採用難と言われる近年、優秀な人材を採用することはもちろん重要ですが、それと同時に、採用した人材を定着させ、離職率を下げることも重要です。離職率の高い会社では、常にリソースを投下して人材採用を行わなければ、すぐに人手不足の状態となってしまいます。
離職率を下げるために重要な時期は、入社後よりもむしろ、採用計画の立案から入社前までの期間です。会社が求めるスキルと求職者の能力、求職者のイメージしていた職場と実際の雰囲気など、入社前と入社後とのギャップが離職率の要因となります。ギャップの発生を防ぐためには、採用時の工夫こそが大切です。
今回の記事では、「採用ミスマッチ」が生じる原因を解説し、採用プロセスにおいて企業が実施すべきミスマッチ対策をご紹介します。
採用ミスマッチとは
採用ミスマッチとは、企業と採用者(求職者)の間に発生するギャップのことを指します。そもそも書類選考や採用面接はこのギャップを埋めるために実施されるものだと言えますが、それぞれのフローが適切に実施されていなければ、企業と求職者のニーズのズレに気づくことができず、採用ミスマッチが発生してしまいます。
採用ミスマッチの3つのパターン
採用ミスマッチには、大きく分けて「仕事内容と能力のミスマッチ」「雇用条件のミスマッチ」「会社の文化・雰囲気とのミスマッチ」という3つのパターンがあります。
仕事内容と能力のミスマッチ
1つ目は、仕事内容と採用者のスキルにギャップがあり、業務を進行することが困難であったり、想定以上に教育コストがかかってしまったりするタイプのミスマッチです。
仕事内容と能力のミスマッチが起きる原因としては、「企業が具体的な仕事内容や必要なスキルを伝えきれていなかった」「求職者が自分の能力を実際よりも高く見せており、企業がそれを見抜けなかった」などが挙げられます。
雇用条件のミスマッチ
2つ目は、給与や福利厚生、労働時間・休日などの雇用条件が入社前のイメージと異なるタイプのミスマッチもあります。こうしたミスマッチの主な原因は、採用時のすり合わせが不足していることでしょう。
このパターンには、企業が「これだけの待遇で採用したのだから」と高いレベルでの業務遂行を期待しているにも関わらずそこまでのパフォーマンスが発揮できていないケースもあれば、求職者が「この条件でここまで高いレベル(専門性)を求められるのか」と不満を感じるケースもあります。
会社の文化・雰囲気とのミスマッチ
3つ目は、会社の文化や雰囲気に採用者が馴染むことができず、企業もしくは採用者が不満を感じるケースのミスマッチです。
同じ業界・業種であったとしても、企業によって文化や雰囲気、考え方などはまったく異なります。文化や雰囲気、価値観におけるミスマッチは、「働きづらい」「馴染めない」といった採用者の不満につながります。
採用ミスマッチによる早期離職の損失
採用ミスマッチによって早期離職が発生すると、「要員計画のズレによる損失」「採用コストの損失」「人材育成時間の損失」というように、さまざまな面で損失が生じてしまいます。
要員計画のズレによる損失
採用で新しく人を迎え入れる際には、「どの部署に配置して、どのような仕事をしてもらうか」といった要員計画を立てているはずです。早期離職が発生してしまうとこの要員計画が崩れてしまい、再度採用を進めなければいけないうえに、採用までの間は人手の足りない状態で業務を行わなければいけません。
採用コストの損失
採用方法によって差はあるものの、多くの採用手法ではコストが発生します。2020年の調査では、新卒採用の場合は平均93.6万円、中途採用の場合は平均103.3万円の採用コストがかかるという結果が出ました。
また、選考過程では複数人のリソースを投じて書類選考や採用面接を実施しなければならず、実際のコストのほかに人的コストも発生します。採用ミスマッチによる早期離職が発生すると、多くのコストを損失することになるのです。さらにその後、新たな人材を採用する際には、追加のコストも生じます。
人材育成時間(教育コスト)の損失
入社直後には、自社での仕事内容を学んでもらうため、少なからず教育の時間を割り当てる必要があるでしょう。採用過程だけでなく、こうした人材育成にもコストが発生しています。
すでに何らかの教育を施したあとの離職は教育コストの損失となるうえに、ノウハウの流出にもつながりかねません。
採用ミスマッチの主な原因は入社前にある
