“こだわり”を追求するため開業資金を抑えたビアスタンド「Far Yeast Tokyo ~Craft Beer & Bao」の3つの取り組み
柚子や山椒など、和の素材の酵母を使用した「馨和 KAGUA」や香りの豊かなホップをふんだんに使用した「Far Yeast」などのビールを製造しているFar Yeast Brewing株式会社。同社初の直営食店「Far Yeast Tokyo ~Craft Beer & Bao」を開業するにあたり、料理やビールへのこだわりを追求しました。
とはいえ、同社初の直営飲食店ということもあり、莫大なお金を投資するわけにはいきません。開業までには、初期費用を抑えるべく工夫を凝らしました。その工夫やこだわりについてFar Yeast Brewing株式会社・代表取締役の山田司朗さんに話をうかがいました。
この記事の目次
お客様のリクエストに応えて開店。目指したのは「ショーケース」のようなお店
山田さん(以下、山田):会社自体は2017年の9月で設立7年目になります。元々は自社工場を持たずに委託製造、コントラクト・ブルーイング(※1)、契約醸造をお願いしていましたが、5月からクラフトビールの自社工場を山梨県に建設しました。
そもそも、僕がビールに目覚めたのは30歳、イギリスで暮らしていたときのこと。ヨーロッパでは、ビールもワインと同じように、土地に根ざした文化を持っていることを知りました。それまで日本国内の大手ビールしか知らなかった僕にとっては驚きだったんです。
ちょうどそのころ、僕の在籍していた大学院の卒業生がビールを製造する企業を設立。彼は「インド料理にあうビール」をコンセプトにしてビールを作っていたんです。「そういった切り口もあるのか」と感銘を受けたのを覚えています。同時期には、日本料理が世界でも高級料理として評価されていた。世界に向けて、高級な日本料理にあうビールを発信したい。そう思い、ビール作りの道に踏み込みました。
(※1)コントラクト・ブルーイング……ビールを委託により生産すること。
会社の設立当初は直営店をつくる予定はありませんでした。というのも、ビールの会社なので、うちのビールを仕入れてくれるお店の応援活動に専念していたんです。しかし商品ラインナップが増えるうちに、イベントなどでブースにお越しいただいたお客様から「(Far Yeast Brewing株式会社で製造している)ビールはどこで飲めるのか」という問い合わせが増えました。
そこで、うちのビールのコンセプトが伝わり、かつ高級感のあるビールと料理を共に気軽に楽しむことができるお店を作ることにしたんです。
山田司朗
1975年生まれ。大学を卒業後、大手ベンチャーキャピタルに就職したのち、オン・ザ・エッヂ(現:ライブドア)に就職。その後、ケンブリッジ大学の修士課程を卒業。2011年にFar Yeast Brewing株式会社を立ち上げ、代表に就任。
開業資金は1500万円。なかでもこだわったのは……
山田:店舗内装工事や人件費など、初期投資にかかった金額は1500万円ほど。その内クラウドファンディングで300万から400万程度をまかないました。
お金を潤沢に使えるわけではない。その状況でこだわったのは、お店の立地と料理です。
大人が来やすいよう繁華街を避けた立地選び
山田:まずこだわったのは店舗の場所です。うちのビールに興味があり、飲んでみたいという人が来やすい場所を選びました。なぜなら、あらゆる方にいらしていただきたかったから。東京在住の方だけではなく、日本全国、さらには訪日外国人の方でも来やすい場所がどこか考えました。都内で、新幹線・空港からの電車の乗り換えが少なく訪れやすい場所を考えたところ、候補に挙がったのは渋谷区と港区でした。
しかし、繁華街のど真ん中には作らなかった。美味しいものが好きな大人の方をターゲットとしたかったので、繁華街から少し離れている、落ち着いた雰囲気のある場所のほうが、足を運んでもらいやすいと考えたのです。
そして、初見や通りすがりの人でも入店しやすい1階部分、かつ、開放感のあるつくりができるような物件を探しました。結果、渋谷駅近くの物件を借りることができました。
料理は尊敬するレストラン「食幹」と協力
山田:Far Yeast Brewingの主力商品である「馨和 KAGUA」は、日本料理のあうビールを、という想いから誕生したビール。そのビールを味わう場所で、料理は妥協できませんでした。いわゆるビアバーにあるようなソーセージとか普通の揚げたポテトは避けたいものの、あんまりカチッとした器に盛ってある和食も違う。そこで思いついたのが、渋谷にある和食店「食幹」さんとのコラボです。
食幹さんはミシュランガイド2015ビブグルマン(※2)に選ばれたレストラン。うちのブランド「馨和 KAGUA」を創業初期に扱っていただいたこともあり、深い付き合いでした。それだけではなく、目標の高さに共感し、尊敬していたことも大きな理由です。一般的な日本料理店さんでは、「銀座に料亭を出す」といった目標を掲げる方が多い。一方食幹さんはニューヨークに100席規模のレストランを作ることを目的としていました。
僕自身、海外展開を強く望んでいましたし、目標の面で強く共感したんです。さっそく食幹さんに料理のプロデュースを依頼。快く受けていただき料理の試行錯誤を重ね、片手で食べられる天ぷら串とバオにたどり着きました。
