【ものづくり補助金とは】概要から条件や申請方法までわかりやすく解説
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者などが取り組む革新的サービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する補助金です。機器の導入やシステム開発など、設備投資を行うときに役立つ可能性のある補助金です。
この記事の目次
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者などが、今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など)に対応するため、革新的サービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援する補助金です。
略称として「ものづくり補助金」といわれていますが、正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、製造業などものづくりに関わる産業以外の商業・サービス業でも対象になります。
ものづくり補助金の対象者
日本国内に、本社と補助事業の実施場所を有する中小企業者が補助対象です(下記1~3に該当)。ただし、申請締切日前10カ月以内にものづくり補助金の交付決定を受けた事業者は除きます。
- 中小企業者(組合関連以外)
業種 資本金 従業員数(常勤) 製造業、建設業、運輸業、旅行業 3億円 300人 卸売業 1億円 100人 サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 5,000万円 100人 小売業 5,000万円 50人 ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) 3億円 900人 ソフトウェア業又は情報処理サービス業 3億円 300人 旅館業 5,000万円 200人 その他の業種(上記以外) 3億円 300人 ※発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有しているような会社(みなし大企業)は補助対象者からは除かれます。
- 中小企業者 組合関連
以下の組合等に該当すること。- 企業組合
- 協業組合
- 事業協同組合
- 事業協同小組合
- 協同組合連合会
- 商工組合
- 商工組合連合会
- 商店街振興組合
- 商店街振興組合連合会
- 水産加工業協同組合
- 水産加工業協同組合連合会
- 生活衛生同業組合
- 生活衛生同業小組合
- 生活衛生同業組合連合会
- 酒造組合
- 酒造組合連合会
- 酒造組合中央会
- 内航海運組合
- 内航海運組合連合会
- 技術研究組合
※該当しない組合や財団法人(公益・一般)、社団法人(公益・一般)、医療法人、社会福祉法人及び法人格のない任意団体は補助対象となりません。
- 特定事業者の一部
従業員数(常勤)が下表の数字以下となる会社又は個人のうち、資本金の額又は出資の総額が10億円未満であるもの等。業種 従業員数(常勤) 製造業、建設業、運輸業 500人 卸売業 400人 サービス業又は小売業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 300人 その他の業種(上記以外) 500人 -
特定非営利活動法人(NPO法人)
以下の条件に該当すること。- 広く中小企業一般の振興・発展に直結し得る活動を行う特定非営利活動法人であること
- 従業員数が300人以下であること
- 法人税法上の収益事業を行う特定非営利活動法人であること
- 認定特定非営利活動法人ではないこと
- 交付決定時までに補助金の事業に係る経営力向上計画の認定を受けていること
ものづくり補助金の支給要件や補助金額
ものづくり補助金には通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠及びグローバル市場開拓枠があります。
-
通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠
項目 要件 概要 中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援 補助金額 100万円~4,000万円 補助率 [通常枠]中小企業者 1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3
[回復型賃上げ・雇用拡大枠]2/3
[デジタル枠]2/3
[グリーン枠]2/3設備投資 単価50万円(税抜)以上の設備投資が必要 補助対象経費 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 -
グローバル市場開拓枠
項目 要件 概要 中小企業者等が海外事業の拡大・強化等を目的とした「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援(1.海外直接投資型、2.海外市場開拓(JAPANブランド)類型、3.インバウンド市場開拓類型、4.海外事業者との共同事業類型のいずれかに合致するもの) 補助金額 100万円~3,000万円 補助率 中小企業者 1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3 設備投資 単価50万円(税抜)以上の設備投資が必要 補助対象経費 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費
ものづくり補助金の補助対象事業の要件
補助事業実施期間
以下の補助事業実施期間内に、発注・納入・検収・支払等の全ての事業の手続きが完了する事業であること。
- 通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠
交付決定日から10カ月以内(ただし、採択発表日から12カ月後の日まで) - グローバル市場開拓枠
交付決定日から12カ月以内(ただし、採択発表日から14カ月後の日まで)
事業計画の策定・表明
以下の全てを満たす3~5年の事業計画を策定し、また従業員に表明していること。
- 付加価値額 年率平均+3%以上
- 給与支給総額 年率平均+1.5%以上
- 事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円以上の水準にする
実施場所の確保
応募申請時点で補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していること。
回復型賃上げ・雇用拡大枠
回復型賃上げ・雇用拡大枠については、基本要件に加えて、以下の全ての要件に該当するものである必要があります。
- 前年度の事業年度の課税所得がゼロであること
- 常時使用する従業員がいること
- 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること
デジタル枠
デジタル枠については、基本要件に加えて、以下の(1)~(3)全ての要件に該当するものである必要があります。
(1)次の①又は②に該当する事業であること。
- DXに資する革新的な製品・サービスの開発
例)AI・IoT、センサー、デジタル技術等を活用した遠隔操作や自動制御、プロセスの可視化等の機能を有する製品・サービスの開発(部品、ソフトウェア開発を含む)等 - デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善
例)AIやロボットシステムの導入によるプロセス改善、受発注業務のIT化、複数の店舗や施設にサービスを提供するオペレーションセンターの構築等
(2)経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること。
※自己診断結果の入力にあたり、DX推進ポータルにログインする際は、本補助金の申請時と同じGビズIDプライムアカウントを使用してください。
参考:DX推進指標サイト、自己診断結果入力サイト
(3)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」又は「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行っていること。
