【データのプロが教えます】飲食や小売店経営の問題解決に「データ分析」を味方につけよう
「データ分析したいけど何をすれば良いのか分からない」という人が多いのではないでしょうか。しかし、データ分析を正しく出来るようになることにより、飲食店や小売店など、店舗経営における問題解決に繋がり、売上が上がることも事実です。
これから「データ分析」を始めていきたい人向けに、データ分析のあるべき考え方やポイントをまとめました。
データ分析を味方につけて、あなたのお店の経営に役立てていただければと思います。
この記事の目次
なぜデータ分析が店舗経営の問題解決に有用なのか
経営と問題解決の関係性とは
そもそも店舗「経営」とは何でしょうか。
当時経営危機にあったベルシステム24の再建を託され、10数億円の赤字であった同社を、東証一部上場、売上1,000億円を超える企業へと成長させた、園山征夫氏の著書「勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方」の中で、「経営とは、目標と現状のギャップを埋めるための戦略と戦術のことである」と記されています。
目標と現状のギャップ、これが「問題」にあたります。その問題を埋めていくための戦略と戦術が「経営」と言うことです。すなわち、「経営」とは、問題解決をし続けていく、ということなのです。そのため、目標を目指すにあたって、経営と問題解決とはイコールであり、切っても切り離せない存在になるのです。
問題解決とデータ分析の関係性とは
さて、店舗経営にあたっての目標とは、
- 売上を〇〇億円にまで伸ばす
- 利益率を〇ポイント向上させる
- 収益性の悪い店舗を改善する
- ヒット商品を生み出す
など、様々あるかと思いますが、どれも「現状」よりも高いレベルを目指して経営しているかと思います。この「目標」を実現させるために必要なのが、「現状」を鮮明に把握することです。なぜなら、「現状」とは「目標」へ向かうための“スタート地点”だからです。当たり前かと思われる方がほとんどだと思いますが、「目標」へ向かうためのスタート地点である「現状」を、忘れがちな経営者がとても多いのが事実です。
正確に言うと、忘れていると言うよりは、「分かっているつもりで正確に把握していない」が正しいです。目標を実現するにあたって、今現在、何が強みでどこに課題があるのかを明確にすることで、間違いのない一歩目を踏み出すことができるのです。そしてその「現状」を鮮明にするにあたって有効なのが、データ分析になります。データ分析をすることで、現状の強みや課題を定量的に把握することが可能となり、目標達成するにあたっての問題解決に繋がるのです。
「目標」を実現するために、今、自分の店舗がどのような状態なのか、例えば、売上を構成している要素は何なのか、改善強化できるポイントはどこなのか、顧客からの評価は高いのか低いのか、など、今までの歴史で積み上げられた実績という「現状」、その「現状」のパワーを源にして「目標」へ向かっていくのです。現状を正確に把握し、目標を実現するための強みや課題が何なのか、現状を鮮明にすることが重要なのです。
陥りがちなデータ分析の失敗
しかし、実際には失敗しているデータ分析の実態をよく見ます。その一番の原因が、「データ分析の目的化」になります。
データから入るデータ分析
今やほとんどの企業において、日々の経営活動の結果が、基幹システムなどに蓄積されています。店舗業態においてはモバイルPOSレジ等を導入している企業も同様です。毎日の売上関連の結果がそこには蓄積されているでしょう。その蓄積されたデータをどうにか分析して、次の一手に繋がるような示唆を得ようとパソコンを叩いている人も多いのではないでしょうか。データを分析すると必ず何かしらの傾向が、定量的に導き出されるかと思います。
- 〇曜日、〇〇の時間帯の収益性が悪く、売上が下がっている
- 〇〇カテゴリの売上上位の商品の売上が減少している
- 新規のお客様の数が減ってしまっている/リピート率が悪化している
など、現状の「問題」となるような様々な現象は、蓄積されているデータから見えてきます。しかし、あくまで「現象」という「起こっている事実」止まりになってしまっていることが多いのではないでしょうか。その「現象」が起こってしまっている根本的な原因の把握と、その原因に基づいた改善施策まで落し込まれていることがなく、「で、結局どうすればいいの?」といった分析止まり。これは多くの企業が陥っている状態です。そして、データ分析はあくまで「手段」の一つ、であるということです。
例えば、「売上成長するための強化ポイントを導く」「客数を減らさずに客単価を上げる方法を出す」「顧客のリピート率を上げるためのコミュニケーション方法を構築する」といった、「何のために」という目的を明確にすることがとても重要です。これがないと、どこに向かうべきなのかが曖昧となってしまい、結果活用できないデータ分析となってしまうのです。データ分析は、あくまで「目的」あってのものなのです。
データの未整備
データ分析するにあたって、分析する「データ」の質はとても重要です。ただ、実際にはデータが未整備になってしまっている場合をよく見ます。その中で最も整理すべきなのが「マスタ」になります。商品マスタや顧客マスタなど、マスタがMECE(ミーシー)に整理されているのかを今一度確認してみてください。
