領収書に「収入印紙」を貼る金額は5万円から。コンビニで買えます

飲食店や小売店を経営していると、お客様から「領収書をください」と言われることが多いと思います。記入する領収金額がいくらなら収入印紙を貼る必要があるのか、また、額面がいくらの収入印紙を貼ればいいのか、迷う人も多いのではないでしょうか。領収書と収入印紙の関係を中心に、収入印紙を貼る金額や注意点について解説します。
この記事の目次
収入印紙が必要な領収金額は「5万円以上」
ジャスト5万円の場合も印紙を貼る
現金5万円以上(ジャスト5万円も含まれます)の領収書には印紙の添付が必要です。なぜなら国税庁が公表している「印紙税額の一覧表」では、領収書の金額が「5万円未満」であれば非課税として扱うことができるとされているためです。この場合の5万円は、モノやサービス本体の金額で、原則的に消費税は含みません。
なお、収入印紙は「発行する領収書の金額」によって貼る金額が変わります。詳しくは先述の国税庁が公表している「印紙税額の一覧表」17【売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書】でご確認ください。
【もっと詳しく】「領収書には本体価格と消費税を分けて記載」を読む
5万円以上~100万円未満の領収書には「200円分の印紙」を貼る
5万円から99万9,999円の領収までは、「200円分」の印紙を貼る
5万円から100万円未満の領収書を発行する場合には、「200円」分の収入印紙を貼ります。税抜ジャスト100万円を領収した際は、200円の印紙を2枚貼ってください。
最も多く流通している「1枚200円」の収入印紙をストックしておく
印紙には「1枚1円」から「1枚10万円」までたくさんの種類がありますが、最も多く流通している1枚200円の収入印紙を複数ストックしておくのがオススメです。なぜなら領収証の発行は「現金の受け取り」を想定しており、ほとんどの場合5万円~100万円未満の取引に該当するからです。
ちなみに、もし200円の収入印紙が手元になければ、100円の収入印紙を2枚貼ることで領収書を発行することもできます。
【もっと詳しく】「印紙の種類は最少額1円から100,000円まで31種類」を読む
カード払いの場合は印紙不要 領収書に記載を忘れずに
「クレジットカード払いで5万円以上」の領収書には、印紙を貼る必要はありません。
カード払いに領収書を発行するかどうかは店側の判断
クレジットカード決済は「まだ代金を受け取っていない未回収な状態」を意味します。よって、収入印紙を貼る必要はありません。クレジットカード決済の場合、課税文書の要件である「売上代金を金銭等で受け取った」という事実に該当しないため、たとえ紙に「領収書」と印字されていても、「課税文書」に該当しない領収書に区分されます。
クレジットカードで決済した場合には、同様の理由から店舗側に領収書の発行義務はありません。とはいえ、お客さんに「領収書をください」と言われて、「クレジット決済の場合には発行しておりません」と言うのも……と思われる場合は、次のような対応をしましょう。
領収書代わりの書類を発行する場合は「クレジットカード利用」と書き添える
クレジットカード払いの領収書を発行する時は、「クレジットカード利用」や「クレジット決済」「カード利用」などクレジットカードで決済されたとわかるように記載してください。この記載が、「この領収書は課税文書ではありませんよ」という宣言になります。
【もっと詳しく】「そもそも収入印紙ってなに? 領収書は課税文書」を読む
【もっと詳しく】「クレジットカード払いと領収書の詳しい関係」を読む
印紙を貼る位置は自由 印鑑か濃いサインで「消印」を
添付する時の方法は、消印さえ気を付けていれば、それ以外特に注意することはありません。
印紙の位置に決まりはない 領収書に貼る位置が印字されていることも
領収書に貼る収入印紙の位置は「空白部分」であればどこでもよく、決まりはありません。ただ、市販のレジシステムを使っている場合は領収書のフォーマットが決まっており、「収入印紙」と薄く印字されていることが多いです。そこが扱いやすい位置だということなので、薄く印字されている部分に合わせて貼りましょう。
消印は「印鑑が半分かかるように」押す
領収書の発行時は、収入印紙と領収書にまたがる形で印鑑を押す必要があります。理由は、収入印紙の再利用を防ぐためです。このような捺印の仕方を「消印」と言います。またがっていない捺印は、有効にならないので注意してください。
消印はゴム印や「ボールペンでサイン」でもいい
