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身近だけど意外と知らない?社会保険料の種類と手続きや計算方法をチェック

穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士

日本国民がお互いに支え合いながら、健全な生活を送るために存在する社会保険。事業主や国民が保険料を負担し、一定の条件を満たすとお金が支払われる仕組みになっています。ここでは、社会保険の種類と手続きや計算方法について解説します。

この記事の目次

社会保険の種類

社会保険制度は大きく分けて「健康保険制度」「年金保険制度」「労働保険制度」の3系統があり、種類は大きく「健康保険」「年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つに分けられます。

社会保険の3系統5種類
3系統 5種類
【健康保険制度】
健康で健全な生活をおくるために、医療や介護の負担を軽減する保険制度
≪健康保険≫
病気やケガをした場合に医療費の一部を国が補てんするもの
≪介護保険≫
介護が必要になった場合の負担を一部国が補てんするもの
【年金保険制度】
老後の生活を保障するための保険制度
≪年金保険≫
老後を迎えた方の生活費を国が給付するもの
【労働保険制度】
労働者の生活を保障し、労働環境を向上するための保険制度
≪雇用保険≫
失業した場合の生活保障や教育訓練、病気やケガで休職する場合の生活費を保障するもの
≪労災保険≫
労働中の事故やケガによる治療費などを補てんするもの

社会保険の種類のうち「介護保険」は、病気やケガによる介護負担の軽減を目的とするため、「健康保険」の枠組みの一部と捉えることができます。「雇用保険」と「労災保険」は、どちらも労働者に対する保障制度のため「労働保険」ともいわれ、セットで捉えることができます。

各種社会保険の特徴

続いて、各種社会保険の特徴について詳しく見ていきましょう。なお、労働保険は主に会社側に対する義務的な要素が強いので、より多くの方の生活にとって関わりの深い健康保険と年金保険についてここでは解説します。

健康保険・介護保険

健康保険は、病気やケガなどによって医療機関を利用する場合に、医療費の全部、または一部を保険によって補てんするものです。一方介護保険は、高齢者の介護について社会全体で支え合おうというもので、介護負担の全部または一部を保険によって補てんします。

健康保険制度は、「国民健康保険」「全国健康保険協会(協会けんぽ)」「健康保険組合」のいずれかの健康保険制度に加入することになっています。

「国民健康保険」は、社会保険制度の根底にある「国民皆保険」の理念に基づいて、他の健康保険制度に加入していない方(世帯)が加入する健康保険制度です。自営業者やフリーランス、協会けんぽ未加入の個人事業主の下で働いている従業員、現在働いていない方などが国民健康保険に加入します。保険料は世帯ごとの人数、所得などによって計算され、保険料の全額を世帯主が負担することとなっています。

「全国健康保険協会(協会けんぽ)」は、独自制度を持たない事業者に加入が義務付けられている健康保険制度です。個人負担だけではなく会社も保険料を負担することになっています。個人事業主で常時雇用人数が5人未満(一次産業やサービス業では人数制限なし)の場合、加入は任意となります。保険料は標準報酬月額(毎月の平均的な給与額)の等級に基づいて計算され、保険料を事業主と従業員が折半して負担します。

「健康保険組合」は、それぞれの業界組合(公務員共済組合や建設組合、漁業組合など)や企業組合(ホンダ健保組合やソニー健保組合など)が、組合員のために独自に組織する健康保険制度です。保険料を事業主と折半して負担することは協会けんぽと同じですが、個人事業主自身も加入することができたり保険料率が割安だったりと、組合ごとの特色があります。

年金保険

年金保険は、老後の生活保障のため働いているうちに保険料を負担し、受給年齢になったときに年金という形で受け取る制度です。

年金保険制度においては、「国民年金」と「厚生年金」のいずれかに加入することになっています。以前は公務員について「公務員共済年金」という別枠の制度がありましたが、2015年に「厚生年金」に一本化されました。

国民年金は、20歳以上60歳未満で他の年金制度に加入していない方が加入するものです。自営業者やフリーランス、その時点で離職されている方などが該当します。保険料は個人が全額を負担します。

「厚生年金」とは、法人や個人事業を行う会社が社員のために加入を義務づけられている年金制度です。健康保険と同様、個人事業主で常時雇用人数が5人未満(一次産業やサービス業では人数制限なし)の場合には、加入が任意となります。保険料は標準報酬月額(毎月の平均的な給与額)の等級に基づいて計算され、保険料を事業主と従業員が折半して負担します。厚生年金は国民年金の「上乗せ部分」という位置付けであり、厚生年金保険料を負担している場合は自動的に国民年金(基礎部分)にも加入しているものとみなされます。

