日本政策金融公庫のマル経融資とは?条件や申請方法など注意点を解説
日本政策金融公庫は国が100%出資する金融機関です。主に中小企業や小規模事業者、農林水産事業者への融資を行っています。小規模事業者向けの融資として日本政策金融公庫ではマル経融資という制度があります。どのような融資制度なのか見ていきましょう。
この記事の目次
マル経融資とは
マル経融資とは、日本政策金融公庫の融資制度で小規模事業者向けの融資制度です。正式名称は小規模事業者経営改善資金といいます。商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる制度です。
マル経融資が利用できる人
マル経融資を利用するには小規模事業者でなければなりません。小規模事業者とは、従業員20人以下(宿泊業と娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下)の法人・個人事業主です。また次の要件をすべて満たす必要があります。
- 商工会議所または商工会の経営・金融指導を受けて事業改善に取り組んでいる
- 最近1年以上、同一会議所の地区内で事業を行っている
- 商工業者であり、日本政策金融公庫の融資対象業種を営んでいる
- 税金(所得税、法人税、事業税、住民税)を完納している
マル経融資の融資限度額など制度(通常枠)の概要
マル経融資は運転資金と設備資金どちらでも利用でき、融資限度額合わせて2,000万円です。返済期間は運転資金で7年以内(うち据置期間1年以内)設備資金は10年以内(同2年以内)です。金利は年率1.13%(2022年12月1日時点)、担保や保証人は不要となっています。
マル経融資の制度(通常枠)概要
資金の使いみち | 運転資金 | 設備資金 |
---|---|---|
融資限度額 | 2,000万円 | |
返済期間(うち据置期間) | 7年以内(1年以内) | 10年以内(2年以内) |
利率(年) | 1.13%(2022年12月1日時点) | |
保証人・担保 | 保証人、担保は不要 |
マル経融資の新型コロナウイルス感染症対策向け制度(拡充措置)の概要
マル経融資は上記に挙げた「通常枠」にプラスして、新型コロナウイルス感染拡大により影響を受けている小規模事業者に対し、拡充措置が取られています。拡充措置が利用できる対象者は、新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1カ月の売上高または過去6カ月(最近1カ月を含みます)の平均売上高が前4年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している方です。
拡充措置として、融資限度額は通常枠(2,000万円)に別枠で1,000万円プラスされ、返済期間は運転資金で10年以内、設備資金は10年以内と通常枠と変わりませんが、据置期間が運転資金3年以内、設備資金4年以内と長く設定でき、金利は当初3年間別枠部分に限り0.9%引き下げられ、0.23%(2022年12月1日時点)と通常枠よりも優遇が受けられます。なお拡充措置として、規定の売上高減少の要件を満たせば、3年間金利の減免が受けられる新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業という特別措置がありましたが、2022年9月30日で取り扱いが終了となりました。
マル経融資の申し込み先
マル経融資を活用したい場合は、事業を行っている地域の商工会議所または商工会に申し込みます。日本政策金融公庫ではマル経融資の申し込みは行えません。マル経融資の融資実行は日本政策金融公庫で行いますが、融資にかかる審査と手続きは商工会議所または商工会が行うからです。この点に注意が必要です。
<必要書類>
マル経融資では次の書類が必要です。
法人の場合
- 前期・前々期の決算書および確定申告書
- 決算後6カ月以上経過の場合は最近の残高試算表
- 法人税・事業税・法人住民税の領収書または納税証明書
- 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 見積書・カタログ等(設備資金の申込みの場合)
個人事業主の場合
- 前年・前々年の決算書(または収支内訳書)および確定申告書
- 所得税・事業税・住民税の領収書または納税証明書
- 見積書・カタログ等(設備資金の申込みの場合)
マル経融資の申請期限と流れ
申請期限
マル経融資の通常枠に申請期限はありません。拡充措置については明確に期限が決まっていませんが、2023年3月で終了するという情報もあります。拡充措置を受けたい場合は早めに申請しましょう。
申請の流れ
- 商工会議所・商工会へ相談
本店住所地の商工会議所または商工会に相談します。融資制度の概要や資金使途、進め方、必要書類などの説明を受けます。 - 経営相談
経営指導員から経営のアドバイスを受けます。自社の経営上の問題点を整理し、経営指導員に相談しましょう。特に融資を受けるわけですから財務上の問題点については特に準備し相談しましょう。商工会議所、商工会所定の申込書類がありますので、そちらの記入を進めます。 - 必要書類の準備
経営相談を受けている間に必要書類を準備します。揃ったら経営指導員に渡します。 - 審査
商工会議所・商工会による審査があります。希望融資額が減額されたり、融資が受けられない場合があります。 - 融資決定
審査を通過すれば融資決定です。 - 融資実行に向けた必要書類の準備・提出
日本政策金融公庫から融資実行に必要書類が届きますので、準備します。返信用封筒があるので、そちらに必要書類を同封し、日本政策金融公庫に郵送します。 - 融資実行
書類に不備がなければ、3営業日程度で融資実行になります。
マル経融資の利用に関する注意点
マル経融資では審査は商工会議所・商工会で行います。ただし商工会議所・商工会は日本政策金融公庫と連携していますので、別枠ではありません。与信枠としては日本政策金融公庫の通常融資枠も込みで見られます。日本政策金融公庫から与信枠いっぱいの融資をすでに受けている場合、マル経融資が借りられない場合もあります。
まとめ
- マル経融資は、無担保・無保証人で通常枠最大2,000万円、拡充措置で別枠1,000万円まで融資が受けられる
- マル経融資は他の融資と比べ、低金利の融資が受けられる
- 新型コロナウイルス感染症による影響を受けている場合は、拡充措置が適用され、別枠で融資が受けられる
日本政策金融公庫のマル経融資は無担保・無保証人、低金利の大変有利な融資制度です。新型コロナウイルス感染症による影響を受けている場合は、拡充措置が適用され、別枠で融資が受けられます。検討される方は地元の商工会議所・商工会に相談されてみてはいかがでしょうか。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/