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国民健康保険・国民年金の加入手続きと保険料のキホン。会社を退職すると何が変わる?

国民健康保険 国民年金

日本では、公的医療保険制度と公的年金制度に必ず加入しなければなりません。会社を退職したときは、個人事業主などが加入する「国民健康保険」と「国民年金」の加入手続きをする必要があります。
この記事では、会社を退職して個人事業主になる予定の方に向けて、国民健康保険と国民年金とはどのようなもので、どんな手続きをするのか、また手続きが遅れた場合の対処法や、会社員が加入する社会保険との違いなどについて、わかりやすくお伝えします。

この記事の目次

国民健康保険・国民年金の加入に必要な手続き

日本では、国民全員が必ず公的医療保険に加入することになっています。会社員は健康保険に、個人事業主は国民健康保険に、75歳以上の人は後期高齢者医療制度に加入します。
もし会社を退職し個人事業主になると、国民健康保険への切り替えが必要です。

また、20歳以上60歳未満のすべての人は公的年金制度に加入することになっています。会社員が加入するのは厚生年金保険で、同時に第2号被保険者として国民年金にも加入しています。
会社を退職して個人事業主になったときは、厚生年金保険から国民年金の第1号被保険者への切り替えが必要です。

国民健康保険と国民年金の加入手続きについて詳しくご紹介しましょう。

国民健康保険の加入手続き

手続きの期限 退職日の翌日(事実発生日)から14日以内
手続き窓口 住所地の役所・役場内 国民健康保険担当窓口
手続きする人 会社を退職した本人、または同世帯の世帯主、もしくは同世帯の人(委任状と本人確認書類が必要)
手続きに必要なもの

【扶養家族がいる場合】

  • 健康保険資格喪失証明書
  • 世帯主と扶養家族のマイナンバーが確認できるもの(マイナンバーカードまたは通知カード)
  • 本人確認書類

【扶養家族がいない場合】

  • 健康保険資格喪失証明(離職票または退職証明書でも可)
  • 世帯主のマイナンバーが確認できるもの(マイナンバーカードまたは通知カード)
  • 本人確認書類

上記書類をそろえ、役所・役場の国民健康保険担当窓口へ持参し、国民健康保険の加入手続きをします。

注意点 同世帯の人が代理で手続きする場合は、委任状と本人確認書類が必要

国民健康保険の加入手続きは、退職日の翌日から14日以内にお住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口で手続きをします。

その際、会社で作成してもらった健康保険資格喪失証明書と、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類を持参します。扶養家族がいる場合は、世帯主と扶養家族全員のマイナンバーカードか通知カードを持参します。

なお扶養家族がいない場合は、健康保険資格喪失証明書の代わりとして、退職時に会社から受け取った離職票や退職証明書などでも手続きが可能です。

任意継続被保険者について

補足ですが、国民健康保険は前年度の所得をもとに保険料が決まり、また扶養家族がいる場合はその分も保険料が発生するので、割高になりがちです。この対策として、退職後の2年間は元の勤め先の健康保険に「任意継続被保険者」として加入する方法もあります。

任意継続被保険者とは、会社を退職するとき一定の要件を満たしていれば、引き続き会社員時代と同じ健康保険に最大2年間加入できると言う制度です。その際の保険料は、在職中の標準報酬月額(上限30万円※変更になる可能性あり)に保険料率を掛けて求めます。

労使折半(※)がなくなるため全額自己負担となりますが、在職中の年収が高かった人など、場合によっては国民健康保険に加入するよりも保険料が安くなるかもしれません。
※社会保険の保険料(健康保険料と厚生年金保険料)を会社が半分負担すること。

国民健康保険と任意継続被保険者の保険料を比較して、安くなる方を選択するとよいでしょう。
ただし、任意継続被保険者になっても2年経ったら国民健康保険へ加入することになります。その際は、健康保険資格喪失証明書は加入していた健康保険組合で作成してもらえます。

国民年金の加入手続き

手続きの期限 退職日の翌日(事実発生日)から14日以内
手続き窓口 住所地の役所・役場内 国民年金担当窓口
または最寄りの年金事務所(郵送する場合は日本年金機構の事務センター)
手続きする人 会社を退職した本人
手続きに必要なもの
  • 基礎年金番号通知書または年金手帳
  • 健康保険・厚生年金保険資格喪失証明書、離職票、退職証明書など厚生年金保険の資格喪失日を証明できるもの
  • 本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)

