住民税非課税世帯とは?年収条件の目安や優遇措置を解説
事業を始めたばかりで収入が少ない個人事業主の中には、住民税非課税世帯が適用される年収の目安や、どんな優遇措置を受けることができるのかを知りたいという方も多いのではないでしょうか。今回は、住民税の基礎知識をおさえたうえで、住民税非課税世帯の適用要件、受けられる優遇措置などについて詳しく解説します。
この記事の目次
住民税の基礎知識
住民税は、生活に身近な行政サービスの活動費などにあてられる地方税で、道府県民税と市町村民税の2つから構成されています。法人に対して課税されるものを法人住民税、個人に対して課税されるものを個人住民税といいます。
住民税が決まる仕組み
住民税の納税額は、前年の1月1日から12月31日までの収入に応じて決定されます。ただし、年収がそのまま住民税の課税対象となるわけではありません。例えば、会社員であれば、年収から給与所得控除や社会保険料控除、生命保険料控除などの金額を差し引いた「課税所得」が住民税の対象となります。
なお、4月入社の新卒(社会人1年目で前年に収入がない方)の場合、前年の収入(課税所得)に応じて決定した住民税額を、社会人2年目(翌年の6月)から納税することになります。
均等割と所得割とは?
住民税には、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」と、所得に応じた負担を求める「所得割」(法人住民税の場合は「法人税割」)があります。なお、均等割の税額は、定額で5,000円(道府県民税:1,500円、市町村民税:3,500円 ※)とされています。
※ 東日本大震災を教訓として、都道府県や市町村が実施する防災費用を確保するため、2014年度から2023年度までの10年間、道府県民税・市町村民税ともに500円ずつ引き上げられています。また、2024年度からは、森林整備およびその促進を趣旨とする森林環境税が、均等割と併せて1人年額1,000円徴収されます。
住民税非課税世帯とは?
住民税非課税世帯とは、所得割のみが非課税の世帯、または均等割と所得割のどちらも非課税の世帯を指します。一般的には後者を指すことが多いです。住民税非課税世帯に該当する要件をみていきましょう。
所得割が非課税になる場合
下記の要件に該当する場合は、所得割が非課税となります。ただし、自治体によって異なる場合があり、今回は東京23区の要件になります。
前年中の総所得金額等が下記の金額以下の人
- 同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+42万円 - 同一生計配偶者または扶養親族がいない場合
45万円
均等割・所得割が非課税になる場合
下記のいずれかの要件に該当する場合は、均等割・所得割がどちらも非課税となります。ただし、自治体によって異なるため、今回は東京23区の要件となります。
-
生活保護法による生活扶助を受けている人
-
障がい者・未成年
-
前年中の総所得金額等が下記の金額以下の人・同一生計配偶者または扶養親族がいる場合35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円・同一生計配偶者および扶養親族がいない場合45万円
【ケース別】住民税非課税世帯に該当する所得シミュレーション
住民税非課税世帯(均等割と所得割のどちらも非課税の世帯)に該当する所得について、4つのケースでシミュレーションをしてみます。なお、シミュレーション例で用いる住民税非課税世帯の要件は、前述の東京都23区のものです。
ケース1.単身
単身の場合は「同一生計配偶者および扶養親族がいない場合」に該当します。住民税非課税世帯(均等割と所得割のどちらも非課税の世帯)に該当する所得は、前年中の合計所得金額が「45万円」以下となります。
ケース2.夫婦
夫(もしくは妻)が「同一生計配偶者」の場合は、「同一生計配偶者または扶養親族がいる場合」に該当します。住民税非課税世帯(均等割と所得割のどちらも非課税の世帯)に該当する所得は、前年中の合計所得金額が「101万円」以下となります。
式: 35万円×2人(本人+同一生計配偶者)+31万円=101万円
ケース3.夫婦+子ども1人
夫(もしくは妻)が「同一生計配偶者」、子どもが「扶養親族」の場合は、「同一生計配偶者または扶養親族がいる場合」に該当します。住民税非課税世帯(均等割と所得割のどちらも非課税の世帯)に該当する所得は、前年中の合計所得金額が「136万円」以下となります。
式: 35万円×3人(本人+同一生計配偶者+扶養親族)+31万円=136万円
ケース4.夫婦+子ども2人の場合
夫(もしくは妻)が「同一生計配偶者」、子ども2人がいずれも「扶養親族」の場合は、「同一生計配偶者または扶養親族がいる場合」に該当します。住民税非課税世帯(均等割と所得割のどちらも非課税の世帯)に該当する所得は、前年中の合計所得金額が「171万円」以下となります。
式: 35万円×4人(本人+同一生計配偶者+扶養親族2人)+31万円=171万円
住民税非課税世帯が受けられる優遇措置
住民税非課税世帯に該当すると受けられる主な優遇措置について、確認してみましょう。
国民健康保険料の軽減
前年の所得が一定の基準以下の場合、その所得に応じて国民健康保険料が減額される制度(7割、5割、または2割)があります。住民税非課税世帯の減額割合は「7割」が多いですが、対象者の要件は自治体によって異なりますので、居住地の自治体に確認するようにしましょう。
減額割合 | 対象者の要件(令和5年度) (例:3人世帯(夫婦40歳、子1人)夫の給与収入のみの場合) |
---|---|
7割 | 43万円(※)以下 (給与収入98万円以下) |
