待合室の混雑解消や患者の“待ち時間の不満”を緩和してスタッフの負担を軽減する方法

病院やクリニックでの受診の際に、混雑した待合室で長時間待たされるのは患者にとって大きなストレスとなります。「人が密集している場所に長くいたくない」「あと何分待つかわからない」などの不満からクレームにつながる可能性があり、働いているスタッフの業務的・心理的負担にもなり得ます。本記事では、待合室の混雑解消や患者の“待ち時間の不満”を緩和し、スタッフの負担を軽減する対策について解説します。

待合室の混雑や待ち時間の長さが患者・スタッフに及ぼす影響

イラスト:病院・クリニックで待ち時間が発生していることにより、患者の案内・クレーム対応でスタッフに負担がかかっている状況や、長い待ち時間により患者の不満が募っている様子。

病院・クリニックでの患者の不満で多いのが、「待ち時間の長さ」ではないでしょうか。待ち時間が長くなると患者のストレスになるだけでなく、そのご案内やクレーム対応でスタッフの負担にもなります。

診察前の待ち時間の長さがどのような患者の不満、スタッフの負担となるのかを考えてみましょう。

患者の不満
  • いつまで待てばよいのかがわからないため、他の予定が組めない
  • 人が密集しているので、他の患者から病気がうつる可能性がある
  • 体調が悪いので家でゆっくりしたいがその場を離れることができない
スタッフの負担
  • ご案内やクレーム対応に時間が割かれて本来の業務ができない
  • 患者への申し訳なさから精神的なストレスが溜まる

これらは患者にとっては他院を選ぶ理由となりますし、スタッフにとっては離職する理由になります。

待合室の混雑解消・待ち時間の短縮は、病院・クリニックの運営改善において取り組むべき重要課題の一つと言えるでしょう。

他院の待ち時間はどれくらい?病院・クリニックの待ち時間の目安

図:外来患者の診察等までの待ち時間。15分未満27.8%、15分~30分未満24.8%、30分~1時間未満20.6%、1時間~1時間30分未満10.5%、1時間30分~2時間未満6.5%、2時間以上5.2%、不詳7.4%

出典:厚生労働省「令和5(2023)年受療行動調査の概況/図2 病院の種類別にみた外来患者の診察等までの待ち時間(基本集計)」新しいウィンドウで開くをもとに作成

厚生労働省が発表した「令和5(2023)年受療行動調査の概況」によると、外来患者の診察等までの待ち時間は「15分未満(※)」が27.8%と最も多く、次いで、「15分~30分未満」が24.8%でした。また、大病院・中病院・小病院といった病院の規模別に見ても、「15分未満」の回答が一番多い結果でした。
※待ち時間なしを含む

おおよそ50%の人が診察等まで30分以内の待ち時間を過ごしていることから、それ以上は「長い」という不満につながりやすいと考えられます。待ち時間は短い方が患者にとって良いという前提ですが、15分以内、遅くとも30分以内という時間が一つの目安と言えそうです。

混雑解消・待ち時間短縮のためにできる対策

受付・順番待ちシステムを導入する

急患に対応するために予約診療のみに切り替えるのが難しい病院・クリニックでは、受付・順番待ちシステムを導入するのが有効です。

受付・順番待ちシステムでは、病院・クリニックの待合室に設置しているディスプレイに待ち時間や待ち人数表示の連携が可能です。患者が受付処理をすると整理券を発行し、順番が近づくと電話やSMSなどで自動で呼び出します。

一度自宅に帰る、自分の車で待つなど、患者に待ち時間を自由に使う選択肢を持ってもらうことで不満の解消につなげられます。

イラスト:受付・順番待ちシステムを導入する場合の流れ。来店・受付→発券→スマホで待ち状況の確認→スマホで呼び出し(ご案内)を確認。

また、Webサイトにリアルタイムで待ち時間を表示してオンライン受付ができるなど、患者の待ち時間の不満を緩和し、スタッフの案内の負担を軽減する機能が充実しています。

事前予約を受け付ける

検査や経過確認など予定がたてられる場合は、事前予約を受け付けるのも一案です。

患者が混雑状況を確認しながら都合の良い日時にオンラインで予約を取れるようにすれば、混雑の偏りを緩和する効果が期待できます。

電子カルテの導入やレセコンとの連携

紙カルテで運用している場合、電子カルテを導入することで、受付業務や情報連携など業務の効率改善が見込めます。診療報酬明細書を作成するレセコン(レセプトコンピュータ)と電子カルテを連携させるのも一案です。

