
IT導入補助金は、業務の効率化や生産性の向上を目的に、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際、その導入費用の一部を国が補助する制度です。補助金には4つの申請枠があり、条件に合致すれば支給を受けられます。
本記事では、IT導入補助金の概要や仕組み、申請手続き、採択のポイントなどを解説します。
この記事でわかること
- IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する際に利用できる制度
- 申請枠は4つあり、要件に該当すれば補助金を受けられる
- 補助金の申請にはITツールの選定や書類の準備など決められたステップがある
- 採択されるためにはIT導入支援事業者に相談しながら、ポイントを押さえることが大切
IT導入補助金とは?補助対象や申請の流れを解説
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等が業務効率化やDX等に向けてITツールを導入することを支援する補助金制度です。
ここでは、制度の仕組みや補助の対象を解説します。

制度の仕組み
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)を導入する際、その費用の一部を国が補助する制度です。業務効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を目的としています。
対象となるITツールは、事前に事務局の審査を受け、IT導入補助金のホームページに公開(登録)されているものです。
補助金申請者はIT導入補助金事務局に登録された『IT導入支援事業者』とパートナーシップを組み、導入するITツールを選定します。
さらにIT導入支援事業者のサポートを受けながら、申請書類を作成・提出する流れです。
補助対象
IT導入補助金の対象となるのは、主に中小企業・小規模事業者です。業種や企業規模に応じて、要件が定められています。
補助の対象となる経費はソフトウェアやハードウェアの購入費・導入関連費用、クラウドサービスの利用料などで、導入後の活用支援費用も対象です。補助率・上限額は、申請枠や事業者の条件によって異なります。
IT導入補助金の申請枠
IT導入補助金は4つの申請枠があり、それぞれ活用場面や対象経費、補助上限などが異なります。
ここでは、それぞれの枠について詳細を説明していきます。

通常枠
中小企業や小規模事業者が業務のデジタル化や生産性向上を目的として、ITツールを導入する際の支援を行う申請枠です。業務効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を後押しする制度となっています。
補助率は原則として2分の1ですが、一定の条件を満たす場合には、最大で3分の2まで引き上げられるケースもあります。
対象となる費用は、ソフトウェアの購入費、クラウドサービスの利用料(最大2年間分)、および導入作業に関連する費用です。なお、パソコンやタブレットなどのハードウェアは基本的に補助対象外です。
インボイス枠
インボイス枠とは、2023年に始まった『インボイス制度(適格請求書等保存方式)』に対応するためのシステム導入を支援する特別枠です。
- インボイス対応類型:インボイス制度に対応した会計ソフトやパソコン・ハードウェア等の導入を支援
- 電子取引類型:発注者主導でITツールを受注者に共有し、取引先のインボイス対応を促す事業者を支援
補助額の上限は最大350万円で、インボイス対応類型は導入するツールによって上限額が異なります。
セキュリティ対策推進枠
サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスクに対応するため、さまざまなリスク低減策を支援する申請枠です。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が認定・公表している『サイバーセキュリティお助け隊』のサービスを利用する場合に、その利用料(最⼤2年分)が補助されます。
補助上限は5万〜150万円で、中小企業の補助率は2分の1、⼩規模事業者は3分の2とされています。
複数社連携IT導入枠
商業集積地やサプライチェーンに関連する複数の中小企業・小規模事業者が連携し、地域DXの実現や生産性の向上を図る取り組みを支援する特別枠です。
通常枠よりも補助率を引き上げ、複数者へのITツールの導入を支援するとともに、参画事業者を取りまとめる際にかかる事務上の経費や取り組みへの助言を行う外部専門家に支払う謝金等を含めて支援します。
補助の対象は、商工団体等や当該地域のまちづくり・商業活性化・観光振興等の担い手として事業に取り組む中小企業者、または団体などが該当します。
IT導入補助金申請の流れ
補助金の申請には、要件の確認・理解から始まる一連の流れがあり、手順を踏んで進めていくことが大切です。
申請のステップを詳しく解説します。

