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個人事業主にとって必須の開業届とは?メリット・デメリットを解説

開業届を出す_共通

開業届は、事業を始める際に税務署への提出が不可欠な届出書です。開業届を提出することで、税務署に個人事業主として登録され、さまざまなメリットがあります。開業届の提出方法や必要書類について解説します。

この記事の目次

開業届とは、個人で事業を始めるときなどに税務署に提出する届出書

開業届のダウンロードはこちら

出典:国税庁ホームページ
(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/05.pdf)

開業届は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人事業主として事業を開始したということを税務署に対して届け出るための書類です。開業届は、原則として開業した日から1カ月以内に、納税地を所轄する税務署に提出することになっています。

開業届が提出期限までに提出されなかったとしても、特に罰則はありません。一方、開業届を出さなかったからといって、申告義務がなくなるわけでもありません。ではなぜ開業届を出すのかというと、開業届を出すことによって「個人事業主になったことの証明」になるからです。この点について、もう少し詳しく解説していきます。

個人事業主は開業届を出すべき?メリット・デメリット

開業届を出すことによって、税務署が個人事業を始めたことを認識して確定申告の案内等を送付してくれます。しかし、開業届を出さなくても、一度確定申告をすればその後は税務署から案内や申告書が届くので、特に不都合は出てきません。

ではなぜ開業届を提出するのか、開業届を提出することでどのような効果が得られるのかについて詳しくみていきましょう。

開業届の提出は法律で定められた義務。事業を始めたら提出が必要

繰り返しになりますが、個人事業主が事業を開始した場合には開業届を出す必要があります。ここでポイントとなるのが「何をもって事業といえるのか?」「いつをもって事業が開始したといえるのか」という点です。この点が、開業届を提出する際に判断が必要なポイントとなります。

事業とは何か?

事業とは、「対価を得て行われる資産の譲渡等を反復、継続、独立して行うこと」をいいます。事業に該当するかどうかのポイントは下記のとおりです。

  1. 対価を得て行われる行為であること(ボランティアやお手伝いは事業に該当しない)
  2. 反復、継続性があること(年に1、2回行うような仕事は事業に該当しない)
  3. 独立性があること(それで生計を成り立たせていること)

会社員が副業で別の仕事をたまに受けたり、フリマサイトやイベントに参加して報酬をもらったりして、年間の収入で生計が成り立つほどではない額を得たとします(目安として年間300万円以下)。この場合、収入を得ていたとしても、反復、継続、独立性がないため事業とみなされず、「事業所得」ではなく「雑所得」として所得税の対象となります。

いつをもって事業開始なのか

個人事業主はいつでも仕事を始められるため、逆にいつから事業を開始したのかが不明瞭でもあります。仕事を受注した日が事業開始日なのか、最初の仕事を終えた日が事業開始日なのか、それとも仕事を始めるための準備を始めた日が事業開始日なのか判断に迷うところです。

これに関しては、税務署の方で明確な基準を定めていないので、根拠のある説明ができればいつを事業開始日にしても問題はありません。つまり「この日をもって事業を開始します」と開業届を出した時点で、事業が開始になります。事業開始日をある程度こちら側でコントロールができるわけです。

メリット

開業届を提出することの一番のメリットは、「事業を開始した証明になる」ということです。事業を開始することで受けられる制度や優遇措置などがありますので、まずはそれをみていきましょう。

青色申告での確定申告ができる

開業届を提出して事業開始日を確定することで、青色申告できるようになります。個人事業を行うにあたって収入金額や経費について請求書や領収書など計算の根拠となった書類を保存し、帳簿などを備え付けることで、下記のような特典が受けられます。

  • 最大65万円が所得から控除される。
  • 業績が赤字だった場合、最長3年間赤字を繰り越せる「青色繰越欠損金」がある
  • 事前に税務署に届けを出すことで配偶者や家族に給与を支払って経費計上する「青色専従者給与」がある

青色申告をするためには「所得税の青色承認申請書」を、業務開始から2カ月以内に納税地を管轄する税務署に提出する必要があります。

職業を証明できる

税務署に開業届を提出して控えを持っていることで、自分が個人事業主であることを証明することができます。建設業や飲食業など営業許可が必要な業種の場合には、許可を取るのに開業届が必須になります。

店舗やオフィスの賃貸契約を結ぶ場合や事業資金を金融機関から借入する際においても、事業を行うことの証明として利用するので、特に事業資金が必要な場合には開業届を提出する必要があります。

事業用の銀行口座を用意できる

開業届を提出する際、お店の屋号を記載することができます。屋号を決めることによって、それを使って銀行口座を作ることができるようになります。プライベートの銀行口座と事業用の銀行口座を分けることによって、確定申告や資金繰りの際に管理がしやすくなります。個人事業主の場合は、どうしても仕事とプライベートが混在しやすいので、事業用の銀行口座を作って管理することをおすすめします。

小規模企業共済に加入できる

個人事業主は、自分に対して退職金を支払うことができませんが、 個人事業主や中小企業の役員向けの退職金準備として、「小規模企業共済」という国の制度があります。小規模企業共済は、毎月の掛金が確定申告の際に全額控除できるうえ、退職時にお金を受け取るときは退職所得として税制面で優遇されているため、活用されている事業者は多いです。小規模企業共済は個人事業主であれば加入できるので、個人事業主であることを証明するためにも開業届の提出が必要です。

