順番待ちシステムとは?機能と実現できること
順番待ちシステムは、店頭に設置した機器で受付したお客様に番号券を発券し、順番がきたら電話やSMSなどでお客様を呼び出すシステムです。
具体的に何ができるのか、一般的な順番待ちシステムの機能でご説明します。
待ち状況の表示/管理
店頭の受付用の機器に、現時点の待ち時間や待ち組数を表示して、待ち状況を“見える化”することができます。シンプルな機能ですが、これがあるだけで受付前に状況を聞かれるスタッフの手間が軽減されるだけでなく、お客様にとってもすぐに待ち状況が把握できるメリットがあります。
また、ご案内する時間を間違えてしまうなどの人為的ミスの防止に役立ちます。ご案内中の呼出番号を大画面モニターに映すことができるシステムもあり、病院・クリニックでも活用されています。

受付・番号券の発券
お客様が受付すると番号券が発券されます。飲食店であればテーブル席かカウンター席の希望など、お店が聞きたい受付時の質問項目を追加できるシステムもあります。
また、海外のお客様が操作しやすいように、表示する言語を選べる多言語対応のシステムもあります。
受付したお客様は、店頭から離れて順番を待つことができます。オンライン受付ができるシステムであれば、受付をした後に入店予定の時間に合わせてお店に向かうことも可能です。
リアルタイムで、呼出状況をお客様のスマホに表示できるシステムもあります。お客様は待ち時間の予定を立てやすく、呼び出し直前の頃合いでお店に戻ることができます。
基本的には、受付番号順にご案内する順番をシステム上で自動管理しますが、突発的な事情があれば店舗側で順番の先頭に割込受付ができるなど、柔軟に対応できるシステムもあります。
例えば、病院・クリニックの急患などのやむを得ない事情であっても、目の前で順番待ちしてくださっている患者様がいると受付スタッフが対応しづらいこともあります。患者様・受付スタッフ両方のストレスを軽減できる点も、システム活用のひとつの利点です。

お客様の呼び出し
順番がきたらシステムを介して、SMSやLINEのほか自動音声電話などでお客様を呼び出します。その方法はシステムによりさまざまで、選択肢のなかからお客様が選べるものもあります。

データ分析
順番待ちシステムには受付データが蓄積されるため、集計結果を分析レポートなどで見ることができるものもあります。これがわかると、例えば混雑する時間のシフト人数を増やすなど、店舗のオペレーションの見直し・改善に役立てることができるでしょう。

順番待ちシステムを導入するメリット
これまで紹介した機能を活用することで、順番待ちシステムによってどのようなメリットが得られるのかをまとめました。
メリット1:行列・混雑の解消
お客様がその場を離れて順番を待つことができるため、お店の前の行列や待合スペースの混雑の解消が期待できます。近隣店舗への影響やお客様のストレスが気になっている場合は、順番待ちシステムの導入は有効な対策といえます。

メリット2:業務の効率化
紙台帳の場合、お客様にお名前や人数などを記入いただいたあと、呼出状況の管理や呼び出しはスタッフが行います。この受付業務をシステムに任せることで、このスタッフの時間を別の業務に充てられるほか、文字の読みづらさからお名前を呼び間違えてしまったり、人数を間違えてしまったりなどの人為的ミス防止にも役立ちます。

メリット3:顧客満足度の向上
お客様は、順番を待つ間に買い物や用事を済ませたり、辺りを散策したりと時間を有効に使うことができます。例えば、病院・クリニックの患者様であれば一度自宅に戻るなど、待ち時間に体を休めてもらうこともできるでしょう。
人は体感時間として、ただ待っているよりも何かをしているほうが短く感じるものです。仮に実際の待ち時間の短縮が難しくても、お客様に待ち時間を快適に過ごしていただくことで、顧客満足度の向上につながります。

メリット4:売上アップ
行列を見て「並びたくないから」と入店を諦めてしまうケースや、受付後にお客様が戻らないケースといった取りこぼしを防ぐことで、売上アップの効果も期待できます。
受付時に待ち時間を表示しておくことで、お客様は行列ではなく実際の待ち時間を目安に待つかどうかを決めることができます。
せっかくお店に興味を持って足を運んでくれたお客様を逃してしまうのは、とてももったいないことです。運用のシステム化を検討する際はつい業務効率に目がいきがちですが、実は来店数を増やす一助にもなるのです。

