POSデータでここまでできる。飲食店・小売店の「商品管理」のためのデータ活用法
商売・ビジネスとは、販売する「商品」があってこそ成り立ちます。商品あるいは原材料を仕入れて、必要に応じて加工し、販売する。そして在庫数を管理する。この「商品管理」の精度によって、飲食店・小売店の売上や粗利益、消化率は大きく変わります。
「商品管理」は店舗経営していくにあたりとても重要で、そしてそれはPOSデータだけでも十分に可能です。はじめて「売上管理」をしていくためのデータ活用方法についてお伝えします。ぜひ店舗経営に役立てていただければと思います。
この記事の目次
「商品管理」とは
そもそも「商品管理」とは何でしょうか。まず、よく混同されがちな「在庫管理」との違いから説明しましょう。
「在庫管理」はその名の通り、自店舗に保管してある「在庫」を起点に、商品や材料を管理することです。
その目的は、「在庫を切らさず、余らせ過ぎず、適切な量を保持し続けること」です。商品が売れる・売れないは横に置いておいて、あくまで自店舗で取り扱っている商品の「在庫」が、常に適切な量を保持している状態を担保し続けるのが「在庫管理」となります。
一方「商品管理」とは何でしょうか? 「商品管理」はその名の通り、「商品」を起点に管理することを言います。
つまり、「商品(あるいは原材料)が適時・適量仕入れられ、売上・利益を最大化すること」です。「商品管理」とは、仕入~販売、そして在庫に至るまで、商品がお客様の手に渡るまでのプロセス全てにおいて管理をし、全体最適を目指すことを言うのです。
さらに詳細に説明すると、
- お客様が求める商品を適正量取りそろえて販売する
- ①を実現するために、売れる商品は在庫を切らさず売り逃しを防ぐ
- ①を実現するために、売れない商品は在庫を抑えて過剰に保管しないようにする
- ②を実現するために、適切なタイミングで仕入を行う
- ③を実現するために、適切なタイミングで値下げを行う
ということになります。
「商品管理」のポイント
では、「商品管理」はどのように進めていけば良いのでしょうか。2つの観点からご説明します。
管理方法について
一番のポイントは、何がどれだけ売れていて、在庫としてどのくらい残っているのかが「把握できる状態」になっていることです。
「把握できる状態」と言うのは、先ほども述べたように、売れている商品・売れていない商品が分かるのと、各商品の在庫数から仕入れるべき商品および仕入タイミングが分かっている状態を言います。
そうなってくると、商品管理システムの導入をしなければならないのでは、と思うかもしれません。
もちろん、店舗数が増え、複数拠点で在庫を一元管理していく、それを出来る限り業務効率化していくタイミングになれば商品管理システムを導入した方が総合的な費用対効果は高くなっていくでしょう。
しかし、単店舗あるいは数店舗の場合は、Airレジ等のモバイルPOSを入れてさえいれば実現可能だと思っていますし、それで十分だと感じています。
例えば、モバイルPOSにおいても、下図のように、商品売上管理や在庫管理の機能がついているため、商品ごとの日々の売上数と在庫数が把握できます。
※「一凛堂」とは筆者が経営している店舗です。
上図のように、
- 何の商品が、いつ、どのくらい売れているのか
- 何の商品が、どのくらい残っているのか
これが定量的にデータで把握でき、かつ
- 各商品が発注してからどのくらいの期間で店舗に届くのか(各商品のリードタイム)
が分かっていれば「商品管理」は可能となるのです。
※具体的な方法については、後述します。
分析のポイントについて
「商品管理」の目的は、
「商品(あるいは原材料)が適時・適量仕入れられ、売上・利益を最大化すること」
でした。
売上・利益を最大化するためには、何がどれだけ売れているのかが分かっていなければなりません。その上で、売れている商品をしっかり取り揃えて売り逃しを防ぎ、売れない商品は最低限の仕入で無駄な在庫を減らす、ということが必要となります。
しかし、商品数が多く細かくなってくると、一つ一つの売上を見ていくのも容易ではありません。時間もかかります。
