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個人事業主にとっての厚生年金 加入の流れや計算方法を解説

年金手帳と計算する人

「厚生年金への加入が必要なのは法人だけ」と思われている個人事業主の方も多いのではないでしょうか。しかし、一定の要件を満たしていれば、個人事業主であっても厚生年金に加入しなければなりません。加入の必要がない個人事業主であっても、加入の申し出をすることもできます。この記事では、厚生年金制度の概要やどのような事業所が適用となるか、また保険料の計算方法について詳しく解説するとともに、いくつかの年収を元に保険料額をシミュレーションしていきます。

この記事の目次

厚生年金とは

厚生年金とは、従業員が「年をとり働けなくなった」「障害のある状態となった」「亡くなった」のいずれかの場合に、従業員やその収入で暮らしていた遺族に保険給付を行う制度です。

被保険者

厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの「適用事業所」に、常用的に雇用されている70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者となります。

加入者は国民年金にも加入

年金は「2階建て制度」と呼ばれます。国民年金は1階部分にあたるもので、20歳から60歳までの方が加入しなければなりません。厚生年金は2階部分にあたるもので、上乗せされる給付です。厚生年金保険に加入することで、国民年金第2号被保険者として、1階部分の国民年金部分も納付していることになります。

年金の「2階建て制度」

ほかの年金制度との違い

厚生年金は国民年金より手厚い制度となっています。

国民年金の「障害基礎年金」は1~2級しかありませんが、「障害厚生年金」は3級まであり、さらに3級より軽い障害が残った場合であっても「障害手当金」として一時金を受け取ることがきる可能性があります。

また、亡くなった場合の遺族年金は、国民年金の場合、原則18歳未満の子どもにしか支給されません。一方、遺族厚生年金の場合、配偶者・子・父母・孫・祖父母まで受給できることがあります。

亡くなった場合の遺族年金は、国民年金の場合、原則18歳未満の子どもにしか支給されません。一方、遺族厚生年金の場合、配偶者・子・父母・孫・祖父母まで受給できることがあります。

加入義務の有無

どのような方が厚生年金保険に加入しなければならないのか、確認してみましょう。

加入義務のある事業所

厚生年金保険が強制的に適用されるのは下記に該当する事業所です。

  1. 常時従業員を雇う株式会社や、特例有限会社などの法人の事業所または国、地方公共団体
  2. 常時5人以上の従業員を雇う個人事業所(旅館、飲食店、理容店などのサービス業は除く)
  3. 船員が乗り組む一定の条件を備えた汽船や漁船などの船舶

雇用側の個人事業主は加入できない

個人事業主は、原則厚生年金保険に加入することはできません。厚生年金保険法第1条にあるように、雇用されている従業員を対象としているからです。

加入義務のない事業所

個人事業主で常時雇用従業員数が5人未満であれば加入義務はありせん。

また、下記の事業は適用業種にあたらないため、人数にかかわりなく加入義務はありません。

  1. 農林業、水産業、畜産業等の第一次産業の業種
  2. 理髪店、美容店、エステティックサロン等の理容・美容の事業
  3. 映画の製作又は試写、演劇、その他興業の事業
  4. 旅館、料理店、飲食店等の接客娯楽の事業
  5. 神社、寺院、協会等の宗教の事業

義務ではないが任意加入できるケース

本来は加入義務がない事業所であっても、厚生労働大臣の認可を受けて厚生年金保険の「適用事業所」とすることができます。その際、事業主は従業員の2分の1以上の同意を得て厚生労働大臣に申請する必要があります。

個人経営の事業所が加入手続きをする際の注意点

個人事業主が厚生年金保険に加入する場合、社会保険料の納付が必要となります。また、従業員のマイナンバーを控える場合、適切に管理する必要があります。

厚生年金の加入手続き

厚生年金に加入する場合、健康保険・厚生年金保険の「新規適用届」を年金事務所へ提出する必要があります。

また、従業員のマイナンバー等の個人情報を記載した「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」もあわせて提出する必要があります。

厚生年金の計算方法

厚生年金保険料はどれくらいになるのでしょうか。算出方法をみていきましょう。

標準報酬月額の計算

厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与を一定の幅で区分した標準報酬月額をもとに算出します。

厚生年金保険料額表

出典:日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)」
(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.files/R05ryogaku.pdf)