社会保険の手続きと計算方法

ここでは、それぞれの保険制度の手続きと計算方法について見ていきましょう。

健康保険の手続きと計算

健康保険制度では、生まれた時点から親(被扶養者)の「扶養者」として保障が始まります。そして働き始めて親の扶養から外れるタイミングで、自らの健康保険に加入することになります。

就職した会社が「協会けんぽ」や「健保組合」に加入している場合、就職した会社側で当該制度への切替え手続きを行うため、本人は特に何もする必要はありません。逆に退職などよって「協会けんぽ」や「健保組合」から「国民健康保険」に切り替える場合には、本人が区役所や市役所で手続きをする必要があります。

「国民健康保険」の保険料は、市区町村によって計算式が違いますが、多くの市区町村で「所得割(前年の儲けをベースに計算)」と「均等割り(被保険者人数で計算)」を組み合わせて健康保険料を計算しています。詳しくはお住いの市区町村のHPでご確認ください。

「協会けんぽ」と「健保組合」は、社員の3カ月分の報酬平均額をベースに、国が会社と社員が負担する保険料を計算します。当該保険料は、給与支払いの翌月末に会社がまとめて支払います。

なお、保険料の計算式や保険料率は「協会けんぽ」「健保組合」でそれぞれ異なりますので、加入している健康保険制度のHPなどでご確認ください。

年金保険の手続きと計算

年金保険制度は、原則として満20歳~満60歳(厚生年金の場合には満70歳)の期間に保険料を負担し、満65歳以降に年金を受け取る制度です。ただし、20歳未満の方が「厚生年金」に加入している会社で働いている場合は、20歳未満であっても保険料の負担が発生します。また、20歳以上であっても学生である場合には国民年金保険料の免除を受けることもできます。

「国民年金」は保険料が一律で決まっており、2020年3月現在で毎月の保険料は月額16,410円となっています。満60歳になるまで保険料の支払いがあり、満了すると65歳から年金を受け取れます。

「厚生年金」は健康保険の場合と同じく、社員の3カ月の報酬平均額をベースに標準報酬月額を国が決定します。そのうえで、会社が負担する保険料と社員が負担する保険料を計算します。厚生年金も国民年金と同じく65歳から年金を受け取ることができますが、働き続ける限り満70歳になるまで年金保険料の支払いがあります。

なお、年金を受け取るためには、通算10年以上保険料を支払っている必要がありますので注意してください。

標準報酬月額について

「協会けんぽ」「健保組合」「厚生年金」の保険料を計算する際に必要な、標準報酬月額の算定方法と改定方法について、改めて見ていきましょう。

定時決定

会社が社員に支払った報酬額を日本年金機構に報告することで、標準報酬月額が決定され、厚生年金や健康保険の保険料計算が可能となります。この年に1回行われる報酬の報告と決定のことを「定時決定」といいます。4月、5月、6月の3カ月間に支払われた報酬額の平均額をベースに標準報酬月額が決まります。

随時改定

上記のとおり、標準報酬月額は年に1回だけ改定されます。しかし、仮に年の途中で大幅な給与の増加または減少があると、実態からかけ離れてしまいます。3カ月の報酬平均額が、定時決定された標準報酬月額と対応する等級に比べて2等級以上アップ・ダウンする場合、「月額変更届」を日本年金機構に提出。標準報酬月額を変更する必要があります。この変更手続を「随時改定」といいます。

なお、定時決定と随時改定は、事業主が提出した報酬額をそのまま使用して標準報酬月額を決定するため、提出段階では国はその金額が正しいかどうかをチェックしません(後日、調査というかたちでチェックすることはあります)。報酬額を提出する際には、金額が合っているかどうかをしっかりと確認するようにしてください。

まとめ

  • 社会保険は国民全員で支え合う相互扶助の制度
  • 日本国民は必ず「健康保険制度」と「年金制度」に加入している
  • それぞれの「保険制度」は途切れないように相互連携している
  • 標準報酬月額は自社で決めるのではなく国が決定する

老後や病気に対する備えを考えるうえで、社会保険は欠かせない存在です。事業者としては、社会保険の基礎についてしっかりと押さえておくことが大切です。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士

税理士法人 エンパワージャパン 代表税理士 1981年生まれ 横浜市在住

中小企業こそ日本を支える礎であるという理念から、持続可能な社会・持続可能な企業を創るための「中小企業のための財務支援プログラム」を実施することで強固な財務力を持つ優良企業に導く、中小企業の財務支援に専門特化した税理士事務所を運営するとともに、児童養護施設の児童から地域を支援する税理士へと導く「大空への翼プロジェクト」を行っている。共著「七人のサムライ」や執筆など多数。