新創業融資制度はすでに廃止?日本政策金融公庫で利用可能な制度を解説

資金調達・融資
2024年3月に終了した新創業融資制度に代わり、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用して無担保・無保証で事業資金を調達するための契約書に署名する様子

国が日本政策金融公庫を通じて無担保・無保証人で実施していた融資制度である新創業融資制度は、2024年3月31日をもって取扱いが終了しました。新たに事業を開始する人や開業して間もない人が日本政策金融公庫で融資を受ける際は、『新規開業・スタートアップ支援資金』を利用することが一般的です。

この記事では、新創業融資制度の代わりに日本政策金融公庫で利用可能な制度の要件や、融資を受ける際の注意点について解説します。

この記事でわかること

  • 新創業融資制度は、新たに事業を開始する人や開業してから間もない人向けに日本政策金融公庫が提供していた制度
  • 2024年3月に新創業融資制度が廃止されたため、現在は『新規開業・スタートアップ支援資金』を利用することが一般的
  • 日本政策金融公庫で資金調達する際は、負債が増加することや資金調達に時間がかかることに注意が必要

目次

2024年3月に廃止された新創業融資制度とは

新創業融資制度とは、国が日本政策金融公庫(※)を通じて、新たに事業を開始する人や新規開業して税務申告を2期終えていない人に対し、無担保・無保証人で実施していた融資制度を指します。保証人や担保なしで融資を受けられる点が、新創業融資制度の主な特徴です。

新創業融資制度は、2024年3月31日をもって取扱いが終了しています。そのため、スタートアップ・ベンチャー企業や業歴の浅い企業などの経営者が日本政策金融公庫で融資を受ける際は、『新規開業・スタートアップ支援資金』を利用することが一般的です。

新創業融資制度が廃止されたタイミングで、制度上の自己資金要件(融資額の1/10以上)が撤廃されました。あわせて、融資限度額の引き上げも実施されているため、今後は今まで以上に柔軟に利用できるでしょう。

※『日本政策金融公庫〜民間金融機関』の取り組みを補完し、事業に取り組む人々を支援する政策金融機関。国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業の3つで成り立っている。

テーブルで通帳を手に持ちながらノートにペンで書き込む夫婦。新創業融資制度の申請に向けて自己資金の確認や事業計画の相談をしている様子

新規開業・スタートアップ支援資金とは

新規開業・スタートアップ支援資金とは、日本政策金融公庫が創業期の経営者を対象に支援する目的で設けている融資制度のことです。業種や事業内容に特段定めはなく、新たに事業を始める人や業歴が浅い会社経営者・個人事業主であれば利用できる可能性があります。

新たに事業を開始する人や事業を開始してから税務申告を2期終えていない人は、従来の新創業融資制度と同様に、原則として無担保・無保証人で『新規開業・スタートアップ支援資金』などの日本政策金融公庫が提供する融資を利用可能です。

『新規開業・スタートアップ支援資金』は、国民生活事業と中小企業事業で提供されています。国民生活事業は、個人企業や小規模企業向けの小口資金の融資、中小企業事業は、中小企業向けの長期事業資金の融資を主に対象とした事業です。

この記事では、国民生活事業における『新規開業・スタートアップ支援資金』を中心に解説しています。

デスクでタブレットとノートパソコンを使い円グラフの資料を分析する二人。新創業融資制度の審査で重要となる市場調査や売上予測を立てるイメージ

新規開業・スタートアップ支援資金の利用条件

日本政策金融公庫の『新規開業・スタートアップ支援資金』を利用するには、主に下記の条件を満たす必要があります。

  • 対象者・資金使途
  • 融資限度額・返済期間
  • 利率

ここから、各項目の利用条件について詳しく解説します。

対面で書類を広げ、ペンを持って説明を聞く起業家。新創業融資制度の手続きについて金融機関の担当者や専門家からアドバイスを受けるシーン

対象者・資金使途

『新規開業・スタートアップ支援資金』は、特定の業種や事業内容に限定される制度ではなく、創業期にある事業者を幅広く対象としています。利用できるのは、これから事業を始める人や事業開始からおおむね7年以内の事業者です。

