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店舗開業時に青色申告・白色申告どっちを選ぶ?個人事業主・法人別に違いとは

確定申告のときなどによく耳にする青色申告や白色申告という言葉。言葉は聞いたことがあっても、内容まではよく分からないという方も多いのではないでしょうか。今回は、この2つにどのような違いがあるのかを紹介します。違いを理解し、あなたのお店にあった方法を選びましょう。

この記事の目次

確定申告の「青色」「白色」とは?

確定申告には、青色申告白色申告の2種類あります。表にまとめると、以下のような違いがあります。

  青色申告 白色申告
概要
  • 基本的に簿記のルールに従って日々の売上や仕入れ、経費の動きを一つ一つ記録して、日々記録した数字をベースに申告を行う方法
  • 青色申告を採用する場合には、白色申告に比べて税金の計算上有利になる特典を受けることができる
  • 簿記の知識がない場合でも簡単にできる記帳の方法で、売上や仕入れ、経費を記録・集計する方法
個人事業主のメリット
  • 青色申告特別控除(10万または65万)
  • 青色事業専従者給与(配偶者や親族の給与を経費計上できる)
  • 純損失の繰越控除(その年に発生した純損失の金額をその翌年から3年間で発生する黒字と相殺することができる)
  • 事業専従者控除(事業所得の金額から配偶者・親族給与分を一定金額引くことができる)
会社(法人)のメリット
  • 欠損金の繰越控除(その事業年度の赤字を翌事業年度以降の黒字と相殺できる)
 

それでは詳しく紹介します。

青色申告とは?

青色申告とは、基本的に簿記のルールに従って日々の売上や仕入れ、経費の動きを一つ一つ記録して、日々記録した数字をベースに申告を行う方法です。簿記のルールとは、取引ごとに貸方と借方に分けて勘定科目ごとに記録するルールのことです。

少しでも簿記を学んだ方なら分かると思いますが、まったく簿記の知識がない方にとって、貸方や借方、勘定科目という言葉はピンとこないかもしれません。簿記の知識があり、これらの言葉の意味や使い方を知っていることが、青色申告を行う最低条件といえます。

青色申告を行うためには、開業した日から2か月以内(開業2年目以降や1月1日から1月15日までに開業した場合は、適用を受ける年の3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を、納税地を管轄する税務署に提出しなければなりません。1日でも遅れてしまうと適用が受けられなくなりますので、提出期限には十分注意しましょう。

白色申告とは?

青色申告をしない場合の確定申告は、白色申告と呼ばれます。白色申告は簿記の知識がない場合でも簡単にできる記帳の方法で、売上や仕入れ、経費を記録・集計する方法です。簿記の考え方は使わないので、現金の入出金に合わせて各項目の金額を記録すれば問題ありません。

白色申告は、多くの場合、現金の動きを中心に考えますので、家計簿に近い方法と言えます。

青色申告と白色申告の違い 個人事業主編

青色申告は、会計ソフトの導入や、簿記による記録など、白色申告に比べて事業主の手間が大きくなります。しかし、詳細に記録する分、申告書に記載する数字も青色申告の方が信頼性が高いものとなります。そのため、青色申告を採用する場合には、白色申告に比べて税金の計算上有利になる特典を受けることができます

まずは個人事業主として開業した方が青色申告を採用することで受けられる特典のうち、多くの飲食店について関係がある特典を中心に説明します。

1.青色申告特別控除

青色申告を行う場合、売上から仕入れや経費を引いた金額(事業所得)の金額から、さらに青色申告特別控除を引くことができます

青色申告特別控除は、65万円と10万円の場合があります。

<65万円の場合>

65万円の青色申告特別控除を受けるには、確定申告書に貸借対照表を添付することが必要です。貸借対照表とは、簡単にいえば、売掛金や買掛金など資産や負債の金額を集計した表です。

このため、貸方や借方といった簿記の基礎知識に加えて、売上や仕入れなどをどのタイミングで計上するかといった会計の知識がないと、貸借対照表を作成することができません。65万円の青色申告特別控除の適用を受けるには、ある程度の会計の知識が必要となってきます。

<10万円の場合>

日々の取引の記録はしっかり行っているが、売上や仕入れの計上タイミングは現金の動きに合わせて行っているといった場合には、青色申告特別控除は10万円になります。この場合は、貸借対照表は確定申告書に添付する必要はありません。

青色申告特別控除は、青色申告青色申告特別控除を引く前の事業所得の金額が青色申告特別控除額以下の場合には、事業所得が0円になるまでしか引くことはできません。また、事業所得が赤字の場合は適用を受けらない点に注意しましょう。