標準報酬月額の決定方法は、定時決定と資格取得時決定の2通りあります。

定時決定

4月から6月まで支払われた給与額の実績で算出され、毎年9月から1年間その金額が適用されます。これを定時決定といいます。たとえば、給与額が4月20万円、5月21万円、6月22万円だった場合、平均額が21万円となり下記の表にあてはめると報酬月額210,000以上230,000未満に該当し、標準報酬月額は220,000円となります。

資格取得時決定

新入社員の場合は給与支払実績がないため「1カ月あたりの報酬見込み額」で標準報酬月額を決定します。これを資格取得時決定といいます。例えば、基本給20万円、通勤手当が1万円であれば、報酬月額21万となり、標準報酬月額は220,000円となります。

厚生年金保険料の計算

標準報酬月額がわかれば、保険料の額が決まります。下記の式で保険料額を算出し、労使折半で納付します。

標準報酬月額×18.3%=厚生年金保険料額

例えば、標準報酬月額が220,000円の方の場合

220,000円×18.3%=40,260円となり、事業主(会社)と従業員の負担額はそれぞれ20,130円となります。

年収別のシミュレーション

年収別に3通りシミュレーションをしてみましょう。

年収300万円の方の場合

まず、月平均収入額を求めます。

3,000,000円÷12カ月=250,000円

保険料額表にあてはめると、標準報酬月額は260,000円になります。

よって、厚生年金保険料額は、260,000円×18.3%=47,580円になります。

厚生年金保険料は労使折半になるので、本人負担額は、47,580円÷2=23,790円になります。

したがって年間の厚生年金保険料額は、23,790円×12カ月=285,480円になります。

年収500万円の方の場合

まず、月平均収入額を求めます。

5,000,000円÷12カ月=416,666円

保険料額表にあてはめると、標準報酬月額は410,000円になります。

よって、厚生年金保険料額は、410,000円×18.3%=75,030円になります。

厚生年金保険料額は労使折半になるので、本人負担額は、75,030円÷2=37,515円になります。

したがって、年間の厚生年金保険料額は、37,515円×12カ月=450,180円になります。

年収1,000万円の方の場合

まず、月平均収入額を求めます。

1,000,000円÷12カ月=833,333円

保険料額表にあてはめると、標準報酬月額は650,000円になります。

よって、厚生年金保険料額は、650,000円×18.3%=118,950円になります。

厚生年金保険料額は労使折半になるので、本人負担額は、118,950円÷2=59,475円になります。

したがって、年間の厚生年金保険料額は、59,475円×12カ月=713,700円になります。

厚生年金の納付方法

事業主は、毎月の給料および賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いたうえで、事業主負担分の保険料とあわせて、納付期限までに納めることになっています。

納付期限は例えば、1月分保険料の納付期限は2月末日となります。

保険料額は、毎月20日頃日本年金機構から事業所へ「保険料納入告知額通知書」または「保険料納入告知書」が送付されます。

金融機関の窓口で「保険料納入告知書」を使って納付する方法のほか、口座振替や電子納付(Pay-easy)で納付することもできますので、直接窓口で納付することが難しいときには活用してみましょう。

まとめ

  • 厚生年金とは、従業員やその収入で暮らしていた遺族に保険給付を行う制度
  • 個人事業主は原則厚生年金保険に加入することはできない。また、個人事業主で常時雇用従業員数が5人未満であれば加入義務はない
  • 厚生年金に加入する場合、健康保険・厚生年金保険の「新規適用届」と従業員のマイナンバー等の個人情報を記載した「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出する必要がある
  • 厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与を一定の幅で区分した標準報酬月額をもとに算出する

厚生年金の算出は複雑なようにみえますが、年収をもとに自身ですぐに算出可能です。年金の話をするときに、年を取ってからもらう老齢の年金のことを思い浮かべるでしょう。しかし、老齢の話だけでなく、障害状態になったときや亡くなった場合にはその遺族に遺族年金が支払われる社会保障制度となっています。

また、人材確保が難しくなってきている現在において、社会保険に加入していることはアピールポイントにもなります。会社(事業主)が厚生年金保険に加入することで、会社の社会的信用が増し、従業員も安心して働ける環境づくりができるでしょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

武澤 雅秀(たけざわ まさひで)社会保険労務士

社会保険労務士法人 東京労務グループ

社会保険労務士 熊本県社会保険労務士会所属

1975年生まれ 玉名市出身 熊本市在住

年金事務での所勤務経験をもとに、顧問先の社会保険・労働保険の手続き、給与計算業務を行っている。

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