上記書類をそろえ、役所・役場の国民年金担当窓口へ持参し、国民年金への加入手続きをします。

注意点 扶養している20歳以上60歳未満の配偶者(第3号被保険者)がいる場合は、配偶者も第1号被保険者への切り替えが必要

国民年金も国民健康保険と同様に、退職日の翌日から14日以内に加入手続きをする必要があります。手続きはお住まいの市区町村の国民年金担当窓口で行いますが、最寄りの年金事務所でも手続きが可能です。

手続きの際は、基礎年金番号通知書または年金手帳、会社で作成してもらった健康保険・厚生年金保険資格喪失証明書や離職票や退職証明書など退職日がわかるもの、本人確認書類を持参します。

配偶者の切り替えについて

国民年金の加入手続きで注意したいのが、扶養する配偶者の切り替えです。

まず、国民年金には以下3つの種別があることを理解しておきましょう。

  • 第1号被保険者
    20歳以上60歳未満の自営業者やフリーランス、無職など会社勤めでない人
  • 第2号被保険者
    20歳以上60歳未満の会社勤めの人
  • 第3号被保険者
    20歳以上60歳未満の会社員に扶養されている配偶者

会社に勤めていたとき、本人の配偶者が国民年金の第3号被保険者だった場合、本人(扶養者)が個人事業主になって第1号被保険者になると、その配偶者も第1号被保険者への切り替えが必要です。そして、配偶者も国民年金保険料を納めることになります。

この場合、配偶者自身が第3号被保険者から第1号被保険者へ切り替える手続きを行います。基礎年金番号通知書か年金手帳、本人確認書類、扶養者の退職日がわかる書類を添えて、市区町村の国民年金担当窓口で手続きをしましょう。手続きの期限は、扶養者が退職した翌日から14日以内です。

健康保険では任意継続被保険者を選んだ場合でも、国民年金は会社を退職した時点で加入手続きが必要です。くれぐれも手続きを忘れないようにしましょう。

国民健康保険・国民年金の加入手続きが遅れると金銭面の負担が増える

国民健康保険 国民年金

国民健康保険と国民年金への切り替えを忘れてしまったらどうなってしまうのでしょうか? 加入手続きが遅れると、金銭的なペナルティが待っています。

国民健康保険の加入手続きが遅れた場合

遅れた場合の対処法としては、すぐに役所へ行き、国民健康保険へ切り替える手続きを行うことが第一です。

国民健康保険への加入手続きが遅れると、健康保険に未加入の状態になります。そうすると、病院を受診したときに、やむを得ない理由がない限り、医療費が全額自己負担になってしまいます。医療費の全額自己負担は、かなり家計に響きます。そのような事態を避けるためにも、できるだけ早く国民健康保険への切り替え手続きをしましょう。

国民健康保険の制度が使えるようになるのは、原則として加入手続きの完了日からです。加入手続きが完了したら保険証は即日交付されます。

また手続きが遅れて未加入期間ができても、その間の国民健康保険料が請求されないわけではありません。退職日の翌日までさかのぼって保険料を納めることになるので注意が必要です。

国民年金の加入手続きが遅れた場合

第一の対処法としては、すぐに役所へ出向いて、国民年金へ切り替える手続きをすることです。そうしないと、国民年金保険料の未納期間ができてしまうからです。

保険料の未納期間ができると、障害を負ったときの「障害年金」や、世帯主が亡くなったときの「遺族年金」が受け取れなくなるかもしれません。それだけでなく、老齢基礎年金が未納期間に相当する分だけ減額されてしまいます。

また国民年金の加入手続きをしないまま放置していると、日本年金機構から納付の案内と納付書が届きます。それでも未納のまま放置していると催告状や督促状が届くようになり、延滞金が発生し、さらには財産の差押えが行われる可能性もあります。

ただし、もし経済的な理由で国民年金保険料を納付できないときは、保険料の免除制度、納付猶予制度(20歳以上50歳未満が対象)を利用することができます。これらの制度を使えば、10年以内なら追納すること(保険料をあとから納めること)ができます。金銭的な余裕ができたときに追納すれば、老齢基礎年金を満額に近づけることが可能です。