1.要件の確認・理解
まず、IT導入補助金のサイトや公募要領に掲載されている制度の概要を読み、補助金を使用して行う事業である『補助事業』についての理解を深めましょう。4つの申請枠はそれぞれ補助対象となる経費や補助率、補助上限が異なるため、自社が申請する内容がどの申請枠に該当するのかを確認してください。
申請手続きには、IT導入支援事業者のサポートが必要です。IT導入支援事業者とは、申請者とともに補助事業を実施するパートナーです。
申請者は事前準備を進めながら、信頼できるIT導入支援事業者を選定し、申請や報告などの手続きを協力して進めていきます。
2.導入するITツールの選定
補助金を活用するには、あらかじめ事務局に登録されているITツールの中から、自社に合ったものを選ぶ必要があります。
業種や企業の規模、抱えている課題などを踏まえて、IT導入支援事業者と相談しながら適切なツールを選定しましょう。
どの申請枠が自社に合っているか判断が難しい場合は、支援事業者がツールの選択だけでなく、利用可能な申請枠についてもアドバイスを提供してくれます。
3.アカウント登録・書類の準備
IT導入補助金の申請には、次の3点が必要です。
- GビズIDプライムのアカウント取得
- 『SECURITY ACTION』の宣言
- 必要書類の準備
申請はすべてオンラインで行われ、『GビズIDプライム』と呼ばれる共通認証サービスを利用します。このIDは発行までにおよそ2週間かかるため、まだ取得していない場合は早めに手続きを進めましょう。
『SECURITY ACTION』とは、中小企業が自ら情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言する制度で、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)によって創設されました。申込みから1〜2週間程度で、『SECURITY ACTION』のロゴマークを取得できます。すでに宣言済みの場合は、取得済みの自己宣言IDを使って申請手続きを行えます。
申請に必要な書類も、事前に用意しておきましょう。すべての申請枠で共通する書類は、次のとおりです。
| 法人 | ・履歴事項全部証明書(登録申請日から遡って3ヶ月以内に発行されたもの) ・法人税の納税証明書(その1またはその2) ※直近分のものに限る(一期の決算を迎えたうえで提出すること) |
| 個人事業主 | 下記のいずれか ・運転免許証 ・運転経歴証明書 ・住民票 (登録申請日から遡って3ヶ月以内に発行されたもの) ・所得税の納税証明書(その1またはその2) ※直近分のものに限る(一期の決算を迎えたうえで提出すること) ・直近の確定申告書(税務署が受領したことが確認できるもの。e-Taxで提出した場合は受信通知を添付すればよい) |
さらに、申請枠ごとに必要な書類があるため、申請時に確認しておいてください。
4.交付申請
交付申請を行う際は、まずIT導入支援事業者と打ち合わせを重ねながら、自社の導入計画を立案します。
計画がまとまったら、下記の流れで申請を進めていきます。
- IT導入支援事業者から『申請マイページ』への招待を受け取り、企業の代表者名など基本情報を登録する
- 申請に必要な各種情報を記入し、必要書類をアップロードする
- IT導入支援事業者が、対象となるITツールの詳細や事業計画に関する数値を入力する
- 入力内容を『申請マイページ』上で最終チェックし、申請内容に誓約したうえで提出を完了させる
なお、『複数社連携IT導入枠』を利用する場合は手続きが通常とは異なります。該当の公募要領を確認し、定められた手順に沿って申請してください。
5.採択・交付決定
申請内容に基づき、事務局および外部審査委員会による審査が実施されます。審査が完了すると、『採否結果通知メール』が、申請者が登録したメールアドレス宛に送信されます。
この交付決定を受ける前に、発注・契約・支払いなどの手続きを一部でも行った場合は、補助金を受け取れないため、ご注意ください。
交付決定通知を受けた申請者は『補助事業者』となり、補助事業を正式に開始できます。
6.ITツールの発注・契約・支払い
交付決定の通知を受けたあと、事業者は申請したITツールを導入し、業務効率化や売上向上など自社の課題解決を図る補助事業を開始します。
この時点では、まだ補助金の支給は行われていないため、費用は一時的に自社で立て替える必要があります。
ITツールの導入費用が高額であっても、リース契約や割賦契約は補助対象外となるため、あらかじめ余裕を持って資金を準備しておくことが必要です。
7.事業実績報告
交付決定を受けた補助事業者がITツール導入などの補助事業を完了したら、『事業実績報告』を行います。事業の実施状況や成果を報告する手続きであり、申請されたITツールがきちんと導入されたかをチェックするために必須のステップです。
定められた期限までに、『申請マイページ』から事業実績報告を行います。報告時には、請求書や振込明細書などの証憑を提出する必要があるため、捨てずに保管しておきましょう。
事業実績報告が完了すると補助金額が確定し、『申請マイページ』から補助額を確認できます。その内容を確認後、補助金が交付されます。
IT導入補助金に採択されるポイント
補助金を活用するには、所定の審査をクリアする必要があり、選ばれなければ資金を受け取れません。
ここでは、審査を通過するための重要なポイントについて解説します。

