【飲食店】店舗のハウスルールを作成することで従業員の教育や定着率に役に立つ
笠岡 はじめ(かさおか はじめ)シニア販売促進士/飲食店コンサルタント
ハウスルールは、飲食店の経営には欠かせない店舗独自のルールです。「暗黙の了解として、なんとなくのルールしかない」お店も多いですが、本来は開業前に明文化しておくべきです。この記事では、ハウスルールが必要な理由と、決めておきたいルールの項目を解説します。
この記事の目次
飲食店にハウスルールが必要な理由
飲食店のハウスルールは、端的に言うと「従業員同士が気持ちよく働くために」必要なものです。
ルールという共通認識を持つことで、従業員のモチベーションやチームワーク、離職率などが大きく変わってきます。
ハウスルールは明文化し、それぞれの従業員に浸透させることが重要です。
例えば「あいさつをしましょう」のような基本的なことでも、ルールとして定めないとそれができないことは多々あるものです。
それでは、実際にハウスルールを作るには、どのように考えていけば良いのでしょうか?
考えの助けとして、まずはハウスルールが以下の3つに大きく分類されることを押さえておきましょう。
- 仕事に対して正しい姿勢を持ってもらうためのルール
- 勤務環境を向上させるルール
- 衛生面に関するルール
ここからは、3つをそれぞれ分解しながら、具体的にルールとして決めておきたい項目を解説します。
仕事に対して正しい姿勢を持ってもらうためのルール
「仕事に対して正しい姿勢を持ってもらうためのルール」は、従業員が一定の水準でお客様に対して価値提供できるようになるためのルールです。
さらに細かく、
- 会社やお店の知識
- QSCAの知識
- お客様への接し方
の3つに分けられます。
会社やお店の知識
厳密にはルールではないですが、最低限自分が働く会社やお店についての知識はルールの大前提として理解してもらうべきです。
具体的には、以下の内容をまとめておくと良いでしょう。
- 会社の理念とビジョン
- 社長の人となり
- 会社の歴史と会社概要
- お店のブランドコンセプト
- お店の概要
QSCAの知識
こちらも、ルールというよりは前提となる知識ですが、従業員全員に理解してほしいことです。
QSCAとは「Quality(クオリティ=品質)」「Service(サービス)」「Cleanliness(クリーンリネス=清潔さ)」「Atmosphere(アトモスフィア=雰囲気)」の頭文字を取った、飲食店にとって重要な要素をまとめた用語です。
飲食に携わっている人であれば多くの方がご存知だと思いますが、初めて飲食業界で働く人には「全ての土台となる概念」として、頭に入れてもらうようにしましょう。
お客様への接し方
お客様への接し方は、ルール化しておくことで不快な思いをさせてしまうのを防ぐことができます。
ここでは6つの項目について、それぞれ具体的なルールの例と一緒に紹介します。
- スタッフの心構え
(例)慌てずに落ち着いて接客する、お客さんの方を常に向いて呼ばれたらすぐ気づくようにする
- 笑顔の作り方
(例)口角を上げて笑顔を作る、(写真を用意して)こんな笑顔を心がける
- 基本の姿勢(立ち姿)
(例)体の前で手を組まない、注文するときに膝をつく
- 接客基本用語
(例)お客様が入店されたら「いらっしゃいませ」、お客様から注文を受けたら「かしこまりました」
- 電話対応について
(例)電話を取るときは「お電話ありがとうございます、●●(店名)です」と言う、予約を取るときは「日時、人数、名前、連絡先」を確認する、クレームやマスコミへの対応は必ず店長または社員に取次する
- メモの取り方
(例)研修期間中は必ずメモを取る、最初の1ヵ月はメモを見返しながら調理する
勤務環境を向上させるルール
冒頭で、ハウスルールが必要な理由は「従業員同士が気持ちよく働くため」とお伝えしました。
