【保存版】個人事業主が知っておきたい帳簿管理の基礎知識
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
帳簿は種類も多く、内容も聞きなれないものが多くて敬遠されがちなものです。しかし帳簿は知識をつけ、スムーズに管理できるようになれば経営判断の材料にもなり得る大きな味方です。今回はそのステップとして、まずは経理や会計にも通じる帳簿の基礎知識をご紹介します。会計と経費に強い経営者として事業を成功させるために、まずはこの基礎的な知識を身につけましょう。
この記事の目次
知っておこう!帳簿の2つの種類
帳簿とは確定申告や決算の際に必ず必要なもので、事業主であれば避けて通れない存在です。2013年までは収入300万円未満の白色申告者であれば帳簿をつける義務はありませんでした。その後、2014年1月から全ての白色申告者に帳簿の記入と保存が義務となりました。現在は白色、青色申告を問わず全ての個人事業主が帳簿についての知識が必要です。帳簿は確定申告時にも使用するものですので、日ごろからの管理が大切です。
ところが帳簿の種類は様々で、「それぞれの役割と使い分けが分からない」という事業主の方も声も数多く聞かれます。そのためまずは、それぞれの帳簿の種類についての基礎知識からお伝えしていきます。
主要簿と補助簿に分かれる
帳簿とは経費や取引に関する全ての内容を記録するもので、大きく分けて主要簿と補助簿に分かれます。
主要簿とは
- 全ての会社、個人事業にも必要な帳簿
- 取引の度に記帳される
- 仕訳帳と総勘定元帳がある
補助簿とは
- 主要簿の内容を補うために必要に応じて記入する
- 取引やお金の流れを明確にして、主要簿の内容を詳しく書き留める役割もある
- それぞれの会社に応じて必要なものを使用する
- 主要簿に書ききれない摘要や個数など詳細な情報を記載する
主要簿の内容
主要簿には仕訳帳、総勘定元帳があり、貸借対照表や損益計算書を作成するときに必要なものです。
- 仕訳帳:全ての取引の仕訳を日付順に記入する帳簿
- 総勘定元帳:作成した仕訳帳をもとに、勘定科目ごとに取引の内容を記入する帳簿
補助簿の内容
補助簿は会社の業態によって必要なものを選択するもので、様々な種類があります。それぞれの補助簿について概要をご紹介していきます。
- 現金出納帳:毎日の現金の流れと残高を把握する帳簿
- 当座預金出納帳:当座預金の預け入れや小切手の振出などのお金の流れを記入し、当座預金の残高を明らかにするもの
- 小口現金出納帳:小口現金の支払額と補給の内容と金額の詳細を記入するもの
- 支払手形記入帳:支払手形に増減があった場合に記入する記帳
- 受取手形記入帳:受取手形に増減があった場合に記入する記帳
- 仕入帳:仕入れの個数や単価など、仕入れの明細を記録する帳簿
- 売上帳:総勘定元帳の「売上」勘定の補足をするもので、売上数やその単価、返品、値引きなどの売上の明細を記録するもの
- 商品有高帳:商品の在庫状況を記録しておくための帳簿
- 買掛金元帳:どの取引先にいくらの買掛金があるのかが分かるように買掛金の明細を記録するもの
- 売掛金元帳:どの取引先にいくらの売掛金があるのかが分かるように売掛金の明細を記録するもの
白色申告と青色申告における帳簿の違い
帳簿は白色申告、青色申告の種類によって、保管年数や記入の方法が変わります。残念ながら現在の法整備では、白色申告と青色申告で管理、保管しておくべき帳簿の種類に変わりはありません。ただし白色申告、青色申告によって記帳の方法には違いがあります。
白色申告の帳簿記入の特徴
- 白色申告であれば単式簿記という家計簿のような簡単な記帳方法で良い
- 白色申告の記帳の方法は初心者向け
- 白色申告の記帳の方法は「経理や会計、帳簿に関して詳しいことは分からない」という方に向いている
青色申告の帳簿記入の特徴
- 青色申告の記帳の方法は複式簿記という方法で、白色申告に比べるとやや複雑
白色申告と青色申告の帳簿と会計書類については、保管期限に違いがあります。基本的には主要簿の保管はどちらも7年間の保管が義務づけられています。
白色申告者の帳簿の保管期限
- 収入金額や必要経費を記載した主要簿は7年
- その他に任意で作った補助簿は5年間の保管が必要
青色申告者の帳簿の保管期限
- 主要簿や決算関係書類(貸借対照表、損益計算書、棚卸表など)は7年
- 現金預金取引等の関係書類(領収書、請求書、預金通帳など)は5年。
また白色申告、青色申告を問わず会計ソフトを使っている場合はソフト上でお金の流れを把握していることもあります。基本的には紙ベースの帳簿を保管しておく必要があるので注意が必要です。
消費税の経理処理と記帳方法はどうすれば良いの?
