従業員持株制度とは?将来を考える経営者ならば知っておこう
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
飲食店や小売店で事業が上手く行っているオーナーの方は、資産運用について考えた事はないでしょうか。資産運用をする際に有効な制度として、「従業員持株制度」というものがあります。この制度は本来上場企業向けのものですが、上場していない企業でも相続税対策などとして利用することが可能です。事業が上手く行っているオーナーの方は、今後の相続税対策のひとつとして、従業員持株制度というものを知っておきましょう。
この記事の目次
従業員持株制度とは何か?
従業員持株制度とは、株式会社で働いている従業員が、自分の会社の株式を持つという制度です。従業員が株式を購入し、配当金などに関しても通常の株主と同様に支払います。
通常、従業員持株制度を行っている会社には「持株会」というものがあります。そこに所属している従業員が毎月一定金額を支払って会社の株を買うというシステムが一般的です。もちろん、持株会への入会は強制ではなく、株式を購入したくない従業員は入会しなくても問題ありません。
持株会で毎月支払うお金は、従業員の毎月の給与から天引きされることが一般的です。また、会社が福利厚生のひとつとして、株式購入のためのお金を補助しているようなところも多くなっています。
飲食店・小売店は従業員持株制度を使えるの?
従業員持株制度は、法人化していない飲食店や小売店では当然この制度を利用することができません。ですから、まず飲食店や小売店の場合には法人化したうえで、オーナー以外に従業員を抱えている必要があります。
そして、従業員持株制度は株式会社として法人化を行わなければ運用することができません。法人化する際に、合名会社、合資会社といった他の種類の方法による法人化を行うと、従業員持株制度は使えなくなってしまいます。
また、従業員持株制度を行う際には、持株会への加入は任意としておくことも忘れないようにしましょう。社員に強制加入をさせてはいけません。
従業員持株制度のメリットとは?
従業員持株制度のメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- オーナーは贈与税や相続税対策ができる
- 従業員にも配当金を得られるなどのリターンがある
- 従業員のやる気の向上にもつながる
通常、オーナーだけが株式を全て抱え込んでいる場合には、子供がオーナーの財産を相続する際に多大な相続税がかかります。従業員に株式をある程度持ってもらえれば、相続財産となる会社の株式の評価額が低く抑えられるために、結果として相続税を低く抑えることが可能になるのです。
また、従業員にとっても配当金はもちろん、持株制度を行う際に法人が報奨金を出すなどの福利厚生を行えば、従業員持株制度の恩恵を得られます。
さらに、この制度は従業員の経営への参加意識を高め、従業員のモチベーションを上げるということも可能になります。従業員を育てるという点でも、この制度は有用なのです。
従業員持株制度のデメリットとは?
従業員持株制度のデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- 配当を出し続けることが必要
- 従業員の退職時にトラブルになる可能性がある
株式を購入してくれた従業員のためにも、法人は配当を継続的に出し続けていく必要があります。しかし小さい法人の場合には、そのために経営が苦しくなってしまうようなことも考えられます。
制度導入時には配当についても考えたうえで、配当を出してもやっていけるかということを考えましょう。
また、従業員が退職する際には株式を換金して従業員に返還する「持分返還」ということが行われます。その際にどの程度の金額で株式を買い取るか決めておかないと、返還分が少なすぎて従業員が不満を持ったり、不当に高い価格で買い取らなければならない場合が出てきます。
このようなトラブルを防止するためにも、規約等で株式の買い取り金額をきちんと規定しておく必要があるのです。
まとめ
お店のオーナーが従業員持株制度について知っておくべきこととして、以下のようなことが挙げられます。
- まず株式会社にならなければ持株制度は利用できない
- オーナーにとっては相続税対策になることが最大のメリットである
- 従業員が退職時にトラブルにならないよう、株式買い取りの規定を設ける
将来的に相続税を少なくし、子供に対してより多くの財産を残したいと考えているオーナーにとっては、従業員持株制度は非常に魅力的な制度だと言えるでしょう。今後事業をさらに拡大させたいと考えるオーナーは、自分で株式を抱えるだけでなく、従業員にも持ってもらうという選択肢を押さえておくことが大切です。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
Airレジ マガジン編集部
自分らしいお店づくりを応援する情報サイト、「Airレジ マガジン」の編集部。お店を開業したい方や経営している方向けに、開業に向けての情報や業務課題の解決のヒントとなるような記事を掲載しています。
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で6年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/