中小規模店舗こそ「販売管理」を工夫しよう。フットワークの軽さがポイント
これまでは大きな企業が行ってきた細かな販売管理業務ですが、システムがローコスト化してきたことにより、飲食店や小売店など多くの中小規模店舗でも採用し始めています。単に業務として取り組むのか、「販売管理活動」として取り組むのかで売上への貢献度が大きく変わります。ここでは「攻めの販売管理」を実施できるノウハウを紹介いたします。
この記事の目次
販売管理の基本知識
販売管理とは?
一般的な販売管理とは、「商品やサービスの販売に関する情報を管理する業務」の総称です。業務としては、「見積・受注・売上・請求・入金」までを総括し、これらを「モノやサービスに関する情報」と「お金に関する情報」の2つに分けて管理します。モノやサービスの動きと、お金の動きは必ずしもタイミングが一致しないため、また影響範囲が異なるため分けて管理するのが一般的です。
具体的には、「モノやサービスに関する情報の管理」とは、「いつ、どこで、誰が、何を、何個購入したのか」を把握することを指します。「お金に関する情報の管理」とは、「誰に、いくら請求するのか(いつ入金されるのか)」と「未収金はいくらあるのか」等の情報を把握しておくことです。
なお、「見積」は、小売業などが販売先からまとまった数やオーダーメイドの注文を受ける際や、サービス業でも料金表にないサービスを提供する際などに、「見積もり依頼」を受けて出すものです。
販売管理の目的は?
「モノやサービスに関する情報」から販売予測を立て、必要な原材料の仕入れを行ったり、適正な在庫を持つことができるようになり、無駄を減らしたり(コスト削減)、在庫切れを無くすこと(売上拡大)ができます(在庫管理について詳しくは、 こちらの記事をご覧ください)。
「お金に関する情報」は、運転資金が足りなくならないかなど、まさに資金繰りに重要な情報です。
販売管理は事業経営における基幹業務であり、他の在庫管理や仕入管理などの業務にも影響を与えるものと言えます。
販売管理の方法
これらの販売に関する情報の管理は、販売数などが少なければ紙の帳簿に付けたり、表計算ソフトで管理する方法もありますが、一定以上の規模になれば、専用の販売管理システムを導入するのが一般的です。後半で詳しく紹介します。
上手な販売管理によって得られるメリット
事業運営にあたり、販売管理が不可欠なことはご説明した通りです。さらに、販売管理から得られる情報を丁寧に見ることで、更なるメリットを得られます。
見積・受注・売上情報の管理と分析
たとえ素晴らしい商品を持っていたとしても、売れるとは限りません。売れる商品には必ずカラクリがあり、顧客のニーズとマッチする(若しくはマッチさせる)ことで初めて販売が成立します。この顧客ニーズを分析する情報元として「販売管理」が重要になってきます。
見積件数に対して、受注件数が少ない場合(特に小売業の場合)
販売先に見積もりを出すのに、売れない・受注できないという例です。その理由としては、価格が折り合わないか、自社の商品の良さがお客様や販売先に上手く伝わっていない可能性が高いです。
- 価格設定を見直す
- セールスポイントを上手く伝える工夫をする
- 競合の商品を分析し、差別化を図る
などの工夫をしてみましょう。そのことにより、受注の確率を高めることができます。
受注・売上情報の分析から、想定外の情報が得られた場合
商品管理のうち、「販売先の属性(性別、年齢、地域、家族構成等)」や「販売時間帯」を分析することで、「商品の潜在的なニーズ」を理解することが出来ます。自分が求めていた(若しくは想定していた)ターゲットとは異なるところにニーズがあるというケースも少なくありません。
たとえば、飲食店でサラリーマンのランチ向けと思っていた定食が、管理データを見てみると子持ちの専業主婦にも好評で、ランチタイムを過ぎても食べにくる客がいた。そのためランチにデザートをつけ、販売時間をさらに伸ばしたら、売上がアップした。などの例です。
商品管理の情報から顧客や売れる時間帯を分析し、サービス内容に反映させることで、売上アップが見込めることがあるのです。
引き合いや見積もり・問い合わせ(小売業)、来店(飲食業・サービス業)が少ない場合
店舗そのものの存在が認知されていない、または商品・サービス内容が世の中のニーズに合っていないことが原因と考えられます。前者であれば、認知を広めるための宣伝・広告活動、後者であればSNSやWeb等をよく分析し、ヒットしているものの理由や内容をしっかりと理解し商品を見直すなど、販売管理の情報から売上アップのための対策を打つことができます。
請求・入金
請求したのに入金がない、もしくは入金が遅れがちなどの情報から、販売先の資金繰りが危ない可能性を見つけることができます。その場合は、この販売先からの注文は受け付けないなど、倒産して資金回収できないリスクを押さえる対策を打つことができます。もしくは手付金(保証金)の要求、支払方法の変更(クレジット決済等)により自社のリスクを最大限引き下げることができます。
(参考)黒字倒産の典型例 黒字倒産とは、読んで字のごとく「黒字なのに倒産」することです。この現象の典型例とも言えるのが「売上はあるものの資金が回収できていない」ことにより資金繰り難となり、借入金の返済が出来ない、取引先への支払いができない状況に陥り、やむを得なく会社を倒産させることを指します。 このように資金回収ができないと、黒字倒産もあり得るため、請求に対して期限までに入金されたかという情報をしっかりと管理するようにしましょう。 |
「中小店舗・企業」はどんな販売管理をするべきか?
