【業務改善助成金】対象や支給金額など申請までの流れをわかりやすく説明
令和2年度の業務改善助成金は範囲が広がり、対象の事業者が増えました。令和1年まではあまり注目されていなかった助成金なので聞きなれないかもしれませんが、本年度は一部の要件が緩和されたため、多くの中小企業が要件を充たす可能性があります。
この記事の目次
業務改善助成金とは
業務改善助成金は、「生産性や業務効率を引き上げるような設備投資を支援する事で、単純作業を縮小し、従業員の賃金を引き上げる」ための助成金です。生産性と賃金には密接な関係がありますが、国からの「賃金引き上げ要請」のみでは会社の利益を圧迫してしまいます。そこで「業務効率化」を進めていくことで、賃金引き上げを後押しする仕組みです。
(事例)生産性と賃金の関係
販売価格が同額のA社B社の商品があったとします。両者の違いはハンドメイドによる製造か、オートメーションによる製造かどうかという言う点でした。お互いの会社が200個(売上は総額100万円)の商品を製造する場合の製造原価は以下の通りです。
A社(ハンドメイド/3名で製造) | B社(オートメーション/1名で製造) | |
---|---|---|
材料費 | 200,000円 | 200,000円 |
労務費 | 700,000円 | 400,000円 |
減価償却費 | 30,000円 | 200,000円 |
利益 | 70,000円 | 200,000円 |
A社は労務費が高く、B社は減価償却費(設備投資したものを毎年経費按分したもの)が高いことが分かります。また、200個の商品を製造するのに、A社は3名で取り掛からなければならないのに対して、B社は1人で十分です。賃金平均で見てもA社は1人あたり約23万円、B社は40万円です。B社はオートメーション化が可能な部分を洗い出し、システムを導入して、生産性を高めた結果、賃金を引き上げることに成功しました。
業務改善助成金の対象と要件
業務改善助成金の助成対象となるものは、「生産性を引き上げるもの」以外にも「生産性を引き上げるためのノウハウ」を含みます。「もの」の例としては、POSレジ導入による在庫管理の短縮、専用機器の入替による作業効率の改善、給与・勤怠システムの導入による給与計算の自動化(短縮)等があります。「ノウハウ」の例としてコンサルタントを雇用して現場改善活動を導入、コンサルタントのノウハウに基づくコンサルティングや機器導入等が含まれます。
このように助成金の対象範囲は広く、業務効率化が進むのであれば対象にすることが出来ます。
業務改善助成金の要件
業務改善助成金は、以下の2つの要件を充たしている事業場(同じ場所、区画、施設、店舗を対象)を保有する中小企業・小規模事業者を対象としています。
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が30円以内
- 事業場規模100名以内(1名以上)
令和1年度までは、上記の2つ以外にも「事業場内最低賃金850円未満」という要件が含まれていたため、最低賃金時間額が850円以上の首都圏は対象とならなかったのですが、令和2年度公表分では、「事業場内最低賃金850円未満」が除かれたため、47都道府県すべての事業場が対象となりました。
上記以外にも支給に当たり以下の要件が含まれます。
- 賃金引上計画を策定(就業規則等に規定)
- 引上げ後の賃金額を支払う
- 生産性向上機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
- 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと
業務改善助成金の支給金額
令和2年度の業務改善助成金には、最低賃金引上げ予定額に応じて25円コース、30円コース、60円コース、90円コースの4コースがあります。このうち、25円コースのみ「事業場内最低賃金850円未満」という要件が入りますので、首都圏は実質30円、60円、90円の3コースのみという事になります。
コースにより助成金の上限額が異なり、さらに対象となる人数によっても助成上限額が変動します。
生産性要件とは
通常の助成率と比べて生産性要件を充たすことで助成率が引きあがりますが、生産性要件の判断において、以下の2つの要件の内いずれかを充たす必要があります。なお、3年前の決算書を用いる事から設立後3年以上経過していない場合には、生産性要件の判定対象外になります(助成率は上がらない)。
- 3年度前に比べて「生産性」が6%以上伸びていること
- 3年度前に比べて「生産性」が1%以上(6%未満)伸びていること(※1)
※1 ①の要件については、①を充たさなかった事業所の承諾を経て労働局から金融機関へ与信取引の照会を行い「一定の事業性評価(市場での成長性、事業特性、強み等)」を受けた場合に生産性要件を充たしているとみなすものです。
生産性の算定式
付加価値(営業利益+人件費+減価償却費+賃借料+租税公課)/雇用保険被保険者数
参考:厚生労働省「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」
