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開業を目指す人が「法律(コンプライアンス)」について知っておくべきこと

コンプライアンスを管理する_共通

事業主にとって重要な法令遵守(コンプライアンス)。今、法令違反に対する社会の目が非常に厳しくなっています。ちょっとした違反でもSNSやネットなどで拡散して、会社の信用失墜につながってしまいます。そこで、事業主としてこれだけは知っておいて欲しいコンプライアンスについて説明します。

この記事の目次

「労働法」とは?事業主が守るべき様々な法律

労働法とは、労働者の雇用を管理する事業主が守らなければならない法律で、様々な種類があります。中でも重要な法律は3つあり、「労働基準法」「労働契約法」「パワーハラスメント防止措置(改正労働施策総合推進法)」です。

これらの法律は、社員のみならずパートやアルバイトの方、外国人労働者にも適用されます。まずは、前述した3つの法律の中から重要な箇所を押さえておきましょう。

労働条件の提示

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労働者を雇用する場合は、労働基準法に下記のように規定されています。
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他労働条件を明示しなければならない」
引用:厚生労働省「労働契約締結時における労働条件の明示義務について」

以下は明示すべき労働条件なので、「労働条件通知書」に記載しましょう。

  • 労働契約の期間
  • 就業場所及び従事すべき業務
  • 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日
  • 賃金の決定、計算の方法及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項
  • 退職金に関する事項
  • 賞与に関する事項

参考:厚生労働省「よくある質問」

「労働条件通知書」は、勤務形態を問わず労働者を採用する場合は、必ず交付しなければなりません。この「労働条件通知書」は、事業主から労働者に「この条件で雇用します」と一方的に渡すものになります。労働者と事業主の合意を確認するものではありませんので、別途「雇用契約書」が必要となります。

「雇用契約書」は法律で義務付けられていませんが、あとから労働条件についてトラブルになるのを避けるために結ぶことになります。したがって「労働条件通知書兼雇用契約書」として使用している事業主が多くなっています。

休憩・有給休暇

休憩時間は、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合には「45分以上」、8時間を超える場合には「1時間以上」与えなければなりません。ここで注意をしたいのは、8時間労働の場合、休憩時間は1時間ではなく45分でいいということです。

労働者の中には、休憩時間は1時間もいらないという方もいるので、その場合は、仕事に差し支えなければ配慮することは可能です。

次に有給休暇ですが、文字通り「お給料が出るお休み」です。ただし、誰でも取得できるわけではなく、要件があります。

  • 採用から6カ月以上継続勤務し
  • 所定労働日の8割以上出勤した社員

8割出勤の算定は、最初は6カ月ですが、その後は1年単位で計算します。
パートやアルバイトなども対象となり、所定労働日数や勤続年数により、有給休暇が付与される日数は下記のように変動します。

所定労働日数 勤続年数
1年間 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年
5日以上 217日以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

出典:厚生労働省「【リーフレットシリーズ労基法39条】」をもとに筆者作成

正社員や、週5日以上働いているパートやアルバイト・契約社員は、半年経つと有給休暇が10日発生します。例えば、パートで毎日1時間週5日働いていれば、正社員と同じ有休が発生することになります。

週1日だけ勤務という場合も有休は発生します。パートやアルバイト・契約社員の有休については、週何日働いているのかに注意しましょう。

有休には、「時季指定権」と「時季変更権」があります。時季指定権とは、労働者が取りたいときに取る権利です。時季変更権とは、労働者に有休希望日に休まれると事業の正常な運営が妨げられるのであれば、事業主は有休取得予定の日にちを変更させることができる、という権利です。

しかし、この時季変更権はよほどのことがない限り使えません。そのため有休を申請してきた労働者に対し「この日は忙しいからダメ」などと一方的に禁止をすると、「有休を取らせない」というパワハラになる可能性があります。まずは「この日はお店が忙しいから、できれば勤務してほしい。予定を変えられないかな?」という打診をしてみましょう。

また、有休の時効は2年なので、退職するときに2年さかのぼって残った有休をすべて使う社員もいます。事業主としては引き継ぎなどもあるので有休を取ってほしくないと感じるかもしれませんが、退職予定の人に対して時季変更権は使えないので注意してください。

解雇・雇止め

解雇とは、事業主の一方的な意思表示となります。労働契約法には、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されています。よほどの理由がない限り解雇は難しいといわれる所以です。
引用:厚生労働省「法制定の趣旨等」

正当な解雇としては、30日以上前に予告をしている、解雇予告手当を支払っている、または「解雇されるのは仕方がない」と誰でもが納得できるような理由がある場合に、事業主がそれを証明することによって、解雇が認められる場合もあります。

雇止めとは、有期契約の労働者に対し、期間満了をもって契約の更新を拒否することをいいます。契約期間が存在し、その期間が過ぎたのだから更新しないのは自由だと思う方もいるかもしれません。しかし「労働契約法」は、有期契約労働者を保護するため、雇止めに一定の制限をかけています。

