ソーシャルリクルーティングとは、SNS(ソーシャルネットワークサービス)を活用した採用方法のことです。
近年はビジネスパーソンもSNSを活用するようになっており、求職者もその会社にはどのような人がいるのかなどをチェックしています。採用情報や会社についてSNSで発信することによって、求職者に求人情報を届けたり、フォロワーをファン化して求人への応募者数を増やしたりすることが可能です。
しかし、ソーシャルリクルーティングを誤った方法で行なってしまったために、かえって応募者数が減少したり悪いイメージを持たれたりするケースもあるため、正しい知識を持ったうえで運用方針を定めておく必要があります。
そこでこの記事では、ソーシャルリクルーティングとはどのような採用活動なのか、メリットやデメリット、利用するSNSの選定方法などをご紹介します。
ソーシャルリクルーティングとはSNSを活用した採用方法
ソーシャルリクルーティングとは、SNSを活用した採用方法のことです。ソーシャルリクルーティングは、SNSが広く普及しはじめた2010年頃から行われるようになりました。
ソーシャルリクルーティングが普及した背景
ソーシャルリクルーティングが普及した背景には、有効求人倍率の高さがあるとされています。
有効求人倍率とは、求職者1人につき何社の求人があるのかという指標で、厚生労働省のデータによると、2009年から2019年まで右肩上がりで有効求人倍率が上昇しています。そして2014年には有効求人倍率が1倍を超え、求職者数よりも求人数のほうが多い状態となりました。
なお、2020年は新型コロナウイルス感染拡大などの影響もあって、有効求人倍率は前年(2019年)の1.55倍から1.18倍まで低下し、2008年ぶりに前年を下回りました。
こういった背景から、どのように応募者数を確保するのかが企業の採用活動のカギとなり、採用の間口を広げるためにSNSを活用したソーシャルリクルーティングが広まったのです。
参照:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年12月分及び令和2年分)について」
ダイレクトリクルーティングやリファラル採用との違い
同じく、2010年頃から普及した採用手法にダイレクトリクルーティングやリファラル採用がありますが、それぞれ似た部分もあるため混同してしまうことも少なくありません。
ソーシャルリクルーティング、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用の特徴は下記のようになっています。
ソーシャルリクルーティング | SNSを活用した採用手法 |
ダイレクトリクルーティング | 企業から求職者にアプローチをする採用手法 |
リファラル採用 | 社員等の紹介によって求職者を募集する採用手法 |
上記のように、採用の手段が異なりますので、新しく採用手法を検討する際には混同しないようにご注意ください。
ソーシャルリクルーティング5つのメリット
ソーシャルリクルーティングのメリットは、主に下記の5つです。
- 採用のミスマッチを防ぎやすい
- 拡散性が高く多くの求職者の目に留まる可能性がある
- SNS広告でターゲティング可能
- コストが抑えやすい
- イメージアップになる可能性がある
ここでは、ソーシャルリクルーティングのメリットについて詳しくご紹介していきます。
1.採用のミスマッチを防ぎやすい
一般的なSNSには、コメントやいいね、ダイレクトメッセージなどの機能が充実しているため、比較的気軽にコミュニケーションを取れるのが特徴です。
その結果として、採用のミスマッチを減らし、採用の成功に繋がる可能性が高まります。
2.拡散性が高く多くの求職者の目に留まる可能性がある
SNSの種類によって程度は異なるものの、一般的には拡散性が高いのがSNSの大きな特徴です。採用活動を行なっていることをSNSで投稿すると、フォロワー内の求職者はもちろんのこと、投稿が拡散されることによって、それに興味を持ったフォロワー外の求職者にも求人情報を届けられる可能性があります。
3.SNS広告でターゲティング可能
いわゆるオーガニック投稿と呼ばれる通常の投稿以外に、広告の配信ができるSNSもあります。SNS広告は、広告を表示するユーザー層を設定できることが多いため、自社の採用ターゲット(ペルソナ)に絞って広告を配信することが可能です。
通常投稿にあわせて広告も活用することで、普段は接触ができていなかった求職者にもアプローチできるため、ソーシャルリクルーティングはより成功しやすくなります。
4.コストが抑えやすい
多くのSNSは無料で利用できるため、広告を配信しない限りはコストが発生しません。
人件費は発生しますが、求人情報サイトへの掲載や人材紹介会社を利用するよりもコストを抑えた採用が可能です。
5.イメージアップにつながる可能性
SNSで採用や普段の仕事についても発信することで、求職者が業務内容や会社の雰囲気をイメージしやすく、イメージアップにつながる可能性があります。
なお、ソーシャルリクルーティングを積極的に行わない場合においても、企業のSNS運用には、消費者からのイメージアップや認知拡大などの効果を見込むことができます。
ソーシャルリクルーティング3つのデメリット
ソーシャルリクルーティングには多くのメリットがありますが、メリットのみではなくデメリットもあります。
- コミュニケーションの手間がかかる
- 運用者に依存する可能性がある
- 炎上のリスクがある
ここでは、上記のデメリットについてそれぞれ詳しくご紹介していきます。
1.コミュニケーションの手間がかかる