『新規開業・スタートアップ支援資金』では、融資した資金を事業に直接必要な用途にあてることが求められます。事業開始に必要な資金に加え、事業開始後に発生する運転資金や設備資金が具体的な資金使途です。

融資限度額・返済期間

『新規開業・スタートアップ支援資金』の融資限度額は7,200万円で、うち運転資金は4,800万円と定められています。そのため、たとえば運転資金として5,000万円を同制度で調達することは原則としてできません。

『新規開業・スタートアップ支援資金』の返済期間は、設備資金か運転資金かによって異なります。設備資金の場合は20年以内、運転資金の場合は10年以内の返済期間に設定することが原則です。

設備資金の場合も運転資金の場合も、据置期間を5年以内に設定できます。据置期間とは、元金の返済を猶予されて利息だけを払い込む期間のことです。

設備資金とは機械、事業用車両などの購入や、店舗・工場・事務所などの取得・増改築などに支払うために使う資金を指します。一方、運転資金とは、商品・材料の仕入れや人件費などを支払うために使う資金のことです。

利率

『新規開業・スタートアップ支援資金』の利率は、日本政策金融公庫が定める基準利率が適用されます。

2025年12月1日時点で、税務申告を2期終えていて無担保で融資を利用する場合の基準利率は『3.0〜4.5%』です。一方、税務申告を2期終えていない場合は、『2.9〜4.4%』の基準利率が適用されます。

ただし、特定の要件を満たす場合には、特別利率A・特別利率B・特別利率Cを適用可能です。たとえば、Uターンなどで新たに地方での事業を始める場合には、特別利率Cを適用できます。2025年12月1日時点で、特別利率Cの利率は『2.1〜3.6%(税務申告を2期終えている)』もしくは『2〜3.5%(税務申告を2期終えていない)』です。

経営者の保証を不要とする融資を受ける場合には、条件に応じて各利率に『0.1〜0.3%』が上乗せされる場合もあります。

参考:日本政策金融公庫『新規開業・スタートアップ支援資金』

新創業融資制度の代わりに利用可能な制度

新たに事業を始める場合や、事業開始後おおむね7年以内の場合は、従来の新創業融資制度の代わりに、『新規開業・スタートアップ支援資金』を利用できる可能性があります。また、『新規開業・スタートアップ支援資金』を利用する際に、一部の条件を満たす場合には、次の制度もあわせて利用できることがあるでしょう。

  • 女性、若者/シニア起業家支援資金
  • 挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

各制度について、解説します。

観葉植物のある明るいオフィスで書類にサインをする手元。新創業融資制度の契約手続きや、創業計画書の最終確認を行うビジネスの場面

女性、若者/シニア起業家支援資金

『新規開業・スタートアップ支援資金』の要件を満たす方のなかで、『女性、若者/シニア起業家支援資金』の要件を満たす方はより有利な条件で利用できる可能性があります。『女性、若者/シニア起業家支援資金』の対象者は、これから事業を始める人や、事業開始からおおむね7年以内の事業者のうち、次のいずれかに該当する人です。

  • 女性
  • 35歳未満
  • 55歳以上

資金使途や融資限度額、返済期間は『新規開業・スタートアップ支援資金』と変わりありません。

『女性、若者/シニア起業家支援資金』では、原則として特別利率Aが適用されます。2025年12月1日時点で、特別利率Aの利率は『2.6〜4.1%(税務申告を2期終えている)』もしくは『2.5〜4.0%(税務申告を2期終えていない)』です。

一部要件を満たすことで、特別利率Bや特別利率Cを適用できる場合もあります。

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

『新規開業・スタートアップ支援資金』などの融資制度が対象になる場合は、『挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)』を利用できる可能性があります。『挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)』とは、スタートアップや新事業展開などに取り組む人の財務体質を強化することや、ベンチャーキャピタル・民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援する目的の制度です。

通常の融資と異なり、本制度を利用して調達した資金は原則として自己資本とみなせます。利用するためには、次の条件をすべて満たさなければなりません。

  • 地域経済活性化にかかる事業を営む
  • 税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納している

資金使途は『新規開業・スタートアップ支援資金』と同じで、融資限度額は7,200万円(別枠)です。また、返済期間は 5年1か月以上20年以内と設定されています。

利率は、直近の業績に基づき、返済期間に応じた値が1年ごとに適用されます。たとえば、返済期間が5年1か月で税引後当期純利益が0円以上の場合は『3.25%』、0円未満の場合は『0.50%』です。