(※2)ミシュランガイド・ビブグルマン……ミシュラン調査員によって選ばれた5000円以内で食事できるオススメの飲食店に与えられる。
立地や料理にこだわった分、他の部分で工夫する
山田:とはいえ、お金は潤沢にありません。厨房器具を揃えるにはお金がかかります。立地と料理は譲れないですし、人件費を削ろうにも限度がある。少しでも自己負担を減らす試みをしました。
1.クラウドファンディングで資金を募る
まずは、クラウドファンディングでの開業資金集めです。宣伝の側面もありましたが、ある程度資金集めできたらいいなと考えていました。クラウドファンディングを成功させるには、リターン(※3)の設定が一番重要です。
(※3)リターン……クラウドファンディングにおいて、支援者への見返りを指す。プロジェクトや支援額によってさまざまな見返りが与えられる。
意識したのは、プロジェクトの支援者が早く集まるようなリターンを考えること。クラウドファンディングサービス「MAKUAKE」の特性上、早期にプロジェクトの支援者が集うと、トップページに表示されるので注目が集まります。
そこで、先着20名様限定で「8000円で半年間いつでも1杯無料」というリターンを設定。実はそれだとうちは赤字でしたが、数時間で支援者が集いました。
また、応援したくても遠方にお住まいの方がお店に来なくても楽しめるような内容にしなければなりません。そこで、Far Yeast Brewingが自社醸造したボトルの詰め合わせを設定しました。
目標金額100万円に対し、集まったのは368万9千円。233名の方に支援いただくなど、嬉しい結果となりました。
2.内装費を抑える
山田:開業資金を集めるだけでなく、コスト削減にも注力。内装と什器にかかった費用をかなり抑えています。
内装リフォームの大工さんに、安価で仕上げていただくように依頼しています。例えば、テーブルは軽量鉄骨で組んでくれたもの。天井は手を加えすぎず、もとの質感を活かすようにしました。デザイナーを入れず、建築資材も安いもので済むようお願いしました。
3.ランニングコストの低いサービスの導入
山田:同様に、レジスターも料金を抑えました。大掛かりなPOSシステムやガチャレジは導入コストがかかるため選択肢に入りませんでした。初めから安価に始められるiPadで使えるレジアプリであることが第一条件。あわせて、僕は普段はビール工場のある山梨にいるので、山梨にいながらリモートで毎日売り上げをチェックできる必要がありました。
最終的には、Airレジに決定。その理由としては、レジ機能を0円で利用できること。アプリで毎日リアルタイムにチェックできること。プリンターやキャッシュドロアなどの周辺機器購入に3〜4万円ほどの軽減税率対策補助金が出ること。Airレジと一緒に使えるクレジットカード決済アプリ、Airペイの決済手数料が3.24%と、比較的安価なこと。この4点が決め手となりました。
Far Yeast Tokyoのこれから
将来的な目標はふたつあります。
ひとつは、海外でお店を経営すること。特に香港やニューヨーク。これらの都市は弊社のビールがよく売れています。そのような場所で出店することで、より多くの人に知っていただけるのではと考えています。
また、現在の店舗スタイルにこだわらず、ウェイティングのバーや、ニューヨークなどでよく見られる二段構えのお店に挑戦したいですね。カジュアルに使えてふらっと飲める部分と、予約していないと入れない部分に分ける形のお店です。
ふたつめはマルシェ(※4)のような形態のお店を出店すること。実はこの店舗もマルシェをイメージし、オープンな雰囲気にしているんです。日本ではまだメジャーではありませんが、海外のマルシェは本当に楽しい。肉が吊るしてあるお店の隣にサードウェーブのコーヒー店が並び、雑貨屋を眺めながらワインやビールを楽しめる。
料理もビストロ級に力を入れていているところもあり、すごく充実しています。僕がこれまで海外で体験してきたことを日本でも味わえたらいいな、と思いますし、海外の人にも分かりやすいフォーマットというのは大事だと思います。
(※4)マルシェ……フランスにおける「市場」のこと。野菜やパン、肉などの食料品をはじめ、生活雑貨なども出店される。
まとめ
開業資金を抑えるため、「削るところは削る」の精神でオープンしたFar Yeast Tokyo ~Craft Beer & Bao。内装費を抑える、無料のレジを導入するなど細かな節約術やクラウドファンディングでの開業資金調達といったさまざまな工夫が光ります。
妥協を一切しなかった自慢の料理は、自社のビールとの相性抜群。本物の味を愉しむ大人が集うお店で、今日も夜な夜なビールを片手に談笑が繰り広げられているでしょう。
Far Yeast Tokyo ~Craft Beer & Bao
渋谷駅より徒歩10分。喧騒を離れた一角に位置するFar Yeast Tokyo ~Craft Beer & Bao。自社で製造されたビールや季節のおすすめビールなど、常時12種類が取り揃えられている。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
高根 千聖(たかね ちさと)編集者
株式会社ZINEの編集者。編集プロダクションで週刊誌の編集・ライター業務に従事。その後、制作会社にて紙媒体やWEBサイトのディレクション、編集・ライター業務に携わる。得意ジャンルはビジネスやグルメ、芸能など。