面接前にコミュニケーションが取れるのは企業・応募者共にメリットではありますが、多くの応募や問い合わせがあった場合は、1件ずつコミュニケーションを取る必要があるため、対応に追われてしまう可能性があります。
初期対応によって求職者が企業に抱くイメージが決まることもあるため、多くの連絡をもらった際にもコミュニケーションは1人ずつ丁寧に行うべきだと言えます。
2.運用者に依存する可能性がある
ソーシャルリクルーティングは、SNSを活用するという性質上、どうしても運用者に依存してしまいがちです。
個人アカウントはもちろんのこと、企業アカウントを運用する場合においても、担当者のアイデアや言い回しなどがそのまま発信内容となるため、担当者が退職した際には知見が溜まっていないことが起こりえます。
どのような方針で運用していくのか、実際にどのような点に注意して運用していたのかを明文化し、知見を溜めていくことが重要です。
3.炎上のリスクがある
モラルに欠ける発言や不謹慎な発言など、ユーザーが不快に感じるような投稿をした場合、いわゆる「炎上」をしてしまうリスクがあります。
フォロワー数が少ない場合にも炎上のリスクは十分にあるため、運用方針やコンプライアンスの遵守などは、常に意識しなければいけません。
たとえ炎上までいかずとも、求職者や消費者、取引先などが見た際に不快に思う投稿は避けるように注意しなければいけません。
ソーシャルリクルーティングに用いるサービス比較
ここでは、ソーシャルリクルーティングによく用いられるサービスを7つご紹介します。
それぞれの特徴やユーザー層を把握した上で、どのSNSでソーシャルリクルーティングを行うのか検討してください。
1.Twitter
Twitterは、140文字の短いテキストを投稿するSNSで、日本での月間利用者数は2017年10月時点で4500万人と非常に多く、学生・社会人・男女問わず幅広く利用されています。総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、20代の利用割合は69.7%となっており、約7割がTwitterを利用しているようです。
https://twitter.com/TwitterJP/status/923671036758958080
また、「リツイート機能」による拡散性の高さもTwitterの大きな特徴で、他のSNSよりも投稿がシェアされやすいため、求職者との接点を増やしやすいといえます。
Twitterは、利用者数の多さ、投稿の気軽さ、拡散性の高さなどから、ソーシャルリクルーティングを考えるときの第1候補のSNSとして挙げられます。
参照:総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(5-1-2 主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率(経年))」
参照:ウェブ電通報「三大SNSの特性と支持を得た理由」
2.Facebook
Facebookは実名で登録しているユーザーが多いことや長文の投稿が可能なことから、ソーシャルリクルーティングとの相性は非常に良いといえます。
ただし、Facebookは世界では20億人以上のユーザーが利用しているものの、日本では2017年9月には2800万人いた月間利用者数が2019年4月には2600万人まで減少しています。
加えて、総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、20代のFacebook利用割合は2015年の61.6%をピークに年々減少しており、2019年には39.3%まで減少しているため、若者層をターゲットにする場合はあまり効果的とはいえません。
参照:総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(5-1-2 主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率(経年))」
参照:Facebook Investor Relations「Facebook Reports Third Quarter 2020 Results」
参照:Cnet Japan「フェイスブック ジャパン長谷川代表が語る「退任の真意」–独占ロングインタビュー」
3.Instagram
Instagramは、Facebookが運営する画像・動画の投稿に特化したSNSです。
日本におけるユーザー数は3300万人(2019年3月時点)で、Facebookとは反対に若年層の利用が多いのが特徴です。
画像や動画のSNSということで視覚的に職場の雰囲気などが伝えやすく、イメージアップを狙えます。
参照:Facebook「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」
4.YouTube
YouTubeは、Googleの運営する動画投稿型のSNSで、全世界で毎日10億時間も再生されているといわれています。
最近では企業のYouTube活用も進んでおり、採用ノウハウを発信する企業アカウントも増えてきています。
参照:TNW「YouTube says people now watch 1 billion hours of video every single day」
5.TikTok
TikTokはショート動画を投稿するSNSで、10代~20代の若年層を中心に利用されています。
企業のTikTok活用はあまり行われているわけではありませんが、うまく活用できればTikTokを利用している若年層からのイメージアップにつながることでしょう。
参照:【随時更新】主要 SNS のユーザー数や年齢層をご紹介!この商材、広告出稿するならどの SNS 広告?