個人事業主の場合、受け取った対価にかかる消費税は「お客様から一度預かったもの」として改めて税務署に納付する必要があります。ただし全ての事業主が消費税を納税しなければならないわけではなく、課税売上高が1,000万円を超える場合には課税事業者となり、消費税を納税する義務があります。
税額計算の制度
課税売上高が1,000万円を超えて消費税を納税する場合、税額計算には下記の方法があります。
- 一般課税制度
- 簡易課税制度
税額計算方法の選び方
- 原則的にはすべての事業者に一般課税制度が適用される
- 計算方法が簡単な簡易課税制度の選択ができる条件は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下
- 業種によって一般課税方式の方が節税対策となる可能性があるので慎重な検討が必要
消費税の記帳方法
消費税の課税事業者は、消費税に関する帳簿の記入をしなければなりません。記帳内容としては預かった消費税と支払った消費税のどちらも必要です。記帳の方法には下記の2種類があります。
税抜経理
- 代金とは別に受け取った消費税や支払った消費税を分けて記載する
- 会計ソフトを利用するなどして厳密な管理が必要
税込経理
- 取引金額を全て税込金額で記入する
- 消費税だけ別の費目として区分経理をしない
- 税込形式の方が記帳方法は簡単
効率的な領収書の管理方法は?
事業主の皆さんにとって、経費管理のポイントの一つとなるのが領収書の管理です。日々の領収書の内容をすぐに帳簿へ記入し、領収書を管理することがもちろんベターです。ただし場合によってはすぐに記帳できないことや、公共交通機関を利用した時などは領収書がもらえないこともあります。まずは帳簿の記入をスムーズにするとともに必要経費としてしっかりと計上させる領収書のポイントをご紹介します。
領収書をもらう時のポイント
- 日付、金額、発行者の名前や住所が正しく書かれているか確認する
- あて名も具体的な名前や屋号、商号など、正しく記載してもらう
- 5万円以上の領収書には印紙が貼られているかを確認する
- 印紙に消印が押されているかについて確認する
※3.4.についてクレジットカード払いの場合、記載金額に関係なく印紙は必要ありません。その場合はクレジットカード払いであることを明記してもらいましょう。
領収書を保管する時のポイント
- すぐに記帳しない場合はその領収書が事業支出であることが分かるよう、メモを残しておく
- レシートや領収書を整理する際は、まず日付順に並べてノートやスクラップブックに日付順に貼って保管する
- 領収書がもらえない場合には出金伝票や交通費精算書を作成して代用する
- 摘要を忘れないよう、経費支出後1ヵ月以内には領収書の関連書類を作成する
まとめ
帳簿管理を行う第一ステップとして、おさえておきたいポイントは下記の通りです。
- 帳簿の種類を知り、主要簿とご自身の会社に必要な補助簿の知識をつける
- 帳簿を含め、基本的に会計書類は7年間は保管する
- 事業に合った消費税の記帳の方法を選び、消費税の記帳方法をマスターする
- 領収書を管理するときのポイントに気をつけ、漏れなく帳簿に記帳する
帳簿には様々な種類があって覚えるのも管理も大変ですが、慣れてしまえば案外シンプルです。まずはこれらのポイントをおさえ、確定申告時にも困らないことはもちろん、日々の経営にも役立たせられる帳簿作りを始めましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
Airレジ マガジン編集部
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中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で6年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/