日本政策金融公庫で融資を受ける流れ

日本政策金融公庫で融資を受ける際の、一般的な流れは下記のとおりです。

  1. インターネットで決算書などの資料をアップロードし、借入を申込む
  2. 担当者と面談して、資金使途や事業計画などについて説明する(オンライン面談も可能)
  3. 審査で承認が出たら、日本政策金融公庫と契約を交わす
  4. 指定した日に、融資金が金融機関の口座に入金される

なお、相談や申込みは日本政策金融公庫の窓口でもできます。スムーズに進めるため、直接相談する際は予約してから訪問しましょう。

木目調のデスクに置かれた真っ白な紙と印鑑、印肉。新創業融資制度の実行に伴う金銭消費貸借契約など、重要な捺印手続きを象徴するイメージ

日本政策金融公庫の融資で資金調達する際の注意点

日本政策金融公庫の融資で資金を調達する際には、下記の点に注意しなければなりません。

  • 希望額を資金調達できない可能性がある
  • 負債が増加する
  • 資金を調達するまでに時間がかかる

それぞれ解説します。

作業着を着た二人がノートパソコンの画面を指差して打ち合わせる様子。製造業や建設業での起業にあたり、新創業融資制度で設備資金を調達するイメージ

希望額を資金調達できない可能性がある

日本政策金融公庫の融資を検討する際は、希望額を資金調達できない可能性がある点を理解しておきましょう。融資を受けるにあたって、審査を経なければなりません。

返済能力や信用情報、支払実績などによっては、融資を受けられないことがあります。融資を受けられるケースでも、希望する額までは承認がおりないことがあるでしょう。

必要額を調達できずに慌てることがないように、あらかじめ日本政策金融公庫による融資以外の手段も検討しておくことが大切です。

負債が増加する

日本政策金融公庫に限らず、融資を受けた際は基本的に『負債』が増加する点にも注意が必要です。

負債が増えると、自己資本比率などの財務指標が悪化します。各金融機関は財務内容などに注目して融資の可否を判断するため、負債額によっては、今後新たに資金需要が発生した際に、融資を受けられなくなるケースがあるでしょう。

資金を調達するまでに時間がかかる

融資を受ける場合、資金を調達するまでに時間がかかる点にも注意しましょう。

日本政策金融公庫によると、借入の申込みをしてから融資が決まるまでにかかる日数は平均2週間程度です。融資の条件によっては、それ以上の日数がかかる可能性もあります。

そのため、必要な支払いに間に合わせるためには、早めに申込みの手続きを進めておかなければなりません。

日本政策金融公庫でスムーズに融資を受けるコツ

日本政策金融公庫でスムーズに融資を受けて、必要な支払いに間に合わせるためのコツは、主に下記のとおりです。

  • 説得力のある事業計画書を作成する
  • 各種支払いの遅延・滞納をしない

それぞれ解説します。

会議室で複数のビジネスパーソンが資料を囲みペンで指し示す手元。新創業融資制度を活用した事業拡大や組織的な事業計画立案のチームワーク

説得力のある事業計画書を作成する

日本政策金融公庫でスムーズに融資を受けるためのコツとして、説得力のある事業計画書を作成することが挙げられます。事業計画書とは、企業概要・事業内容・市場環境・自社製品の強みや特徴・売上計画・調達計画などを記載した書類のことです。

日本政策金融公庫の融資では、借入内容によって事業計画書の提出が求められることがあります。審査結果にも影響を及ぼすため、具体的かつ実際の状況との乖離がない現実的な内容の書類を作成しましょう。

各種支払いの遅延・滞納をしない

税金など各種支払いの遅延や滞納をしないことも重要です。遅延・延滞があると信用力が低下し、融資の承認を得られないことがあります。

経営する会社だけでなく、代表者個人の支払いも滞納してはなりません。個人で契約している住宅ローン・マイカーローン・クレジットカードなどで滞納があると、信用情報機関に記録が残るためです。