「勤務環境を向上させるルール」は、特に従業員の働きやすさを実現するために重要なので、しっかりと決めておくべきです。
具体的には、
- 従業員同士の挨拶・声かけのルール
- 出勤時・休憩時・退勤時の流れとルール
- 勤務期間中のルール
- ロッカールームの使い方・貴重品の取り扱い方に関するルール
- 携帯電話の利用ルール
- シフト提出・シフト交代申請・欠勤・遅刻のルール
- 煙草のルール
- その他禁止事項
で構成されます。
それぞれ見ていきましょう。
従業員同士の挨拶・声かけのルール
従業員同士が共通の挨拶と声かけをすることで、人間関係の形成やトラブルの回避につながります。
どんな場面で、どんな挨拶・声かけをするかまでルール化しておきましょう。
(例)どの時間帯でも「おはようございます」と言う、ぶつかるのを避けるため「後ろ通ります」と言う
出勤時・退勤時・休憩時の流れとルール
出退勤時に従業員がどのような流れで動くかをルール化しておかないと、例えば「Aさんだけ出勤時着替える前にタイムカードを押していて不公平だ」といったトラブルが発生してしまうことも。
また、休憩は大きく分けて「トイレ休憩」「食事休憩」の2つがあり、それぞれの流れとルールを決めておく必要があります。
(例)【出勤時の流れ】裏口から入る→着替える→タイムカードを押す→「よろしくお願いします」と言ってフロアに入る、【退勤時の流れ】「上がります」と言う→タイムカードを押す→着替える、休憩時は番号で伝える(トイレ休憩は「2番行ってきます」など)、食事休憩時に店の外に出る場合はエプロンや名札を外す
勤務時間中のルール
勤務時間中のルールは店によってさまざまですが、良くあるのはホールスタッフの立ち位置です。
(例)従業員同士が固まってしまわないよう入り口付近・カウンター席付近・テーブル席付近に必ず1人ずつ立つようにする
ロッカールームの使い方・貴重品の取り扱い方に関するルール
ロッカールームを綺麗に使うためのルールや、貴重品をどこに置くかのルールです。
(例)ロッカールームに私物を置きっぱなしにしない、勤務中貴重品は自分のロッカールームに入れてカギが閉まっているか確認する
携帯電話の利用ルール
基本は「ホール内に持ち込んでOKか/NGか」でルールづけします。
(例)携帯電話は持ち込み禁止(勤務中はロッカールームに)
シフト提出・シフト交代申請・欠勤・遅刻のルール
シフトや欠勤・遅刻に関するルールは、お店を問題なく回していく上で非常に重要です。
急な欠勤などトラブルがあってもフォローできるルール作りを心がけましょう。
(例)シフトは第●週の●曜日までに提出する、交代申請は1週間前までにする、欠勤する場合は代わりの人を自分で確保する、遅刻する場合はメールではなく電話で連絡する
煙草のルール
最近はほとんどのお店が勤務時間中の喫煙をNGとしていますが、OKの場合でも吸う場所や吸うタイミングはルール化しておきましょう。
(例)昼休憩時のみ喫煙可、裏口から出た場所にある灰皿のみで喫煙可
その他禁止事項
従業員同士が何か揉め事を起こさないように、たとえば金銭トラブルなどを防ぐルールです。
(例)従業員間のお金の貸し借りは禁止、宗教への勧誘は禁止、マルチ商法への勧誘は禁止
衛生面に関するルール
「衛生面に関するルール」は、お店をきれいにするというよりは、スタッフの身だしなみや清潔感に関するルールです。
(店内の清掃等に関しては、ルールではなく別途「マニュアル」で規定します)
大きく
- アピアランス(身だしなみ)ルール
- 手の洗い方のルール
に分けられます。
アピアランス(身だしなみ)ルール
ここでは「頭髪」「顔(化粧)」「爪、ピアス、髭」「制服」の4項目をルール化します。
最近は飲食業界が人手不足ということもあり、かなり甘めにルール設定するお店が多いです。
