法人カードの利用限度額はいくら必要?限度額の決まり方や引き上げできるかも解説
プライベートのクレジットカードに利用限度額があるように、法人のクレジットカードにも限度額が設定されています。会社が成長すればその分経費の金額も増えていきます。大事なときに「限度額に達していてカードが使えなかった」とならないように、経費の支払いに利用する法人カードの限度額はいくら必要か、普段から何に気を付ければ限度額を引き上げられるのかを確認しておきましょう。
目次
法人カードの適正限度額の目安は経費2カ月分
法人カードは事業活動のあらゆる経費の支払いに利用できるので、月に使用する経費の2倍=2カ月分を限度額の目安にしておくと良いでしょう。「経費1カ月分でいいのでは?」と思うかも知れませんが、クレジットカードは利用日から実際の支払いとなる口座からの引落しまでに1〜2カ月のずれが生じます。
クレジットカードの限度額とは「実際の引落しが終わっていないお金(未払い金)」の上限金額のことです。そのため、実際の支払いまでのタイムラグ期間に未払い金がたまっていきます。
カード会社によって確定日や引落日は異なりますが、利用額が月末に確定し、実際に引落しがされるのは翌月末の場合を例として考えてみましょう。
月に使用する経費50万円/カード限度額が50万円の場合
例えば、8月に50万円の経費を法人カードで支払ったとします。そうすると、限度額が50万円だった場合、実際の支払いが完了するまでの1カ月間はカードが使えない期間が発生してしまいます。
月に使用する経費50万円/カード限度額が100万円の場合
では、同じく月の経費が50万円だとして、限度額が100万円の場合はどうなるでしょうか。
8月にカード利用をした金額が、実際の支払いまで未払い金となりますが、残りの限度額が50万円あるので継続して、経費の支払いに法人カードを使うことができます。
一般的に法人カードの限度額はいくら?
法人のクレジットカードはさまざまな経費の支払いに利用するため、個人のクレジットカードより高い限度額である必要があります。基本的に、限度額はクレジットカードのランクによって変わります。
一般的な法人カードの限度額の相場は以下が目安となります。
あくまでも目安となりますが、個人事業主や自社で持つ法人カードのランクを選ぶ際の参考にしてください。
カードランク | 限度額の相場 |
---|---|
プラチナカード | 月100万円〜500万円程度 |
ゴールドカード | 月100万円〜300万円程度 |
一般カード | 月50万円〜100万円程度 |
法人カードの限度額が決まる要素
この項目では、クレジットカードの限度額の設定にあたって影響すると考えられる3つの要素について解説します。
カード会社によって決まる
クレジットカードを発行しているカード会社によって設定している限度額が異なりますので、まずはカード会社で比較するのが分かりやすいでしょう。
カードのランクによって決まる
次にカードのランクによって限度額が異なります。多くのカード会社が「プラチナカード・ゴールドカード・一般カード」と、3段階のランク分けを行っています。ランクが高くなるにつれ、限度額も高く設定されています。
審査によって決まる
クレジットカードが発行される前の審査が、限度額に影響する可能性も考えられます。審査の内容はどのカード会社も非公開ですが、法人の設立年数やこれまでにクレジットカードの支払い遅延・滞納がないことなどがポイントになるでしょう。
審査時の書類に希望の限度額を記載する場合には、自社の売上や実際の経費を鑑みて、大幅な乖離がない数字を記載すると希望が通りやすいと考えられます。先ほど紹介したように、月に使用する経費の2倍(2カ月分)程度を目安にしましょう。
法人カードの限度額を引き上げ、活用する方法
継続的に利用していて支払い遅延をしていなければ、カード会社に申請をすることで限度額の上限を引き上げることができるクレジットカードも多くあります。審査などに時間がかかることがあるので、余裕を持って申込みをするようにしましょう。
限度額の引き上げには「継続的な増額」と「一時的な増額」があります。では、どんなときに引き上げることが望ましいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
活用方法①成長のための投資として上限額を引き上げる
事業拡大など大きな1歩を踏み出す際には、法人カードの「継続的な増額」が効果的です。「新規出店をしたい」「新しく社員を雇いたい」など、事業を大きくするには経費も多くかかります。直接店舗や人を増やすタイミングでなくても、「宣伝広告を増やしていきたい」などの継続的に投資を増やして、今後の成長を見込んでいる際には、法人カードの上限額を引き上げることは有効な手段となるでしょう。
活用方法②繁忙期の準備期間のみ上限額を引き上げる
これは「一時的な増額」にあたります。繁忙期の準備期間など経費の支出が多くなると見込まれるときは、あらかじめ限度額を引き上げておくのが有効です。繁忙期での売上が入った後に支払いのタイミングがくるので、キャッシュフローの観点でもメリットがあります。
カードの限度額は経費のコントロールにも役立つ
法人カードの限度額は高ければ高いほうが良いかというと、そうとは限りません。
例えば、複数人の従業員が法人カードを利用している場合などは、気が付いたら経費の支払いが同月に重なってしまい、月の予算を超えていた……というように経費のコントロールが難しいケースもあるでしょう。
このような事態を避けるために、通常期はあえて限度額の上限を抑えておき、繁忙期や事業拡大期など必要が出たときにだけ限度額を引き上げるというのも一つの方法です。
余裕を持った資金計画や経費の管理は必須ですが、急な資金繰りの悪化リスクを回避するためにも、実際に必要な経費に見合った限度額の法人カードを選ぶことが大切です。現在、自社がどのくらい経費を使っているのか、今一度正確に把握し、どの程度の限度額が必要となるのか検討してみましょう。
監修者ひとことコメント
経費の支払いに法人カードを使うことで、利用から口座の引落時期まで1~2カ月ほどずれが生じます。クレジットカードの利点をうまく活用して、キャッシュフローを最適化する一助にしましょう。カードの利用を続けることで限度額を増額できることが通常ですので、法人カードが気になっている方は、なるべく早く申込み、早く使い始めるのが望ましいです。
監修者プロフィール
新関 広樹(にいぜき ひろき)FinTechコンサルタント
新関 広樹(にいぜき ひろき)FinTechコンサルタント
株式会社メンドレス代表。
アクセンチュアを経て、FinTechベンチャーのインフキュリオンにて、国内・東南アジアでのFinTech事業戦略立案、企画・実行支援に従事。2019年にメンドレスを立ち上げ、融資・決済・送金に関わるFinTechサービスの新規事業、業務改善のコンサルティング事業を運営、大手企業から外資スタートアップまで多くの企業を支援。
現在は、シンガポールを拠点に、コンサルティングに加え、金融教育の研究、およびグローバル金融教育サービスの企画・開発も運営。
https://www.mendoless.com/
※本ページに記載されている情報は2023年6月時点のものです
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