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開業資金準備の極意と失敗例を起業コンサルタントに聞いてみた

中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)

お店を開業する際の一番の悩み、それは開業資金準備の問題です。そこで、3,000件の起業アイデアを見てきた経験や、約100件超の補助金採択実績のある起業コンサルタントの中野裕哲氏に、その極意と失敗しやすいポイントについて聞いてみました。

この記事の目次

借りられるものは借りる、もらえるものはもらおう

Q:借入れにはリスクがあるイメージがあるので、自己資金や身内からの支援だけで開業しようとする人もいますが、実際には、自己資金や身内からの支援だけで開業したほうが良いのでしょうか?

A:自己資金や身内からの支援だけで開業するのは、かえってリスクがあるので、おすすめしていません。なぜなら、もし、開業してから後に思ったほどの売上が上がらず、その時点で金融機関からの借入をしようとしても業績が悪い中での融資審査はかなり不利になるからです。

Q:では、身内からお金を借りないほうがいいということでしょうか?

A:身内にお金を借りること自体は問題ありません。支援してくれる人の存在はありがたいものです。問題はタイミングです。おすすめなのは、まずは公的な融資制度は使って借入をして開業することです。実際に開業して、追加で資金が必要になった時点で身内を頼る、という順番で考えておくことをおすすめしています。公的な融資制度は無担保・無保証でリスクも少なく、低金利です。借りられるものは借りておく、そのスタンスが正解だと思います。

スタート時には出来るだけ多く借りよう

Q:創業時に借りられる公的に融資制度には、どのようなものがあるのでしょうか?

A:大きくわけて2つあります。日本政策金融公庫(国が100%株主である公的金融機関)が用意している創業融資制度と、都道府県や市区町村など自治体が用意している制度融資の2つです。店舗開業の場合、日本政策金融公庫の創業融資が審査も早いためおすすめです。

Q:創業融資の審査に向けて、失敗しやすいポイント、注意しておくべきことはありますか?

A:失敗しやすいポイントは決まっています。特に次の4つのポイントに注意してください。

タンス預金はダメ、親にもらうときも手渡しはダメ

創業融資の審査では、どのくらいの自己資金を用意できたかが重視されます。自分でお金を出してリスクをとること、コツコツとお金を貯めてきた努力が評価のポイントとなるからです。この自己資金ですが、過去の通帳を提示させ、本当に自分が貯めたお金かどうかがチェックされます。その点で、タンス預金や親からの手渡しでの贈与などは、証明できない自己資金となってしまいます。ご注意ください。

カード・税金・携帯電話料金などの滞納はダメ

過去の通帳をチェックされる際、クレジットカードの滞納や、税金の不払い、携帯電話料金の延滞などの情報もあわせてチェックされます。お金にだらしないかどうかも、金融機関にとっては重要な情報だからです。開業しようと決めたら、お金の管理を徹底したいところです。

過去に副業をしていた場合、申告した?

盲点になるのが副業についての確定申告です。副業で年間20万円以上の利益が上がった場合、所得税の確定申告が必要です。これを放置したり、忘れたりした場合、融資審査を突破することは難しくなります。将来、開業したいと考えたら税金の申告や納付には特に注意が必要となります。

自分でやるか、プロを頼るか。素人が自分で進めたとき勝率は3割

意外と知られていませんが、創業融資の審査は一発勝負です。もし、一度審査に落ちてしまったら記録が残り、最低でも半年間は同じ事業での融資審査はしてもらえなくなります。また一度相談を行っただけでも記録に残ります。その時にあまり良くない印象を与えてしまうと、審査時点でマイナスになる場合があります。しかも素人が自分で融資申請をした場合の勝率は平均で3割といわれています。甘く見て、たいした準備もせずに申し込んで失敗するということがないようにご注意ください。できれば、融資に詳しいコンサルタントや税理士のサポートを頼りましょう。

融資を借りる際の極意

Q:創業融資を借りる際の極意はどんなことでしょうか?

A:極意としては4つあります。

起業してから半年に借りる

創業融資は開業してから半年以内に申し込むのがポイントです。半年以内であれば、過去の売上や利益の実績ではなく、事業計画書に書いた情報だけで審査をしてもらえるからです。

自己資金は温存して、目一杯借りる

無理して自己資金を多く出してしまうと、生活にも不安が残ります。そこで、自己資金は最低限出さなければならない金額に留め、創業融資は目一杯借りることをおすすめしています。これができると、何かの原因で追加の資金が必要になったときの安心材料にもなります。

親族からの援助は最後の最後に

同じ理由で、親族からの援助についても、最後の最後にとっておくのが得策です。窮地に陥って金融機関はお金を貸してくらない場合、頼れるのは身内だからです。最初は公的な融資を借りることを優先しましょう。

融資は一発勝負。万全の体制で望む

融資は一発勝負です。失敗すれば、開業することそのものが不可能になるケースも多いでしょう。できる限りプロのアドバイスに耳を傾け、万全の体制で臨んでください。

もらえるものはもらおう~助成金・補助金~

Q:補助金や助成金がもらえるということを聞いたことがあります。どんなものでしょうか?

