雇用保険料率ってどうやって計算するの?計算方法を詳しく解説
労働者の生活の安定を図り再雇用を支援する雇用保険は、国が国民のために行う社会保険制度の一つです。ここでは、雇用保険とはどのような制度で、どのように保険料が計算されるのかについて見ていきましょう。
この記事の目次
雇用保険と雇用保険料率
まずは、雇用保険の目的や雇用保険料率について見ていきましょう。
雇用保険の目的
雇用保険の目的は主に以下の3つです。
- 失業期間の生活保障や休業時の収入保障を通して労働者の生活を安定させる
- 職業訓練の実施や教育訓練のための給付により、労働者の再就職を促進する
- 労働環境を改善・向上させる取組みに対して助成金の給付を行い、離職防止や雇用促進を図る
雇用保険は厚生労働省が管轄しており、実際の申請や給付などの手続きは全国のハローワーク(公共職業安定所)で行います。
雇用保険料率とは
雇用保険は、労働者の賃金から「雇用保険料」として徴収しています。その料率は、日本全体の失業率や実質賃金などを基準に、再就職や教育訓練などに必要な財源を確保するために設定されたものです。雇用保険料は、被保険者に支払う「賃金」に対して、該当する雇用保険料率を乗じて計算します(図参照)。
出典:厚生労働省「雇用保険料率」
雇用保険料率は改訂を重ねており、以前と比較して事業ごとの料率の差が小さくなっています。
雇用保険料率が異なる理由
雇用保険料率が異なるのは、失業給付や休業補償の利用頻度が業態によって異なるからです。季節変動が大きく常時雇用が難しい農業・漁業や、景気に左右されて雇用が不安定になりやすい建設業などは、利用頻度が比較的多い業種です。そのため、他の業種に比べて保険料の負担を高めに設定することで全体のバランスを取っています。一方、農林水産、清酒製造、建設以外の一般の業態は、料率が低く設定されています。
雇用保険の計算方法
雇用保険料は、「会社が国に支払うときの雇用保険料の計算」と「労働者の給与から天引きする雇用保険料の計算」の2つの計算が必要です。
会社が国に対して支払う雇用保険料は、年に1回(毎年7月)計算されます。計算期間は4月1日~3月31日までの1年間で、雇用保険に加入している「すべての労働者に支払った賃金総額」に、労働者負担と事業主負担を合わせた雇用保険料率(0.9~1.2%)を乗じて計算します。
全体の雇用保険料総額を計算したうえで、給与天引き額に事業主負担分を加えて国に支払います。
雇用保険に加入している労働者(被保険者)から徴収する雇用保険料は、給与等の支払いがあるたびに、雇用保険料を給与等から天引きします。雇用保険料は、対象となる「賃金」に対して、労働者負担分の雇用保険料率(0.3%~0.4%)を乗じて計算します。また、雇用保険料は、毎月の給与に対してだけではなく、賞与を支払った場合にも天引きする必要があります。
雇用保険料を計算する際の注意点
ここでは、雇用保険料を計算する際の注意点をいくつか紹介します。
雇用保険の加入対象者は?
雇用保険は、労働者の生活の安定を目的としているため、法人の役員や個人事業主は雇用保険に加入できません。雇用関係にある労働者が対象となります。
加入要件は、1週間に20時間以上働いていること、かつ1カ月月以上働き続ける見込みがあることです。正社員だけではなく、契約社員やパートタイム、アルバイトであったとしても加入要件を満たせば雇用保険に強制加入となります。
雇用保険の加入対象になるかどうかは会社側が判断して、手続きする必要があります。要件を満たしているにも関わらず加入手続きを行わなければ、行政処分を受ける可能性もあります。加入要件をしっかりと確認したうえで、要件を満たしている場合は、翌月10日までにハローワークで加入手続きをするか、電子申請を利用してください。電子申請については、厚生労働省のホームページに詳しく記載されています。
雇用保険料の対象となる賃金の範囲
雇用保険料を計算するときに、最も間違いやすいのは賃金の範囲です。基本的に、突発的なものや明らかに労働に関係ないもの以外はほぼ全て「賃金」に含めて計算します。詳しくは厚生労働省のホームページで解説されているので、そちらを参考にしてください。
参考:厚生労働省ホームページ
保険料計算はいつから始まるのか?
雇用保険料の計算は、雇用保険に加入した時点から計算対象となります。したがって、加入後に最初の給与等を支払うときは、雇用保険料を天引きする必要があります。
例えば、毎月25日締め月末払いの会社の場合、当月の20日に入社した人の最初の給与計算では、20~25日までの5日間分について給与を計算します。その5日間分の給与に対して、0.3~0.4%の雇用保険料を天引きします。
雇用保険の適用拡大について
日本人の平均寿命が延びて老後の生活費の必要額が増えたことと、「国民年金」「厚生年金」の受給年齢が65歳になったことにより、定年退職後も働く高齢者の方が増えてきました。以前は、65歳以上の方が雇用保険に加入するためには64歳までにその会社に入社しておく必要がありました。65歳を過ぎてから入社しても雇用保険に加入できなかったのです。しかし、法改正によって、65歳以上の方であっても新規で雇用保険に加入することができるようになりました。現在は、高齢者であっても失業給付や職業訓練を受けられます。会社としても人材確保の選択肢が広がったといえるでしょう。
まとめ
- 法定調書は従業員を雇っていたり顧問税理士に報酬を支払ったりしている事業者に提出義務
- 国に対する納付は年1回(または3回)だが保険料の給与天引きは毎月行う
- パートやアルバイトも雇用保険の加入対象になる
- 雇用保険に加入した時点から雇用保険料の計算対象となる
雇用保険により、労働者は安心して働くことができます。離職率の低下につながり、再就職(再雇用)のきっかけともなりえるでしょう。大きな役割を担う制度だからこそ、正しい計算方法を身につけておきたいですね。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士
税理士法人 エンパワージャパン 代表税理士 1981年生まれ 横浜市在住
中小企業こそ日本を支える礎であるという理念から、持続可能な社会・持続可能な企業を創るための「中小企業のための財務支援プログラム」を実施することで強固な財務力を持つ優良企業に導く、中小企業の財務支援に専門特化した税理士事務所を運営するとともに、児童養護施設の児童から地域を支援する税理士へと導く「大空への翼プロジェクト」を行っている。共著「七人のサムライ」や執筆など多数。