業務改善助成金の申請方法と注意点
業務改善助成金を申請するためには、所定の交付申請書に必要事項を記載していく必要があります。またこれに併せて様々な添付書類が必要になり、申請後と申請前に注意すべき点がいくつかありますので順を追って解説します。なお、令和2年度の業務改善助成金の申請締め切りは令和3年1月29日までとなっております。
申請方法と流れ(申請から受給まで)
申請から受給までの簡単な流れは以下の通りです。申請書や添付資料として必要となるものについては厚生労働省に様式がありますのでダンロードしてお使いください。
申請書様式:「交付申請書(様式第1号)」
記載例:「業務改善助成金 交付申請書等の書き方と留意事項について」
- 交付申請書(様式第1号)を作成し添付書類と共に管轄の都道府県労働局へ提出する
申請する都道府県労働局により若干異なりますが、以下の書類は作成が必要になります。
a.交付申請書
b.国庫補助金所要額調書(別紙1)
c.事業実施計画書(別紙2)
d.見積書、相見積書(原本)
e.生産性要件算定シート(生産性要件を受ける場合)
f.雇用者の情報が分かる資料(労働者名簿、労働条件通知書、賃金台帳等) - 助成金交付決定通知を受け取る
都道府県労働局において、①により提出された書類を審査した上で内容が適切であれば、事業所に助成金交付決定通知書が届きます。 - 交付申請書に記載した業務改善計画や賃金引上げ計画を実施する
①にて見積もりを取った設備を購入し、また賃金引上げ計画として設定した賃金を実際に支払います。 - ③を実施した状況を事業実績報告書(様式第9号)に記載し都道府県労働局へ提出する
③の状況を所定の様式に記載し、都道府県労働局へ提出します。 - 助成金額の確定通知を受け取る
④の事業実施報告書を踏まえて、内容が適切であれば助成金額が決定され、事業所に助成金額の決定通知書が発送されます。 - 支払請求書(様式第13号)を提出し、助成金を受け取る
厚生労働省所定の請求書フォーマットに口座情報等を記載して提出します。その後記載した口座に助成金が振り込まれます。
注意点
業務改善助成金に限った話ではありませんが、設備投資に関する助成金については「交付決定通知前」に購入した設備投資については助成金の対象外になります。また、今回は「賃金引き上げ」も要件に含まれているため、「交付申請前」に賃金を引上げた場合も助成金の対象外ですので注意してください。
- 交付決定通知前に行った設備投資は対象外
- 交付申請前に行った賃上げは対象外
また、実施計画や賃上げ計画を変更する場合には、必ず所定のフォーマットにて変更に関する承認申請を受けるようにして下さい。
業務改善助成金の事例
業務改善助成金の対象範囲は多いですが、実際に生産性が上がらなければ助成金を受けられない可能性があります。そこで、成功事例の一部をご紹介します。
飲食店
飲食向けのコンサルタントを雇用し、全料理の原価(材料費と調理における工数から労務費を按分)を集計し販売価格と照らして採算を比較した。その上で好採算の商品とセット価格を駆使してメニューのラインナップを刷新した結果、売上が増加した。また、手間はかかるがよく売れる商品に対して、機器を導入する事で販売数を確保しながら収益性を引き上げることが出来た。
小売店
従来は在庫の入出庫をExcelで行っていたが、コンサルタントの指導により入出庫や顧客管理、取引先への支払全てをPOSレジ導入により解決するよう提案された。POSレジ導入により入出庫管理のみではなく、顧客情報が連動したため、追加購入などのフォローがしやすくなり売上が増加した。また、売れ筋の商品や季節的な流行の販売数をグラフ化する事で分かりやすくなり、品薄になった商品を仕入れる際もPOSレジから発注できるため、業務がスムーズになった。
サービス店
オープン当初は、顧客も少なく常連客だけだったが、ネット広告や口コミにより徐々に予約が増えてきた。その結果、顧客管理がスムーズに行えなくなってしまっていたところ、POSレジを用いた予約管理システムの提案を受けて導入した。POSレジを導入したことで、再来予約の顧客に対して、いつ来てくれたかやその時の状況などを管理保存できるため、再来のフォローアップや接客がスムーズに行えるようになり、顧客満足度が向上した。
まとめ
- 業務改善助成金の助成金対象はかなり広い
- 令和2年度から最低賃金850円未満がなくなったため、対象事業者も拡大
- 設立3年以下の場合は、生産性要件が適用されないため通常の助成率になる
- 申請の締め切りは令和3年1月29日まで
設備投資のみではなく、コンサルタントのノウハウも助成金の対象になるため、非常に実効性の高い助成金であると思います。業務効率が向上して損になることは何もないので、是非この機会に業務効率化助成金の申請を検討してみてください。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士
公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。
上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。