ツールが自社の課題解決に必要なことを伝える
IT導入補助金の審査は、大きく『形式審査』と『内容審査』の2段階です。まず形式審査では、申請書類に不備がないか、申請要件を満たしているかなど、基本的な条件のチェックが行われます。ここで記載ミスや提出漏れがあると、その時点で審査対象外となる可能性もあるため、注意が必要です。
そのあとに行われる内容審査では、提出された事業計画の妥当性や実現可能性、IT導入による効果などが評価されます。審査基準は申請枠ごとに異なりますが、たとえば『通常枠』の場合は、ITツールの導入が経営課題の解決や業務効率化、生産性の向上にどれほど寄与するかが主な評価ポイントです。
このため、単にITツールを導入する理由を説明するのではなく、業務の非効率や人手不足、属人化など、現時点で自社が直面している具体的な経営課題を明確にすることが大切です。それに対して選定したITツールがどのように機能し、どのように改善・解決につながるのかを、論理的かつ説得力を持って記載する必要があります。
また、事業の将来性や継続性、地域経済への波及効果なども加味される場合があるため、補助金を活用したあとの成長戦略についても触れておくと、より高評価を得られる可能性があるでしょう。
加点項目を満たす
IT導入補助金の各申請枠には、審査時に評価が上がる『加点項目』が設けられています。
対象となる基準を満たすことで加点が得られ、採択される可能性が高まるため、できるだけ多くの加点項目に取り組むことがポイントです。
加点項目は申請枠ごとに異なりますが、『複数社連携IT導入枠』以外での代表的な例としては、下記のようなものがあります。
- 『地域未来投資促進法』に基づく地域経済牽引事業計画の承認を取得していること
- 『健康経営優良法人2025』の認定を受けていること
一方、『複数社連携IT導入枠』における加点項目の一例として、『複数社・地域の生産性の向上のためにより新規性のある取り組み』を行うことが挙げられます。
なお、審査には『減点措置』も存在し、該当する場合は採択される可能性が低くなるため注意が必要です。
たとえば、過去3年間に類似の補助金を受給している場合などが該当します。必ず最新の公募要領を確認し、該当しないよう注意してください。
IT導入補助金を申請する際の注意点
IT導入補助金を活用する際は、事前に押さえておくべき重要な項目があります。
ここでは、スムーズな申請を行うために知っておきたい留意点やチェックポイントについて紹介します。

交付決定前に契約・導入をしたITツールは対象にならない
IT導入補助金を活用してITツールを導入する際には、発注・契約・支払いなどの手続きを行うタイミングに十分注意が必要です。
補助金の制度では、申請が採択され『交付決定通知』を受け取る前に、対象となるITツールの発注・契約・支払いを行ってしまうと、それらの費用は補助の対象外となります。補助金が受けられなくなる可能性があるでしょう。
補助金を受けるためには、交付決定日よりもあとに発注・契約・支払いが行われたことが、証憑書類(契約書・請求書・振込明細など)によって確認できなければなりません。
そのため、補助金を活用してITツールを導入する場合は、交付決定の通知を受けたことを確認してから次のステップに進むようにしましょう。
補助の対象は汎用品のみ
補助金の対象となるITツールは、あくまで市販されている汎用的な製品に限られています。そのため、自社の業務に合わせて個別に開発・カスタマイズされた専用システムは補助対象外となる点に注意が必要です。
また、すでに導入済みのソフトウェアに対してのライセンス数の追加(増台)や、過去に購入したソフトウェアの保守費・サポート契約の更新費用なども、補助の対象にはなりません。
補助金の目的は『新たなIT導入による業務効率化・生産性向上』の支援であるため、既存のITツールの拡張や継続利用にかかる費用は含まれないことを理解しておく必要があります。
さらに、中古品やリース・レンタル契約で利用するITツールも、原則として補助の対象外です。導入を検討しているツールが対象に含まれるか不明な場合は、事前にIT導入支援事業者や事務局に確認するようにしましょう。
補助事業の実施には立て替えが必要
補助金が実際に支給されるのは、交付決定を受けたうえで補助事業を実施し、その後に事業実績報告を行ったあとです。報告が受理されてから補助金が支払われるまでには、通常1ヶ月程度の期間がかかります。
補助事業にかかる費用は、あらかじめ自社で立て替える必要があるため、補助金の支給までの資金繰りには十分注意が必要です。
資金が不足する場合、銀行からの融資等も選択肢となりますが、より手軽な資金調達手段として活用できるサービスが、『Airキャッシュ』や『請求書立替払いサービス』です。
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このようなサービスを活用することで、補助金の支給までのつなぎ資金の問題を解消し、補助事業を円滑に進められます。
まとめ
自社の経営課題を解決するためにITツールの導入を検討している場合、IT導入補助金の活用が有効です。申請枠ごとに要件が異なるため、まずは自社に合った申請枠を確認しましょう。
申請には複雑な手順や注意点があるため、事前にしっかりと情報を確認したうえで、計画的に進めることが大切です。
また、補助金は交付決定後に支給されるため、それまでの費用は自社で立て替える必要があります。資金繰りについても、事前に検討しておくとよいでしょう。









