退職した人材を再雇用することを「出戻り社員」といいます。何かの理由があって退職した社員ですが、環境や心境の変化にともなって前の職場に戻りたいと感じるケースは少なくありません。
採用難と言われる現代において、企業として出戻り社員を迎え入れる体制を作っておくことは、人手不足を解消する1つのポイントになります。
この記事では、出戻り社員を採用する企業のメリットやデメリット、待遇の調整方法などをご紹介します。
出戻り社員の採用における、企業側の7つのメリット
出戻り社員を採用するメリットには、下記のようなポイントがあります。
- 即戦力の人材を採用できる
- 人柄がわかっている
- 採用コストが抑えられる
- 教育コストが抑えられる
- 他社でのノウハウや人脈を活かせる
- 仕事や会社への愛着が高い
- 企業ブランドのイメージ向上になる
ここでは、上記の出戻り社員を採用するメリットについて、詳しくご紹介します。
即戦力の人材を採用できる
以前まで自社に勤めていた社員ということで、自社サービスや業務内容、会社全体の仕事の流れなどを把握しているため、即戦力としての活躍が期待できます。加えて、自社の企業理念や価値観も理解していることにより、ミスマッチが発生する可能性も低いです。
人柄がわかっている
通常の採用選考において重要となるのが人柄の把握です。企業は人柄や性格などを、書類審査や面接によって把握し、自社で活躍できる人材なのかを判断しなければいけません。
出戻り社員であれば、以前自社で働いてもらっていた経験から人柄がわかっているため、面接で人柄を知るための質問などを省略することができます。
また、入社後もコミュニケーションが取りやすいため、1度目の退社から期間が空いていたとしても、職場に早く慣れることができるというメリットもあります。
採用コストが抑えられる
出戻り社員の採用は、直接企業や企業内の知人経由での採用に至るケースが多く、求人情報サイトへの掲載費用や人材紹介サービスの報酬といったコストが発生しにくいとされています。
また、先述のように人柄がわかっていることにより、通常の選考フローよりも面接にかける時間を短縮できるため、全体の採用コストを抑えることができます。
教育コストが抑えられる
出戻り社員は、自社の業務内容やサービスへの理解があるため、一般入社の社員と比較すると教育コストが抑えられる点もメリットとして挙げられます。初期教育を省略してすぐに業務に取り組んでもらえるため、人手不足の会社では大きなメリットでしょう。
ただし、会社の制度や業務内容が退職時と現状で異なるケースも少なくないため、まったく教育が必要でないわけではありません。他社員とのトラブルを避けるためにも、省略できる箇所は省略しつつ、変更になっている箇所は適切に説明を行うようにしましょう。
他社でのノウハウや人脈を活かせる
退職後に他の企業に転職している場合は、その企業で得たノウハウや人脈を活かすことができます。機密情報や顧客情報の持ち出しはもちろん厳禁ですが、他社で培ったノウハウや人脈を活かすことは十分に可能です。
仕事や会社への愛着が高い
不満を抱えて退職している場合、出戻り社員として再度働こうとは思わないことが一般的なため、出戻り社員は仕事や会社への愛着(エンゲージメント)が高いと言えます。
エンゲージメントが高いことにより、仕事に積極的に取り組んでくれるケースが多いです。
企業ブランドのイメージ向上になる
退職者から再雇用の希望があるということは、その社員にとっては働きやすい環境であるということです。出戻り社員の受け入れを対外的に発信することで、企業ブランドのイメージ向上につながります。
出戻り社員を採用する3つのデメリット
上述のように、出戻り社員を採用するメリットは複数ありますが、デメリットがまったくないわけではありません。
出戻り社員を採用するデメリットには、下記のような点が挙げられます。
- 既存社員の不満が生じる場合がある
- 退職前と同じ成果が出るとは限らない
- 再び退職する可能性がある
