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名刺は何費?確定申告ではどこに注意する?勘定科目を知っておこう

名刺は事業に用いる物品のため、経費計上が可能です。しかし、誰が何の用途で使うのかによって、適切な勘定科目は異なります。消耗品費か広告宣伝費かなどは、勘定科目の意味や、名刺の目的などを理解すれば、最適な科目を選ぶことが出来ます。どの場合にどの勘定科目を選ぶとよいのか、また確定申告では何に注意をすればいいのかも解説します。

この記事の目次

名刺の目的

名刺は広く一般にビジネスで用いられていますが、改めて名刺を作る目的を考えてみましょう。名刺の歴史は古く、日本で今のように名刺交換をするようなったのは、江戸時代末期に諸外国との外交が盛んになってからと言われています。当時から「名刺は自分の名前と印象を少しでも残し、憶えてもらうための物品」としては非常に有効でした。名刺の目的は今でも変わりませんが、今なら住所や電話番号、メールアドレスなど連絡先を伝える役割もあります。たくさんの人と関わったり、取引をするビジネスでは必須アイテムと言えます。

勘定科目とは何か?勘定科目の選び方

勘定科目は「取引内容をわかりやすく表示するための分類項目」です。会計記帳で意識しなければいけないのは、「この費用はどの勘定科目を選ぶとわかりやすいのか?」という点です。「わかりやすい」というのは、経営者(ご自身を含む)や金融機関、税務署などが見て会社の取引内容を判断しやすい勘定科目という意味です。その点において、勘定科目を選ぶ絶対的な基準は無いので、取引内容及び各勘定科目の特徴を理解した上で決めていく必要があります。

名刺の勘定項目は「消耗品費」が適切

前述の通り、名刺は自分の社名や名前などを覚えてもらうための“物品”です。会計記帳するにあたり、主に物品に対して用いる勘定科目には以下の3つがあります。

  • 消耗品費
    10万円以下の消耗する物品を購入した場合に用います。例えば一般工具や事務机などの10万円以下の器具やティッシュペーパーやトイレットペーパー、掃除用具などの日用品などが該当します。
  • 事務用品費
    ボールペンや印鑑、封筒などの事務用品を購入した場合に用います。
  • 工具器具備品(資産として処理するため“費”は付きません)
    消耗品費として処理できなかった10万円以上の器具やパソコンを購入した時に用います。高額備品になるので減価償却費計算を行い、耐用年数で経費按分します。

名刺は高額ではないため工具器具備品には当てはまらず、また経営者や営業担当が使う名刺は事務用品ではないため、事務用品費も当てはまりません。消去法で考えると「消耗品費」として処理するのが適切です。

こんな時は「広告宣伝費」に

昨今は、名刺本来の目的に加えて、自社の商品説明や差別化メッセージを印刷した「広告名刺」も使われるようになりました。例えば、名前以外に商品概要やサービス事例、事業内容や企業ポリシー、自社サイトのQRコードなど様々な情報を組み込んだ名刺などを指します。二つ折りや四つ折りにして名刺サイズにしているものもあります。

このような広告名刺については、パンフレットやチラシなどに近い性質を持つため、消耗品費として会計記帳するよりは、「会社の広告・販促活動に係る取引」に対して用いる勘定科目「広告宣伝費」として処理する方が、取引内容がわかりやすくなります。
この方法以外に、名刺の性質で分類し、事務担当が使う名刺は事務用品費もしくは消耗品費として処理し、営業担当が使う名刺は広告宣伝費として会計記帳するルールを設定している会社もあります。