国の保険と会社の保険とはこんなにも違う

会社を退職すると、国の保険である「国民健康保険・国民年金」に切り替えることになります。国の保険は、これまで加入していた会社の保険である「健康保険・厚生年金保険」とは何が違うのか知っておいた方がよいでしょう。そこで、主な特徴を一覧にしました。

国民健康保険と健康保険の違い

  国の保険 会社の保険
保険の名称 国民健康保険 健康保険
加入手続き 本人が行う 会社が行う
保険料の計算 年間保険料=所得割額+均等割額
(所得割額、均等割額は、医療分・支援金分・介護分(40歳以上)の合計)
上記を12カ月で割って月額保険料を求めます。
標準報酬月額×保険料率
(※労使折半)
保険料の納付先 市区町村を通じ都道府県へ 会社が運営する健康保険組合
全国健康保険協会
所得税の申告 本人が確定申告 会社が年末調整
メリット

前年度の世帯の所得金額が基準額以下になると、均等割額が減額となる

  • 傷病手当金、出産手当金が受け取れる
  • 保険料は労使折半
  • 退職後、2年間は任意継続被保険者になれる
  • 扶養家族の保険料負担がない
デメリット
  • 傷病手当金や出産手当金がない
  • 扶養家族分も保険料の負担がある

収入が増えると保険料が高くなる

加入者

国民健康保険は、日本国内に住み、企業の健康保険や後期高齢者医療制度(75歳以上の人が対象)に加入していないすべての人が加入する公的医療保険です。

一方、健康保険は、会社が運営する健康保険組合や全国健康保険協会が運営する公的医療保険で、会社員と公務員が加入します。
加入者は病気やケガで医療機関にかかったときに医療給付を受けたり、傷病手当金や出産手当金などの手当金を受け取ったりすることができます。

自己負担割合

医療費の自己負担割合は、国民健康保険も健康保険も同じです。
医療費の自己負担割合は、一般の人は3割負担、6歳以下は2割負担、70歳~74歳は一定の所得がある人は2割、現役並みの所得がある人は3割負担です。

納付方法と保険料

国民健康保険料は、世帯ごとに口座振替で納めます。
保険料額は前年度の所得、加入者数、年齢をもとに所得割額と均等割額を合計して求めます。また会社の健康保険にあるような扶養家族の概念はなく、加入する家族分の保険料が発生します。

健康保険料の場合は、給与天引きで納めます。
金額は、標準報酬月額に応じて算出された保険料となります。国民健康保険と異なるのは、保険料を会社が半分負担する「労使折半」となる点です。そのため会社員や公務員自身の負担は半額で済みます。
また、健康保険には扶養の概念があります。扶養家族は医療給付を受けられ、なおかつ保険料の負担はありません。

国民年金と厚生年金保険

  国の保険 会社の保険
保険の名称 国民年金 厚生年金保険
加入手続き 本人が行う 会社が行う
保険料の計算 毎年保険料額が決まる
(令和4年度は、月額16,590円)
標準報酬月額×保険料率
(※労使折半)
保険料の納付先 日本年金機構 日本年金機構
所得税の申告 本人が確定申告 会社が年末調整
メリット

保険料が定額

  • 保険料は労使折半
  • 老齢厚生年金として老齢基礎年金に上乗せして受け取れる
デメリット
  • 未納期間があると障害・遺族年金が受け取れない可能性があり、老齢年金は減額される
  • 免除期間、猶予期間があるとき追納しないと年金額が減る

収入が増えると保険料が高くなる

加入者

国民年金には、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入します。個人事業主もここに含まれます。
一方、厚生年金保険は、国民年金に加えて会社員や公務員が加入するものです。

保険料

国民年金保険料は毎年改定されます。令和4年度は月額16,590円でした。
厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて計算されます。ただし前述のように保険料を会社が半分負担する「労使折半」なので、半分は会社が負担してくれます。

未納の扱い

国民年金は保険料の未納期間があると、公的年金の受給に影響が出ます。老齢年金が減額されたり、障害年金や遺族年金が受給できなくなったりすることがあるのです。
その点、厚生年金は保険料が給与天引きになるので、基本的に未納になることはありません。