中小の店舗・企業やこれから起業を目指す方は、資金力が高くありませんので薄利多売は難しく、また様々な商品を取り扱うのはむしろ在庫リスクを引き上げてしまいます。そこで、短いサイクルで商品の見直しを行うなど、大企業にはないフットワークの軽さで差別化を行い、短期集中で売上を獲得する方法をお勧めします。
小売業の目指すべき販売管理
小売業経営に最も重要になる情報は「売れるモノの情報」です。そして「売れるモノの情報」を補完する形で「適正な在庫の情報」が大切です。これらの両方を見つけられるように販売管理の業務フローを構築する必要があります。たとえば、
- 誰にいつ、どんな見積を出したのかわかるようにする
- 見積もりに対して、受注できたのか・できなかったのかわかるようにする
- 売上は“いつ・どこで・誰が・何をいくつ買ったのか”がわかるようにする
- (3)の情報を分析し、各顧客の属性を分類し、傾向を見つける
- 売上と在庫情報を合わせて分析し、適正な在庫数を見つける
- 一番売れている商品をピックアップし、同じ購買層に向けて宣伝や告知を行う
- 顧客属性から来店数が多い客層に対して、売れそうな商品を増やし購買頻度を上げる
販売データから顧客に女子学生が多いことがわかれば、女子学生に人気の商品ラインナップを増やしたり、見栄えがする商品に変えてみたり、そのことをSNSなどに投稿してみるなど工夫することで売上アップも期待できます。
今たくさん売れるからと言って過剰に仕入れてしまっては、そのうちに「ニーズが無くなる」可能性もあります。どの購買層にどの程度売れるのか、「売れるモノの情報」を基に考える必要があります。反対に「たくさん売れるモノ」なのに「在庫が無い」という状況もあり得ます。在庫が無ければ販売チャンスを逃すことになりますので、適正な在庫数を見つけ、それをキープするといった管理が重要になってきます。
起業したばかりで情報が少ない場合には、「SNSやWeb情報」を駆使して分析し、友人や知人との情報交換を基に商品を選定する必要があります。
飲食業の目指すべき販売管理
飲食業の場合でも、小売業の上記(3)~(7)はほぼ共通です。ただし、(5)の“在庫数”が“仕入れ数”になります。
来店時間ごとの客層や客単価等のデータを収集しておけば、どの時間帯にどの程度、どの商品が売れているのかという「販売情報」わかるようになります。特に新商品を販売したいときには、その新商品とマッチする商品がよく売れる客層、来店時間にセット価格等のプレミアム感を出すと効果的です。たとえば、新商品としてデザートを提供し始める場合には、飲み物(コーヒーや紅茶)がよく出る時間帯がベストです。ランチタイムも時間帯として候補になりますが、客層がサラリーマンやOLが大半だと昼の休憩時間のため、デザートまで手を付けてくれる可能性は高くありません。その時間帯降にやってくる雑談目当ての客層が新商品のターゲットになります。
(参考)売上に関する考え方 売上は、「販売単価×顧客数×購買頻度」で決まります。売上を上げるには、この3つのうちいずれかを上げる以外はありません。販売単価を上げると、競合比較にて客足が遠のく可能性もあります。顧客数を上げるには、広告費や人件費等経費をたくさんかけていく必要があります。購買頻度を上げるには、「思い出してもらうための動機付け」をすることで、新規顧客を発掘するよりも低コストで新規顧客獲得と同額の売上を確保することが出来ます。 |
販売管理システムの種類別比較
販売管理は「見積・受注・売上・請求・入金」と、かなり広い範囲の業務を指します。またこれらの業務は重複している箇所も多いので、手書きでの管理やExcelでの管理では、入力忘れや請求漏れ、入金管理漏れ二重請求等の人為的なエラーが生じてしまうことがあります。販売管理システムの導入により作業が効率化され、ミスが減ります。そして「管理できる情報」が増えれば、攻めの販売管理にシフトしていくことが可能です。そこで販売システムの種類をスタンドアロン型、ERP型、クラウド型に分類し、他と比較した場合のメリット・デメリットをご紹介します。
スタンドアロン型(単一PC依存)