2.青色事業専従者給与

個人事業主は、原則として、生計を同じくする配偶者や親族(親、祖父母、子、孫など)に対して給料を支払っても経費に計上することはできません

しかし、青色申告を行う場合には、税務署に届け出をすることで、配偶者や親族(子や孫については年末に15歳以上になっている者のみ)のうち、事業に従事している者に対して、通常の従業員に支払う金額と同程度の給料を支払うことで、経費に計上することができます。これを青色事業専従者給与といいます。

これに対して、白色申告の場合は青色事業専従者給与の代わりに事業専従者控除の適用を受けることができます。事業専従者控除とは、事業所得の金額から、一定金額(配偶者は86万円、それ以外の親族は50万円)を引くことができる制度です。

青色事業専従者給与にせよ、事業専従者控除にせよ、適用を受けるには、年間で6か月間以上、専ら事業に従事していることが必要です。家族なら誰でも対象にできるというわけでないというに注意しましょう。

白色申告者が事業専従者控除を受けるには特に届け出は必要ありません。青色申告者が青色事業専従者控除の適用を受けるためには、開業した日から2か月以内(開業2年目以降や1月1日から1月15日までに開業した場合は、適用を受ける年の3月15日まで)に「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地を管轄する税務署に提出しなければなりません。提出の期限や、期限を1日でも遅れてしまうと適用が受けられなくなる点は「青色申告承認申請書」と同じです。

3.純損失の繰越控除

青色申告者は、その年に発生した純損失の金額をその翌年から3年間で発生する黒字と相殺することができます。この制度を純損失の繰越控除といいます。純損失とは、事業所得や不動産所得などの赤字(ほかに給与所得などの所得があって相殺できる場合は、相殺後の赤字。)の合計額ことをいいます。通常は事業所得の赤字を指すものとして理解しておきましょう。特に開業した年は、初期投資で赤字になりやすいものです。青色申告者であれば、その赤字を2年目以降の黒字と相殺できるので、2年目以降の所得税の納税額を少なくすることができます。

対して白色申告者は、純損失の繰越控除は基本的には受けることができません。そのため、1年目の赤字を2年目以降の黒字と相殺するといったようなことができず、毎年独立して所得を計算することになるため、青色申告者の方が有利です。

青色申告と白色申告の違い 会社編

青色申告といえば個人事業主のイメージが強いですが、会社でも青色申告制度が存在します。

会社においては青色申告の特典は個人事業主ほど多くありませんが、主なものとして欠損金の繰越控除があります。この制度は個人事業主の純損失の繰越控除と同じように、その事業年度の赤字を翌事業年度以降の黒字と相殺できる制度です。個人事業主では繰越しできる期間が3年間だったのに対して、会社の場合は9年間(平成30年4月1日以降に開始する事業年度においては10年間)と繰越しできる期間に違いがあります。

会社の場合は、個人事業主以上にしっかりと経理を行わないと法人税の申告などにも影響してしまいます。そのため、会社の場合は、選択制ではありますが、必然的に青色申告を行うことになります。

青色申告と白色申告のどちらを選択すればよいの?

ここまで説明してきた通り、青色申告は白色申告に比べて、税金を計算する上でさまざまな特典が用意されています

また、飲食店やアパレルなどの店舗ビジネスにおいては個人事業主にしても法人にしても、融資などで金融機関と関わることがほとんどです。金融機関にとって事業の成果を見る書類として、貸借対照表や損益計算書は必須です。そしてこれらの書類を作成するには簿記による取引の記録が不可欠となります。

さらに経営の状況を把握するためにも、やはり適切な取引の記録は重要です。日々の経理を適当にやっていたばかりに、大事なときに金融機関から融資が受けられなかったという例を何度も見てきました。それほど経理は重要なのです。

簿記の知識がないという方でも、税理士などの専門家に依頼すれば、青色申告を選択することはできます。特に飲食店などの店舗系ビジネスにおいては貸借対照表や損益計算書を作成できる青色申告の選択をすることが、必須になるといってよいでしょう。

まとめ

  • 青色申告とは、簿記のルールに従って取引を記録して、それをもとに申告を行うことである
  • 白色申告とは、青色申告以外で申告することである
  • 個人事業主の青色申告の主な特典は、青色申告特別控除などがある
  • 会社の青色申告の主な特典は、純損失の繰越控除などがある
  • 飲食店などでは青色申告を選択したほうがよい

せっかく開業するからには、できる限り青色申告を選択して、税務上の有利な特典を得ておきたいところです。結果的にきちんと経理をすることにもなり、お店の業績をしっかりと把握することもできるようになります。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

中野 裕哲(なかの ひろあき)氏

中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)

起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/

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