上は〇万円を目標」と記載するだけでなく、「〇〇な人をターゲットとして、そのうちの〇%が毎月〇回利用し、月に〇万円の売上を想定」というように、売上の根拠を具体的に示すと説得力が高まります。
数字や根拠を具体的に示し、リスクや課題への対応策も盛り込むことで、事業計画書の信頼度が高まり、融資につながる可能性が高まるでしょう。
自己資金を用意する
自己資金がどれだけ用意されているかも、審査に影響する要素です。自己資金は融資を受ける条件ではないものの、ある程度の自己資金を用意しておくことで、事業への本気度や資金管理能力を示せます。審査を有利に進めるため、一定額の自己資金を用意しておくとよいでしょう。
一般的には、融資額の2〜3割程度の自己資金を用意することが望ましいとされていますが、実際にどの程度の自己資金がよいかは融資額や事業計画の内容などにより異なります。
自己資金は原則として返済の必要がない自分自身の資金を指します。一時的に他人から借りたお金は認められません。
面談では熱意を持って事業の説明を行う
融資審査の最終段階では担当者との面談があり、計画書に記載された内容をもとに事業の説明を行います。
融資面談では、事業への熱意をしっかり伝えることが重要です。単に事業内容を説明するだけでなく、なぜその事業を始めるのか、どのように成長させていくのか、熱意を持って矛盾なく計画書の内容を説明することで、担当者に事業への真剣さや信頼性を伝えられます。
熱意ある説明は、事業の実現可能性や返済意欲をアピールするうえで大きな効果を発揮するでしょう。
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まとめ
日本政策金融公庫は、国民生活の向上という公的な目的で運営される政府系金融機関です。創業期や中小企業の資金調達を支援しており、民間銀行では融資が難しいケースでも利用しやすいことが特徴です。
創業初期や営業実績が少ない場合でも、無担保・無保証人、低金利での融資が可能な制度があり、返済期間を長めに設定できる場合もあります。経営の相談・アドバイスも受けられるため、事業の安定成長に役立つでしょう。
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