スムーズに待ち時間を案内する方法。“待ち”の不満を軽減し顧客満足度をあげるには?

飲食店や病院・クリニックでお客様・患者様の満足度を下げてしまう要因の一つに「待ち時間の長さ」が挙げられます。しかし、客足をコントロールして待ち時間をゼロにするのは難しく、集客が好調になるほどお客様・患者様の待つことへの不満に向き合う必要がでてきます。そこで本記事では、待つ側の心理を踏まえながら、待ち時間を短縮する、あるいは快適に過ごしてもらうための対策や「受付・順番待ちシステム」を導入してスムーズに案内する方法について解説していきます。

待ち時間から“サービス”は始まっている

待ち時間もお店や病院・クリニックが提供するサービスの一部と言えます。

例えば飲食店を例に考えてみます。お客様は、味や接客などのサービスの質だけでなく、立地や待ち時間といった利便性の良さも考慮してお店を選びます。病院・クリニックの場合も同様で、「以前訪れた際に待ち時間が長かったから、今度は別の病院に行こう」と考える方もいます。

お客様・患者様の待ち時間を短縮できれば、他店舗・他院に人が流れてしまうのを防ぐことができます。待ち時間を短縮するには、「サービス提供の速度を早め回転率を上げる」「席数やスタッフの稼働人数を増やす」といったオペレーションの変更が有効です。しかし、そのためには、混雑する曜日や時間帯の把握やコストの見直しなど、十分な検討が必要なため容易なことではありません。

待ち時間の短縮のためにオペレーションの改善に取り組みながらも、まずは、お客様・患者様に待ち時間を快適に過ごしてもらえる環境を整えましょう。

待ち時間を快適に過ごしてもらうには?

それでは、お客様・患者様に待ち時間を快適に過ごしてもらうには、どのような対策ができるのでしょうか。ここでは3つご紹介します。

待ち時間や待ち組数がわかるようにする

待つ側が知りたいのは「どのくらい待つか」の待ち状況です。店頭や受付に待ち時間や待ち組数を表示しておけば、お客様・患者様はわざわざスタッフを呼び止めて確認しなくて済みます。

待ち状況の表示には手書きの案内板を用意することもできますが、受付から呼び出しまで待ち状況を管理できる「受付・順番待ちシステム」を導入する方法もあります。案内するたびスタッフが書き換える必要がないため、運用に手間がかかりません。

イラスト:受付用の機器に待ち時間が表示されている様子。

待ち時間の体感を短縮する

実際に待ち時間を短縮するのが難しくても、待ち時間の体感を短く感じられるように工夫することで待つ側のストレスを軽減できます。

人間の心理として、何もせずにただ待っている時間は長く感じると言われています。待ち時間を過ごしていただく間にメニューを見てもらう、待合スペースに椅子やテレビを用意するなど、お客様・患者様が手持無沙汰にならないよう工夫しましょう。

イラスト:テレビ鑑賞をして待ち時間を過ごしている親子の様子。

店頭を離れて待てるようにする

受付後、店頭を離れて待てるようにすれば、お客様・患者様に待ち時間を有効に使っていただけます。

しかし、紙台帳に電話番号などの連絡先を記入してもらいスタッフが呼び出すとなると、運用負荷の高さが懸念されます。スタッフに負荷をかけたくない場合には、受付から呼び出しまでの業務を自動化できる「受付・順番待ちシステム」の導入が便利です。

イラスト:お店を離れて待ち時間を過ごしているカップルの様子。

受付・順番待ちシステムで待ち時間を案内する方法

イラスト:受付・順番待ちシステムで待ち時間を案内する方法。1.モニターなどを使用し待ち状況を見える化する。2.スマートフォンで呼出状況を確認できることでお客様に快適な待ち時間を提供する。3.受付・順番待ちシステムで順番が来たら迅速にお呼び出しする。

スムーズかつ快適な待ち時間案内には、受付時に発行される整理券の順に電話やSMSなどで自動呼び出しができる「受付・順番待ちシステム」が有効です。システム導入で実現できることは、主に下記の3つです。

1.待ち状況を「見える化」する

システムを導入した場合、待ち時間・待ち組数が表示される受付用の機器で、どれくらい待つのかを確認したうえで受付できます。待合室などの外部モニターに連携し、呼出番号を大画面モニターに映すことができるシステムもあります。

2.快適な待ち時間を提供する

受付後、お客様・患者様ご自身のスマホで、いつでも呼出状況を確認できる機能を持ったシステムであれば、戻り時間の目安をつけるのに役立ちます。

前述のように、待ち時間の過ごし方によって体感時間は変化します。システムを導入し受付後に店頭を離れられるようにすることで、手持無沙汰な時間を過ごすよりも待ち時間の体感を短く感じてもらえる効果が期待できます。

3.順番がきたら迅速にお呼び出しする

スタッフの手が回らずにすぐにお客様・患者様を呼び出しできないケースは少なくありません。結果としてお伝えしていた時間よりも案内が遅くなってしまったり、スタッフが呼び出しを忘れてしまったりすればクレームになる可能性も考えられます。

システムで順番がきたお客様・患者様を自動で呼び出しできるようになれば、呼出遅れ・呼出漏れの防止につながります。

待ち時間案内に受付・順番待ちシステムを導入するメリット

「受付・順番待ちシステム」の導入は、お店や病院・クリニック側にとってもお客様・患者様にとってもメリットがあります。それぞれ整理してみましょう。

お店/病院・クリニック側のメリット

店頭の行列や待合スペースの混雑を解消できる

お客様・患者様にその場を離れて待っていただくことができるため、店頭の行列や待合スペースの混雑を解消することができます。行列・混雑を見て帰ってしまうといった来店・来院機会の損失を防ぐことができる他、近隣の店舗や住宅とのトラブル回避にも役立ちます。