6.LinkedIn
LinkedIn(リンクトイン)はビジネス利用に特化したSNSで、ユーザーは勤務先やスキルなどの自己紹介を登録、企業は企業ページを作ることで、企業と求職者が接点を作ることができます。
ただし、日本でのユーザー数は200万人ほどとなっており、他のSNSと比べるとまだまだ少ないため、他のSNSと並行して活用するのがおすすめです。
参照:LinkedIn「About us(Statistics)」
7.LINE
LINEは日本最大のメッセンジャーSNSで、2020年10月時点で8,600万人が利用しています。日本の20歳以上の人口が約1億人のため、86%が利用している計算になります。
LINEをソーシャルリクルーティングとして利用する場合は、公式LINEアカウントを作成し、プッシュ型のコミュニケーションを取っていきます。
参照:LINE株式会社「2020年12月期第3四半期 決済補足説明資料」
ソーシャルリクルーティングのはじめ方
最後に、ソーシャルリクルーティングのはじめ方をご紹介します。
いきなりSNSの投稿を始めるのではなく、下記のステップで進めていくことをおすすめします。
ガイドラインの設定
まずはガイドラインの設定から行いましょう。
先述のようにSNSには炎上のリスクがあり、発信内容によっては求職者のイメージダウンにつながる可能性があります。また、担当者が変更になった際にアカウントの方向性が大きく変わり、自社のイメージが揺らぐことも避けたいものです。
運用目的、運用方針などを定めたガイドラインを設定し、そのガイドラインに沿ったSNS運用していくようにしましょう。
なお、ガイドラインは作って終わりではなく、実務や実情に沿った内容に随時更新していく必要があります。
SNSの決定
ガイドラインで決めた運用目的や運用方針から、どのSNSが適しているのを検討し、ソーシャルリクルーティングで活用するSNSを決定します。
特定の1つに絞る必要はありませんが、いきなり複数のSNSを運用するのは難しいため、まずは上記でご紹介したSNSのいずれか1つから始めるのがおすすめです。
コンテンツを追加しながら運用開始
個人アカウントであればSNSの投稿はつぶやきや個人の意見・感想である場合もありますが、企業が投稿する場合は会社としてのコンテンツであるということを意識しなければいけません。
定期的に投稿することで求職者からの認知が獲得できるため、品質を考えるあまり投稿数が減ってしまうのは避けなければいけませんが、最低限の品質と信頼性を担保し、設定したガイドラインに沿って、コンテンツを定期的に追加しながら運用してください。
ソーシャルリクルーティングや採用ページを有効活用してミスマッチを防止
ソーシャルリクルーティングを活用することで、応募者の増加や企業としてのイメージアップなど多くのメリットがあります。
特に、事前コミュニケーションが取れることによって、採用ミスマッチが防げるのは大きなメリットだと言えます。採用ミスマッチは企業・求職者どちらにとっても避けなければいけない重要な採用課題で、企業としてはミスマッチを生まないための対策は最大限にとるべきです。
採用ミスマッチを防ぐ方法として、採用ホームページの作成・充実も1つの手段です。ソーシャルリクルーティングと並行して採用ホームページを作成しておくことで、求職者の興味を引いた後にきちんとアプローチできるようになります。
採用ホームページや採用ページの存在しない企業は怪しいと感じ、応募をやめてしまう求職者もいるため、企業としては作っておくべきでしょう。
採用ホームページを新たに作る場合は、リクルートが提供する無料サービスAirワーク 採用管理で作るのがおすすめです。Airワーク 採用管理であれば無料で採用ホームページを作ることができ、世界No.1求人検索エンジン(※1)のIndeedにも自動で掲載できるため、応募者の増加も見込めます。
※1:Comscore 2021年3月 総訪問数
また、応募者とのやりとりや応募者の管理など、採用管理システムとしての機能も充実しているため、Airワーク 採用管理のみで採用を円滑に進めることが可能です。