【新規事業に活用できる補助金と助成金】概要から条件や申請方法までわかりやすく解説
新規事業を始める際、資金に十分な余裕がなければ途中で頓挫してしまう場合も少なくありません。そんなときに役立つのが国や自治体が実施している補助金、助成金です。金融機関からの融資とは異なり、原則として返済の必要がないことが特徴です。本記事では、新規事業に活用できる補助金、助成金について詳しく解説します。
この記事の目次
新規事業に活用できる補助金、助成金とは
補助金、助成金は厚生労働省、経済産業省、地方自治体など様々な機関が実施しています。ここでは新規事業の立ち上げや創業時に活用できる制度をいくつかご紹介します。
管轄 | 名称 | 概要 |
---|---|---|
厚生労働省 | 人材開発支援助成金(特定訓練コース)若年人材育成訓練 | 申請事業所の雇用保険被保険者となった日から5年以内の正社員(35歳未満の方)にOff-JT訓練を実施する |
人材開発支援助成金(特別育成訓練コース) | 有期契約社員にOff-JTとOJTを組み合わせた訓練を実施する | |
キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 有期契約社員を正社員に転換する | |
経済産業省 | 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓や生産性向上の取り組みを行う |
ものづくり補助金 | 革新的な新製品やサービス開発のための設備投資を行う | |
事業再構築補助金 | コロナ時代に対応する新分野展開、業種・業態転換等を行う | |
東京都 | 創業助成事業 | 都内に本店又は主たる事業所等を有し、活動を行う |
順番に見ていきましょう。
人材開発支援助成金(特定訓練コース)若年人材育成訓練
申請事業所の雇用保険被保険者となった日から5年を経過していない35歳未満の正社員に対して、Off-JT訓練を実施した場合に支給される助成金です。訓練中の賃金に対する「賃金助成」と、訓練にかかった経費に対する「経費助成」の2つが支給されます。
申請先 | 管轄の労働局(またはハローワーク) | ||||||||
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対象者 | 大企業/中小企業/小規模事業者、個人事業者 | ||||||||
助成額・助成率 |
【賃金助成】最大960(480)円/時
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主な要件 |
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申請方法 | 郵送または持参 |
- ( )内は中小企業以外の助成額・助成率
Off-JTとは、通常の業務と区別して、社内または社外で実施する座学・実技形式の訓練です。
対面型の研修だけでなく、ZOOM等のビデオ会議ツールを活用して行うオンライン双方向型の研修も対象となります。
人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)
有期契約社員に対して、正社員転換等を目的としたOJTとOff-JTを組み合わせた訓練を実施した場合に支給される助成金です。こちらも賃金助成(Off-JT分、OJT分)と経費助成の2つが支給されます。OJTとは、通常の業務を通じて、社内で実施する実習形式の訓練です。
申請先 | 管轄の労働局(またはハローワーク) | ||||||||
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対象者 | 大企業/中小企業/小規模事業者、個人事業者 | ||||||||
助成額・助成率 |
【Off-JT賃金助成】最大 960(600)円/時
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主な要件 |
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申請方法 | 郵送または持参 |
- ( )内は中小企業以外の助成額・助成率
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期契約社員を正社員に転換する場合に支給される助成金です。
申請先 | 管轄の労働局(またはハローワーク) |
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対象者 | 大企業/中小企業/小規模事業者、個人事業者 |
助成額・助成率 | 有期→正規:1人当たり最大72万円(最大54万円) 有期→正規:1人当たり最大36万円(最大27万円) |
主な要件 |
|
申請方法 | 郵送または持参 |
- ( )内は中小企業以外の助成額・助成率
正社員化コースは2022年4月に大きな改正が行われました。2022年10月1日以降に転換を実施する場合、「正社員」と有期契約社員等の「非正規雇用労働者」の定義が以下のとおり変更になります。
<正社員の定義の変更>
2022年9月30日まで:同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
2022年10月1日以降:同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
ただし「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る
助成金の対象となる正社員は、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用される必要があります。このため、賞与も退職金も導入していない会社では申請できないことになります。
<非正規雇用労働者の定義>
2022年9月30日まで:6カ月以上雇用している有期または無期雇用労働者
2022年10月1日以降:賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6カ月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者
非正規雇用労働者は、「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている者に限ります。
「正社員と異なる雇用区分の就業規則」とは、基本給、賞与、退職金、各種手当等のいずれか1つ以上で、正社員と異なる制度が就業規則等で定められていことが必要になります。(基本給の多寡や賞与、諸手当の有無等)
人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)とキャリアアップ助成金(正社員化コース)は、以下のように併せて活用することもできますのでおすすめです。