例えば、定食屋において商品マスタを付ける際、「洋食」「中華」「和食」と同列で「週替わり」や「4人盛り」「ワンコイン」などがあってはいけません。洋食や中華など、どの食カテゴリの売上構成比が高いのか分析する際、「週替わり」や「ワンコイン」が同じマスタの中に存在してしまうと、正確な分析ができません。従って、そのような場合は、それぞれ別カテゴリでのマスタとして整理する必要があります。今では安価に導入できるモバイルPOSレジにおいてもカテゴリー登録があるので、ここさえしっかりとMECEになるように登録しておけば、質の高いデータの蓄積が可能となります。
(ただし、複数種類のマスタが必要な場合は、エクセル等に別管理をすることも検討しましょう。)
このように、データ分析をする上で、扱う「データ」は、データ分析の質を左右する重要な役割を担いますので、侮らないようにしてください。
データ分析のあるべきフロー
次にデータ分析のアプローチ方法について説明します。データ分析の流れは以下です。
- 目的の明確化
- 仮説の洗い出し
- 分析方法の定義
- データの収集
- データ分析
- 課題の明確化
データ分析の出発点となる目的の明確化
先ほどお伝えした通り、データ分析はあくまで手段であり、目的がないことには何も始まりません。「現状」を鮮明にすることがデータ分析になりますが、「現状」の強みや課題を明確にするためには、目指すべき目標があってこそになります。スポーツや学生時代の試験勉強、あるいは自分自身の人生設計と同じように、経営や日々の業務についても、目的を明確にしておかなければ「データ分析」の進め方を間違えてしまい、大幅に遠回りをしてしまう可能性が多いにあり得るのです。
経営や日々の業務において、必ず「目的の明確化」をはじめにしっかりと行うことを心掛けることが重要となります。日々の業務の連続が問題解決に繋がります。従って、「現状」をデータ分析により可視化することで、目標を達成するため(=問題解決)に必要なアクションプランが実行できる帳票類を作成することが必要だということも念頭に入れていただければと思います。
考え得る問題の仮説を洗い出す
目標を定めたらすぐにデータ分析をするわけではありません。まずは目標達成するために何が問題となっているのかの仮説を洗い出します。仮説はなるべく、考え得ることをすべて洗い出します。最終的には、洗い出した仮説の中から、目標を実現するために必要な要素に優先順位を付けて実行することが必要となります。
そのためには、(6)課題の明確化をすることが重要なのですが、そのために(3)~(5)を行っていきます。自分は長く経営をしていきているから、今までの経験から仮説を洗い出さなくても、何をすべきか分かっている、と言う経営者の方もいるかと思います。しかし、よく考えてみてください。今までの歴史やこれまで積み上げてきた実績の結果が「現状」です。その「現状」とあなたの「目標」との間には大きなギャップが生じているかと思います。従って、今までの経験はいったん捨てて、客観的に現状を分析することが大切なのです。
分析方法の定義・情報(データ)の収集・分析の実施
先ほどの(2)仮説の洗い出しをもとに、(3)~(5)を実施し、(6)課題の明確化するのですが、その過程でデータ分析を積み重ねることで、複数の仮説の中から優先順位がつき、最終的に「目標」を実現するために必要な課題が絞り込まれていきます。
例えば、原因が何かはわからないのですが理想の姿に対して「売上が低い」という状況の原因仮説が10個出てきたとします。この10個の仮説ですが、すべてが「目標」を実現するためにインパクトのある課題でないかもしれません。また、せっかく洗い出した仮説なので、すべての課題にアプローチしていきたいかもしれませんが、現実的には人的リソース、時間的リソースをすべてにかけることもできないでしょう。
そこで、(3)~(5)のアプローチを踏むことで、洗い出した仮説が優先順位を付けて絞り込まれて、目標を実現するために必要な課題が明確になります。目標に対して現状の売上が低い状況の要因が、「客数が少ないのか、それとも客単価が低いのか」がわかれば、10個の仮説は絞り込めるでしょう。さらに、「客数が少ない」ことが顕著であれば、「新規顧客が取れていない」のか「既存顧客のリピート率が低い」のかなど更に原因が絞り込まれていきます。
このように洗い出した仮説に対して、より的確に「当たり」をつけていくことができるのがデータ分析となります。
データ分析のポイント
データ分析を効率よく進めていくにあたって大切なことは、「大きな傾向から掴んでいくこと」です。
例えば、目的が売上増加であった場合、現状の売上を構成している要素にどのような問題があるのかをデータ分析から導き出すことが必要となります。店舗業態特有の店舗ごとの売上の差について分析する場合においても、まずは企業全体での売上推移の増減、その上で売上増加している店舗と売上減少している店舗を分類し、売上が減少している店舗の特徴は何か、といったように、大きな状況の傾向から掴んで徐々に仮説を絞り込んでいきます。そのうえで、客数が減少しているのか、客単価が減少しているのか、客数が減少しているのであれば新規客が減っているのかリピート率が減少しているのかといったように、細かく分析していきます。