そこで、ポイントとして覚えていただきたいのが、大きな傾向から掴んでいくことです。
例えば、上図のように、メニュー全体の売上分析をするに当っては、まずはドリンクやフードといった大カテゴリに分けてそれぞれの売上規模や増減傾向を確認します。その上で、ドリンクであればビールや焼酎といったカテゴリに分けて分析、最後に単品での分析をします。
その際、売上規模がそもそも小さかったり、増減金額の少ないような影響度の低いカテゴリについては単品の増減傾向までの分析は優先順位を落としてしまって構いません。
「売上・利益を最大化する」ことが目的ですので、売上・利益の全体に占める構成比が高い商品、売上・利益の増減金額が大きい商品を優先的に分析していくことが重要なのです。
POSデータを活用した「商品管理」方法
では実際に「商品管理」における具体的な方法を見ていきましょう。
繰り返しになりますが、「商品管理」において重要なのは、
- 売れる商品を欲しいお客様に販売し、売れない商品は在庫を抑えて(=コストを抑えて)売上・利益を最大化する
- 上記実現するために、売り逃しと売れ残りを防ぐ在庫管理を実現する
ことになります。
上記実現するための施策が、「MD計画」と「ディストリビューション」に当ります。
そもそも売れる商品を売れるだけ作り、売れない商品は作らないのが「MD計画」におけるミッションです。飲食業においては、基本的に余った食材は廃棄しなくてはならないので、日々の「MD計画」はとても重要です。過去の商品別の売上データに基づき、お客様に「今日」何のメニューをどれだけ提供するのか、その数量に合わせて食材を発注する。ここの精度が高ければ高いほど、売上・利益ともに最大化できることは容易に想像がつくでしょう。小売業においても、そのシーズンに売れる分だけ製造あるいは仕入が出来れば、最も売上・利益ともに高くなるでしょう。
「ディストリビューション」のミッションは、発注・調達してきた商品を各店舗に「適正に」「効率よく」配分することです。特に小売業においては商品の企画~製造、調達までのリードタイムが長く、初期に立てた「MD計画」通りになることは困難です。そのため、日々の商品別の売上実績から、足りなくなってしまいそうな商品をいち早く追加発注したり、在庫過多になりそうな商品は値下げして少しでもキャッシュ化を目指したり、複数店舗経営している企業において店舗ごとに商品の売れ方にバラツキがある場合は売れない店舗から売れる店舗へと商品を移動したりします。この「ディストリビューション」についても、精度が高ければ高いほど、売上・利益の最大化に繋がることは明白でしょう。
では、これら「MD計画」や「ディストリビューション」の精度をデータを使って効率的に実施する方法について、最後に2つご紹介します。
(1)累積売上の可視化
飲食業および小売業において多くの企業が陥っている代表的な問題の一つが「売り逃し」です。
もしその商品が店舗にあったらお客様が購入して売上に繋がったのに、商品在庫がない故に本来取れるべき売上が取れないほどもったいないことはありません。
上図は、ある小売店舗における実例です。あるシーズンにおける売上TOP10の、商品の週単位での累積売上を表したグラフになります。
(一つ一つの折れ線が、各商品の累積売上です)売上TOP10の商品なので、同店舗の中でも売れている、すなわちお客様の評価の高い商品になります。
しかし、上図を見ると、ほとんどの商品でグラフの折れ線が途中から平行になっている期間があることが分かります。
本来であれば累積売上推移なので、そのまま右上の方に伸びていくはずなのに、一定期間販売実績がない、と言うことになります。
もちろん期間限定の商品もありますが、店舗にあれば売れるはずのものが在庫切れのため売れない、という状態ほど勿体ないことはありません。
上図はTOP10商品のみになりますが、これを中位~下位の商品すべてにおいて実施することで、売れる商品を売り逃しなく販売することができ、その一方で売れない商品を早めに見極めて値下げなどして少しでもキャッシュ化する、ということで収益性を高めることができるようになるのです。
