【美容サロン】店舗ルール・マニュアル作成の作り方や手順をご紹介
新規開業するサロンオーナーから、よく「店舗ルールやマニュアルを作った方がよいですか?」という質問を受けます。小さなサロンであったとしても、スタッフを雇って経営するのであれば、そのお店独自のルール・決まり事を作った方が良いです。なぜなら、店舗ルールはお客様に対して統一したサービスを提供するだけでなく、スタッフたちがストレスなく働くために不可欠だからです。特に今後、複数の店舗展開を目指しているのであれば、作成は不可欠になります。しかし、ルールがあっても、それを文書に落としたマニュアルをうまく活用できているサロンは多くありません。今回は、うまく活用される店舗ルール・マニュアル作成の手順をご紹介したいと思います。
この記事の目次
店舗ルールとマニュアルの役割
店舗ルールを作ると、お客様に提供するサービスが統一できるというメリットがあります。人間が提供するサービスなので、もちろん100%同じ技術や接客は難しいですが、どのスタッフが担当してもほぼ同じ技術、接客を提供することで、お客様に安心感を与え、顧客満足度を高めます。
また店舗ルールは、スタッフが働きやすい環境にしてくれます。明確にルールがあればスタッフは迷わずに行動することができます。ルールが不明確だと、オーナーや店長に相談したり確認したりする手間が毎回発生してしまいます。雇用する方・される方、お互いにメリットがあるのです。
そして、それらの店舗独自のルールを文書にまとめたものがマニュアルとなります。
マニュアルが存在するエステサロンは多いですが、マニュアルをうまく活用できているサロンは多くありません。マニュアルは基本的に、日々の仕事に必要な業務の手順等が書かれているものです。うまく活用できれば、業務の効率化や生産性の向上につながり、スタッフ教育の時間や手間を大きく省くことができます。
新規開業時に必要なマニュアルとは
新規開業時に必要なマニュアルは、まず「店舗運営マニュアル」と「就業マニュアル」です。「店舗運営マニュアル」は、例えば電話対応、お出迎え、お見送り、カウンセリング、技術、会計などの「お客様に関わること」がまとめられており、「就業マニュアル」は、社内ルール、会議ルールなど「組織内部に関わること」がまとめられています。
マニュアル作成のメリット
業務の手順の標準化
マニュアルがうまく活用できていないと、複数サロンを展開しているサロンでは、サロンによって業務の手順が異なっており、1サロン経営でもサロンオーナー自身がルールとなっているケースが少なくありません。マニュアルではなく、人に依存した運営を行なっていると、人間の多くは、楽な方向に流れる傾向があり、いつの間にかお客様ではなく、自分を中心に考えた業務を行なっていたり、オーナーや店長自身がルールとなり、いつの間にかやり方が変わっていたり、店長が変わるとやり方が変わるなど、現場が混乱してしまうことが発生しやすくなります。あくまでも人ではなく、マニュアルを基準とすることで、業務の手順が標準化されるのです。
業務の全体像の把握
マニュアルは、業務の全体像を書き、加えてそれぞれの業務について目的や手順を書き記していきます。業務によっては、いくつかの業務が組み合わさり、同じ業務に複数のスタッフが関わるため、関わるスタッフの判断と同意が必要になります。マニュアルがあることで全体像がわかり、どの役割を誰が担当して進めていくのかが分かりやすくなります。全体像が書かれているマニュアルが存在することで、1つ1つの作業が、業務全体のどの部分を担っているのかが分かり、業務全体が効率化されます。
新人スタッフの即戦力化
多くのエステサロンでは、スタッフの流動性が高く、新人スタッフの即戦力化が大きな課題です。マニュアルがあることで、業務を一から教えなければない新人スタッフの教育に、店長や先輩スタッフが割く時間が大幅に短縮されます。特に教えるスタッフによって言葉足らずになるリスクが軽減され、それぞれの業務の目的もマニュアルに記載することで、理解されやすくなります。また、マニュアルに成功事例等を加筆したり、より良い手法に更新していくことにより、サロン間、スタッフ間でノウハウやナレッジの共有が進み、全スタッフが習得できる環境になることで、全体の質が向上していきます。
マニュアル作成のポイント
読む側の立場に立って作成する
マニュアルがうまく活用されていないエステサロンの共通点は、マニュアルが読みにくいということです。例えば、文章ばかりで作成されていたり、難しい文章で表現されていたり、業務が分かっている人の立場で書かれており、具体性に欠けるというマニュアルも多く見られます。マニュアルを読むのは、大半は新人スタッフで、入社して右も左も分かっていない状態ですので、分かりやすい文章で、過剰なくらいに具体的に書くくらいがちょうど良いです。
写真やイラストを多用する
どうしてもエステサロンのマニュアルでは、文章のみで表現することに限界があります。例えば、ベッドメイキングのタオルの置き方などです。文章で表現するよりも、写真やイラストで表現した方が一目でわかり、理解が進みます。分かりにくいマニュアルを作ると、何度研修をしても同じ内容の質問を繰り返されるという無駄な時間も減少します。写真やイラストを加え、分かりやすいマニュアル作成を心掛けましょう。
