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資金繰りにも影響を与える?棚卸しの目的と手順

小森 良美(こもり よしみ)税理士

商品の在庫を数え、売上に対応する原価を把握するために行うのが「棚卸し」です。棚卸しをしなければ正しい損益計算を行うことができません。また、余剰在庫を持つと資金繰りが悪化する原因となります。棚卸資産は税務調査でチェック対象になりやすい項目でもあるため、どのようなやり方や根拠で算出しているか、きちんと説明できるようにしておきましょう。本記事では、棚卸しの目的と手順について解説します。

この記事の目次

棚卸しの目的

棚卸しは、正しい損益計算のために行います。例えば、1個100円の商品を100個仕入れた場合、仕入金額は10,000円です。しかし、この10,000円がそのまま売上原価になるかというとそうではありません。この月に、1個200円で50個売上があったとすれば、この月の「売上」は10,000円です。

この月の「利益」は、売上10,000円-仕入金額10,000円=0円とはなりません。売上原価=仕入金額-在庫金額で算出するので、売上10,000円-売上原価5,000円=5,000円が月の利益となります。この売上原価を計算するため、在庫金額(数量)を確定させるのが棚卸しです。

棚卸しを実施する意味

決算期末のみ棚卸しを行う場合、毎月の売上に対しいくら利益がでているのか正確にはわかりません。在庫を売上原価から除くため、大量の在庫を抱えてしまった場合、決算において思わぬ税負担が発生することもあります。

例えば、仕入金額100,000円で、期末在庫10,000円と期末在庫80,000円の場合では、利益が70,000円変わります。税務上、在庫も課税されますので、後者の場合70,000円×法人実効税率35%=24,500円の税負担が発生してしまいます。これを把握しておらず、期末直前の棚卸しで初めて想像より高い税額となることを知るのでは、財務計画が狂ってしまいかねません。例えば四半期に一度棚卸しを実施することで、このリスクを減らせます。また、陳腐化した商品や壊れて商品価値がなくなっているものなどを、在庫処分セールで少しでも早く期中に現金化する対応をとることができます。

棚卸で確認する項目

商品の在庫数量を数えることは当然ですが、購入代価(本体価格)に付随費用を加算し、在庫金額を決定することになります。付随費用とは、資産の取得や処分に伴い発生する経費のことであり、引取運賃、購入手数料、仲介手数料、据え付け費、運送費、関税、購入事務費、移管費、保管費等が該当します。

製品の場合、材料費、人件費のように、製造に直接要した費用(直接費と呼びます)と工場の減価償却費や水道光熱費等の様々な費用(間接費と呼びます)を合計し、製造原価を計算します。完成品、半製品、仕掛品等、完成度合いで、間接費の配賦額が異なります。棚卸しを行う際には、製品の完成度合いを確認し、それぞれの製造原価で在庫金額を計上します。

【直接費と間接費】

直接費 間接費
  • 材料費
  • 人件費など製造に直接要した費用
  • 工場の減価償却費
  • 水道光熱費など製造の間接的な費用

また、在庫の材料や商品が破損している場合等には評価損(在庫価値の低下で発生する損失)を計上し、適正な金額を把握することも重要です。

実地棚卸と帳簿棚卸

棚卸しの方法は2つあり、実地棚卸と帳簿棚卸です。実地棚卸とは、ある時点の在庫数量を数えて在庫金額を確定する方法です。帳簿棚卸とは、商品や製品などの入出庫についてその都度記録し帳簿上で在庫を算定する方法です。

実地棚卸のメリットは、在庫を確定できる点です。しかし、どのような過程を経てその在庫があるのかがわからず、実際に商品や製品などを数えるため時間的コストや人的コストがかかります。会社の規模や在庫量次第ですが、毎月や四半期ごとに実施するケースもあり会社にとって負担となります。

一方、帳簿棚卸のメリットは、帳簿上で在庫を確認できるため、時間コストや人的コストが抑えることができる点です。同時に、常に在庫の金額がある程度把握できるので、素早く会社の業績を知ることができます。

帳簿上の在庫と実在する在庫は必ずしも一致しません。なぜなら、現場では減耗や破損、盗難、個数の確認ミスなどが発生するからです。その場合、実地棚卸後に数字を修正したり減耗として処理したりできます(規模の小さい会社の場合は原因が分からず売上原価に吸収させることもあります)。数字が合わない原因の端緒をつかんだり、正しい数字を確認したりするためにも実地棚卸と帳簿棚卸を併用することが理想といえるでしょう。

棚卸しの手順

棚卸しは、在庫品の品名、品質、数量、品番等の数え間違い、数え漏れ、重複がないようにしなければなりません。ミスを防ぐためにも、商品の数え方、数え終わった商品であることを示す目印、作業人数などをルール化しておきましょう。棚卸しのマニュアルとして紙にまとめておくことも有効です。