- 有期契約社員を採用する
- 有期契約社員に訓練を実施する → 人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)を申請する
- 訓練終了後、正社員に転換する → キャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請する
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が取り組む販路開拓や生産性向上の取り組みを行う場合に支給される補助金です。HPやECサイト制作、ウェブ・SNS広告など、販路開拓に係る費用が幅広く対象になります。
申請先 | 全国商工会連合会、日本商工会議所 | ||||||||
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対象者 | 小規模事業者、個人事業者 | ||||||||
補助上限・補助率 | <通常枠>補助上限50万円 補助率2/3 <賃金引上げ枠>補助上限200万円 補助率2/3(赤字事業者については3/4) <卒業枠>補助上限200万円 補助率2/3 <後継者支援枠>補助上限200万円 補助率2/3 <創業枠>補助上限200万円 補助率2/3 <インボイス枠>補助上限100万円 補助率2/3 |
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主な要件 |
常時使用する従業員数に、会社役員(兼務役員を除く)、個人事業主、正社員に比べて所定労働時間が短い者は含まれません。 |
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補助対象経費 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費(補助金交付申請額の1/4が上限)、展示会等出展費、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費(補助対象経費総額の1/2が上限)、委託・外注費 | ||||||||
申請方法 | 郵送またはgBizIDプライムによる電子申請 ※gBizIDプライムとは、1つのアカウントで複数の行政サービスを利用することのできる認証システムです。補助金の電子申請(電子申請画面へのログイン)を行う際にgBizIDプライムが必要になりますので、まだ取得されていない方はこちらから早めに申請しましょう。 |
ものづくり補助金
革新的な新製品やサービスの開発、生産プロセスの改善に必要な設備投資を行う場合に支給される補助金です。
申請先 | 全国中小企業団体中央会 |
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対象者 | 特定事業者、中小企業/小規模事業者、個人事業者 |
補助上限・補助率 | <通常枠>補助上限750万円~1,250万円 補助率 特定・中小1/2、小規模2/3 <回復型賃上げ・雇用拡大枠>補助上限750万円~1,250万円 補助率 2/3 <デジタル枠>補助上限750万円~1,250万円 補助率 2/3 <グリーン枠>補助上限100万円~4,000万円 補助率 2/3 <グローバル市場開拓枠>補助上限3,000万円 特定・中小1/2、小規模2/3 |
主な要件(通常枠の場合) |
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補助対象経費 | 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費(グローバル市場開拓枠のみ)、通訳・翻訳費(グローバル市場開拓枠のうちJAPANブランド類型のみ)、広告宣伝・販売促進費(グローバル市場開拓枠のうちJAPANブランド類型のみ) |
申請方法 | gBizIDプライムによる電子申請 |
事業再構築補助金
コロナ時代の経済社会の変化に対応するため、新分野展開、業種・業態転換、事業再編等を行う場合に支給される補助金です。
申請先 | 中小企業庁 |
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対象者 | 中堅企業/中小企業/小規模事業者、個人事業者 |
補助上限・補助率 |
<通常枠>補助上限8,000万円 補助率 中堅1/2(4,000万円超は1/3)、中小2/3(6,000万円超は1/2) |
主な要件 |
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補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費 |
申請方法 | gBizIDプライムによる電子申請 |
認定経営革新等支援機関とは、中小企業を支援できる機関として、経済産業大臣が認定した機関です。全国で3万以上の金融機関、支援団体、税理士、中小企業診断士等が認定を受けており、中小企業庁のホームページで、認定経営革新等支援機関を検索することが可能です。
東京都創業助成事業
都内での創業を具体的に計画している個人又は創業5年未満の中小企業者等に対し、創業初期に必要な経費の一部が支給される補助金です。
申請先 | 東京都中小企業振興公社 |
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対象者 | 中小企業/小規模事業者、個人事業者、創業予定の個人 |
補助上限・補助率 | 補助上限300万円、補助率2/3 |
主な要件 |
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補助対象経費 | 賃借料、従業員人件費、広告費、器具備品購入費、専門家指導費、産業財産権出願・導入費 |
申請方法 | 郵送+ウェブ申請 |
注意点
補助金、助成金は原則「後払い」になります。着手から入金まで1年以上かかるものも多いため、融資や出資のようにスピード感のある資金調達方法ではない点に留意しましょう。
まとめ
- 補助金、助成金は、政府、自治体、民間・団体などさまざまな機関が実施している
- 新規事業の設備投資、販路開拓、人材の雇用・育成・処遇改善などに幅広く活用できる
- 補助金・助成金は後払いのため、もらえるまで時間がかかる
今回ご紹介した制度以外にも、数多くの補助金、助成金が存在します。常に新しい情報に更新されていますので、こまめに情報をチェックし、自社にとって役に立つ制度を見極めることが大切です。制度が複雑でわかりにくいときは、詳しい専門家に相談することもおすすめです。新規事業立ち上げの際は、資金調達手段のひとつとして補助金、助成金の活用を検討しましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/