5割 | 43万円(※)+(被保険者数)×29万円以下 (給与収入197万円以下) |
2割 | 43万円(※)+(被保険者数)×53.5万円以下 (給与収入302万円以下) |
※ 世帯の給与・年金所得者が2人以上の場合は、43万円+10万円×(給与・年金所得者の数-1)
出典:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21517.html)
国民年金保険料の免除・納付猶予
前年の所得(1月から6月までに申請する場合は前々年の所得)が一定額以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、免除を希望する旨の申請書を提出後、承認されると保険料の納付が免除されます。(免除割合は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類)
原則として、住民税非課税世帯の免除割合は「全額」となります。また、20歳から50歳未満の人で、前年の所得(1月から6月までに申請する場合は前々年の所得)が一定額以下の場合、納付猶予を希望する旨の申請書を提出後、承認されると保険料の納付が猶予されます。
国民年金保険料の全額免除・納付猶予の所得基準は、前年の所得(1月から6月までに申請する場合は前々年の所得)が、下記の式で算出した金額以下であることです。
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
※令和3年度以降
老齢基礎年金の受給資格期間への参入 | 老齢基礎年金の年金額への反映 | |
---|---|---|
全額免除 | あり |
あり (全額免除の期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1が支給) |
納付猶予 | あり |
なし (後から追納しないと老齢基礎年金額は増えない) |
医療費負担の軽減
病院などの窓口で負担する額が自己負担限度額を超えたら、その超えた金額は公的医療保険から支給される「高額療養費制度」があります。住民税非課税世帯は、自己負担限度額が他の所得区分よりも低く設定されています。
区分 | 自己負担限度額(月額) | |
---|---|---|
通院(個人ごと) | 通院・入院(世帯ごと) | |
住民税非課税(70歳未満) | 35,400円 | |
住民税非課税(70歳以上) (年金収入約80万円超など) |
8,000円 | 24,600円 |
住民税非課税(70歳以上) (年金収入約80万円以下など) |
8,000円 | 15,000円 |
保育料の無償化
幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料は、3歳から5歳までのすべての子どもが無料となっていますが、住民税非課税世帯は、0歳から2歳までの子どもについても利用料が無料となります。
大学などの授業料等の免除・減額、給付型奨学金
住民税非課税世帯は、高等教育の修学支援新制度を利用することで、大学などの入学金や授業料の免除・減額、給付型奨学金の支給を受けることができます。
授業料等の免除・減免の上限額 (年額) |
給付型奨学金の支給額 (月額) |
|||
---|---|---|---|---|
入学金 | 授業料 | 自宅通学 | 自宅外通学 | |
私立大学 | 約260,000円 | 約700,000円 | 38,300円 | 75,800円 |
※夫婦+子ども1人(18歳)で、世帯収入が給与所得のみで約220万円以下の世帯
介護・福祉サービス利用料の軽減
本人および世帯全員が住民税非課税で一定の要件を満たしていれば、特別養護老人ホームや老人保健施設などの居住費や食費の自己負担限度額が軽減される場合があります。対象者の要件や自己負担限度額などは、自治体によって異なりますので、居住地の自治体に確認するようにしましょう。
その他臨時給付金
住民税の均等割が非課税の世帯などを対象に支給される臨時給付金(電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金など)があります。
まとめ
- 個人に対して課税される個人住民税は、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」と、所得に応じた負担を求める「所得割」がある
- 住民税非課税世帯は、一般的に均等割と所得割のどちらも非課税の世帯を指すことが多く、それぞれに非課税の適用要件がある
- 住民税非課税世帯に該当する場合、国民健康保険料の軽減や、国民年金保険料の免除・納付猶予などの優遇措置が受けられる場合もある
住民税が非課税となる要件は、自治体によって異なるケースもあります。住民税非課税世帯に該当する可能性がある場合は、居住地の自治体ホームページなどで住民税非課税の適用要件や受けられる優遇措置などを確認しておくとよいでしょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
中田 真(なかだ まこと)ファイナンシャルプランナー
中田FP事務所 代表/CFP®認定者/終活アドバイザー/NPO法人ら・し・さ 正会員/株式会社ユーキャン ファイナンシャルプランナー(FP)講座 講師/元システムエンジニア・プログラマー。給与明細は「手取り額しか見ない」普通のサラリーマンだったが、お金の知識のなさに漠然とした不安を感じたことから、CFP®資格を取得。現在、終活・介護・高齢期の生活資金の準備や使い方のテーマを中心に、個別相談、セミナー講師、執筆などで活動中。https://nakada-fp.com/