代表者個人が延滞している情報が信用情報機関に残っていると、「金銭管理がずさんで、金融機関は融資の返済も滞るのではないか?」と判断する可能性があります。

融資以外で資金を調達する手段

融資を利用すると、負債が増えることや受け取りまでに時間がかかることなどを踏まえ、あらかじめ他の資金調達手段も検討しておきましょう。主な資金調達手段は、下記のとおりです。

  • ファクタリング
  • 将来債権ファクタリング
  • 請求書立替払いサービス
  • 補助金・助成金

ここからは、各手段の特徴やメリットなどについて解説します。

木製デスクに配置されたノートパソコン、電卓、ボールペンの俯瞰。新創業融資制度の収支計画作成に必要なツールが揃った、起業準備のデスクワーク

ファクタリング

ファクタリングとは、保有する売掛債権をファクタリング事業者に売却して、資金を調達する手段のことです。民法に規定がある『債権譲渡』を仕組みの根拠としています。

ファクタリングを利用するメリットは、申込みから資金調達までをスムーズに進められる点です。ファクタリング事業者によっては、最短即日で売掛金を現金化できるケースもあります。

そのため、融資を受ける場合よりも、早くに資金調達できる可能性があります。

将来債権ファクタリング

将来債権ファクタリングは、将来債権を売却して資金調達するファクタリングのことです。

将来債権とは、継続的かつ反復的に取引していて、将来発生する可能性のある債権を指します。将来債権ファクタリングを利用すれば、まだ発生していない債権でまとまった資金を調達できる可能性がある点がメリットです。

将来債権ファクタリングに該当するサービス例として、株式会社リクルートの『Airキャッシュ』があります。Airキャッシュは、Airペイやじゃらんオンラインカード決済の売上に応じて将来の売上を予測し、資金を提供するサービスです。

Airキャッシュには資金使途が定められていないため、突発的な出費や事業拡大など、さまざまなシーンで活用できます。また、決算書の提出や信用情報機関への照会・登録などが不要で、スムーズに利用可能な点も特徴です。

Airキャッシュのサービスを詳しく見る

請求書立替払いサービス

請求書立替払いサービス(請求書カード払い)とは、本来カード払いできない請求書の支払いをクレジットカードで決済できるようにするサービスです。直接資金を調達するための手段ではありませんが、請求書立替払いサービスを利用することにより支払期日を延長して資金不足に対応できる可能性があります。

株式会社リクルートの『請求書立替払いサービス』は、保有しているクレジットカードを利用して請求書の支払期日を最大60日後に変更できるサービスです。カード情報・請求書情報・申込者の情報などを入力するだけで、2ステップで申込みを完了できます。

仕入費用だけでなく、家賃や設備・メンテナンス費用の支払いなど、さまざまな場面で活用できる点も特徴です。

請求書立替払いサービスを詳しく見る

補助金・助成金

補助金や助成金は、国や自治体などから受け取るお金のことです。要件を満たす事業者が申請して補助金や助成金を受け取ることで、資金調達するケースもあります。

補助金や助成金は、申請してから受け取るまでに時間がかかる点に注意が必要です。原則として後払いのため、対象の支払いに対してまずは自分で資金を用意しなければなりません。

まとめ

新創業融資制度とは、新たに事業を開始する人や新規開業して間もない事業者向けの日本政策金融公庫の融資制度です。ただし、新創業融資制度は2024年3月31日をもって取扱いが終了しました。

そこで、新たに事業を開始する人や業歴の浅い事業者が日本政策金融公庫で融資を受ける際には、『新規開業・スタートアップ支援資金』を利用することが一般的です。利用時に『女性、若者/シニア起業家支援資金』の要件も満たせば、より低金利で融資を受けられる可能性があります。

一方で、融資を受ける場合には負債が増加することや、資金を調達するまでに時間がかかることに注意が必要です。融資では対応が間に合わなそうな場合は、別の資金調達手段も検討しましょう。

Airキャッシュは、負債を増やさずに資金を調達できる可能性があるサービスです。オンラインで手続き可能で、申込みから最短で翌日に入金されます。

また、目の前の支払いを延長することで手元の現金を温存したい場合には、期日から支払いを最大60日後に変更できる請求書立替払いサービスの活用も有効です。提出書類や取引先への連絡は一切不要で、申込みまですべてオンラインで完結します。

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