記事冒頭でも言及したように、採用ミスマッチが発生してしまう主な原因は入社前にあります。ここでは、なぜ採用ミスマッチが起きてしまうのか、その原因をご紹介していきます。
1.採用基準が明確ではない
最初に考えられる原因が、採用基準が明確ではないことです。
明確な採用基準が設けられており、採用に関わる関係者全員が共通認識として採用基準を持っていれば、その採用基準を満たす求職者を採用するために、募集方法や選考方法を最適化していくことが可能です。
しかし、採用基準が明確になっておらず、関係者がそれぞれの感覚で採用者を決定してしまうと、採用ミスマッチが起きやすくなってしまいます。
2.学歴や経歴で採用している
2つ目に考えられる原因が、学歴や経歴だけを重視して採用していることです。
例えば、「一流大学を卒業しているから優秀だろう」「TOEIC800点だから英語を話すことができるだろう」など、書類上のデータだけで採用を決めると、社風にマッチする人柄ではなかったり、求めている実務のスキルやコミュニケーションスキルを実際には持っていなかったりするケースが発生します。その結果として、採用ミスマッチが発生し、早期離職や職場に馴染めないといったトラブルが起きてしまいます。
3.会社の良いところだけアピールしている
3つ目に考えられる原因が、求人広告や求職者とのコミュニケーションにおいて、自社の良い側面だけをアピールしていることです。
「どうにか優秀な人材を採用したい」と思うあまり、本来伝えなければいけない自社の課題や問題には一切触れずに良い面ばかりをアピールしていると、入社後に採用者がギャップを感じてしまう可能性が高まります。
待遇や条件などが求人広告や面接時の話と違うのは問題外ですが、実際の残業時間やノルマなど、働き方の実態もしっかり伝えておくべきでしょう。
4.面接で応募者を正しく評価できていない
4つ目に考えられる原因が、面接時に応募者を正しく評価できていないことです。
採用面接では、明確な採用基準に則って、スキルや能力を見極めることが大切です。しかし、面接官の判断に何らかのバイアスがかかっていたり、採用基準と直接関わらない質問に時間を使いすぎてしまったり、面接の結果を正しく言語化できていなかったりして、応募者を正しく評価できていないケースもあります。この場合にも、採用ミスマッチが発生しやすくなるでしょう。
5.応募者に会社や仕事内容などの情報を提供できていない
最後に考えられる原因が、応募者に対して会社や仕事内容などの情報を正しく提供できていないこと、もしくは情報が不足していることです。
求人広告や面接時に伝えられる情報は限られています。企業が積極的な情報発信を行なっていない場合、求職者としては手元にある情報で判断するしかありません。限られた情報で応募を決めて採用された場合、入社前に持っていたイメージとの間にギャップが生まれやすくなってしまいます。
採用ミスマッチを防ぐ効果的な入社前対策
以上のような採用ミスマッチの原因から考えられる、企業が取るべき入社前の具体的な対策をご紹介します。
1.採用ターゲットを明確にする
新卒採用・中途採用のどちらにおいても重要となるのが「採用ターゲット(ペルソナ)」を明確にしておくことです。
自社の求める人材を採用ターゲットとして言語化し、関係者全員が同じターゲットを念頭に置いて選考にのぞむことで、ターゲットからズレた人材を採用する可能性が低くなり、採用ミスマッチの防止につながります。
採用ターゲットを決める際には、スキルや経験はもちろんのこと、仕事に対する価値観や志向性なども明確にしましょう。実際に働いている従業員をモデルとして設定すると、人物像を具体的にイメージしやすいため、認識に齟齬が生まれづらくなります。
2.「学歴や経歴は評価項目の1つ」の考えを共有する
学歴や経歴は、その人の持っている能力やスキルの基準にはなります。ただし、実務で使えるレベルの能力を持っているか、実際のスキルを確認することも必要です。
書類上の学歴・経歴にとらわれず、どういった能力がどの程度発揮できるのか、面接の場でしっかりと質問しましょう。それが、入社後に高いパフォーマンスを発揮できる人材の採用につながります。
3.仕事のマイナス面・厳しい側面を伝える
採用において、自社の魅力を求職者に伝えることはもちろん重要ですが、マイナスの側面を全く見せないことは、採用ミスマッチが起きる原因としてご紹介したとおりです。