小売業の場合は上図のように週単位で見ましたが、飲食業の場合は、時間単位で同じように累積売上を可視化することで、現状を把握することができます。まずは平日と休日とで行ってみると、傾向が把握できるでしょう。
(2)販売実績と在庫数から仕入数・タイミングを決める
「商品管理」のポイントで、モバイルPOSでも十分商品管理できるという説明をしました。
それは、日々の商品別の売上実績と、ある時点における在庫数がデータ蓄積されているからです。
それらのデータと、各商品の仕入におけるリードタイムさえ分かれば、売れる商品を常に適時・適量取り揃えることや、売れない商品の対処(値下げや廃棄)が実現できます。
その具体的な方法として、まずは下図からスタートしてみることをお勧めします。
上図を見てみましょう。
各商品のデータ抽出時点における在庫数(上図の「在庫数(個)」)と、累計販売数(同「累計販売数量(個)」はモバイルPOSから取得できる数値です。
各商品の販売日とデータ抽出時の日付から、販売日数(同「販売日数(日)」を計算することができるため、各商品が1ヶ月でどの程度販売されるのか分析することができます。その1ヶ月での想定販売数量と現時点の在庫数を比較することで、追加で必要な在庫数が計算されるでしょう。
ちなみに上図は、常に3ヶ月分の在庫を持っていると方針を決めた店舗の例になります。
「必要在庫数(個)※3ヶ月分」に記載されている数字は、上記方法により導き出された常に保管しておくべき在庫数になります。
(1の位は切り上げて計算しています)
同社では、毎月月初に計算をし、必要在庫数から現在の在庫数を引いた補充すべき在庫数(同「補充在庫数(個)」をもとに発注をかけています。
また、必要在庫数が現時点の在庫数よりも少ない商品については(例:上図の商品Jや商品K)、値下げをしたり、期末であれば在庫破棄する等の対応に繋げています。
このように、「商品管理」はモバイルPOSに蓄積されているデータでも十分に可能で、実際に売上・利益の最大化に繋げることができるので、ぜひ試してみてください。
まとめ
- 商品管理とは、仕入・販売・在庫を一貫して管理することで、売上・利益を最大化することを目的とする
- 商品管理は、モバイルPOSでも十分に実現することが可能
- 商品管理するに当ってのデータ活用のポイントは、商品セグメントを大きいところから因数分解し、売上構成比や売上増減金額が多いセグメントを中心に分析すること
- 累積売上を可視化することで、「売り逃し」や「在庫過多」を防ぐ施策に繋げることができる
- 日々の販売実績データと在庫データを活用することで、適時・適量の仕入対応に繋げることができる
「商品管理」は店舗の売上や利益を最大化するために欠かせない方法です。そしてそれは蓄積されているPOSデータで実現することができるのです。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
齋藤 健太(さいとう けんた)データストラテジスト
慶応義塾大学理工学部卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。主に中堅規模(数百億)以上の企業をメインクライアントとしたプロジェクトに従事。小売業、飲食店、メーカー等、幅広い業種において、中期経営計画策定やマーケティング戦略の構築、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンス等の実績を有する。独立後も製造業や小売業、サービス業に至るまで大小様々な企業の課題発見に従事、成果を上げる。特にデータ分析においては、複数のコンサルファームにもアサインされる実力を有する。その他、AI関連スタートアップや教育関連企業からもデータ分析支援の依頼を数多く受けている。
2013年9月「問題解決のためのデータ分析」(2019年2月に新装版)、2019年10月「会社の問題発見、課題設定、問題解決」を出版。
KUROCO株式会社では、中小企業向けのデータ活用支援(分析、可視化、教育)を展開。
https://cm-consulting.jp/