「新規顧客を獲得するための販促施策が弱い」と言った仮説が出ている場合、自社と競合企業の販促施策の違いを分析しようとなるかもしれませんが、その前にそもそも新規顧客が少ないのかということや、その前に客単価ではなく客数が足りていないのかを定量的に把握することが必要です。
もし新規顧客が少ないことが、全体の売上を伸ばしていくためのアクションとしてインパクトが小さい場合、「新規顧客を獲得するための販促施策が弱い」ことに対するアクションの効果はあまり出ないでしょう。もちろん最終的には「新規顧客を獲得するための販促施策が弱い」ことを改善する具体的なプランにまで落し込むことが必要なのですが、そもそも新規顧客が少ないのか、それ以前に客数は足りていないのか、その場合どの程度足りていないのかを明確にすることが重要です。データ分析をする際には、このように大きな傾向から捉えていくことが必要なのです。
店舗経営に必要なデータ分析
最後に、店舗経営において必要なデータ分析についてご説明します。
日々の商売の結果が蓄積されているデータがあれば可能な分析となるので、ぜひ試してみてください。
- 顧客視点でのデータ分析
- 商品視点でのデータ分析
- 店舗視点でのデータ分析
店舗経営とは、「誰」に「何」を販売したか、その蓄積です。従って、①②の2つが必要になってきます。また、複数店舗経営している場合には、それに加えて「どこで」販売したのかの③が加わってきます。
①顧客視点でのデータ分析
売上はいわばお客様からの評価です。あなたの会社の商品なりサービスにお金を支払ってくれているお客様の状況を、定量的に見える化することで、どの層のお客様を今後成長させていくために増やしていく必要があるのかを分析します。性別や年代別での違いはもちろん、新規顧客やリピート顧客といった購入状況の違いなど、複数の視点で分析することで、どの顧客層を伸ばしていくべきなのかが見えてきます。
②商品視点でのデータ分析
売上を構成している商品の売れ方を分析することで、現状課題を洗い出します。店舗ビジネスにおいては、商品視点での分析をすることで、売上や粗利率、消化率など、売上を上げるために必要な課題が多く出てくるのが商品視点での分析となります。店舗業態においては、商品視点の分析により、商品やメニュー開発、VMD※など、日々の業務の効率性・生産性の向上に活用することができます。
※VMDとはビジュアルマーチャンダイジングの略で、「お客様が商品を探しやすく購入しやすい売場づくり」を言う。
③店舗視点でのデータ分析
複数店舗を経営している場合は、店舗ごとの違いを把握することも、重要なデータ分析の一つとなります。店舗ごとの収益性の差、売上の差がどこにあるのかを把握します。収益性の差については、コスト構造の違いから、収益性の高い店舗と低い店舗の違いがどこにあるのか、何かしらの傾向・ルールはあるのか分析します。売上の差については、店舗ごとの立地状況の違いによるところがほとんどですが、他にも売れている商品構成の違いや顧客の構成(新規やリピート)、接客等の違いから分析していきます。店舗視点での分析をすることで、勝ち店舗(収益性が十分取れる店舗)となるためにはどうすれば良いのか、今後の出店戦略や店舗オペレーションにも活かせるルールを構築することができるようになります。
まとめ
- 店舗経営の問題解決をしていく上でデータ分析は有用、なぜならデータ分析により根本的な原因が定量的に把握できるため
- 多くの企業がデータ分析自体を目的化してしまっている、本来は店舗経営していく上で実現すべき目的ありき、その目的を達成するための手段の一つとしてデータ分析が活用できる
- データ分析のポイントは、「大きな傾向からとらえる」こと
- 店舗経営において必要なデータ分析の視点は、顧客視点、商品視点、そして店舗視点の3種類
データ分析は、店舗経営における問題解決をしていくのにとても有用です。自社に蓄積されたデータは今までの経営の結果。そのデータを分析することで、経営力を高めることができるのです。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
齋藤 健太(さいとう けんた)データストラテジスト
慶応義塾大学理工学部卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。主に中堅規模(数百億)以上の企業をメインクライアントとしたプロジェクトに従事。小売業、飲食店、メーカー等、幅広い業種において、中期経営計画策定やマーケティング戦略の構築、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンス等の実績を有する。独立後も製造業や小売業、サービス業に至るまで大小様々な企業の課題発見に従事、成果を上げる。特にデータ分析においては、複数のコンサルファームにもアサインされる実力を有する。その他、AI関連スタートアップや教育関連企業からもデータ分析支援の依頼を数多く受けている。
2013年9月「問題解決のためのデータ分析」(2019年2月に新装版)、2019年10月「会社の問題発見、課題設定、問題解決」を出版。
KUROCO株式会社では、中小企業向けのデータ活用支援(分析、可視化、教育)を展開。
https://cm-consulting.jp/