既存社員の不満が生じる場合がある
出戻り社員を採用するうえで注意しなければいけないのが、既存社員からの不平不満です。
退職時や他社での給与などを考慮した結果、他の社員の待遇よりも出戻り社員のほうが良くなってしまうと、既存社員としては納得がいかず不満が生じやすいといえます。
前職や当時の給与の考慮や他社員とのバランスを見て、総合的に妥当性のある待遇を見定め、合意を得る必要があります。
退職前と同じ成果が出るとは限らない
企業としては、出戻り社員に退職前と同等、もしくはそれ以上のパフォーマンスを求めてしまいがちですが、実際に採用してみると以前と同等の成果が出るとは限りません。
他社での勤務によって自社業務とマッチしなくなっていたり、パフォーマンスが落ちているケースも考えられます。
現状の自社で活躍できる人材であるかを判断するためにも、面接や面談によって今のスキルや能力、仕事への考え方などを把握しつつ、入社に至ったのちにはパフォーマンスを最大限発揮してもらえるようサポートも必要です。
再び退職する可能性がある
一般的にはエンゲージメントの高い出戻り社員ではあるものの、他の社員と同様に退職する可能性はあります。特に出戻り社員の場合、早期退職してしまうと他の社員からの出戻り社員への悪いイメージを持つようになり、それ以降出戻り社員を採用する際に反発が大きくなってしまうことも考えられます。
会社としては、そういったリスクを把握し、早期離職しないための適切なアプローチ・サポートが必要です。
出戻り社員の待遇はどうするべき?
デメリットでも挙げたように、出戻り社員を採用する際には、他の社員とのバランスも考慮して待遇を決定する必要があります。
待遇の決定方法は、出戻りの理由が自社からのアプローチなのか、退職者からの希望なのかによって異なります。
退職者からの希望の場合は、以前勤めていた時の社歴、退職理由、退職期間で得たスキルなどを総合的に評価し、他の社員と比較した際に妥当性のある待遇を提示します。
自社からアプローチして再入社してもらう場合は、ヘッドハンティングと同様の形式になるため、相手(退職者)に納得してもらえる待遇を提示しなければいけません。
他の社員からの不平不満を防止するためには、どの程度の待遇が準備できるのかを事前に決めたうえで、その待遇内で採用できる相手にアプローチすることが求められます。
辞めた会社を復職したい理由
最後に、求職者が1度退職した会社に復職したい理由についてご紹介します。
転職先に馴染めなかった
まず、転職して会社を離れたことにより、退職した会社の良さに気付くケースです。
この場合、再雇用してくれたことへの感謝の気持ちがあるため、高いエンゲージメントでの勤務が期待できます。
ただし、転職先が見つけられず仕方なく出戻りを選んだということも考えられるため、面接時に転職先での働き方などを聞いておく必要はあります。
子育てや介護が落ち着いた
次に、出産・子育てや介護によって、フルタイムで勤務することが難しくなり退職したものの、それらが落ち着いたことによって再就職を希望するケースです。
こうした退職理由の場合、ジョブリターン制度・カムバック採用などを企業として準備しておくことで、該当する元社員はもちろんのこと、求職者としても働きやすい職場として感じるため、人手不足の解消が期待できます。
元勤務先(自社)にスカウトされた
最後に、元勤務先(自社)にスカウトされたから出戻りするケースです。
この場合、顕在化していない現在の職場への不満や提示された待遇によって出戻りするかしないかを判断します。
【まとめ】出戻り社員採用の成功は既存社員とのバランスを重視
出戻り社員が優秀だったとしても、他の社員からの不満が出てしまっては本末転倒です。
そのため、出戻り社員の採用を成功させるには、待遇や選考に関する制度の構築が重要です。また、コミュニケーションの場を設けて、出戻り社員が既存社員と馴染めるように配慮する必要もあります。
出戻り社員を採用する際には、制度や仕組みを作ったうえで、採用の間口を広げていきましょう。