イラスト:行列に並んでいるお客様の不満が募り、数人は離脱している様子。

受付スタッフのストレスを軽減できる

お客様・患者様から「あと何分かかる?」と質問が相次いだり、「待たせ過ぎだ」といったクレームをいただいたりすれば、受付スタッフにとって大きなストレスになります。

システムを導入すると、お客様・患者様ご自身であと何組待ちか確認できるようになるため、質問やクレームが減り、受付スタッフの精神的な負担が軽減するでしょう。

イラスト:お客様からの質問やクレーム対応に追われているスタッフの様子。

顧客満足度が向上し集客面でプラスに働く

スムーズな受付・案内や快適な待ち時間の提供により、顧客満足度の向上が期待できます。また、人為的過誤や失敗の防止により満足度を下げてしまう可能性の芽を摘む役割も担ってくれます。

次回利用への動機付けや口コミ評価の向上など、集客面でもプラスの効果が期待できます。

イラスト:お客様から星4、星5などの評価が提示されている様子。

業務を効率化しサービス品質・生産性アップにつなげられる

スタッフが行っていた受付・案内業務をシステム化することで、空いた時間を他の業務に充てられるようになります。

その他にも、システムに蓄積される受付データから混雑時間を分析するなど、サービス品質・生産性アップのために活用できます。

イラスト:右肩上がりのグラフを眺めているスタッフの様子。

お客様/患者様側のメリット

スタッフに声をかけずに気軽に受付できる

待ち状況の確認と同じく、忙しそうなスタッフを呼び止めることなく自らシステム上で受付できる気軽さが嬉しいお客様・患者様もいるでしょう。

お店に行かずともオンライン上で受付できるシステムであれば、予約や状況確認のために電話する必要がなく、時間を調整して向かうことができるため、より利便性が高くなります。

イラスト:お客様が受付用の機器で受付をしている様子。

待ち状況を確認できる

受付時に待ち状況がわかるため、そのあとの予定を鑑みて待つかどうかを判断することができます。待っている間も、ご自身のスマホから待ち状況を確認できるシステムであれば、残りの待ち時間の過ごし方を決めるのに役立ちます。

イラスト:スマートフォンに待ち状況が表示されている様子。

待ち時間を自由に過ごせる

その場を離れて待つことができるため、時間を有効に使うことができます。

特に外で並ぶ必要がある場合には、季節や天候によっては過酷な環境下で待つことになります。車の中や近くの商業施設、あるいは家から近ければ一度家に帰るなど、待つ場所の選択肢を幅広く持てるメリットは大きいでしょう。

イラスト:お客様がお店の外で自由に待ち時間を過ごしている様子。

待ち時間への対策を検討する際のポイント

最後に、待ち時間への対策を検討するにあたって考え方のポイントを2つ紹介します。

サービスの品質を下げてしまわないか

お客様・患者様の待ち時間を短縮したいからといって、回転率をあげるために実サービスの品質を落とすようなことがあっては本末転倒です。オペレーションを見直す際には、提供するサービスの品質は下げずに改善する方法を考えましょう。

コスト面で折り合いがつくか

対策を考えるにあたってはコスト面で折り合いがつくかも重要なポイントです。

「受付・順番待ちシステム」を導入する場合、機器購入の初期導入コスト10万円程度、月々の運用コスト1万円程度に収まるものもあり、比較的コスト負担を抑えやすいのが特徴です。
例えば、スタッフの増員をすれば人件費などの運用コストが増えることになります。システム導入をする場合・しない場合など、迷う際はそれぞれにかかるコストを試算して折り合いのつく対策を選びましょう。

監修者ひとことコメント

業務のシステム化は、「効率化」だけを目的としているように捉えられることもありますが、あくまでも実現したいことを叶えるための一助となるものです。システムの導入自体を目的とするのではなく、提供したいサービスのために課題を感じている業務を見直し、その中でシステムに何の役割を持たせるのかを考えることが大切です。
待ち時間の案内への課題解決についても同様です。まずは、受付から案内するまでのサービス提供において、今の運用の課題と実現したいことを見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

監修

写真:三浦 高(みうら たかし)

三浦 高(みうら たかし)中小企業診断士/1級販売士/起業コンサルタント(R)/経済産業省後援起業家支援Webサイト「ドリームゲート」アドバイザー

大学卒業後システムインテグレータにて、基幹システムの提案営業やインフラ設計・構築・保守業務に従事。予算感や規模感に合わせた運用がしやすく、システム停止率の低いインフラを、200社を超える企業に構築している。

また中小企業診断士としては創業補助金検査員・審査員に従事。V-Spiritsでは資金調達担当としてクライアントの補助金や融資の獲得を支援している。これまでの支援実績は、各種補助金累計獲得件数と融資獲得件数がそれぞれ350件を超える。

写真:坂井 優介(さかい ゆうすけ)

坂井 優介(さかい ゆうすけ)起業コンサルタント(R)/補助金コンサルタント(R)/経済産業省後援起業家支援Webサイト「ドリームゲート」アドバイザー

経済産業省系補助金支援、厚生労働省系助成金支援、マーケティング業務、税務会計、人事労務、中小企業のIT化、生産性向上支援の他、補助金や助成金などの資金調達を支援。2022年度の獲得補助金は2億円を超える。

2022年1月~5月には事前確認予約のWebサイトを構築し、トラブルなしで全国屈指の事前確認件数を達成した。

DX化を進める国の補助金「IT導入補助金」の支援機関としての登録、支援事業を担当しており、IT導入補助金の相談件数は年間40件ほど。多くの店舗や中小企業のDX化をサポートしている。

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※本ページに記載されている情報は2023年12月時点のものです