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【雇用調整助成金とは】概要から条件や申請方法までわかりやすく解説

経営をしていれば、業績悪化などで業務が縮小する事態に直面することがあります。そんなときに、雇用を維持すべく、従業員への給料の一部を助成してもらえるのが、雇用調整助成金です。今回は、雇用調整助成金を受給するための要件や、受給額について解説します。

この記事の目次

雇用調整助成金とは?

雇用調整助成金とは、業績悪化などでやむを得ず従業員に休業をさせる場合に、その間の給与のうち一定額を助成する制度です。売上が上がらない間の事業主の人件費負担を助成することで、雇用の維持を図ることを目的とした助成金です。
もともと存在していた助成金ですが、新型コロナウイルス感染症による事業活動の縮小の中、雇用を維持するための助成金として大きな役割を果たしました。

雇用調整助成金の対象となる事業主

雇用調整助成金の対象となる事業主は以下の通りです。

  1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
  2. 売上高又は生産量などの事業活動を示す指標について、その最近3カ月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること。
  3. 雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数による雇用量について、その最近3カ月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと。

ただし、上記の要件について、新型コロナウイルス感染症による特例として以下の緩和措置がとられています。

  • 生産指標の確認対象期間を3カ月から1カ月に短縮(緊急対応期間に適用)
    最近1カ月の販売量、売上高等の事業活動を示す指標(生産指標)が、前年同期に比べ5%以上減少していれば、生産指標の要件を満たします。さらに、前々年同月比、または休業を開始した月の前月から遡った1年間のうちの適当な1カ月との比較も可能となっています。
  • 最近3カ月の雇用指標が対前年比で増加していても助成対象
    通常、雇用保険被保険者及び受け入れている派遣労働者の雇用量を示す雇用指標の最近3カ月の平均値が、前年同期比で一定程度増加している場合は助成対象となりませんが、その要件が撤廃されます。
  • 雇用保険に加入していないパート・アルバイトなど非正規労働者も対象

雇用調整助成金を申請できる条件

雇用調整助成金を受給するための要件は以下の通りです。

  1. 事前に労使協定や計画書を提出して、その通りに休業を行うこと
  2. 所定労働日の全一日を休業させること

ただし、新型コロナウイルス感染症による特例で、以下の緩和措置がとられています。

  • 休業等計画届の提出は不要
    通常、助成対象となる休業等を行うにあたり、事前に労使協定や計画届の提出が必要ですが、申請手続きの簡略化のため、2020年5月19日以降の申請から計画届の提出は不要となりました。2020年5月18日以前に休業した場合であっても、2020年5月19日以降の申請であれば適用されます
  • 半日休業など、丸一日休業していない場合であっても、休業した時間に対しての休業手当も対象

雇用調整助成金で支給される金額

受給額は、休業を実施した場合、事業主が支払った休業手当負担額に次の(1)の助成率を乗じた額です。ただし、休業期間中に事業主が、事業主の負担のもと教育訓練を従業員に受けさせた場合には助成額の加算が行われます。
雇用調整助成金の受給額は以下の通りです。

項目 中小企業 大企業
休業を実施した場合の休業手当に対する助成率 2/3 1/2
休業中に教育訓練を実施したときの加算 (1人1日当たり)
1,200円

ただし、助成額は対象労働者1人あたり8,265円が上限となります。

上記の助成額について、新型コロナウイルス感染症による特例として以下の緩和措置がとられています。

  1. 対象労働者1日当たりの助成率及び上限額を引き上げ
  2. 教育訓練を行ったときの加算について、中小企業は2,400円まで拡大

1について、2022年3月1日から2022年11月30日までの助成率及び上限額は以下の通りです。

判定基礎期間の初日 2022年
3月~6月
2022年
7月~11月
中小企業 原則的な措置 4/5(9/10)
9,000円
4/5(9/10)
9,000円
業況特例・地域特例 4/5(10/10)
15,000円
4/5(10/10)
15,000円
大企業 原則的な措置 2/3(3/4)
9,000円
2/3(3/4)
9,000円
業況特例・地域特例 4/5(10/10)
15,000円
4/5(10/10)
15,000円

(注)金額は1人1日あたりの上限額、括弧書きの助成率は解雇等を行わない場合

以下の①~②に該当する事業主については、助成率は最大10/10、上限額は15,000円となります。
①業況特例・・・特に業況が厳しい事業主
②地域特例・・・緊急事態措置の対象区域またはまん延防止等重点措置の対象区域(職業安定局長が定める区域)の都道府県知事による要請等を受けて、営業時間の短縮等に協力する事業主

