「定款変更」必要?不要?手続きの方法は。登記と何が違う?
会社を設立する際に必ず作成する定款(ていかん)ですが、どのように作成したら良いかご存知でしょうか。また、数年後に定款の内容を変えたくなった場合には、どのような手続きが必要になるのか迷う方もいらっしゃると思います。今回は、詳しくわからないという方に定款作成や定款変更について丁寧に解説いたします。
この記事の目次
「定款」とは? 「定款変更」とは?
定款とは、法人の組織構成や活動内容について定めた規則です。定款に必ず記載しなければならない絶対的記載事項と、記載がないと効力が生じない相対的記載事項、それ以外の任意的記載事項があります。また、定款変更は定款に記載されている内容を変更することを指しますので、任意で記載したものを変更する場合も含まれます。
なぜ定款が必要なのか
定款は会社法により厳格に記載しなければならない内容を決めています。なお会社法の定め以外でも、明確にしたいものがあれば定款に記載することが可能です。もしこれらの規定がなければ無秩序となり、会社としての方向性を見失ってしまいかねません。そのため定款はその法人の根幹を支えるルールという位置づけであり、必要なものなのです。
原始定款と現行定款とは?
「原始定款」とは、会社を設立するときに作成する定款のことを指し、公証人の認証を受けてその効力が発生します。一方、「現行定款」とは今までの定款変更を踏まえ、現状の定款内容を反映した定款を指します。定款変更手続きでは、公証人からの認証を受けた原始定款を変更することは出来ないため、現行定款を更新していくことになります。
定款の中にある種類
前述の通り、定款には絶対的記載事項と、相対的記載事項及び任意的記載事項があります。それぞれの種類ごとにどのような内容を記載するのか解説します。
絶対的記載事項
絶対的記載事項は、定款に必ず記載が求められる事項です。会社法27条により5つ定められていて、この記載のない定款は無効とされています。
目的 | 事業の目的を記載します |
商号 | 会社の名称を記載します |
本店の所在地 | 会社の本店住所を記載します |
設立に際して出資される財産の価格又はその最低額 | 出資される財産の価格を記載します。この財産の価格が資本金になります |
発起人の氏名又は名称及び住所 | 発起人とは、法人の立ち上げメンバーであり出資者のことを指します |
発行可能株式総数 | 株式の発行可能総数を記載します |
相対的記載事項
相対的記載事項は、会社法28条及び29条に記載されています。定款に記載が無くても定款自体の効力は持ちますが、対外的な効果が認められないものを言います。数が多いため、多くの会社で記載されている相対的記載事項を挙げて解説します。
変態設立事項(変わった法人設立) | 現物出資(金銭以外の財産で出資) 財産引受け(発起人以外からの現物出資とイメージしてください) 発起人が受ける特別の利益(会社設立による功労報酬) 株式会社の負担する設立費用(発起人に設立費用等の制限を付ける際に記載します) |
株式の譲渡制限に関する定め | 設立後の株式譲渡について制限を設ける場合には記載が必要です |
取締役等の任期の伸長 |
役員の任期を変更するには記載が必要です(取締役:原則2年、監査役:原則4年) |
公告の方法 | 官報、新聞紙に掲載、電子公告のいずれかを選択して記載します |
機関についての定め(法人内の組織構成を指します) | 取締役会、監査役、会計参与、監査役会、会計監査人、委員会などを設置する場合には記載します |
取締役の責任限定契約 | 業務執行しない取締役の責任を制限する場合に記載します |
任意的記載事項
任意的記載事項は、前述の2つの事項以外のことを指します。会社のルールとして明確にしたい場合には記載する場合があります。絶対的記載事項でも相対的記載事項でもないものの、多くの会社で記載されている任意的記載事項の例を挙げます。
事業年度 | 毎年何月から何月までを事業年度とするか定める場合に記載します |
株主総会の招集時期 | 事業年度の終了後いつ株主総会の招集をするか記載します |
役員の員数 | 役員の人数を定める場合に記載します |
具体的な定款変更手続きは?