お店のブランドコンセプトと照らし合わせながら、最低限守ってほしいラインを決めるのが良いでしょう。
頭髪
(例)長い場合は帽子におさめる、色は茶・金はOKとする
化粧、香水
(例)勤務中の香水はNG
爪、ピアス、髭
(例)爪の長さは作業に支障が無い程度に、マニキュアOK、ピアスOK、髭OK
制服
(例)シャツのボタンを外して良いのは一番上だけ、勤務中は時計とネックレスは外す
手の洗い方のルール
特に近年は最新の注意を払うべき事項なので、明確にルール化しておく必要があります。
ハウスルールは「誰にでも理解できる」ように作るのがコツ
ハウスルールを作るとき常に念頭に置きたいのが、誰が読んでも(見ても)分かるようにまとめることです。
感覚としては「小学生でも分かる内容で」くらいに考えておいた方が良いです。
簡単なことばを使う、難しい漢字にはふりがなをつけるなどを意識しましょう。
可能な範囲で写真をつけて、読まなくても理解できる文書にするのも重要です。
動画でハウスルールを作ってより感覚的に理解できるものにする手もあります。
また、ハウスルールは今回紹介した項目を全て完璧に作ろうとすると、かなり大変です。
「まずは作る」ことが大事なので、最初は必要最低限の項目だけ用意するのが良いでしょう。
例えば「勤務環境を向上するルール」は全て決めるけど、その他は基本の姿勢(立ち姿)・電話対応・手の洗い方だけは決めておく、などです。
一度作ってみて、もしそのルールだけでは「従業員同士が気持ちよく働けない」となれば、追加更新していけば良いのです。
そして、ハウスルールは従業員が入社した初日に教えるべきでしょう。
それが従業員自身のトラブルを防ぎ、守ることにつながりますし、お客様に対しても最低限の接し方ができるようになるからです。
初日だけではなく、朝礼などを通して日々浸透させることも意識しておきましょう。
まとめ
- ハウスルールは「従業員同士が気持ちよく働くため」に必要
- ハウスルールは大きく「仕事に対して正しい姿勢を持ってもらうためのルール」「勤務環境を向上させるルール」「衛生面に関するルール」に分けられる
- 誰でも理解できる形で明文化し、浸透させることが重要
ハウスルールは、職域や雇用形態に関わらず全ての従業員が理解すべきものです。
お店のためだけではなく従業員自身のためでもあることが伝われば、きっと各人がルールを守って気持ちよく働ける環境が作られるはず。
まずはこの記事を参考にして、ハウスルールを作るところから始めてみてください。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
古閑 信気(こが としき)編集者・ライター
広告代理店勤務を経て、現在は編集プロダクションにて編集・執筆に従事。旅行、ライフスタイル、恋愛からビジネスまで幅広いジャンルの記事に携わる。「読者が記事を読んだ後に、刺激を受けて行動に移すこと」を目指してコンテンツ制作に取り組んでいます。
笠岡 はじめ(かさおか はじめ)シニア販売促進士/飲食店コンサルタント
飲食店販売促進コンサルタント「販売促進士」を育成する一般社団法人販売促進士日本フードアドバイザー協会代表理事。同協会にて飲食店販売促進コンサルタント「販売促進士」の資格講座を提供している。
また、年間3桁の飲食店の売上アップのコンサルティングや開業支援、業態開発などを行う飲食店専門コンサルティング会社「飲食店繁盛会」の代表も務める。
著書に『売れまくるメニューブックの作り方(日経BP社)』等。セミナー・研修は年間約100本。メディア掲載も多数。
●販売促進士日本フードアドバイザー協会
https://spfaaj.or.jp/
●飲食店繁盛会
https://hanjoukai.com/
●Instagram『1日1分で学べる販促&メニュー戦略』でノウハウ共有中
https://www.instagram.com/hansokushi/