順番待ちシステム導入の4ステップ

順番待ちシステムの導入をする場合、どのような流れで検討を進めていけばよいのでしょうか。各工程での留意ポイントとともに時系列に沿って説明します。
1.現状の運用フローを整理する
導入するシステムを探し始める前に、実施しておきたいのが現状整理です。
まず、今解決したい課題は何か、現状の運用フローのどこに問題点があるのかを明らかにします。次に、現状の運用フローから変えたくない部分や譲れない点はどこかを考えます。それは、「お店が提供したいサービスの質」に結びつくものであるはずです。
本来の目的を見失い、目先のシステム導入が目的にならないようにするためには、課題や問題点とお店が大切にしたい点の両方を事前に明らかにして、現状の運用フローを整理することがとても大切です。
2.運用フローに合うシステムを探す
現状の整理ができたら、「課題が解決できるか」「譲れない点を守れるか」という観点で複数のサービスを比較して、実現したいサービスの提供が叶うシステムを探しましょう。
このとき、動作環境の確認や費用面の検討もあわせて行います。動作環境の確認は、設備の見直しのよい機会になります。手持ちの機器が利用したいサービスの動作環境外であれば、買い替えを検討する必要があります。
3.システムを利用した運用フローを決める
導入するシステムの目星をつけたら、システムを利用した運用フローを決めていきます。運用開始後の混乱を最小限に抑えるためにもなるべく事前に精緻に運用フローを策定することをおすすめします。
可能であれば試用期間などを活用して、実際にシステムを触りながら動作に不具合がないか、想定通りの運用フローで問題なくオペレーションを回せるかを確認できるとよりよいでしょう。
このとき、口頭や電話での受付の扱いや呼び出し時にいないお客様への対応など、例外に対する運用まで決めてスタッフへの周知やお客様へのご案内の準備を進めておきましょう。
準備の一例
呼び出し時にいないお客様への対応を「呼び出し後、10分過ぎたら次のお客様をご案内する」と決めた場合
- スタッフ向けマニュアルに記載し、周知する準備をする
- お客様からのクレーム抑止のために、受付機器の横に注意喚起用の告知ポスターを作成する
4.契約・運用を開始する
契約後、実際の運用にのせるまでは一定の時間がかかります。策定した運用フローに沿ってシステムを設定し、スタッフへの周知やお客様への案内の準備に時間をしっかりとりましょう。
システムの設定に不安がある場合には、設定時に個別にサポートを受けられるか、わかりやすいオンラインヘルプがあるか、など契約後のアフターサービスについても事前に確認しておきましょう。
【業界別】順番待ちシステムの導入事例
最後に、システムの導入により、抱えていた課題を解決することに成功した飲食店とクリニックの2つの事例を紹介します。
飲食店事例:行列を見て帰ってしまうお客様もいたファミリー向けレストラン
土日を中心に混雑するという郊外のファミリーレストラン。店内は広くゆったり過ごせますが、入口が狭い建物のつくりのため混雑時には店頭に行列ができており、それを見て帰ってしまうお客様も多い状況でした。
このような来店機会の損失をなくすために、順番待ちシステムを導入。お客様は目安となる待ち時間がわかり、お店から離れて順番を待てるため、車などで待っていただけるようになりました。
受付時に大人と子どもの人数をあらかじめ入力してもらうことで、ご案内する席の調整ができるなど、よりスムーズで丁寧な接客サービスの提供にもシステムが役立っています。
事例の詳細はこちら病院・クリニック事例:ショッピングモール内の小さな眼科クリニック
県内有数の売り場面積を誇るショッピングモール内にあり、スペースに限りのある眼科クリニック。1日150名を超える患者様が来院されることもあり、慢性的な混雑に頭を悩ませていました。
待合室の混雑や正確な待ち時間がわからない状況では、患者様にとってもスタッフにとってもストレスになります。さらに、「待ち時間が長い」という患者様からの口コミ投稿により、経営への影響にも懸念がありました。
このような課題解決のために、順番待ちシステムを導入し待合室の混雑を解消。スタッフが一人一人の患者様と向き合う時間を作ることができ、質の高い接客を実現できるようになりました。結果として口コミが改善し、新規集患にもつなげられています。
事例の詳細はこちら監修

三浦 高(みうら たかし)中小企業診断士/1級販売士/起業コンサルタント(R)/経済産業省後援起業家支援Webサイト「ドリームゲート」アドバイザー
大学卒業後システムインテグレータにて、基幹システムの提案営業やインフラ設計・構築・保守業務に従事。予算感や規模感に合わせた運用がしやすく、システム停止率の低いインフラを、200社を超える企業に構築している。
また中小企業診断士としては創業補助金検査員・審査員に従事。V-Spiritsでは資金調達担当としてクライアントの補助金や融資の獲得を支援している。これまでの支援実績は、各種補助金累計獲得件数と融資獲得件数がそれぞれ350件を超える。

坂井 優介(さかい ゆうすけ)起業コンサルタント(R)/補助金コンサルタント(R)/経済産業省後援起業家支援Webサイト「ドリームゲート」アドバイザー
経済産業省系補助金支援、厚生労働省系助成金支援、マーケティング業務、税務会計、人事労務、中小企業のIT化、生産性向上支援の他、補助金や助成金などの資金調達を支援。2022年度の獲得補助金は2億円を超える。
2022年1月~5月には事前確認予約のWebサイトを構築し、トラブルなしで全国屈指の事前確認件数を達成した。
DX化を進める国の補助金「IT導入補助金」の支援機関としての登録、支援事業を担当しており、IT導入補助金の相談件数は年間40件ほど。多くの店舗や中小企業のDX化をサポートしている。
https://v-spirits.com/※本ページに記載されている情報は2023年11月時点のものです




監修者ひとことコメント
本記事では、口頭や紙台帳で受付しているお店や病院・クリニックの方に向けて、システムを活用し受付業務を効率化するための検討ポイントを解説しました。
新規開業の場合は、最初からシステムありきで受付・順番待ち管理の運用フローを決められるため、よりシンプルに検討を進めることができます。今後起こりうる課題に備えて、開業のタイミングから受付業務の省力化を行い、メインとなる接客業務に注力できる環境を整えておくのもよいでしょう。