国民健康保険料・国民年金保険料は確定申告で所得から控除できる

国民健康保険 国民年金

個人事業主は、自分で確定申告をして所得税の申告をする必要があります。その際に、所得控除の手続きも行います。

所得控除の1つに「社会保険料控除」があります。これは、1月~12月に支払った社会保険料(国民健康保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金など)の全額を所得から差し引くことです。
所得からこれらを差し引くことで、結果的に税金が安くなるメリットがあります。

なお、生計を共にする配偶者や親族の分も社会保険料を支払っている場合は、本人の分だけでなく全員分をまとめて所得から控除することが可能です。

それぞれの手続きについて詳しく紹介します。

控除に記載する保険料の確認方法

国民健康保険料の場合

1年間に納めた国民健康保険料の合計額が社会保険料控除の対象になります。

国民健康保険料の合計額は、毎年1月下旬頃に、市区町村から納付済額を通知するハガキで確認できます。このハガキには1年間(1月~12月)に納めた国民健康保険料の合計額が記載されています。

なお40歳以上の人は、介護保険料も社会保険料控除の対象になります。別途、「介護保険料納付済額のお知らせ」のハガキが届くので、合計額を確認しましょう。
自治体によっては、国民健康保険料の納付済額を通知するハガキに介護保険料の合計額が記載されるところもありますので、ハガキを確認してください。

国民年金保険料の場合

1年間に納めた国民年金保険料の合計額が、社会保険料控除の対象になります。

国民年金保険料の合計額は、毎年10月末~11月上旬頃に、日本年金機構から「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」のハガキで確認できます。なおその年の10月~12月までに国民年金へ切り替えた人には、翌年2月上旬頃に届きます。

確定申告書の手続き方法

確定申告書の記載方法

確定申告は、毎年2月16日~3月15日に行います(初日と最終日が土日に当たると前後することがあります。詳しくは国税庁ホームページをご参照ください)

確定申告書の書き方ですが、国民健康保険料の合計額(40歳以上の人は介護保険料の合計額も)と国民年金保険料の合計額を合算して、確定申告書Bの左側「所得から差し引かれる金額」の「社会保険料控除」の欄に記入します。

国民健康保険料の納税済通知書は、確定申告書に添付する必要はありません。一方で、国民年金保険料の控除証明書は確定申告書に添付することになっているので、失くさないようにしましょう。

確定申告書の提出方法

確定申告書は、税務署に持参または郵送で提出するか、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」からe-Taxで申告することも可能です。マイナンバーカードを取得している方は24時間いつでも申告できるのでe-Taxの利用をおすすめします。手順などは確定申告書等作成コーナーを参照してください。
参考サイト:国税庁「確定申告書等作成コーナー」

まとめ

  • 退職して個人事業主になるときは、退職日の翌日から14日以内に市区町村の役所・役場で「国民健康保険」と「国民年金」の加入手続きを行う。国民年金は年金事務所でも手続きできる
  • 国民健康保険の加入手続きが遅れると、その期間の医療費が全額自己負担となるので、なるべく早く加入する
  • 国民年金の加入手続きが遅れると、将来受け取れる年金額が減額するなどのデメリットがある。経済的な理由で納付できない場合は、免除や猶予制度を利用できる
  • 健康保険と厚生年金保険は会社の保険であり、会社が加入や申告の手続きを行うが、国民健康保険と国民年金は国の保険であり、手続きは自分で行う必要がある
  • 国民健康保険料、国民年金保険料ともに、確定申告で「社会保険料控除」として所得から控除できる

会社員の場合、入社時の社会保険への加入手続きや毎年の年末調整など、すべて会社が行ってくれました。けれども退職して個人事業主になると、社会保険の手続きは全部自分で行うことになります。医療費の全額負担や将来の年金受給額が下がることのないように、忘れずに切り替え手続きをするようにしましょう。
また、会社で行っていた年末調整の代わりに、年に一度確定申告をする必要があります。事業収入のある個人事業主は必ず確定申告をすることになっています。また、納税額を抑えるための所得控除は確定申告をすることで反映されます。そのためにも、毎年決められた期日までに確定申告を行いましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者 家計コンサルティングZEN 代表

元々はライターだったが専門分野を持とうと考え、興味のあった金融知識を活かせるファイナンシャル・プランナーの資格を取得。ウェブコラムやメルマガなど金融関連記事を執筆するかたわら、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。保険や金融商品を売らないファイナンシャル・プランナーとして活動中。

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