一度定款に記載した事項は、任意的記載事項であっても正規の定款変更手続きを踏む必要があります。定款変更により登記が必要になる事項もあり、変更する事項によって手続き方法が変わってきます。なお、いずれの定款変更でも株主総会の特別決議は必ず必要です。
株主総会決議
定款変更手続きでは、どの事項を変更する場合であっても株主総会の特別決議によって承認を受ける必要があります。特別決議は議決権を行使できる株主の過半数が総会に出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成する必要があります。
法務局への届出
定款変更した事項が、登記必要事項である場合には法務局へ申請が必要になります。この際申請書には前述の株主総決議が行われた「株主総会議事録」を必ず添付しましょう。定款変更した内容が絶対的記載事項や相対的記載事項であれば、法務局へ申請が必要です。なお、定款には記載しませんので、変更手続きをする必要はありませんが、役員が就任・退任した場合や資本金を増資した場合には、法務局への変更申請が必要です。
税務署等への届出
絶対的記載事項のうち、商号や本店所在地、発行可能株式総数を変更した場合と、任意的記載事項ではありますが、事業年度、公告の方法を変更した場合には、税務署及び都道府県税事務所や本店所在地の属する市役所へ異動届を提出する必要があります。
定款変更よくある質問
定款変更についてよく受ける質問をまとめてみました。参考にしてください。
Q1.法人設立を検討しています。定款の作成が難しいので、絶対的記載事項のみを記載して設立しようと思っていますが、問題になりそうなことはありますか?
A1.絶対的記載事項のみが記載された定款は法律的には有効ですが、会社の方向性や実態を明確に表さないものになってしまいます。特に役員などに関する規定がなければ、2年ごとに法務局へ任期満了後に就任した旨の変更申請を出す必要が出てきます。
また、将来的にベンチャーキャピタルから出資を受ける場合や、常勤役員ではないもののアドバイスがほしい人を役員として登記する際に、責任限定の定めがないと躊躇されてしまうことがあります。定款作成時には「将来的な事業計画」込みで織り込んでいく方が、将来的な事務的負担が緩和されることもありますので、記載内容はよくご検討ください。
Q2.飲食業を経営しています。この度お店のホームページを自社で作成したのですが、事業の目的にはIT系の文言を一切記載しておりません。これは問題ですか? また今後、新事業として通販サイトをオープンし、店舗で製造したデザートなどを販売したいと思っているのですが、定款の変更は必要でしょうか?
A2.まず、自社のホームページの作成は飲食店の広告的要素が非常に強く、「IT事業を行っている」ということにはなりません。あくまで飲食業の範囲であるため、定款変更は不要です。もし、他のお店のホームページを有償で作成する場合には、「ホームページの企画、デザイン、製作、運営及び保守」というような記載が必要になります。
なお、新たな事業展開で店舗経営のみではなく通販サイトを開設する場合は、定款に記載する事業の目的の末尾に「その他付随する事業」と記載しているかどうか、で対応が異なります。
店舗で製造したデザートを通販サイトで販売するという行為は、店舗経営から派生した事業であると解釈できるため、「その他付随する事業」と記載があれば、定款変更は必要ありません。しかし、「その他付随する事業」と記載がなければ、事業目的は単に「飲食店の経営」ということになります。そのため事業目的に「店舗で製造した商品をWeb上で販売する事業」などを追加する方が、定款として明確になります。
Q3.資本金を増資するのですが、資本金は定款に記載が無いので定款変更は必要ないと思います。しかしながら登記が必要と聞いたのですが、なぜでしょうか?
A3.登記が必要な事項と定款記載の事項が類似しているため、定款変更と登記を混同してしまっている人が多くいます。登記事項とされているのは、以下の事項です。
- 商号
- 本店及び支店の所在場所
- 目的
- 資本金の額
- 発行可能株式総数
- 発行済み株式総数並びにその種類及び数
- 取締役の氏名
- 代表取締役の氏名及び住所
- 公告方法についての定め
このように定款に記載する事項と類似するものの、1、2、3、5以外は絶対的記載事項ではないため定款には記載しない事項も存在します。なお、これら以外にも相対的記載事項として定款に定めている事項については登記が必要です。
「定款変更の必要はないが登記が必要な例」としてよく上がるのが、資本金変更や役員変更ですので、ご注意ください。
まとめ
- 定款は会社の根幹を支えるルールブック
- 絶対的記載事項だけを書いた定款はあまりオススメしない
- 定款変更と登記事項は似ているが少し異なる
定款変更手続きは難しそうに思われますが、株主総会の特別決議を経ることで完了し、その後の手続きとして登記が必要になる場合や税務署への届出が必要になる場合があります。細かい事項を憶えるのは難しいですが、とりあえず特別決議が必要だから臨時株主総会しないといけないと憶えておいてください。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士
公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。
上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。