病院・クリニックともに、電子カルテの導入率は年々増えています。予約・受付といった患者の窓口業務に限らず、全体の業務改善に取り組むことで患者一人あたりにかかる時間や待ち時間の短縮につながります。

待合室の環境を整える

「やることがない」「いつまで待てばいいかわからない」のは、体感時間として長く感じられます。待合室で患者が快適に過ごせるよう環境を整えることで、待ち時間を短縮できなくても、患者の体感時間を短くする効果が期待できます。

例えば、待合室にテレビを置く、患者のインターネット接続用に無線LANを設置または開放するなどの方法があります。

イラスト:1つ目は待合に設置されているテレビを患者が眺めている様子。2つ目はスマホがWifiに接続している様子。

中待合室をつくる

スペースが許せば中待合室をつくるのも一つの方法です。患者を待合室から中待合室にご案内することで、順番が近づいていると知ってもらえます。

受付・順番待ちシステムを導入した内科クリニックの成功事例

最後に、受付・順番待ちシステムを導入することによって患者の満足度向上とスタッフの負荷軽減に成功した内科クリニックの事例を紹介します。

一人ひとりの患者に寄り添いしっかりとお話を聞くことを大切にしている同クリニックでは、患者の待ち時間の短縮のため電子カルテや予約制の導入などさまざまな取り組みを行っていました。それでも日によっては2、3時間の待ち時間が発生する日もありました。

受付・順番待ちシステムを導入し、Webサイトと待合室の外部モニターで待ち時間・待ち人数を可視化し、呼び出し状況を確認できるようにすることで、患者からの待ち時間に関する問い合わせを大幅に減少させることに成功。

導入による意外な効果としては、以前よりもスタッフが働きやすいと感じる職場環境になり、結果としてスタッフ満足度の向上にもつながっています。

事例の詳細はこちら

監修者ひとことコメント

患者の容態によって診察にかかる時間が異なるため、病院・クリニックでは直接的な待ち時間の短縮が難しいケースもあります。受付・順番待ちシステムを導入し、患者がその場を離れて順番待ちをするようになれば、待合室の混雑解消が期待できます。また、受付スタッフの案内にかかっていた業務負荷を軽減することで、他の業務に時間をあてられるようになるため、間接的に待ち時間の短縮にもつながるでしょう。

本記事ではシステム導入以外にも、患者の待ち時間への不満を緩和する対策を紹介しました。診察までの待ち時間を少しでも快適に過ごしてもらうために、自院に取り入れやすいものからトライしてみてはいかがでしょうか。

監修

写真:三浦 高(みうら たかし)

三浦 高(みうら たかし)中小企業診断士/1級販売士/起業コンサルタント(R)/経済産業省後援起業家支援Webサイト「ドリームゲート」アドバイザー

大学卒業後システムインテグレータにて、基幹システムの提案営業やインフラ設計・構築・保守業務に従事。予算感や規模感に合わせた運用がしやすく、システム停止率の低いインフラを、200社を超える企業に構築している。

また中小企業診断士としては創業補助金検査員・審査員に従事。V-Spiritsでは資金調達担当としてクライアントの補助金や融資の獲得を支援している。これまでの支援実績は、各種補助金累計獲得件数と融資獲得件数がそれぞれ350件を超える。

写真:坂井 優介(さかい ゆうすけ)

坂井 優介(さかい ゆうすけ)起業コンサルタント(R)/補助金コンサルタント(R)/経済産業省後援起業家支援Webサイト「ドリームゲート」アドバイザー

経済産業省系補助金支援、厚生労働省系助成金支援、マーケティング業務、税務会計、人事労務、中小企業のIT化、生産性向上支援の他、補助金や助成金などの資金調達を支援。2022年度の獲得補助金は2億円を超える。

2022年1月~5月には事前確認予約のWebサイトを構築し、トラブルなしで全国屈指の事前確認件数を達成した。

DX化を進める国の補助金「IT導入補助金」の支援機関としての登録、支援事業を担当しており、IT導入補助金の相談件数は年間40件ほど。多くの店舗や中小企業のDX化をサポートしている。

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※本ページに記載されている情報は2023年10月時点のものです