個人事業主と契約社員の違いは?開業前に知っておきたい4つの違い
これから個人事業主として独立・開業しようとしている方の多くは、現在あるいは以前に何らかの仕事をされていることでしょう。新たな一歩を踏み出す前に、契約社員を例に比較しながら違いや注意点を見ていきましょう。
この記事の目次
個人事業主になるリスクも知ろう
個人事業主になるときとは、どのような場合があるのでしょうか?
例えば、フリーランスになりたい・自分のお店を持ちたいといった思いがあったり、もともと雇用されていた契約社員が独立して、従事していた仕事をそのまま引き継いだりといったことがあります。さまざまなシチュエーションがあり、契約社員の時に比べてメリットもあればデメリットもあるでしょう。
多くの方は会社勤めから独立するわけですから、開業しようとする前に個人事業主になるリスクを把握しておきたいところです。
違いその1 雇用関係
契約社員と個人事業主で最も大きな違いとなるのは、雇用契約があるかないかです。契約社員は労働基準法や労働契約法に守られていますが、個人事業主はそれらの保護がありません。
例えば、契約社員であれば、契約期間内に雇用契約を解除するためには解雇と同じように相当な理由が必要ですし、契約期間の満了時であっても、契約更新の回数などによって解雇と同じように、契約期間の満了で雇い止めするために相当な理由が必要となる場合があります。
一方で、個人事業主であれば、業務委託契約を会社と締結することが多いですが、解約にあたっては当事者の間の契約内容次第であり、解雇などの問題が発生することはありません。
違いその2 社会保険
社会保険は、契約社員の場合、よほど労働時間が短くない限りは、会社側で健康保険や厚生年金保険への加入手続きを取ってもらえます。保険料についても、会社が2分の1を負担してくれます。
一方で、個人事業主の場合は、自ら国民健康保険や国民年金へ加入する必要があります。保険料は全額自己負担となります。
契約社員と個人事業主のどちらが保険料の負担が少ないかというのは一概には言えません。
年金については、契約社員が加入する厚生年金保険の方が、個人事業主の国民年金に比べて、年金の受給額は多くなります。一般的に個人事業主の方が契約社員に比べて年金額が少なくなります。そのため、国民年金基金に加入することで将来の年金額を増やしたり、個人型確定拠出年金(iDeCo)という制度で契約社員よりも多くの掛金を払って将来に回したりすることが個人事業主には認められています。
違いその3 仕事の対価の受け取り方
契約社員の場合、雇用契約で定めた毎月の給与を受け取ります。また、最低賃金の保障や、時間外・深夜・休日の労働については、労働基準法に定められる割増賃金が保障されています。
一方で、個人事業主の場合は、たいていは(業務委託などの)契約で定めた報酬を受け取ります。注意が必要なのはその報酬の範囲でどれだけの仕事を行うのかということを明確にしておくことです。契約外の仕事を行った場合の追加報酬なども決めておくべきです。
また、個人事業主には、雇用契約のような割増賃金の保障もないため、業務時間が一定時間を超えた場合の報酬の取り扱いも決めておいたほうがよいでしょう。
違いその4 所得税の計算
契約社員の場合、給与は年末調整の対象となるため、毎年の所得税の計算は会社が行ってくれます。もし、医療費控除などの所得控除を受けたり、他の所得があったりする際には確定申告を行う必要がありますが、このようなケースでない限り、自分で所得税を計算するということはありません。
一方で、個人事業主の場合は、給与としてではなく、事業所得として仕事の対価を受け取るため年末調整の対象にはなりません。自分で確定申告を行う必要があります。
まとめ
- 契約社員は雇用契約、個人事業主は主に業務委託契約である
- 契約社員は基本的に健康保険・厚生年金保険に会社で加入、個人事業主は国民健康保険・国民年金に自分で加入する
- 契約社員は給与、個人事業主は事業の報酬の形で対価を受け取る
- 契約社員は年末調整、個人事業主は確定申告で所得税を計算する
独立・開業してから慌てないように、契約形態やお金などの面でどのような違いがあるのかということをしっかりと把握しておきましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/