確定申告の際はここに注意

会社や個人事業主等には関係なく、我々には毎年1回の確定申告が義務づけられています。確定申告では、自身が記帳した会計帳簿に基づいて、「売上から事業経費を差し引いて得た利益」を計算するために決算書を作成します。そして決算書上の利益の金額から税金の額を計算し、その金額を納税します。この納税の仕組みを「申告納税制度」と言い、自分で「私の所得はこの金額です」と税務署に申告することになっています。しかしこの制度の中で注意すべき点は、「所得計算を自分で行う」ため、税務署から怪しいと思われないようにすることです。不正を疑われると税務署による税務調査が実施されることになり、その対応には大変な労力がかかってしまいます。その可能性を少しでも下げるために、申告書作成に当たり、以下の点を最低限理解しておきましょう。

勘定科目のルールを決めておく

消耗品費や広告宣伝費、事務用品費など、名刺を作ったという取引だけでも様々な勘定科目の候補があります。「去年は消耗品費、今年は広告宣伝費」という様に、毎回異なる勘定科目を用いてしまうと「勘定科目の割合」が変動します。税務署は、一つずつの申告書をチェックして税務調査の実施先を選定する訳ではなく、各勘定科目の割合などを分析(同業種比較や期間比較等)し、その上で申告書をチェックして選定しています。税務調査リスクを下げたい場合には、毎年同じように記帳するルールを決めて徹底する必要があります。

雑費は便利だけど、適切ではない勘定科目

雑費という勘定科目は「何だかわからないけど取りあえず経費にする」場合に用いますが、この勘定科目は「取引内容をわかりやすくする」という点から、多く用いるのは適切ではありません。むしろ雑費が多い会社は「会計の理解度が低い」と思われ、その結果「帳簿に間違えがあるはず」と判断されることになります。そのため雑費という勘定科目は極力使わずに、「取引内容をわかりやすくする」勘定科目を選択するようにしましょう。

期末(個人の場合は年末)に大量に消耗品を購入した場合

前述の通り、税金の納税額は自分で計算することになりますが、ほとんどの人が「少しでも税金を減らしたい」と考えています。一例として「来期使う予定の消耗品を大量購入する事で今年分の税金を引き下げる」という方法を取る場合があります。少額物品のためすべて事業経費として処理できそうですが、一括の経費として処理するのが適切ではない場合は、「消耗品や貯蔵品」という資産科目に振り替える必要があります。

(例)
年度末に名刺30万円分大量に購入した。これらの名刺は今年使うものではなく、来年度以降に使うもの予定のものです。毎年消耗品費として計上している名刺の金額は10万円程度ですが、今年は今回の大量購入を含めると総額で40万円程度になっていた。
購入時の仕訳
消耗品費(経費) 300,000円 現金 300,000円
決算時の仕訳(決算整理仕訳)
消耗品(資産) 300,000円 消耗品費(経費 300,000円

なお、以下の2つに当てはまる場合には大量購入した物品でも経費計上が可能です。

  1. 毎年おおむね一定量を購入し、経常的に消費している
  2. 毎年この経理方法を継続している

(引用) 国税庁 法人税基本通達2-2-15
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。

また、上記以外にも会計基準では「重要性が乏しい場合」(金額基準はありませんので、各自の判断になります)には経費計上可能としています。

(参考)重要性が乏しいとは
経営者や税務署、金融機関が決算書を見て業績の判断を誤らせない範囲という事になりますが、会計基準では抽象的な表現のみに留まっています。税理士など会計に詳しい方と打ち合わせの上で判断してください。

まとめ

  • 勘定科目は取引をわかりやすくする分類項目
  • 名刺はその目的により消耗品費若しくは広告宣伝費が適切
  • 会計記帳ルールを決めておかないと、税務調査になる可能性がある

名刺はビジネスにおける必須アイテムです。また必須アイテムから派生していく形で広告機能もプラスされるようになりました。用途が変われば適切な勘定科目も変化していきます。そして勘定科目の意味を知ることで、会計への知識が深まり、さらに決算書の精度も上がります。分析に役立てると共に、税務署から疑われない決算書を作成しましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士

公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。

上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。

https://sola-cpa.com/

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