飲食料品を含んで軽減税率混在で同時購入…「割引券」の取り扱いは?
スーパーマーケットなどでは、ポイントが貯まると割引券と交換というサービスを行っているところもあります。軽減税率の対象商品とそれ以外の商品を同時購入したときに、割引券が使用されることもあります。この場合、どのように計算を行えばよいのでしょうか?
この記事の目次
総額から値引きをした場合の計算方法は2パターン
代金の値引き方法には、特定の商品ごとに10%オフなどといった値引きではなく、割引券によって購入代金全体から値引きサービスを行うケースがあります。スーパーマーケットのように軽減税率の対象品目とそれ以外の標準税率の品目を取り扱う事業者が、このような総額からの割引サービスを行う場合には、消費税の計算方法にも注意が必要です。
軽減税率の対象品目とそれ以外の品目を同時購入したときの値引きの扱いには2つの方法が考えられます。
方法(1) どちらかの税率に寄せて割引を行う
どちらの税率の商品から値引きを行ったのかということや、値引き後の税率ごとの税込金額の合計額がレシートや領収書などに記載されていれば問題ありません。
例えば、軽減税率の対象品目を税込2,160円で、標準税率の対象品目を税込3,300円で、1,000円の割引券で会計した場合を考えてみます。
▼8%商品に対して割引適用した場合の請求書記載事項
8%対象:税込2,160円 − 割引1,000円 = 税込1,160円 ★
10%対象:税込3,300円 ★
合計お支払額 = 税込1,160円 (内消費税86円)+ 税込3,300円(内消費税300円)
= 税込4,460円 ★(内消費税386円)
▼10%商品に対して割引適用した場合の請求書記載事項
8%対象:税込2,160円 ★
10%対象:税込3,300円 − 割引1,000円 = 税込2,300円 ★
合計お支払額 = 税込2,160円(内消費税160円) + 税込2,300円(内消費税209円)
= 税込4,460円 ★(内消費税369円)
※「★」印はレシートに記載すべき税込額。
このように、支払額が同じでも、内部に含まれる消費税に差が出ています。もし、どちらの税率で割引額が満たなければ、もう一方の税率で差額を割引します。
方法(2) 税率ごとの税込対価の合計額で、割引額を按分して計算する
方法(2)の場合は按分の計算をしなくてはならないので、方法(1)に比べて手間がかかります。方法(1)と同様の例で見てみます。
8%対象:1,000円 × 2,160円/5,460円 ≒ 396円
10%対象:1,000円 × 3,300円/5,460円 ≒ 604円
がそれぞれの値引き額となります。
この場合、値引き前のそれぞれの税額ごとの税込金額や、税率ごとの値引き額がレシートなどに明記されていれば問題ありません。
▼割引額を按分した場合のの請求書記載事項
8%対象:2,160円 − 396円= 税込1,764円 ★
10%対象:3,300円 − 604円= 税込2,696円 ★
合計お支払額= 税込1,764円(内消費税130円) + 税込2,696円(内消費税245円)
= 税込4,460円(内消費税375円) ★
※★印はレシートに記載すべき税込額。
按分計算を行うよりも、値引きを寄せたほうが楽
値引きの計算方法には2パターンあると紹介しましたが、簡単なのは方法(1)の「どちらかの税率に寄せて値引きする方法」だということは明らかです。按分計算は面倒ですし、お客様にとってもレシートの記載が複雑になって不親切です。最低でも、レジなどで計算できるシステムを導入しないと計算間違いを起こしたり、会計の際に時間がかかったりしてしまいます。
もし飲食客が飲食小売店などを経営するなどしている消費税の納税義務者(事業者)であれば、方法(1)の計算方法の場合、8%の税率が適用される品目から割引を行うほうがお客様にとってはありがたいでしょう。8%の税率が適用される金額が少なくなるほうが、支払う金額に含まれる消費税が多くなるため、お客様が納税すべき消費税が少なく抑えられるためです。
いずれにしても、割引券の配布を行っている事業者は、どちらかに寄せて値引きするのか、按分計算を行うのか、処理を決めておきましょう。
まとめ
- 複数税率の商品を販売する事業者が総額から値引きを行った場合、「どちらかの税率に寄せて値引きする方法」と「それぞれの税込対価で按分する方法」の2パターンがある
- どちらかの税率に寄せて値引きする場合には、どちらの税率から値引きしたのかということをレシートなどに明示しなければならない
- 按分計算を行う場合は、最低でもレジなど計算できるシステムの導入が必要である
総額からの値引きについては、処理が複雑になりがちです。普段からこのサービスを行っている事業者は、軽減税率の導入に備えて、しっかりと準備をしておきましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/