マニュアル作成にゴールはない
マニュアル作成にゴールはありません。なぜならば、業務の大半は試行錯誤であり、より良い手法が確立されていく可能性があります。また、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症蔓延により、エステサロンでの接客の常識も大きく変わりました。このような時代の変化とともに、マニュアルも更新していかなければなりません。従って、一度マニュアルを作って終わりではなく、常に更新していくことで、マニュアルが機能していくのです。
マニュアル作成の手順
マニュアル作成のスケジュールのゴールを決める
マニュアル作成は、日々の業務と比較すると、緊急性が低く、後回しになりがちです。従って、まずは作成スケジュールのゴールを決めることが重要です。例えば新卒スタッフが4月1日に入社してくるのであれば、それまでに完成すると決めて、そこから逆算してスケジュールを立てます。ゴールが決まらないと、いつまで経ってもスタートできませんので、まずはゴールを決めましょう。
マニュアルの目次、構成、役割分担を決める
マニュアル作成のポイントは、思いつきで書き始めるのではなく、まずは目次と構成、そしてそれぞれの項目に適した役割分担をしてからスタートすることが効率的です。思いつきで書き始めてしまうと、抜け漏れが多く発生する可能性が高まり、時間ばかりがかかってしまい、内容がまとまらないことが多くあります。また、全体像が固まっていないケースが多く発生するので、今何号目を歩いているのかも分かりにくく、書くモチベーションも上がりにくくなってしまいます。目次と構成が決まれば、そこに内容を肉付けしていくだけなのでスムーズに作業が進みます。また全て1人で書こうとするのではなく、1人でも多くのスタッフを巻き込んで作成した方が、当事者意識も感じやすく、浸透も早くなります。全く書き方が分からない方は、同業のサロンオーナーに相談すると、マニュアルを見せてくれることも多いと思いますので、参考にさせてもらいましょう。
マニュアルを試用運転し、改善点を洗い出す
マニュアルが一旦完成したら、完成形としてスタッフに配布するのではなく、仮運用をしましょう。スタッフ達には試作中のマニュアルということを伝えた上で配布し、読み合わせや意見を出し合ってもらいながら、理解されにくい文章や写真、イラストは改善していきます。それが終わった段階で、一旦の完成版ということで、スタッフ達に正式に配布しましょう。もちろん前述したように、マニュアルに完成はありませんので、より良い手法が生まれたら、マニュアルを更新したり、今までマニュアルに記載はなかったけれど、必要な項目が生まれれば加筆していくという更新作業が必要です。その度にしっかりとスタッフ全員に落とし込んでいくことも忘れないでください。そしてあくまでもサロンオーナーや店長という役職者がしっかりマニュアルを遵守することです。サロンオーナーや店長がマニュアルを遵守していないと、その瞬間に無用の長物になってしまいます。
まとめ
- 店舗独自のルールを文書に落としたものがマニュアル
- マニュアルは業務の効率化・働きやすさ向上に繋がる
- 読み手の立場に立ったマニュアルを作成する
- マニュアルにゴールはなく、常に更新していく
マニュアルは、どんなに立派なものを作っても、読み手が活用してくれなければ、何の意味もありません。したがって、マニュアルは何のために、そして誰のために存在するのかをしっかり理解し、読み手の立場に立って作成することが重要です。また、時代が移り変わっていくとともに、マニュアルの内容も常に更新されていかなければならないものですので、マニュアルに完成はありません。そして一番大事なのは、サロンオーナーや店長という役職者がしっかりとマニュアルを遵守することです。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
榎戸 淳一(えのきど じゅんいち)株式会社ES-ROOTS代表取締役
大学卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。「エステティック業界の健全化」に使命感を感じ、エステティック業界のコンサルティングを立ち上げる。2009年8月同社退職後、株式会社ES-ROOTSを立ち上げ、代表取締役に就任。2010年1月に東京都目黒区にオーガニックコスメ&エステサロン「フルーツルーツ」をオープンさせる。第2回エステティックグランプリでは、モデルサロン部門、フェイシャル技術部門で2冠を受賞。ビューティーワールドジャパンのメインステージ、たかの友梨ビューティクリニックなど、様々な講演講師も務める。一般社団法人エステティックグランプリの2代目理事長も務めた。山野美容芸術短期大学で「サロン経営学」の授業も担当した。著書に「サロンはスタッフ育成で99%決まる」「サロンとスタッフが輝く28+8の成功法則」「愛されるエステティシャンの秘密」がある。https://www.fruitsroots.com/