「誰が押したかが明確であること」「再利用できないようまたがって押されていること」が守られていれば問題はありません。よって、ゴム印や、担当者のサインでも有効になります。
こすって消えてしまうような消印はNG
「誰が押したかが明確であること」が必須ですから、鉛筆や薄い色のペンなど、こすって消えてしまう・誰の名前なのか判別できない等の消印は有効になりません。サインの場合も、ハッキリと文字が読めるボールペンなどで消印をしてください。
印紙が数枚ほしい時はコンビニ まとめ買いは郵便局へ
200円の印紙はコンビニで買える 複数枚は郵便局が便利
収入印紙は、郵便局、コンビニエンスストア、役所、法務局、個人商店(いわゆる「たばこ屋さん」のような店)などで購入できます。ただし、コンビニエンスストアや個人商店は、もっとも流通量が多い200円の印紙のみを取り扱っているケースが多いです。
もし印紙をまとめて購入したい場合には、郵便局や役所、法務局に行くのが良いでしょう。店舗数が多く、身近な郵便局での購入がもっとも便利です。
収入印紙のよくあるご質問(FAQ)
「貼り忘れたらどうなるの?」など、収入印紙に関するよくある質問をまとめましたので、参考になさってください。
Q1.お店の会計で、うっかり収入印紙を貼らずに領収書を渡してしまいました。何らかのペナルティが発生するのでしょうか?
A1.収入印紙の貼り忘れが発覚するのは、「相手先に税務調査が入り、領収書をチェックされたとき」です。この領収書に収入印紙が貼っていないからと言って、相手先の経費として認められないという訳ではなく、「事実確認」として領収書を渡したお店に連絡がいくと思います。その上で、印紙漏れが指摘され、本来納めるべき金額の3倍の支払いを命じられます。例えば、本来であれば200円の収入印紙を添付する領収書を指摘された場合には、600円の印紙税の納税が必要になります。
Q2.取引先に初回分として3万円の領収書を渡していたのですが、さらに追加で3万円の取引が発生したため、合算して6万円の領収書を発行しました。合算しなければ5万円以下ですが、収入印紙は貼らなくてよかったのでしょうか?
A2.領収書に添付する収入印紙は、個々の現金の受取額で判定します。合算した領収書が5万円以上であっても、個々の受取額が5万円以下であれば収入印紙の添付は不要です。この場合、相手先に渡した領収書を回収し、税務署に「印紙税過誤納手続」をすることで返金されます。
参考:国税庁「[手続名]印紙税過誤納(確認申請・充当請求)手続」
Q3.領収書に収入印紙を添付するケースについてはわかったのですが、その他に収入印紙を添付する必要がある書類で注意した方が良いものはありますか?
A3.ビジネスにあたって、ほとんどの契約書には収入印紙の添付が必要になります。請負契約書に該当する場合には、その金額に応じて収入印紙の金額も変わります。売買や契約などの継続的な取引を前提とした契約書の場合には、一律で4,000円の収入印紙を貼るようにして下さい。
継続的な取引を前提とする契約書を一般的に「基本契約書」と言いますが、その後、個々の取引について金額や数量を確定する場合には「注文書(個別契約)」の発行が必要になることがあります。この発注書は「第二号課税文書(請負に関する契約書」)として扱われますので、「印紙税額の一覧表」(国税庁)に記載のある金額分の収入印紙を貼りましょう。
なお、注文書が紙ではなくPDFなどで作成された電子データの場合には、収入印紙の添付は不要とされています(国税庁<別紙1-1>参照)。
【もっと詳しく】収入印紙のいつか役に立つ豆知識
領収書には本体価格と消費税を分けて記載
収入印紙は「本体価格」によって貼るべき金額が決まるので、仮に「税込で5万円以上」になってしまっても、本体価格が5万円未満であれば収入印紙は不要です。ただし、その領収書に消費税と本体価格が分かるように記載されていないと、収入印紙の添付が必要になってしまいます。
領収書には常に、税抜本体価格と、消費税の金額が明確にわかるように内訳を書くと良いです。
印紙の種類は最少額1円から100,000円まで31種類
印紙には様々な種類があります。最少金額は1枚1円で、最多金額は1枚10万円と、下表の通り幅広く用意されています。
領収金額と必要な印紙金額の対応表はこちらです。
記載された受取金額 | 必要な収入印紙の金額 |
5万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円を超え2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円を超え3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 |