求人広告や面接など、求職者とのコミュニケーションの場では、会社の良い側面をアピールすると同時に、求職者にとってマイナスとなるポイントや現時点での課題も伝えていくようにしましょう。正直に実情を話すことが、長期的に見れば賢明な方法だと言えます。
4.応募者自身の情報を引き出す質問をする
面接の際には、テンプレートで回答できるような質問はなるべくしないようにしましょう。能力やスキル面での採用ミスマッチを防ぐためには、なるべく応募者自身の情報を引き出せるような質問をすることが重要です。応募者の言葉で返しやすい質問は、採用時のコミュニケーションにもなります。
5.応募者に会社や仕事内容などの情報提供を行う
採用者が入社後に「イメージと違った」と感じるのを防ぐためには、企業側が適切に情報提供を行うことが重要です。求人広告の原稿や面接など、求職者に情報を伝えられる機会には、自社についての情報をなるべく具体的に、わかりやすく伝えるようにしましょう。
求職者により多くの情報を提供するには、採用ホームページやSNSなどのオウンドメディアを持ち、求人広告や面接以外の場でもコツコツと情報発信を行なっていくことが効果的です。
6.新卒採用にはインターンシップを導入する
新卒採用の場合は、入社前のインターンシップや体験型入社を導入することで、会社の雰囲気や働き方を知ってもらい、イメージと実際の職場のギャップを埋めることができます。
中途採用の場合、実際に職場の雰囲気を体感してもらう機会を設けるのはなかなか難しいかもしれませんが、面接時にオフィスを見学するなどして、なるべく実際の職場を体感してもらうようにしましょう。
採用ミスマッチを防ぐ効果的な入社後の対策
採用ミスマッチを防ぐには、入社前の対策が大切です。しかし入社後にも、ミスマッチによる早期退職を防止するために取れる対策があります。
「中途採用者=即戦力」の先入観を捨てる
中途採用はキャリア採用と言われることもあり、中途採用者にはそれまでの経験やスキルを活かして即戦力となることを期待してしまいがちです。しかし、転職によって環境が変わったあと、すぐに100%の実力を発揮できないこともあります。
「中途採用者=即戦力」という先入観にとらわれず、入社後しばらくは職場に慣れてもらうための期間が必要だということを理解しましょう。期待していたパフォーマンスが発揮できていなくてもすぐにミスマッチと決めつけず、日々の取り組みを見守りましょう。
入社後フォローを行う
前述のように、新規採用者が職場に慣れるまでの期間は、企業としては我慢の期間となります。しかし、ただ見守っているだけではなく、新規採用者が本来のパフォーマンスをなるべく早く発揮できるよう、入社後のフォローを徹底することが大切です。
まずは会社・業務の全体像を把握してもらったうえで、業務でよく関わる人との適度な交流の機会を設け、不明点や悩みがないかを面談や1on1ミーティングで吸い上げていくなど、会社としてのフォロー体制を作ることが、早期離職の防止につながるでしょう。
採用ミスマッチは入社前の対策が重要
採用ミスマッチによる早期離職は、会社に大きな損害をもたらします。ミスマッチを防ぐには、採用計画を立てる時点から会社側が対策を行うことが大切です。採用自体を目的とせず、採用後に応募者が活躍できる体制を作りあげていくことを目的に据えるとよいでしょう。
スペースや時間の限られる求人広告や面接のみでは、企業のニーズと求職者のニーズのギャップを埋めるのが難しいケースもあるでしょう。その場合、求人広告や面接のほかにも企業から求職者に対して情報を提供できる媒体を保つことが、採用ミスマッチを防ぐことにつながります。これから採用に力を入れていきたいという会社は、採用専門のホームページを作り、公式ホームページやSNSなどと連動して情報発信を行なっていくのがおすすめです。
採用ホームページを作る際には、ぜひリクルートグループが運営するAirワーク 採用管理をご利用ください。Airワーク 採用管理ではわずか10分程度で採用ホームページを作ることができ、その情報は求人検索エンジン最大手と言っても過言ではないIndeedにも自動で掲載されるため、応募者数の増加も見込めます。
この機会にAirワーク 採用管理で採用ホームページを作り、採用ミスマッチを防ぎながら、優秀な人材を獲得しましょう。