A:国や自治体では、起業家や中小企業の経営を支援するために、いろいろな補助金や助成金を用意しています。融資とは違い、原則として返済不要なお金がもらえるものですから、もらわない手はありません。主に経済産業省が管轄していて、起業や中小企業や商店街などの振興に関するものを補助金といいます。一方で、主に厚生労働省が管轄していて、従業員の雇用や研修、職場環境の改善など関するものを助成金といいます。そのほか、都道府県や市区町村が各地域で独自の補助金や助成金の制度を設けています。

Q:補助金や助成金をもらうにあたり、気をつけておいたほうがいいポイントはありますか?

A:注意しておくべきことは3つあります。

先にお金を使って、もらえるのは後

補助金や助成金はすぐにもらえるものではなく、対象となる経費を使ったあとに、請求書や領収書などの書類のチェックがあり、OKであれば、振り込まれるという性質のものです。つまり、対象となる経費の支払いとしてお金が先に出ていって、だいぶ後になってから補助金・助成金が振り込まれるという仕組みです。この点で、資金繰りにも注意が必要です。場合によっては融資制度との組み合わせを検討することも必要となります。

知らなければ応募できない

当然のことですが、補助金・助成金の存在を知らなければもらうこともできません。世の中には何千種類という補助金・助成金があります。補助金・助成金に関する正確な最新情報を入手できる情報源をいかに確保するかがポイントといえるでしょう。補助金・助成金に詳しい専門家との関係を構築しておくことが近道だといえます。

事業計画書は融資と同じではダメ

補助金の審査では、事業計画書の内容が重視されます。事業計画書の内容は融資とはポイントが違うため、補助金用の事業計画書を用意することが合格するためのコツです。そのポイントは政策意図に合った事業計画書を作るということです。補助金を行う政策意図は何なのか、よく研究しましょう。

補助金・助成金の極意

Q:補助金・助成金を獲得するための極意はありますか?

A:補助金・助成金の極意は4つあります。ぜひ、知っておいてください。

起業時、家賃、人件費、広告費は可能性あり

開業前後の時期、補助金・助成金をもらえる可能性があるシーンとしては、主に3つあります。まずは家賃が対象になるものです。出店するエリアの自治体で補助金・助成金がないか、必ず確認しましょう。人を雇用する際にも可能性はあります。雇用前に手続きをすることがポイントとなります。雇用する前に助成金に詳しい社会保険労務士に相談しておくことをおすすめします。チラシやホームページなど、広告販促展開が対象になる補助金・助成金も多く存在します。すでに作成を始めてしまうと対象外となることも多いので、事前に確認しましょう。

補助金・助成金が出てくる時期は毎年同じ

補助金・助成金が出てくる時期は毎年同じです。国や自治体の予算がはじまる4、5月か、景気対策として打ち出す補正予算が出てくる10、11月です。この時期は情報収集を欠かさないようにしてください。

対象経費がカブらないようにする

同じ経費を対象として、複数の補助金・助成金を申請することは、制度上、禁止されているケースがほとんどです。なるべく多くの補助金・助成金を獲得するには、全体を俯瞰し、対象となる経費や申請年度がカブらないようにズラしていくことがコツです。この点でも、補助金・助成金全般に詳しい専門家を頼ることが得策となります。

面倒くさがらず、全部もらうつもりで

最後に、補助金・助成金は面倒くさがらず、全部もらったほうが経営は安定するという話です。例えば。利益率が10%の事業をしていて、補助金を300万円獲得したとしたら、ある意味では、3,000万円の売上を上げることに匹敵します。この観点からも、もらえるものは全部もらうのが得策だといえるでしょう。

まとめ

  • 借りられるものは借りる、もらえるものはもらうことを心がける
  • スタート時には出来るだけ多く借りる
  • 融資を借りる際の極意は半年以内に借りること
  • 補助金・助成金は情報源をいかに確保するかがポイント
  • 起業時は家賃、人件費、広告費で補助金・助成金をもらえる可能性がある

融資や補助金・助成金をどれだけ獲得できるかで、事業の安定性は違ってきます。最新で正確な情報を入手したうえで、できるだけ有利な形で、効率的に申請をしましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

Airレジ マガジン編集部

Airレジ マガジン編集部

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この執筆者の記事一覧
中野 裕哲(なかの ひろあき)氏

中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)

起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で6年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/