3億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超えるもの | 20万円 |
そもそも収入印紙ってなに? 領収書は課税文書
「そもそも収入印紙って?」「なぜ貼らなきゃいけないの?」と疑問に思う人も少なくないと思います。なぜ領収書に収入印紙を添付する必要があるのか? それは、領収書が課税文書(文書をつくる行為に、税金がかかること)の一つだからです。収入印紙を貼ることで、私たちは「領収書」という文書の発行にかかる税金を納めています。
クレジットカード払いと領収書の詳しい関係
収入印紙の調査は、「相手先の税務調査」※1の際に行われますので、調査員からすると「領収書」と記載があるものすべてを「代金を受け取ったもの」と判断してしまいます。そこで、代金を受け取ったものとクレジットカード決済とを明確に区分するために、クレジット決済により領収書を発行した場合には、それが分かるようしっかり記載してください。「クレジットカード払い」だと記載がない代金5万円以上の領収書は、課税文書とみなされ、収入印紙が必要になります。
税法上の領収書は、「現金の受取」を証明するものですから、カード払いと記載のある領収書は、「現金のやり取りが未了」を意味し、税法上の経費として認められる領収書とは性質が異なります。とはいえ、相手先の税務調査の際に全てのカード払いの領収書が経費として認められない訳ではありません。予備知識として「認められないこともある」と理解しておきましょう。
消印と割り印の違い
「消印」は、収入印紙や切手などに対して捺印することで、「支払」を証明する捺印方法です。一方、「割印」は、契約書などが複数枚になる場合にそれらの「関係性」を証明するための捺印方法です。どちらも何かの部分をまたいで押す点は同じですが、目的が異なるため、名前も違います。
※1「税務調査」はどのくらいの頻度か?
税務調査は、開業後3年以降ランダム若しくはリスクに応じて発生します。厳密な基準はありませんが、相手先によっては3年毎に必ず入っているケースもあれば、10年近く何もない事もありますので、一概に判断は難しいところです。
リスクの高い相手先ですと、高額領収書について全体的に調査され添付漏れを指摘されます。実際には全ての領収書をチェックするわけでもないので、見つからないケースも少なくはありません。相手先のリスクというのは感覚論なので難しいですが、過去に重加算税が入るほど意図的な所得隠しがある会社や、その主要取引先、同業種他社と比較して決算書の科目比率が著しく異なる場合など。つまり税務署が、「この会社なんかやってんじゃないの」という度合いがリスクの大小です。「相手先の税務リスク」によって調査の度合いが変わってくるので、店舗側としては常に最善にしておくのがベストです。
※2「税務調査」で、カード払いの領収書が課税文書にみなされ印紙を貼れと言われる可能性は?
領収書を全部見る訳ではないので、で該当の領収書が見つかるかどうか、見つかった場合には確実に指摘が入ります。クレジットカード払いと記載がなかったり、単純な添付漏れ、消印漏れは指摘の対象ですが、カード払いの明細が別途あり、明細にて取引が確認出来れば指摘をはね返せます。
指摘された場合はペナルティ込で納付が必要です。
まとめ
- 収入印紙が必要な領収金額は「5万円以上」
- 5万円~100万円以下の領収書には「200円分の印紙」を貼る
- カード払いの場合は印紙不要 領収書に記載を忘れずに
- 印紙を貼る位置は自由 印鑑か濃いサインで「消印」を
- 印紙が数枚ほしい時はコンビニ まとめ買いは郵便局へ
印紙税の納付として用いられる収入印紙ですが、意外と知らない内容も多かったのではないでしょうか。「クレジット払いは印紙はいらなかったのですね」「印紙が貼ってなくても、相手に渡すものだからバレないと思っていました」などの声も耳にします。収入印紙と領収書の関係についてよく理解して、ビジネスにお役立てください。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
この記事を書いた人

福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士
公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。
上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。