デメリット

続いて開業届を提出することによって起こるデメリットについて解説します。

確定申告の際の手間が増える

開業届を提出するということは、個人事業主として事業を行うことを税務署に届け出るわけですので、当然ながら確定申告が必要になります。個人事業主が確定申告をする場合は「事業所得」に該当し、確定申告書のほか青色申告であれば「青色申告決算書(貸借対照表や損益計算書)」、白色申告の場合であれば「収支内訳書」を添付して申告しなければいけません。個人事業を始めたものの収入がほとんどない、仕事の頻度が少ないといった状況であれば、個人事業主として開業届を出すのではなく、「雑所得」として確定申告をした方が手間が少なくて済みます。

被扶養者から外れる場合がある

もし、ご自身が配偶者の社会保険の扶養に入っている場合、社会保険の種類によっては、個人事業主となることで所得要件を満たしていても被扶養者から外れてしまうケースがあります。事業を始めたばかりで収入がほとんどない場合、配偶者の社会保険の扶養に入っていた方が有利になる場合もあります。そのような場合には、すぐに開業届を提出して個人事業主になるのではなく、「雑所得」として確定申告をしておき、収入が上がってきたタイミングで個人事業主として開業届を提出した方が負担を減らすことができます。

失業手当が受給できなくなる

会社を退職後に失業手当を受けながら開業に向けて準備をしている場合、失業手当は再就職をするまでの間の生活保障として支給されるものなので、個人事業主になった時点で再就職はないと判断されて受給できなくなります。開業届けを提出したら、その時点で失業手当を受けられなくなります。事業として収入のめどが立ってから個人事業の開始届を出すようにしましょう。

開業届の提出方法と必要書類

個人事業の開業届を提出するにあたっての具体的な手続き方法をみていきましょう。

提出するタイミング・期限

開業届を提出するタイミングは、「事業を開始した時点」です。事業を開始したとはどの時点かについては前述したとおり、「対価を得て行われる資産の譲渡等を反復、継続、独立して行うこと」で年間の収入が300万円を超える見込みであれば事業開始したと判断されます。開業届の提出期限は、個人事業の開業後1カ月以内となっています。

入手方法と必要書類

開業届は、税務署で用紙が手に入ります。また、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。開業届を提出する際には、マイナンバーの記載および本人確認書類(免許証など)の提示が必要となります。

開業届ダウンロードはこちら

出典:国税庁ホームページ
(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/05.pdf)

提出する場所・方法

開業届の提出先は、納税地を管轄する税務署です。個人の方の納税地は原則として住所地となります。届けを出すことで、店舗など事業所の所在地を納税地に指定することもできます。

税務署への提出は、下記のいずれかの方法によって行います。

  1.  直接税務署へ持って行く
  2.  税務署へ郵送する
  3.  電子申告システム(e-tax)を使って提出する

e-taxを利用する場合には、事前に利用者識別番号を取得するなど準備が必要となりますのでご注意ください。

青色申告承認申請書の提出

開業届を提出した際に、青色申告の承認申請を行うようにしましょう。青色申告の承認申請を行うことで、先ほど説明した「青色申告特別控除」や「青色繰越欠損金」「青色専従者給与」など、税負担を軽減できる措置を受けることができます。これらの特典を受けるためには、「所得税の青色承認申請書」を業務開始から2カ月以内に提出する必要があります。必ず期限内に提出するようにしましょう。

まとめ

  • 開業届は、個人事業主として事業を開始したということを税務署に対して届け出るための書類。原則として開業した日から1カ月以内に、納税地を所轄する税務署に提出する
  • 開業届を提出することのメリットは、「事業を開始した証明になる」ということ。さまざまな特典を受けられる青色申告を利用できたり、事業資金を金融機関から借入る際や、事業用の銀行口座を開設する際の証明となる
  • 事業を始めたばかりで収入がほとんどない場合、配偶者の社会保険の扶養に入っていた方が有利になる場合もある。また、事業を始めると失業保険の給付はストップしてしまうため、事業として収入のめどが立ってから開始届を提出するのがベター

個人事業の開始届は、事業を開始したのであれば1カ月以内に提出しなければいけないものですが、何をもって事業を開始したのか、いつの時点で事業が開始したことになるのかのタイミングを適切に判断することでメリットを生かし、デメリットを軽減することができます。これから事業を始められる方は、これらのことをしっかりと押さえて事業経営を行いましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士

税理士法人 エンパワージャパン 代表税理士 1981年生まれ 横浜市在住

中小企業こそ日本を支える礎であるという理念から、持続可能な社会・持続可能な企業を創るための「中小企業のための財務支援プログラム」を実施することで強固な財務力を持つ優良企業に導く、中小企業の財務支援に専門特化した税理士事務所を運営するとともに、児童養護施設の児童から地域を支援する税理士へと導く「大空への翼プロジェクト」を行っている。共著「七人のサムライ」や執筆など多数。

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