  • 経過措置について

2020年4月1日から2022年11月30日までの期間を1日でも含む賃金締切期間(判定基礎機関)で雇用調整助成金を申請して特例を利用した事業主については経過措置があります。経過措置の助成率、1人1日あたりの上限額はこちらです。

判定基礎期間の初日 2022年12月~2023年1月 2023年
2月~3月
中小企業 原則的な措置 2/3
8,335円
2/3
8,335円
業況特例・地域特例 2/3(9/10)
9,000円
 
大企業 原則的な措置 1/2
8,355円
1/2
8,355円
業況特例・地域特例 1/2(2/3)
9,000円
 

雇用調整助成金の申請先

雇用調整助成金は、各都道府県の労働局に申請します。新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、基本的に書類の提出は郵送での受付となっています。また、雇用調整助成金についてはオンラインでの申請も可能となっています。いずれにしても、窓口への持参は避けて、郵送かオンラインの方法により提出をしましょう。

具体的な郵送先については、各労働局のホームページなどで申請先を確認しておきましょう。
オンラインでの提出の場合は雇用調整助成金等オンライン受付システムを利用します。

雇用調整助成金の申請方法

必要書類を管轄の労働局に提出することで行います。前述の通り、非対面の流れもあり、今では原則として郵送またはオンラインでの提出となっています。
必要書類を揃えて、郵送にて提出を行います。郵送の際には書留やレターパックなど履歴が残る形で発送するようにしましょう。

雇用調整助成金の申請期限と流れ

雇用調整助成金の受給までの流れは以下の通りです。

  1. 休業に向けた具体的な計画の立案
  2. 雇用調整計画書を管轄労働局へ提出
  3. 2)で提出した雇用調整計画書に基づいて、休業や教育訓練などの雇用調整措置を実施
  4. 3)の雇用調整措置の実績に基づいて、支給申請書を管轄の労働局に提出
  5. 労働局による審査後、助成金支給の決定

ただし、新型コロナウイルス感染症のための特例措置として、本来は事前に提出すべき雇用調整計画書の省略が認められています。そのため、上記の「1.」「2.」を飛ばして、休業させたあと、そのまま支給申請という流れとなっています。

ただし、いずれの場合も申請期限は「支給対象期間」の末日の翌日から2カ月以内となっています。
「支給対象期間」とは、支給申請をする「判定基礎期間」のことを指しますが、「1カ月の判定基礎期間ごと」に申請することも、「複数の判定基礎期間」をまとめて申請することもできます。

所定の申請書以外の主な必要書類は以下の通りです。

  • 対象の労働者の賃金台帳、タイムカードのコピー
  • 教育訓練を行った場合には研修レポートなど

雇用調整助成金の利用に関する注意点

どの助成金でもそうですが、支給申請書を提出してから受給を受けるまでに数カ月間かかります。まずはこの点はしっかりと認識しておきましょう。
また、書類の審査にあたっては、一度提出した書類を差し替えることは基本的にできません。事前にしっかりと内容を確認して、間違いのない書類提出を行いましょう。

本来の助成金であれば、申請から数カ月から半年程度かかることが多いのですが、新型コロナウイルス感染症の期間については、雇用調整助成金が雇用維持のための命綱とも言えますので、申請しやすいように書類も大幅に簡略化されています。そのため、問題がなければ、支給申請書を提出してから1カ月から1カ月半程度で助成金が振り込まれています。もちろんこれは書類に不備がないといったことが前提です。不安があれば、助成金の専門家である社会保険労務士に依頼するといったことも検討しましょう。

雇用調整助成金は、もともとは業績悪化などが原因で従業員に休業させる場合に活用する助成金です。新型コロナウイルス感染症の影響により多くの事業者が利用している制度ですが、いずれは通常の制度運営に戻ります。そのときには申請の流れも複雑になりますので、新型コロナウイルス感染症のときとは全く別の助成金ととらえたほうが良いでしょう。

まとめ

  • 雇用調整助成金とは業績悪化などで従業員に休業をさせる場合の休業手当の一部を助成する助成金のことである
  • 雇用調整助成金の受給には、事前に雇用調整計画書を労働局に提出しなければいけない
  • 新型コロナウイルス感染症の影響により、助成額のアップ、雇用調整計画書の省略など申請方法の簡略化が行われている

雇用調整助成金は、新型コロナウイルス感染症のために多くの事業者が活用しました。特例が終わっても、雇用維持を目的としたこの助成金は存続します。新型コロナウイルス感染症以外にも、やむを得ず従業員を休業させる場合には、雇用調整助成金を計画的に活用して雇用の維持を図りましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

中野 裕哲(なかの ひろあき)氏

中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)

起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/

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