  • 有期労働契約を結んでいるが、過去に何度も契約期間を更新されていて、実質期間の定めのない労働契約と同じ場合
  • 有期契約労働者が、契約の更新を期待することが合理的といえる場合(このケースでは、事業主やリーダーなど上長に当たる人間が、更新を期待させる発言をした場合が当てはまります。)

残業

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「働き方改革」によって、時間外労働の上限が法定化されました。「月45時間かつ年360時間」が上限とされ、大幅な業務量の増加など特別な事情がある場合で、長年720時間までとなりました。
違反した場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

前提として、残業をさせる場合は労働者と「36協定(時間外・休日労働に関する協定)」を結んで、労基署に届け出なければなりません。この協定を届け出ていないと、労働者に残業はさせられないのです。ただし、この協定を結ぶことにより、「月45時間かつ年360時間」という上限を超えて残業をさせることが特例として認められています。

残業に対する割増賃金率は25%以上ですが、月60時間を超えて時間外労働をさせたときは、60時間を超えた時間から50%以上の割増賃金の支払いが義務付けられました。大企業はすでに施行済みですが、中小企業は2023年4月から施行となります。開業後は、月60時間を超えないように労働者の残業を管理する必要があるでしょう。

残業を管理する方法として、自己申告制と残業許可制があります。労働者が少ない場合は、事業主自身が仕事をチェックできるので自己申告制でも問題はありませんが、労働者が多くなると、個別にそれぞれの残業状況を把握するのが難しくなります。ここは初めから残業許可制にして、残業する際は事業主の許可を得るというルールにしておくのが良いでしょう。

なお、残業について覚えておいて欲しいことは、労働者が勝手に残って仕事をしているという状態は、原則残業にならないということです。自己申告制であれ許可制であれ、「残業の確認」という行為が付随しますので、ここは徹底をしてください。

「ハラスメント」とは

ここ最近、新聞やTV等でもハラスメントに関する報道が見られます。確かに、労使トラブルで頻発するのが「(職場の上限関係を前提とした)いじめ・いやがらせ」です。ハラスメントでも多いセクハラ・パワハラについてのきちんとした知識が必要となります。
参考:厚生労働省「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します。

パワハラについては、厚労省が下記のように定義をしています。

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。

引用:厚生労働省「パワハラ防止指針」

パワハラで認識してほしいことは、本人がその原因となった出来事をどのように受け止めたかではなく、「多くの人が一般的にどう受け止めるのか」という「客観的な基準」によって評価する必要がある、ということです。

つまり、本人が「いじめだ」と受け止めても、一般的には多くの人が「それはいじめではないよね」と受け止められる言動であれば、それはパワハラにはならないということです(ただし、パワハラと定義できなかろうと、相手が不快である様子が見えたら配慮すべきなのは、雇用者として当然のことです)。

パワハラについて、最低限、気を付けるべきは下記です。

  • その指導が業務に必要かどうか
  • 指導において、人格の否定や性格の非難をしていないか
  • 同じ指導を何回も繰り返していないか(一度の指導でわからなければ、指導方法を変えることが必要です)
  • 大声で怒鳴っていないか
  • ほかの社員のいる前で指導していないか(指導の基本は、1対1)

そのほか、パワハラとなる言動については、厚労省の下記のサイトを参考にしてください。
参考:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」

セクハラについては、より注意が必要です。なぜなら本人の意図とは関係なく、被害者が不快だと思えばセクハラとなるケースが多いからです。

例えば、部下を激励するつもりで「頑張っているね」と肩を触った場合、「誉めてくれた」と感じる人もいれば、不快に感じる人もいます。ただの激励のつもりでも、不快に感じた人からすれば「セクハラ」になります。これは男女問わず、です。

もし職場で、偶然肩や手が触れたとき相手が嫌な顔をしたら、すぐに謝っておくことです。自分が「意図的に触ったわけではない」と思っていても、相手にはわかりませんので注意が必要です。

まとめ

  • 「労働基準法」「労働契約法」「パワーハラスメント防止措置」は勤務形態を問わず雇用されている全ての労働者に適用される
  • パートやアルバイトの有給休暇の付与は、週何日働いているのかが基準になる
  • パワハラは、その出来事が一般的にどう受け止められるかという客観的な基準によって評価される
  • セクハラは、被害者が不快だと思えばセクハラとなるケースが多い

守るべき法令はまだまだありますが、今回「これだけは気を付けてほしい」項目を取り上げました。また、ハラスメントに関しては、調停や労働審判などに訴えるケースがあとを絶ちません。法律を守って、労働者に不満がない会社にしていただくことが肝要です。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

菅田 芳恵(すがた よしえ)特定社会保険労務士

社会保険労務士・キャリアコンサルタント・産業カウンセラー・ファイナンシャルプランナー・ハラスメント防止コンサルタント等13の資格を活かして、人事労務コンサル、研修講師、カウンセリング、労働トラブル相談等様々な分野で活躍している。

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