参考:「SECURITY ACTION」公式サイト(制度概要)、「SECURITY ACTION自己宣言」申込みサイト
※(2)(3)については、自己診断結果をIPAに対して提出していること及び「SECURITY ACTION」の宣言をおこなっていることが必須要件となります。ものづくり補助金事務局がIPAに対して照会を行い、提出・宣言状況の確認を行います。診断結果・宣言が提出されていない場合には、デジタル枠では要件不備として不採択となりますので、ご注意ください。
グリーン枠
グリーン枠については、基本要件に加えて、以下の(1)~(3)全ての要件に該当するものである必要があります。
(1)次の①又は②に該当する事業であること。
- 温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発
例)省エネ・環境性能に優れた製品・サービスの開発、非石油由来の部素材を用いた製品・サービスの開発、廃棄物削減に資する製品・サービスの開発 等 - 炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善
例)生産工程の労働生産性向上を伴いつつ脱炭素化に資する設備投資、水素・アンモニアを活用する設備導入による燃焼工程と生産プロセスの最適化、複数ラインの作業工程を集約・高効率化 等
(2)3~5年の事業計画期間内に、事業場単位又は会社全体での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること。
(3)これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取り組みの有無(有る場合はその具体的な取り組み内容)を示すこと。
さらにエントリー類型、スタンダード類型、アドバンス類型ごとに以下の要件が追加されます。
A.エントリー類型について、以下のいずれかを満たすこと。
- エネルギーの種類別に使用量を毎月整理している。また、補助対象の事業者あるいは事業所のCO2の年間排出量を把握している
- 事業所の電気、燃料の使用量を用途別に把握している
B.スタンダード類型について、上記Aを全て満たし、以下のいずれかを満たすこと。
- 本事業で開発に取り組む製品・サービスが、自社のみならず、業界・産業全体での温室効果ガス削減に貢献するものである
- 電気事業者との契約で、一部でも再生可能エネルギーに係る電気メニューを選択している
- 自社で太陽光やバイオマスなど再生可能エネルギーでの発電を導入している
- グリーン電力証書を購入している
- 省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度(J-クレジット制度)があるが、この制度に参加し、自社での温室効果ガス排出量の削減の取り組みについて、クレジット認証を受けている
C.アドバンス類型について、上記A.を全て満たし、上記B.の3~7のうち2つ以上を満たし、以下のいずれかを満たすこと。
- SBT(Science Based Targets)若しくはRE100に参加している
- エネルギーの使用の合理化等に関する法律(通称:省エネ法)における事業者クラス分け評価制度において、令和3年度定期報告書分評価が『Sクラス』評価であること(原則、公募締切時点で資源エネルギー庁ホームページにて、『Sクラス』として公表されていることが確認できること)
- 2022年12月31日以前を起点とし、2019年度以降に以下のいずれかの事業における省エネルギー診断を受診している、または、地方公共団体で実施する省エネルギー診断を受診している
グローバル市場開拓枠
グローバル展開型については、以下のいずれかの類型の各条件を満たすこと。
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海外直接投資類型
- 国内事業と海外事業の双方を一体的に強化し、グローバルな製品・サービスの開発・提供体制を構築することで、国内拠点の生産性を高めるための事業であること
- 具体的には、国内に所在する本社を補助事業者とし、補助対象経費の2分の1以上が海外支店の補助対象経費となること、又は海外子会社(半数以上の発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を補助事業者が所有している、国外に所在する会社)の事業活動に対する外注費(本補助金の補助対象経費の範囲に限る。一般管理費は含まない。事業実施に不可欠な開発・試作にかかる業務等を想定)若しくは貸与する機械装置・システム構築費(本補助金の補助対象経費の範囲に限る)に充てられること
- 国内事業所においても、単価50万円(税抜)以上の海外事業と一体的な機械装置等を取得(設備投資)すること
- 応募申請時に、海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料、実績報告時に、海外子会社等との委託(貸与)契約書とその事業完了報告書を追加提出すること
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海外市場開拓(JAPANブランド)類型
- 国内に補助事業実施場所を有し、製品等の販売先の2分の1以上が海外顧客となり、計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
- 応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書、実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を追加提出すること
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インバウンド市場開拓類型
- 国内に補助事業実施場所を有し、サービス等の販売先の2分の1以上が訪日外国人となり、計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
- 応募申請時に、具体的な想定顧客が分かるインバウンド市場調査報告書、実績報告時に、プロトタイプの仮説検証の報告書を追加提出すること
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海外事業者との共同事業類型
- 国内に補助事業実施場所を有し、外国法人と行う共同研究・共同事業開発に伴う設備投資等であり、その成果物の権利(の一部)が補助事業者に帰属すること(外国法人の経費は、補助対象外)
- 応募申請時に、共同研究契約書又は業務提携契約書(検討中の案を含む)、実績報告時に、当該契約の進捗が分かる成果報告書を追加提出すること
ものづくり補助金の公募スケジュール
- 公募開始:2023年1月11日(水) 17時~
- 申請受付:2023年3月24日(金) 17時~
- 応募締切:2023年4月19日(水) 17時(12次締切)
14次締切分の採択発表は、2023年6月中旬頃を予定しています。
公募先・公募方法
申請は、電子申請システムでのみの受け付けです。この申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。未取得の方は、お早めに利用登録を行ってください。
まとめ
- ものづくり補助金とは、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものである
- ものづくり補助金には、通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠及びグローバル市場開拓枠がある
- 申請は電子申請システムでのみ受け付けられる
中小企業が設備投資を考えるとき、少しでもリスクを減らし、チャレンジしやすい環境を整えることが重要です。取り組む内容が革新的サービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善に該当する可能性があれば、ものづくり補助金にチャレンジすることをおすすめします。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/