棚卸しの時期

小規模な会社の場合、決算期末のみ棚卸しを行うケースが多いようです。しかし、決算期末以外でも、四半期や半期のタイミングで定期的に棚卸しを行う企業もあります。また、粗利率が低い業種(卸売業、小売業、製造業等)では、毎月棚卸しを行うことが理想です。

【理想の棚卸し時期】

会社のタイプ 理想の棚卸し時期
小規模な会社 決算期末のみ実施
卸売業、小売業、製造業等
粗利率が低い会社
毎月実施が理想

棚卸しの対象

棚卸しの対象となる棚卸資産とは、商品、製品、半製品、仕掛品等で、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産をいいます。販売活動及び一般管理活動において、短期間に消費する事務用消耗品等も含まれます。 具体的には、商品、製品(副産物及び作業くずを含む)、半製品、仕掛品、未成工事支出金、半成工事、原材料、消耗品で貯蔵中のもの等が該当します。

棚卸表の作成

棚卸表には、棚卸実施日、品名・品番、数量、単価を記載し、合計金額を出しましょう。単価は、本体価格と付随費用を含めた金額の、1単位当たりの金額を事前に計算しておくことが重要です。また、自社が税込経理なのか、税抜経理なのか再度確認しておきましょう。税抜経理の会社で、税込金額で棚卸表を作成すると誤った金額で在庫金額を計上することとなります。

業種別の棚卸しの注意点

棚卸しを行う上での注意点等をまとめています。業種ごとに棚卸資産として計上すべきものやその計算方法が異なります。

卸・小売業

卸売業、小売業の場合、販売する商品の仕入価格に付随費用を含めた上で、在庫金額を計上する必要があります。税務上の棚卸資産の評価方法は、原則として最終仕入原価法(期末に最も近い仕入れを取得原価とする方法)ですが、売価還元法(売価に原価率を掛けた金額を取得原価とする方法)を選択することもできます。売価還元法は、取扱商品が多い場合に有効な方法です。商品グループごとに原価率を使って棚卸資産の期末評価を行うことができます。そのため、個別の品目ごとに細かい仕入価格を管理する必要がありません。売価還元法で棚卸資産の評価を行う場合には、税務署に届出を提出する必要がありますので、その提出期限には注意する必要があります。詳しくは国税庁のホームページで確認してください。

参考:[手続名]棚卸資産の評価方法の届出

粗利率が比較的低い卸売業、小売業の場合、月次では帳簿棚卸を行い、決算期末には実地棚卸を行うことが理想です。帳簿棚卸金額と実地棚卸金額に差異がある場合、その原因を検証することで翌期に向けての改善点や資金繰りを考える有効なデータとなります。

建設業

建設業等の棚卸しでは、決算日時点における仕掛在庫を把握するために工事台帳を作成します。現場ごとの管理表を作成し、請負契約金額、前受・中間金等の金額、材料費、労務費、現場経費、間接費等を記載します。建築現場を複数行き来している従業員に係る労務費は、現場毎に各従業員の時給単価×投下時間=投下労務費等の合理的な見積金額を集計する必要があります。建設業等の場合、工事開始から完成引渡までの期間が長期になる傾向があります。期末での赤字を防ぐためにも、原価管理をする重要性は高いといえるでしょう。

製造業

製造業の場合には、製品、半製品、仕掛品等、完成度合いに応じて在庫を計上する必要があります。製造工程表等を作成し、製品がどの段階まで進んでいるかを把握できるようにしておきましょう。最終完成までを「工程1」「工程2」「工程3」等と分け、各工程に投下個数・金額を加え、その各工程に従事している従業員の人件費を加えます。

製造機械の減価償却費や光熱費等の間接原価については、合理的な基準で配賦した金額を加え、各工程の製造原価を算出し、期末仕掛品あるいは半製品として在庫を計上します。また、原材料、製品、半製品、仕掛品とそれぞれ在庫を計上する必要があります。

まとめ

  • 棚卸しは正しい損益計算のために行うもの
  • 棚卸しの方法には実地棚卸と帳簿棚卸の2つがある
  • 粗利率が低い業種は毎月棚卸を行うことが理想
  • 業種ごとに棚卸資産として計上すべきものやその計算方法が異なる

多くの在庫を抱えることは、売上の機会を逃さないことにつながります。一方で、売上代金の回収よりも仕入代金の支払いが先行するため、資金繰りが悪化します。日々の在庫管理をする事により、適切な在庫をキープするよう心がけましょう。

※この記事は公開時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

小森 良美(こもり よしみ)税理士

平成26年5月税理士法人絆入社。平成28年11月税理士登録。
平成30年TKC全国会入会。得意分野は消費税。
http://kizuna-tax.jp/

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