スタンドアロン型の販売管理システムは、一人で業務を行っている零細企業若しくは、中小企業の中でもシステム管理者として一名選任できる場合に有効な販売管理システムです。
また、特徴として業種別のパッケージが予め用意されているので、自社の業種にマッチするパッケージを購入してPCにインストールして使います。
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ERP型(基幹システム)
EPR型は他のシステムに情報を自動的に連携するもので、販売情報がそのまま会計情報に連動されるため、業務効率の面で非常に優れたシステムです。複数の担当者が入力しても単一のサーバー内で同時に処理してくれます。中小企業の中でも比較的規模は大きい企業、もしくは大企業向けのシステムです。
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クラウド型
クラウド型は、クラウド(インターネット)上にアプリケーションやデータが保存されており、IDとパスワードさえあればどこからでも利用出来るシステムです。業種別のパッケージも用意されています。
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販売管理システムの導入事例
「攻めの販売管理」を実施するにはシステムの導入は必要です。人員の時間的余裕があって初めて売上を上げるための方法を考える時間が出来るからです。そこで、販売管理システム導入前と導入後の事例を2つご紹介します。
輸入販売業を営む小売業のケース
導入前
元々、受注・出荷・仕入・請求などすべてをExcelで管理していたが、規模や販売数、取り扱う商品が多くなるにつれて業務フローが複雑化し、人為的なミスが目立つようになってきた。またExcelの関数が壊れてしまうことも少なくないため、修正作業に時間がかかりその分、業務が遅れることもしばしばあった。忙しいときには深夜まで作業をする日も・・・。
導入後
受注・出荷・仕入・請求の一連業務をシステム導入したことで、一元管理が出来るようになった。その結果ミスが飛躍的に減り、業務に余裕を持つことが出来るようになった。忙しい時期でも深夜まで作業することがなくなり、ITへの意識が変わったことで、別の業務についても効率化を意識するようになった。
アパレル業のケース
導入前
実店舗を経営していたが、レジシステムはガチャレジ(従来型のレジ)を使用しているため、購入者の情報は「感覚」でしかなかった。また購入者に対する情報収集もしていなかったため“来てくれた人に売っている”状況。分析の一環として、「レシートを一枚一枚めくりながら集計する」ことで不足在庫を発注してきたが、来客者から「別のサイズはないか」と聞かれることもあったが、在庫を切らしていることもしばしばあった。
導入後
販売管理システム導入後、レジシステムもPOSレジに刷新。購入者の情報を細かく入力するようにしたことで、購入者の傾向を分析できるようになった。また、来店者の情報により「よく売れるサイズと種類」もわかるようになったことで、以前と比較して在庫不足による販売機会のロスも減った。また、業務が効率化出来たことで余裕も生まれ、接客に取れる時間が増えた。
まとめ
- 販売管理は事業の基幹業務
- いい商品が売れるとは限らないため、「売れるモノの情報」を収取し、ニーズを分析することが大切
- 販売数から、適正な在庫数・仕入れ数を見つけることで無駄を減らせる
- システム導入により業務を効率化し、時間的余裕を確保することで売上アップにつながる
販売管理は事業経営の中でも基幹の業務になります。たくさんのいい情報を持っている(持っているはず)にも関わらず、上手く利用できていない会社も多くあります。「知っている」と「やっている」は別次元のことなので、是非この機会に上手な販売管理を実施してみてください。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士
公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。
上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。